悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」   作:須井化

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前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

2回戦第3試合は八百万少女と拳藤少女による激しい攻防戦が繰り広げられるも、惜しくも八百万少女は敗退してしまう。

準々決勝もいよいよ大詰め。緑谷少年と切島少年の対決だ…!

更に向こうへ!PlusUltra!!!


第33話

マイク「第2回戦もいよいよクライマックス!」

 

マイク「轟、上鳴に引き続き拳藤と3回戦の進出者が着々と集結してきている!!」

 

マイク「次の試合でとうとう上位4名の準決勝出場者が完全に決定するぞ!」

 

ワァァァア…

 

 

 

 

 

 

切島「そろそろ…始まるか」

 

マイクのアナウンスと観客達の歓声を聞きつけ、もうじき自分の出番が回ってくると感じた切島君は椅子からガタッと立ち上がり、両腕を上げて大きく身体を伸ばす。

 

葉隠「お、傷完治した?」

 

切島「んまー…痛みは引いたね」

 

葉隠「そっか!頑張がんば!!」

 

隣の席に座っていた葉隠さんからの声援に「おう」とだけ答えると、すぐに観客席から離れていった。

 

 

瀬呂「次は緑谷と切島かぁ…どーなんだろな」

 

青山「やっぱり緑谷君じゃあないかい?」

 

青山「戦い方がまさにビューティフルでエレガントでエクセレントだしさ」

 

上鳴「とりまお前が過大評価しているっつー事だけは分かった」

 

葉隠「………」

 

 

 

八百万さんがタンカに乗せられ保健室に運び込まれていく。1回戦でも同じような光景見たな…偶然にもこちらの入場口からタンカがやってきたので覗いてみると…

 

彼女の顔からは1片たりとも負の感情が感じ取れなかった。逆に曇りなく微笑んでいたのだ。

 

所詮この程度かと自分で納得してのこの表情なのか、本当は泣きたい位悔しいのを何とか堪えようとしているのか……

 

はたまた僕を不安にさせない為にー

 

 

緑谷(よそう。考え過ぎだな)

 

緑谷(何の得も無いし、必要性もない………)

 

 

八百万さんの様子も驚いたがもっとショックだったのは拳藤さんの方だ。何って……

 

あれだけ動いたのに疲労しているように見えないんだよ。

 

1度も息切れしなかったし、1つも汗を流してない。数十発の銃弾を避けてあれだけ激しくうごいたというのに試合後の彼女の姿から全く疲れが伺えない。

 

どういうスタミナしてるんだか…

 

色々と思う事はあったけど八百万さんを見送った後、すぐにステージに足を運ぶ事となった。

 

 

控え室での出来事を胸に留めながら………

 

 

 

 

 

マイク「2回戦第4試合!!」

 

マイク「ヒーロー科緑谷VS切島だぁあああっ!!」ワァァァア…

 

ステージに上がった途端そこら中の観客席から大喝采が湧き上がる。というか雄叫びだなこりゃ…1回戦の時よりも更に注目されてるよ。

 

そういえばこれ準々決勝だから人数的にはもう生徒1桁しか残ってないのかよ。

 

まぁさっきよりかは緊張しない…

 

緑谷「ぅ…ぉっぉぉ……」ガチガチ…

 

 

と思う。

 

悟空「緑谷の奴まだソワソワしてんなぁ」

 

悟空「アレで決勝まで行ってでぇじょうぶか…?試合前にぶっ倒れそーだ」

 

相澤<…緊張だけじゃないかもしれませんけどね

 

悟空「?」

 

相澤<いえ、こちらの話なので気にせずに

 

相澤先生の意味深なセリフに首を傾げる悟空さんだったが、ひとまずそれよりも弟子の試合の観戦に集中する事にした。

 

悟空「そか」

 

相澤<……

 

 

 

生徒や一般客が盛り上がる中、教師陣はどこか不穏そうな空気が漂っていた。

 

13号「…まずいですね。予想以上に」

 

スナイプ「盛り上がるのは大いに結構なんだがな」

 

オールマイト「……緑谷少年は緊張()()()だけまだマシかもしれんな」

 

オールマイト「周りを見てみな」

 

少しそばだてると歓声でも雄叫びでも無く、ある会話が耳に入ってきた。

 

 

 

「今度はあの硬くなる奴が相手かー楽しみ」

 

「でも近接戦がメインだろうから多分緑谷の出来レースに変わりはねーんじゃね?」

 

「俺あの暑苦しーのもいい線行ってると思うけどなぁ」

 

「無理無理。1回戦の見なかったのか?あんなレーザーバンバン撃ってる奴に勝てねぇって」

 

「それにしても次の拳藤との試合どうなるんだろうなぁ?」

 

 

試合の応援をするどころか、中には準決勝の話をする者もちらほらと居る。何故皆この試合を観戦しようとしていないのだろうか……

 

 

 

オールマイト(……緑谷少年。君は気付いていないかもしれないが)

 

オールマイト(君は午前中の障害物競走後から既に注目の的になっている)

 

オールマイト(あらゆる人に期待されているんだよ…多数の視聴者から優勝候補に選ばれる程に)

 

スナイプ「だがその分、当たった奴の言われようは皮肉なもんだ」

 

スナイプ「ここまで緑谷は予選、本選、そして1回戦にかけてあまりにも【強い】という大きな印象を与えてしまっている」

 

スナイプ「恐らく午前中にそのチーム内に居た拳藤や八百万が切島よりも注目されている起因の1つにもなっているだろう」

 

13号「決して活躍していない訳ではありません…彼は爆豪君のチームでもかなりの活躍も見せましたし、個人競技でも驚かされる場面は何度もありました」

 

13号「…しかし……少なくともあの8人の中で1番不運なのは」

 

13号「切島君、なのかもしれませんね」

 

 

 

 

 

…切島君のその時の様子は……あまり思い出せないけど、少なくとも笑っているような顔には見受けられなかった。

 

入場してきた時の顔は彼らしかぬとても固い表情であった。

 

少なくとも生徒の中で彼だけはこの空気の異変に気付いていただろう。

 

切島「……」ワァァァア…

 

 

 

(……別に今から始まった事じゃない)

 

(周りから圧力かかんのは珍しくなかった)

 

(何たって…初めてダチに個性見せた時の反応なんだと思う?)

 

 

『んー……』

 

『なんか地味っ!!!』

 

 

(満場一致で口揃えて言われたよ。結構心にグサッと来るぞ)

 

(…自分でも自覚してたからなぁ…かっこ悪いって)

 

(恥っずかしいわ)

 

 

 

 

 

 

 

切島「あー…胸糞悪ぃ」

 

緑谷「……」

 

 

『見た目は確かに変わらないかもしれないけど僕的にはかっこいいと思うけどな』

 

『プロにも十分通用する個性だしね』

 

 

切島(緑谷(お前)はああ言っていたけど…どう思ってんだ?)

 

切島(お前のその眼に俺の姿は映ってんのか?)

 

切島(轟の言葉を聞いてから少し考えちまったよ)

 

マイク「レディィ…」

 

切島(結局結論は出なかったけど…いや)

 

切島(だからこそ教えてくれよ…委員長)

 

 

切島(お前自身で答えを…)

 

 

 

マイク「START!!!」

 

ガッ!!

 

 

開始早々双方共に相手に突進を仕掛けた。腕と腕がぶつかり合い、互いに取っ組み合う。ミチミチと痛々しい音を立てながら徐々に手の力を強めていく。

 

緑谷「ぅぅぁぁあっ…!」

 

切島「ぉぉおおっ……」ミシッ…

 

マイク「おお!両者共に即突っ込んだ!」

 

マイク「最初は力比べかー!」

 

「おいおい…いくら個性的にも身体的にも攻撃型とは言え、そばかす君相手にそれは不利じゃ……」

 

「…い、いや見ろあれ!」

 

 

緑谷「くっぅ…!」ググ…

 

切島「っぁああ!!」

 

 

 

観客の予想とは裏腹に切島君の腕が僅かながらに伸び始めている。対して僕の腕は少しずつ押されてきているではないか…

 

ってか痛い。

 

切島(こちとら()()()()()()()()()()に日々弄ばれてんだよ…っ!)

 

切島(それに比べりゃ腕力比べだろーが握力比べだろーが屁でもねぇ!!)

 

然程彼が注目視されていなかった分、その光景に呆気からんとした表情で眺める客が大半だっただろう。

 

切島君本人もその1人であった。この短期間でそれ程飛躍的な身体能力向上を成し遂げたのかと驚きを隠せずにはいられなかった。

 

だがその反面、彼はただ1人ある違和感を覚えていた。

 

 

手応えが感じられないのだ。こちらが強く突き押せば突き押す程に逆に相手がかける力が弱まっていくような感じを受けた。

 

決して自分を過小評価している訳ではない。ただ余りにも容易に押し返せているのがかえって気味が悪いのである。

 

切島(…こいつ……まさか狙って!?)

 

だいたい合ってます。

 

 

 

緑谷「よっ」グラッ…

 

切島「っおお…!?」

 

 

僕は腕の力を緩めながら後ろに身体を傾ける。力み続けていた切島君は動きに釣られ前に倒れこんでくる。

 

マイク「おーっと!最初の突き合いは切島の勝…」

 

悟空「いや……ありゃ()()()退いたな?」

 

足が浮くのを見計らって掴んでいた切島君の腕をグイッと思いっきり引っ張り、手を離す。引っ張られた反動で後方に吹っ飛んでいく切島君。

 

 

切島(場外狙いの投げ飛ばしかよ…)

 

切島「上等じゃねぇか!」ズザザ…

 

ステージ外に吹っ飛ばされそうになる切島君だったが地面に急降下し、これを難なく回避。

 

直様こちらに飛びかかり攻撃を仕掛ける。

 

 

 

ガガガ…!!

 

切島「っらぁああ!!」ガガッ!

 

緑谷「…」ガッ…

 

掌拳、裏拳…様々な打撃を繰り出していく。()()()()()()()切島君の猛攻を何とか防御するので精一杯だった、

 

マイク「切島容赦無く殴る殴る殴る!!」

 

マイク「打撃のオンパレードだ!」

 

 

悟空「……」ガガガ…

 

悟空「なんか…緑谷の奴」

 

悟空「1回戦の時より動きのキレが無ぇな」

 

悟空「表情も生き生きしてねぇー…ってかなんちゅーか」

 

心配そうな顔で試合を眺める悟空さん。彼は密かに先週のようにまたスランプにはまってしまっているのではないかと危惧していたのだ。

 

それは相澤先生も同じだった。

 

相澤(…緑谷は他の奴らから避けられているのを自身のせいだと引け目を感じている)

 

相澤(要は解釈の違いなんだなこれが)

 

相澤(あいつは仲間(クラスメイト)を信じなかった事に嫌悪していると思い込んでいるんだろう)

 

相澤(入学前から成績は飛び抜け、何より危なっかしい行動を何度も起こしておきながら何度もその窮地を覆していった)

 

相澤(そんなに目立てば嫉妬する奴の1、2人は出る)

 

相澤(無意識の内に自分の心の中であの場に居た生徒をアテにする気も無いと勘違いしていたと悟ったんだ)

 

相澤(勿論完全に違うといえば話が変わるが…あいつらは緑谷(お前)を嫌悪していたんじゃないんだ)

 

相澤(寧ろ尊敬していたんだ。お前の強さと心意義に)

 

相澤(だからこそあの時USJで何の役にも立てなかった事に奴らが劣等感を感じていたんだ)

 

相澤(【緑谷に頼ってはいけない】今度は【緑谷を救ける側にならなければならない】」

 

相澤(緑谷との接触を避けていたのもお前に少しでも手を焼かせる訳にはいかなかったから…)

 

 

相澤「ま…そのほんのすれ違いがこの結果を生んだけどな」

 

相澤「これ位の難場…収められなきゃ委員長は務まらねえぞ?緑谷……」

 

 

 

 

 

『だったら最後まで勝ち上がって俺達に見せてくれよ』

 

『あの時……お前の判断は全て正しかったって証明をよ』

 

『俺の分も…頑張ってくれよ、緑谷』

 

 

尾白君にああは言われたけど…実際はどうなんだ?あれが本当に1番適切な判断だったのか、今でも僕には分からない。

 

やろうと思えば他の皆の個性を使えばもう少しマシな戦局になったんじゃないか?

 

それを分かっていて皆を遠ざけたのは故意的でなくとも自分が心のどこかで彼らを見限っていたからじゃないのか?

 

 

それに…ただこの体育祭を優勝しただけで現状が変わるのか?

 

やはり、歴然の差があったという事が明らかになるだけで寧ろ皆との溝が深くなってしまうのではなかろうか?

 

果たして右側(半冷)のみの轟君にただ勝つだけで彼を救ける事は出来るのか?

 

……否、出来る訳ない。

 

 

考えれば考える程ドツボにはまってしまう。勝ってはいけないのならば負ければいいのか?そんな馬鹿な事があるか。では如何にして勝つかが問題なのか?それとも如何にして負けるのが問題なのか?

 

様々な感情が頭の中で入り混じり、混沌とした状況に陥る。

 

 

 

切島「なんで攻めねぇんだよおい!!」ガガガ…

 

緑谷「…!」

 

切島「麗日ん時はもっと打ってただろ!!ぁあ!?」

 

切島「所詮俺は眼中に無いってのか!?緑谷!!」ブンッ

 

 

 

その一言でようやく目が覚めた。そうだ…今は試合中なんだ。他人との勝負に余計な感情を放り込むのは厳禁だ。

 

今は切島君に…

 

 

緑谷「集っ中……!!!」スカッ…

 

切島「!?外れっ……」

 

ドッッ!!

 

切島君の攻撃が空振りした隙に彼の胸部に強烈な右ストレートを食らわせる。ガードしていたならまだしも諸に攻撃を受けてしまった…凄まじい衝撃に為すすべ無く彼は吹っ飛んでしまう。

 

切島「…っぉ…!」

 

マイク「緑谷の渾身の一撃炸裂!これは決まったか!?」

 

悟空「おっ…飛ぶなぁ!」

 

 

切島(滅茶いってぇ…肝が冷える)

 

切島(いいパンチじゃねーか……つーかこんな硬くしても吹っ飛ぶってどんな威力だよ)

 

切島(凄ぇな…やっぱり凄いよ緑谷)

 

切島(プロヒーロー(相澤先生)をボコボコにした敵にもビビらねぇで戦い挑めるんだもんな…)

 

切島(勇敢っていうか…馬鹿げてるっていうか……)

 

 

 

切島(でもこんな晴れ舞台用意してくれたんだからこそ……)

 

切島(こんな余興程度で終わってたまるかよ!!)ズザッ!

 

ステージの端から落ちそうになるのをつま先で何とか踏み止まった。外見的にはほぼダメージは無いが、心臓を強く圧されてしまった為咳き込んでしまう。

 

切島「ごほっ…はっ……」

 

切島(あっぶねぇ…硬化発動してなけりゃ1発でおじゃんだぜ)

 

 

場外を逃れたとは言え、さっきとは違いステージの端に居るんだ。も少し押せば勝てる。

 

 

そう思って僕は彼に接近し、追撃を狙う。

 

緑谷「はぁっ!!」

 

切島「ほ…っと!」スカッ

 

 

だが再度打った右ストレートがしゃがんであっさりと避けられてしまう。身体がガラ空きになった所を切島君はアッパーカットでカウンターを繰り出す。

 

ガッ!!

 

緑谷「っが…!」

 

切島「へへ」

 

緑谷「にゃろっ…」

 

お返しに今度は左腕で正拳突きを彼の顔面にお見舞いした。

 

 

 

 

ガッッ!!

 

緑谷「……っ……」

 

切島「効かねぇよ」

 

 

だがパンチをまともに食らった筈の彼は一切それに動じてない。それどころか【待ってました】とでも言いたいかのように微笑ましい顔をしていた。

 

そう。ダメージを与えるどころか逆にパンチを打った自分の左腕を痛めてしまっただけだった。

 

パンチの衝撃の反動で痺れてしまった左腕をもう一方の腕で支える。

 

緑谷「いっでぇぇ!?」プルプル…

 

 

セメントス「へぇ…頑丈な岩石すら物ともせず粉々にするあの鉄腕を」

 

セメントス「今し方彼の拳打で吹き飛ばされた筈ですが」

 

ミッドナイト「不意に攻撃を放たれたからでしょう。防御に徹す(その気にな)れば鉄以上の硬度を形成できるって訳ね」

 

ミッドナイト「まぁ…そんな鉄の塊に思い切り攻撃入れて痺れる程度で済む緑谷君(あっち)の身体も異常だけど」

 

 

ズキズキと腕を痛めてる間にも切島君は襲いかかる。無傷の右腕で空かさずガードしようと顔の前に構えるが…

 

 

ドガッッ!!

 

緑谷「…っ強……!」ググッ…

 

切島「吹き飛っ」

 

 

 

切島「べっ!!!」バギッ!!

 

緑谷「ぅあ…!」

 

 

 

ガードを崩して顔面に猛烈な右ストレートを決める。あまりにもその衝撃は強く、彼の宣言通り後方へと吹き飛んでしまう。さっきの僕の攻撃の再現じゃねぇか。

 

右手を無理やり押し退けてそれ毎顔に打ち込みやがった!?またガード貫通する奴現れてきたよクッソ……

 

さっきまで受け流していた攻撃より2撃とも()()が比べもんにならない…硬度をかなり高めてきたな?

 

 

だが1つ誤算を生んでしまったな、切島君

 

 

地面に倒れ込むも、つい口から垂れた唾液を手の甲で拭き取りながら立ち上がる。

 

切島君がその間に僕との距離を詰めていく。ここまでは先の僕の戦闘シーンとほぼ一致してる。

 

だがそれと今の状況で決定的な違いが1つ存在する!!

 

 

緑谷「か…め…は…めぇぇ!!」

 

切島「!?」

 

緑谷「波ぁあああっ!!」

 

ボオオッ!!

 

マイク「緑谷のビームが近距離で切島に直撃ぃーー!痛そう!」

 

 

君は接近戦しか行えない以上相手に近づく必要がある。だが僕は君の間合いの外からでも攻撃が可能なんだよ。

 

近づいてくる切島君に容赦無くかめはめ波を撃ち込む。直撃した影響で発生した煙のせいで姿は確認できないがモロに食らったから無傷では済んでいな

切島「効かねぇって」

 

緑谷「!?」

 

 

切島「言ってんだろ!!」ズドッッ!

 

緑谷「っぁは…!?」

 

 

切島君の拳打が僕の腹部に深く突き刺さる。みぞおちに入った…痛ぇぇぇぇ……

 

思わず唾液を吹き出してしまった。

 

 

芦戸「ええー…あんなん直撃したのにノーダメなの!?」

 

常闇「騎馬戦の時の爆発…恐らく前騎馬の奴の位置なら騎手(爆豪)の爆発の巻き添えを食らう可能性は十分にあり得た」

 

常闇「それを食らってビクともしない硬さだぞ…?却ってダメージを受ける方がおかしい」

 

オールマイト「身体を硬くする…一言で表してもパッとせず強力な個性とは言い難いが」

 

オールマイト「鉄以上の硬度をほこるその攻撃力と防御力は彼の強みと言っていいだろう」

 

 

彼の攻撃より態勢が崩れ、無防備な状態となってしまう。ここにハマれば後は簡単、滅多打ちのお時間だ。

 

切島「ぅおらあああああっ!!」ガガガッッ…!

 

緑谷「くぅ゛っ…」

 

負傷した腹部を始め腕部、頭部、胸部など様々な身体の箇所を的確に攻撃を入れていく。何とかガードで対処しようとするが構えた部分にダメージが蓄積されるので結局意味がない。

 

ただただ殴られ、殴られ、殴られ続けるだけだ。倒れるまで…

 

 

 

切島(俺は特別学力がいい訳じゃねー)

 

切島(前の学校の奴らだってたまたま進路が違っただけで俺より賢い奴らや強い奴らだっていくらでも居た…!)

 

切島(ここに来ても同じだ!肝心な時に役に立てねぇし、活躍も出来ねえ)

 

切島(今の俺にとって誇れる物っつったら雄英高校に入学した事位だよ……)

 

 

 

切島(そんな半端者でいい訳ねぇだろ!!)

 

切島(確かに俺は頭も悪りぃし個性だってとりわけ派手な訳でもねぇ!)

 

切島(それでも……)

 

切島(飯田や轟みてぇに先代がスゲェヒーローじゃなくたって!)

 

切島(緑谷や爆豪みてぇに能力に恵まれてなくたって!!)

 

 

切島(1番になる!!地味でも努力して強くなって1番になりゃ、嫌でも皆俺の実力を認める…俺自身だって……)

 

切島(準々決勝だか準決勝だか決勝なんてもう関係ねぇ!!ここが俺の正念場!!)

 

切島(緑谷(お前)に勝って初めて俺は輝けんだよっ!!!)

 

切島「ぁああっっ!!!」ガガガ!!

 

緑谷「……っ!」

 

 

「一方的な戦いだ…!」

 

「嘘だろ…あいつあんな強かったのか!?」

 

「全然歯ァ立ってねぇじゃんかー!!」

 

試合の不穏な風向きに観客はどよめき始める。切島君に注目していなかった分、反動が大きいのだ。これ程までに強かったのか!?と…

 

切島君の猛ラッシュが開始して3分が経過する。もう身体を動かす気力さえ失っていた。抵抗する事なくひたすら攻撃を受け続けるだけであった。

 

マイク「切島の強連打!!流石の緑谷も最早お手上げかぁぁぁ!?」

 

たった1分弱で戦況が大きくひっくり返ったこの状況に僕の勝利への期待が一気に惨敗への疑惧へと変貌を遂げてしまう。A組を始め、多数の観客が顔に不安を募らせていた。

 

 

 

 

 

 

だがそんな中ただ1人この試合を笑顔で眺望する者が居た。

 

 

言うまでも無いだろ?勿論この人である。

 

 

 

 

 

相澤<……孫さん?愛弟子のピンチでしょう?

 

相澤<何故そんな笑って(顔して)られるんです?

 

悟空「……さぁ?なんでだろな」ニッ

 

 

緑谷「くっ……!」ドドドッ!

 

 

悟空(あいつはどんなピンチになっても最後の最後まで足掻き続ける)

 

悟空(最初会った時はいかにも()()()って感じの奴だったけどよ)

 

悟空(この1年間どんなつれぇ修行にもへこたれず緑谷はオラの特訓についてきた)

 

悟空(外から見りゃただの弱虫かもしれねぇが…

芯は太くて固ぇ強い奴さ)

 

悟空(昔の悟飯とそっくりだな。まぁオラとしちゃ芯の周りももっと強くさせてぇけど)

 

 

 

悟空(今だってそうだ。一見見りゃ絶対無理だって割り切るような所でだってあいつはしつこく考え続ける)

 

悟空(考えて、考えて…どうやったら自分が勝つか必死こいて探してんだよ)

 

 

悟空(決して倒れねぇ精神と身体が緑谷を勝利へ導いてくれんだ!)

 

 

 

ここまで追い詰められたのなら界王拳を使うべき…そう思った。だが考えてもみろ、この後1戦挟んで勝ち進むと仮定すれば2戦連続で試合が待っている。

 

できれば体力を温存しておきたい…まぁそんな余裕与えてくれる訳ないけども………

 

 

……いや、待て…

 

あったぞ、そんな余裕!?

 

 

 

 

ドッ!!

 

緑谷「が…!?」

 

顎に強烈な右アッパーが繰り出され、その衝撃で身体が宙に浮いてしまう。

 

ヤベェ…意識飛びそ……

 

切島君は右拳を固く握り締め、次の攻撃を備えていた。

 

ヤベェ…トドメ刺されるぞコレ……

 

 

 

ベスト8敗退…かぁ……それでも10本の指に入るから満足っちゃ満足か?

 

自分の身の丈にあった戦績

 

 

 

『皆…他の科の人達が()()でトップを狙ってくる』

 

『だから…僕も遅れをとる訳には行かない!!』

 

 

 

『僕も()()…で獲りに行く!!!』

 

 

 

…駄目だろ…そうだ。()()ベスト8じゃないか…

 

この先に僕の進出を待ち構えている人が何人、何十人といるんだ…!

 

 

それなのに…それなのに……こんな半端な結果で

 

 

 

緑谷「……ぉ…」

 

切島「?」

 

緑谷「っわれるかぁぁっ!!」ブンッ

 

ガッッ!!

 

 

 

 

マイク「な…ナンチューコッタイ」

 

マイク「切島の右ストレートを緑谷…まさかの頭突きで応戦ーー!?」

 

ワァァァア…

 

 

 

不意打ちを喰らい、咄嗟に切島君は2、3歩後退する。

 

切島君の正拳に自分の頭部を思い切りぶつけたのだ。衝撃が脳に響き、頭が悲鳴をあげている…下手したら気失うぞコレ。

 

まぁ…その代わり()()()()みたいだけどな……

 

 

 

 

瀬呂「うへー…ヘッドアタックでまさかのループ抜けか」

 

瀬呂「こりゃ硬化発動してる切島よりも緑谷の頭の方が先にイカれちまいそうだ」

 

蛙吹「緑谷ちゃんの頭から血が…」<ビロビロと

 

砂藤「だがこれで少し距離が離れただけで何も状況は……」

 

砂藤「………?」

 

 

 

思わぬファインプレーに驚きながらも、大方攻撃を受けた方のダメージは皆無であろう、そう見積もり切島君の方に目を向ける。

 

 

だが目の前に映っていたのはこれまた予想とは裏腹の光景だった。

 

 

 

切島「はぁ……はぁ…」

 

切島「っ…!」ズキッ

 

 

傷1つ無かった筈の彼の額からはポタポタと血が垂れており、頭痛を必死に堪えようと左手で頭部をを押さえている。その苦い顔からは今の頭突きがどれ程の威力かが見受けられよう。

 

葉隠「切島君…」

 

上鳴「っんだ…?切島の奴極めたら緑谷のも効かなかったんじゃねえの?」

 

上鳴「もしや緑谷め……この戦いの中で相当なパワーアップを……」

 

「んな訳ねぇだろアホ面が」

 

上鳴「AHODURA!?」クルッ

 

お?このケンカ腰の荒々しい声は……

 

 

 

爆豪「テメェだよビリビリ野郎」

 

麗日「ちょ…爆豪君言いすぎ……」

 

 

かっちゃん!かっちゃんじゃないか…本戦前からずっと寝っぱなしだったからいつ復帰するか冷や冷やしてたよ…

 

さりげなく麗日さんも帰ってきた。何かやたら遅かったような……

 

アホ面と称されかなりショックを受ける上鳴君だったがもうそんな事言わせないぞ…何せ彼はベスト4内に入るまでの実力者なのだから。

 

 

上鳴「へっ!何を偉そーに上から目線で言ってんだよおめーは!」

 

上鳴「お前本戦にも出れなかったくせに準決勝進出者に文句入れられんのか?お?お?おー?」

 

爆豪「誰がいつどこでどのようにしてお前が俺より強いっつったのか明確に答えもらおうかぁぁアンッ!?」

 

「…………………」

 

上鳴「………ぃぇ…その…」

 

 

敗けても尚ブレないかっちゃんの覇気と罵りように最早返す言葉が無くなりしょぼくれてしまう。

 

本人自身も本戦未進出(その事)については色々引け目を感じてるから触れない方が身の為だぞ上鳴君…

 

爆豪「ありゃデクがパワーアップしたんじゃねぇ。むしろ逆だ」

 

障子「…切島の防御力がダウンしてると言うのか?何故そんな事を……」

 

爆豪「黙って見てろ。習うより死ね」

 

障子<シネ……

 

 

 

緑谷「…切島君……」

 

切島「っ…んだよ……緑谷!」

 

緑谷「硬化(それ)…もしかしてかなり無理してない?」

 

切島「……!!」

 

切島「そんな訳っ!」

 

挑発され、今度こそケリをつけるべく右腕を構えながら切島君がこちらへと近づいてくる。

 

しかし今の攻撃でまた距離が出来た。ここは君の射程距離圏外だ!!

 

もう…君の攻撃は1発も受ける気は無い!

 

 

緑谷「君の技…借りるぞ峰田君」

 

切島「!?」

 

 

 

 

緑谷「だだだだだだっっ!!!」ボボボ…

 

切島「ぐぅおぁっ…!?」

 

 

右腕と左腕を交互に突き出し、両手から無数の気弾を撃ちまくる。さしずめ人間版機関銃と言ったところか。USJの時峰田君がもぎもぎを乱発していたのを思い出して閃いた。

 

気弾が放たれた途端、直様切島君は腕と腕をクロスさせ防御態勢に入る。流石は硬化…酷使しまってもその防御力は健在か!

 

峰田「でもやっぱおかしいぜ」

 

峰田「さっきまで攻撃食いながら平然と緑谷に攻めに行ってたのによ……」

 

峰田「いつの間にか防御に徹しちまってるよ」

 

爆豪「……」

 

 

 

緑谷「ぁあああっ!!」ボボボ…!

 

切島「ぅぉ…!」ガチガチ…

 

 

まだ硬度上げるか…体力化物かよ。

 

1発1発の威力はどーでもいい!とにかく連射し続けろ!!さすれば気弾(これ)も……

 

 

 

切島「っぁ゛からそいつは効かねぇって!!」ボォッ!!

 

切島(……おいおい)

 

 

切島「マジかよ…」ヒリヒリ…

 

 

 

必ず彼の芯に届き得る!!!

 

 

 

 

 

緑谷「うおおおっ!!」ボボボッ!!

 

切島「ぉっ……ぁあああ!?」

 

 

常闇「ガードが崩れた!?」

 

瀬呂「苦しんでる…モロ全部食らって今になって効き始めたのか?」

 

爆豪「あの野郎の個性は確か硬化だったな」

 

爆豪「試合中ずっと全身ガチガチに気張り続けたらそりゃどっかで綻ぶに決まってら」

 

爆豪「だから速攻で序盤にケリつけようとしてたのは懸命だったな」

 

 

 

 

 

無限に降り続ける気弾の雨がようやく収まった。高圧電流を流されたかのように激しく痺れる程彼の全身は傷ついていた。

 

気弾一撃一撃の威力はそれこそ小さかったものの当たった際に生じた小規模の爆発により僅かの間視界を封じられる。

 

切島(こ、こんにゃろ…耐え切ってや

 

ダダッ…

 

切島「…!」

 

 

 

緑谷「ジャン拳……」

 

切島(うっそだろ!?)

 

 

その一瞬…気を緩めた瞬間が僕にとって最大の好機(チャンス)だ!!!

 

 

 

 

爆豪「速攻だからって無闇に殴りゃ勝ちって訳じゃねぇだろ」

 

爆豪「見通し甘ぇよバーカ」

 

 

 

 

緑谷「グゥーッッ!!」ガッッ!!

 

切島「ぅおぁっ!?」

 

 

 

 

切島君の顔面に思い切り右拳をめり込ませる。感触はさっきよりかなり柔らかい。どうやら硬度を上げるのが間に合わなかったみたいだな…

 

 

首が右方へ回り、彼の身体が後ろへガクッと傾く。

 

マイク「FOOOO!?緑谷ダメ押しの超ストレート!これは決まりかーー!?」

 

切島「……っ…」

 

「す…凄かったな。あの硬ぇ奴」

 

「緑谷に血ィ流させやがった。1回戦時よか確実にダメージ与えとる!」

 

「やー期待を裏切るなぁ…よぅ頑張った!」

 

切島「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切島(ぁ…ぃてぇ……死ぬ程痛ぇ)

 

切島(結局こうなっちまったや……まぁ当然っちゃ当然だわな)

 

切島(客も驚かしてやれたし、麗日よりも善戦したっぽいし…これ位が上等かなぁ俺は)

 

切島(……でも…俺の時は緑谷)

 

切島(カイオウケン使おうとすらしてなかったな………)

 

 

 

 

 

 

 

(俺の1番の憧れはオールマイト……ではない)

 

(オールマイトやその世代よりも更に前に活躍していた1人のヒーローだ)

 

(決して個性は戦闘向けとも救助向けとも言えないモノだったが…)

 

(そんな()()()()()()ヒーローにガキの頃の俺はドップリとハマっていった)

 

 

 

 

『うぉぉぉ!カッキー〜!(クリムゾン)(ライ)(オッ)()ー!!』

 

『ジローはそれ本当好きだな』

 

『正悪平等パンチねぇ…なんというか暑苦しーつっかアレだよな』

 

『今時ねーよなぁ』ボソッ

 

『ぁぁ…なんかダセェし』ボソッ

 

 

(最初見た時は正直俺もそう思ったよ)

 

(つーか怖かった)

 

(睨み顔が通常だったし格好も荒々しくてヒーローてか暴走族に近かった)

 

 

 

 

 

(でもしばらくして気づいたよ)

 

(あぁ…これが本当に()()()()()()()()()なんだなって)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切島(……何やってんだ俺は…)

 

切島(自分で言ったじゃねぇか…緑谷(こいつ)に目にもの見せてやるって!)

 

切島(俺にも…お前を助けられる位の力があるって!)

 

切島(これで終わり…違う!ここからだろ!)

 

切島(ここで変わらなきゃ俺は……)

 

 

 

 

 

切島(漢じゃねえ!!)ガッ!!

 

 

 

倒れそうになるのを踵に全体重を乗せ、それを阻止する切島君。何とか態勢の立て直しに成功した。

 

 

緑谷(っぅおおっ!?)

 

緑谷(耐えたよ!?)

 

悟空「やべえ!?間合いどころかあれじゃ至近距離……!」

 

 

 

 

 

ズドッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

拳は身体の内深くまで突き刺さる。

 

今放ったのはただの正拳突き。どこからどう見てもその筈だった。

 

だが今までの拳打とは少々本質が異なる…いわば亜種なるものである。

 

 

 

その威力、まさに矢の如し…

 

 

 

緑谷「っ……」

 

緑谷「ぉばっ!?」ドバッ

 

麗日「デッ!?」

 

葉隠「吐血した!?」

 

爆豪「…野郎…」

 

 

緑谷(なっ……さっきとは…明らかに……っ)

 

 

切島(なぁ…おい……)

 

切島(お前にはちゃんと届いたか…俺の雄姿)

 

切島(緑谷よ………!!)

 

 

 

 

切島(観客(テメェら)全員!俺の姿!)

 

切島(目に焼き付けろ!!そして轟け!!)

 

切島(その名を心に刻み込め!!!)

 

 

 

 

 

切島「俺ァ!ヒーロー科1年A組8番!!切島鋭児郎だぁっ!!!」

 

ズドドドド……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





久方ぶりなのです…須井化なのです。結局あれから1週間経ってしもうた…申し訳ないでごわす。

まぁ今回は2ch版とかなり違っていますからねぇ…しゃーなろー!後番外編やってたし。

活動報告?何の話をしてるのだね君は(惚け)

切島殿も今回かなりの大出世ですね。いやそもそも出世させる為のUSJ編だったと言っても過言では無かったのですが。

ん?最後に出したのは一体何なのーだって?ホラ、アレだよアレ


フタエノキワミ、アッー!(´゚д゚`#)


的な…

本当は試合決着までやりたかったんですけどかなり字数食いそうだったのでやめました。多分切島サイド終わるまで3000字は使うかも……技の解説あるし。

(ただしぶっちゃけこんなに取り上げるつもりは無かったよ1週間前は……この技大分後に登場させる予定だったからなぁ)



次回はVS切島決着と準決勝第1試合…

果たして切島は主人公補正をぶち壊せるのか…やべぇよ、やべぇよ。

轟君に至ってはTAS版上鳴だからなぁ…

<ニャメロン!勝てる訳が無い!あいつは伝説の超アクセ○フォームなんだどー!

<トライ○ル!

それ555ちゃう…振り切る方や。
(相変わらずライ○ーネタを盛り込む水甜瓜氏…まぁヒーロー絡みのネタだから入れてるってのもあるのですが)

一体ベスト4最後の選手として選ばれるのは…?そして3回戦第1試合にて決勝に駒を進めるのは…?

お楽しみに!



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