悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」   作:須井化

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前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

2回戦第2試合、レシプロとイナズマが激しく火花を散らす。奮闘するも圧倒的な速さには敵わず飯田少年は敗北をを喫してしまう。

そんな時、追い討ちをかけるかのように彼に衝撃の事実が言い渡される。


更に向こうへ!PlusUltra!!


第32話

東京都保須市…ある街。

 

そこでは敵出現を知らせる放送が街中に流れていた。ウ〜と強くサイレンが唸り、その周辺の区域にまでその警報が鳴り響く。

 

市民は皆、我を失い彼方此方に逃げ惑う。

 

 

 

 

「ヒーロー殺しが現れた!!」

 

 

そう口にしながら…

 

 

 

 

 

 

 

ヒーロー殺し、通称【ステイン】

 

本名は赤黒血染。

 

期待の超新星オールマイトの活躍に心打たれた彼はヒーローを志し、1度は私立のヒーロー科高校に進学するも…

 

【教育体制から見えるヒーロー観の根本的腐敗】に失望。結局半年も経たずに退学してしまう。

 

10代終盤まで【英雄回帰】を掲げ、幾度となく政府や街の人々に訴えかけ続けていたが賛同する者は数えられる程の人数しか増えなかった。

 

 

最早言葉に力など無い、そう断念しそれから10年に渡り独学で殺人術を研究・鍛錬。そして現在に至る。

 

ある雑誌なんかでは編集者が独自に解釈した彼の主張も載せられていた。

 

 

「ヒーローとは見返りを求めてはならない」

 

「自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない」

 

「現代のヒーローは英雄を騙るニセモノ。粛清を繰り返す事で世間にその事を気付かせる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の一角にある何の変哲も無い建造物…

 

その建物の屋上に設置されている貯水タンクの上でステインは1人、警察が事件現場(さっきの路地裏)を調査しているのを眺めていた。

 

 

ステイン「お前らは何も気付けやしない」

 

ステイン「この街が全て自分達の手で(けが)れている事……ハァ…」

 

ステイン「この社会が偽善と秩序で覆われた歪な物だという事…」

 

ステイン「英雄(ヒーロー)と称する者等が大きな過ちを起こしている事…ハァ」

 

ステイン「俺が気付かせてやる……」

 

ステイン「()()()()()()()()()()()()()()

 

 

じきに駆けつけてきた救急車にインゲニウムが運びこまれると負傷した右頬をさすりながら彼はその光景に呆れていた。

 

ステイン(チッ…悪運の良い奴め)

 

ステイン(予想以上に戦いが長引いた物だから援護に気を取られ、奴の生死の確認を取り損ねた)

 

ステイン(あの分だとまだ生きてる可能性もあるが…まぁ無事には済まない筈…)

 

 

 

 

 

 

ビュオオッ…

 

ステイン「…か」

 

 

忽然と先程より風力が強く、真反対の方向に吹き始める。

 

何かを予期させる、あるいは自分にその異変を伝えてくれたのであろうか。

 

あまりにも不自然な環境の変化に違和感を覚えたステインは途端に刀を後ろに構える。

 

 

 

 

すると背後から何者かが声を発してくる。

 

 

 

 

「返り血で紅く染まった布マスク。身体中に惜しみなく拵えた刃物の数々…」

 

「成る程。情報通りの形相だ」

 

ステイン「…何者だ貴様」

 

ステイン「返答によっては対応も変わってくるが…ハァ…」

 

 

 

黒霧「おっとと…落ち着いてください」

 

黒霧「何も私は貴方を殺しに来た訳じゃありません…そうですね。しいて言えば」

 

黒霧「貴方と同類の者でしょうか」

 

ステイン「同類?」

 

黒霧「敵連合…と言えば想像がつくでしょう」

 

ステイン「……」

 

黒霧「貴方のような悪名高い方を探していました」

 

黒霧「少々お時間よろしいでしょうか?」

 

ステインは数秒魔を空けて、刀を背中の鞘に納めながら…

 

ステイン「ハァ……好きにしろ…」

 

とだけ答える。

 

黒霧は微笑みながらワープゲートを開き、ステインを覆って敵連合アジトに2人で戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【雄英高校:体育祭会場】

 

 

 

準々決勝もとうとう残り2試合を残すのみとなった。2回戦第3試合は八百万さんvs拳藤さん。遂にこの女子2人の戦いの幕が切って落とされようとしていた…

 

マイク「よぉぉおし!第3試合始めるぜ!!」

 

マイク「ガールandガールの入場だぁあっ!」ワァァァア…

 

最初にステージに上がってきたのは拳藤さんだ。観客席に手を振りながらの登場で会場中から大きな歓呼の声が上げられる。

 

マイク「まずやってきたのはヒーロー科拳藤一佳!!」

 

マイク「華麗さじゃ誰にも劣らねぇ!今人気急上昇中のこの娘!」

 

マイク「俺結構好み!!」ワァァァア…

 

相澤<ロリコンが…

 

拳藤「……お。居た居た」

 

 

 

 

 

一方八百万さんはというと…

 

 

八百万「……ぅぅ…」ワァァァア…

 

中々出るタイミングが掴めなかった。まるで自分が登場するのが場の空気に水を差すように感じてしまいゲートの前でたじろいでいる。

 

八百万(何ですの…あの盛り上がりよう!)

 

八百万(アイドルでもありませんのにあんなちやほやされて…)

 

八百万(しかもまた緑谷さん探してますわね!?結局目当ては彼ですか!)

 

ギリッと歯をくいしばりながら彼女は拳藤さんを強く睨みつけた。その目からは熱く燃えたぎる闘争心がハッキリと見受けられる。

 

八百万「あの小娘…っ!」ゴゴゴ…

 

 

…とまぁそんな彼女の肩に指を突っつく人が1名…

 

緑谷「お、おーい…」トントン…

 

八百万「…」クルッ

 

緑谷「皆待ってるよ?もう」

 

 

 

 

後ろを振り向き、僕の姿を見た矢先顔を真っ赤にしてあたふたし始める。僕に会う度いつもこうなんだよなぁ…なんでだろ。

 

緑谷「ど、どしたの?八百万さん」

 

八百万「みっみみみ緑谷さん!?何故ここに!?」

 

八百万「貴方の試合はこの後の筈ですわよね!?」

 

緑谷「いや…念の為早く…というか何というか」

 

 

 

緑谷「折角だからさ、君の…間近で見たかったし」

 

八百万「…」

 

八百万「恐縮です」

 

緑谷「?」

 

 

 

八百万「そこまで買い被られては…私もそれに応えなければなりませんわね」

 

面映い表情で八百万さんはそう返してくれた。

 

とても…艶やかな…可愛らしい笑顔で。

 

緑谷「…そっか」

 

八百万「待っていてください」

 

八百万「貴方のいる場所まで…すぐ追いつきますから」

 

楚々とした顔をこちらに向けながら彼女は対戦相手(拳藤さん)が待つステージへ歩いていった。

 

緑谷「頑張ってね」

 

緑谷「…」フリフリ…

 

舞台に向かっていく八百万を手を小さく左右に振りながら僕は見送った。

 

さっきはああ言ったけど本心は少し違っていたと思う。彼女も僕と同じように入場口前で何分もあたふたしてたから、少し声をかけてあげたかったんだ。

 

麗日さんの時には結局何も言えなかったしな…せめて……

 

 

 

『勝てばそれが正しい…って理念は』

 

『結局、敵達のやっているそれらと何ら変わりの無い事じゃないのか…?』

 

 

 

緑谷(……せめて……)

 

まぁ悟空さん程の安心感が無いってのは否めないけどさ…

 

それにしても1回戦の時は平然としてたのになんで八百万さん、今になって急にどぎまぎし始めたんだ?

 

 

 

 

 

その理由は明白だった。

 

 

彼女の向かう先に居た少女がこちらに手を振ってくる。

 

拳藤さん…貴方僕がここにいる事いつ知ったんだよ

 

拳藤「…」ニコッ

 

緑谷「っの…」

 

こりゃ確かに八百万さんにとってはある意味1番不吉な相手と当たったか…

 

 

 

 

 

 

マイク「おおぉっ!ようやく来たぞ我らが万物チート!」

 

マイク「ヒーロー科A組八百万百ここに見参!!」

 

拳藤「おー…来た来た」

 

大勢の観客に見守られる中八百万さんが彼らの前に姿を現した。

 

依然として彼女は凛とした表情て拳藤さんを見つめる。

 

 

だが対して拳藤さんは顔色一つ変えない。それどころか逆に心待ちにしていたように微笑んでいる。

 

八百万「不思議を通り越して不気味ですわ…」

 

八百万「そんな遊び感覚で倒せると私を倒せると思わなくてよ」

 

拳藤「遊びって…別に蔑んでいる訳じゃないって!」

 

茶化すように彼女はけらけらと笑い出す。とてもこれから試合を始めるような雰囲気ではない。

 

拳藤「寧ろ圧巻の実力だったけどね〜。あたしにとっては」

 

拳藤「是非とも()()()とは一度手合わせ願いたかったからさ。嬉しかったんだよ」

 

八百万「お前…ら?」

 

 

あぁっと…目くばせしてこちらにアイコンタクト取っていたので多分僕に向けてだと思います…はい。

 

隙あらば宣戦布告していくスタイルかよ。妙に絡んでくるなぁ…あの娘。

 

 

マイク「えと…そろそろ初めてもいいかな?」

 

八百万 拳藤「「あ、はい。どうぞ」」

 

マイク「はい…」

 

マイク「それじゃ第3試合始めるぜ!レディィ…」

 

拳藤「あっと…そそ、言い忘れてた事あったわ」

 

八百万「言い忘れ…?」

 

拳藤「さっきはあたしに勝てとか自分から言ったけどさ」

 

 

 

 

拳藤「あたしも負ける気全っ然無いんだわ」

 

マイク「START!!」

 

途端に拳藤さんのシビアな表情に変わり駆け出した。ようやく本領発揮し始めたのか…1回戦とは大分動きの速さが違う。

 

常闇君との試合で場外は免れたものの、結局盲点はその時と変わらない。物の創造に時間がかかるからその間にケリを着けるってか…とすると……

 

 

拳藤「はっ!!」

 

八百万さんに向かって手刀を仕掛ける…

 

 

筈が攻撃が当たらない。正確には当たりはしたが……

 

 

 

 

スカッ

 

拳藤「うっ…すり抜けた!?」クルッ

 

緑谷「おお!アレは」

 

悟空「残像拳ちゃんと使えてんなぁ!八百万」

 

拳藤さんは振り返って背後に彼女が回避したのを確認する。今の僅か2、3秒で数十mは距離を置けたようだ。

 

拳藤「っわ…速い速い」

 

八百万「はぁ…はぁ…」

 

体を鍛えていた期間も合わせれば半年以上だ…それ程の時間を費やしてようやく身につけた技術をこの短期間で…

 

やっぱり八百万さんは凄いな。

 

 

だが残像拳はいわば異常なまでの脚力を得て初めて成す技だ。少し疲れが見えるあたりまだ完全にこなしている訳でも無さそうだ…そもそも格闘戦を想定した戦闘スタイルじゃないしな彼女。

 

さぁ、次は八百万さんの番だ。

 

体操着をめくり、腹部から何かを創造する………

 

 

えーと…それって……

 

 

 

八百万「…」ガシャ…

 

拳藤「へ?」

 

マイク「OH!や、八百万選手、何を取り出したかと思えば…」

 

マイク「マ、ママママ

相澤<機関銃(マシンガン)だな

 

悟空「あー見た事あっぞ。ガキの頃よく撃たれてたなアレ!」

 

マイク 相澤「「…」」

 

 

突如として会場の空気が一気に冷めてしまう。当然だ。生身の人間に銃て…敵うわけないでしょ。

 

八百万「安心なさい。玩具のモノよりも()()威力を強めただけですわ」

 

八百万「死ぬ事はありません」

 

でもそれってもし銃弾受けたら…

 

 

八百万「タダじゃ済みませんわよ!!」ズドドド…!

 

やっぱりー!?

 

拳藤「やっぱりー!?」

 

反応が完全一致したぞおい。

 

 

トリガーを強く引き、彼女は銃を撃ち始める。鷹のように鋭い目つきで拳藤さんを捉えるその姿はさしずめ猛獣を狩る狙撃手と言ったところか。

 

え?ヒーロー云々の前にこれ銃刀法違反とかしているんじゃないの、だって?大丈夫大丈夫。そういう個性の人の為に銃使用の資格とかあるから、うん。

 

 

拳藤「ひー!?」ダダ…

 

八百万「逃がしませんわよ…この女狐が!」

 

大丈夫…だよね?八百万さん…というか今女狐って言ったような……

 

 

 

 

…あれ?

 

拳藤「銃弾当たったら痛いって域じゃないわ!」

 

拳藤「シャレにならん!」ダダ…

 

小大「おー」

 

鉄哲「え…何…あいつ」

 

塩崎「全部避けて…ますね」

 

 

 

観客は2度仰天する。

 

なんと拳藤さん…見事に銃弾を全て回避しております。とにかくステージ内を走り回り、端にに来たら転がるか跳ぶかで弾を避けての繰り返し…

 

いやいやいや!?聞こえは簡単に思えるかもしれないけどさ!無理だよねそれ!?

 

オールマイト「umm…アクロバティックな娘だね」ズドドド…

 

13号「アクロバットとかそんなレベルでは…」

 

オールマイト「スナイプ。実際どうなんだ?避けれんの?」<銃弾

 

オールマイト「私自身当たった事無いからどの位の早さか実感湧かないんだよね」<HAHAHA!

 

スナイプ「八百万が創造した物にもよるが…常人じゃほぼ不可能な業と言っていい」

 

スナイプ「通常銃弾の速度ってのは音速以上で標的に接近する」

 

スナイプ「発射された!って音で判断した瞬間身体は蜂の巣さ」

 

スナイプ「とはいえ視認するにしても銃弾なんて小さな物体を見つけて、それから脚を動かすなんてどんなに反射神経良い奴でもそりゃ出来ねぇ」

 

スナイプ「まぁその場の状況や相手の個性によりけりだけどな。実際拳銃の攻撃避けてる奴いくらでも居るし」

 

 

スナイプ「あ、マシンガンの弾避けてる所見るのは初めてだぞ」ズドドド…

 

オールマイト「知ってた」

 

13号「知ってますね」

 

 

 

 

勿論銃弾が無限に湧き出てくる訳では無い。一定の間隔で弾の補充をしてはいるものの、3分間撃ち続けても戦況が変わる事は無かった。

 

これでは体力を無駄に消耗するだけだ。八百万さんはマシンガンの連射を止め、プランBに移る。

 

ようやく銃撃が収まり、一安心の拳藤さん。

 

拳藤「ふぅ〜。危ない危ない」

 

拳藤「後少しで風穴開くトコだった」

 

切島「本気かよ…」

 

葉隠「本当に1発も…かすりもしなかった!?」

 

ホッとするも束の間、八百万さんがまたもや何か武器を創造し始めた。

 

峰田「へそチラ万歳」

 

 

次に彼女がお腹から出してきたのは…

 

 

 

八百万「よいしょ」ガシャッ

 

拳藤「…」

 

緑谷「…」

 

マイク「え、…っと…あああっあれは…」

 

相澤「ロケットランチャーだな」

 

マイク「ですよねぇ」

 

 

銃火器…というかもう武器じゃなくてこれ兵器だよね。最早

 

どう解説すれば良いか分からず終いには司会(マイク)が苦笑する始末である。

 

そして観客席にいた誰もがある恐怖を覚えただろう…「あれ?これは自分も巻き添え食らうんじゃね?」と。安心して、かくいう私もそうですもん。

 

拳藤「じょ、冗談キツイよー八百万」

 

拳藤「それも玩具みたいに爆発とかはしないオチだった…り……」

 

八百万「…ふふふ……」

 

 

皆の心配をよそに彼女は冷ややかな、意地の悪い微笑みを口に浮かばせていた。これ、1番八百万さんが怖いと思った場面だなぁ…今でもこの顔ハッキリ覚えてる。

 

セメントス「ミッドナイト…これは止めた方が……」

 

ミッドナイト「ま、まぁ観客の方はあの人が何とかしてくれるし…いいんじゃないかしら?」

 

セメントス「そうですかね…」

 

問題ありありなんですがそれは…

 

そんなこんなしている間に創り出したそのロケットランチャーを肩に担ぎ、発射態勢を整えた八百万さん。

 

拳藤「ちょ、ちょっと待って!それ撃ったらスタジアム壊れ

八百万「問答無用!!」

 

ゴオッ!!

 

 

否応無しに彼女は容赦無くミサイルをぶっ放す。拳藤さんに向かって砲弾は一直線に進んでいく。ひぇぇ…

 

拳藤「危なっ!?」ヒョイッ

 

だが間一髪…幸いにも発射される寸前不意にしゃがんでいたので何とか回避に成功する。

 

拳藤「ぃぃ〜…あいつあたしを殺す気かよ!?怖いわ!」

 

拳藤「あ…そういえばこれって避けたら後ろの人等に被害与えるんじゃ…」クルッ

 

ふとミサイルの事が気になり、後ろを振り向くと…

 

 

 

グオオ…

 

拳藤「んな…!?」

 

壁にぶつかるどころか…急停止して軌道変更しているじゃないか!

 

八百万「マシンガンの弾も避ける人にタダの鉄の塊を放つ訳無いでしょう」

 

八百万「追尾弾ですわ。場外や降参でもしない限りずっと貴方を狙い続けます」

 

拳藤「嫌ぁぁぁっ!?」ダダ…

 

巨大な砲弾が再び拳藤さんに襲いかかってくる。左右前後にとステージ中を駆け巡り、ミサイルの弾道から外れようと奮闘するがそれでも尚ミサイルは彼女の追跡をやめない。

 

このままでは走り疲れて体力も持たなくなってしまうだろう。いやそりゃ…銃火器軽く避けてみせる人に言っても説得力無いけどさぁ。

 

地上が駄目なら空中だと地面を強く踏み蹴り、空高く宙に舞う。

 

 

ダンッ!

 

悟空「っひょー!結構高くまで飛んでんな!」

 

マイク「1回戦の芦戸並…ってかさ」

 

相澤<それ以上の跳躍力だなおい

 

悟空「ああ………」

 

だが勿論ミサイルが上空に向かうだけ。寧ろこの後落下する事を考えると寿命を短くしただけでは…?

 

八百万「どうしたのかしら?もう諦めましたの!?」

 

拳藤「………そだ」

 

何か閃いたのか拳藤さんはニヤリと笑った。距離を詰められミサイルに当たりそうになるが、彼女は膝と膝を両腕で抱え前宙返りを連続して繰り出す。

 

 

クルクル…

 

八百万「嘘…!」

 

マイク「おーー!拳藤選手!八百万の攻撃を次々に難なくかわすー!!」ワァァァア…

 

拳藤「っとと…」シュタッ

 

 

上空から急降下し着地を行ったので一旦停止し、ミサイルが再度軌道変更を試みる。

 

 

 

 

ダダッ!!

 

 

それを見計らって拳藤さんがある場所に向かって走り出す。一体何処に向かおうとしてるのかというと……?

 

 

八百万「こっちに走って…!?」

 

拳藤「へへ」

 

ゴオッ…!

 

方向転換も無事完了し、拳藤さん(標的)を捉え再び急接近する。

 

 

緑谷「…………!!」

 

緑谷「やっ八百万さん!!逃げて!」

 

八百万「え?」

 

キキーッ!

 

 

その時、拳藤さんが脚にブレーキをかけ急に八百万さんの目の前で動きを止めた。

 

八百万「…何を…」

 

拳藤「じゃ」ダダッ!

 

だが、何故か即座に拳藤さんは八百万さんから真横に離れていった。突然の出来事に面食らう彼女だったが1つだけハッキリとした事がある。

 

 

 

八百万(あ…ミサイ

 

 

 

ドオオオンッッ…

 

 

 

ミサイルが地面に衝突し、巨大な爆発を引き起こす。火薬の量が少なかったのが幸いし、ステージの一部の床にクレーターができる程度で済んだものの、壁と衝突していれば怪我人続出は必至だっただろう。

 

 

まぁ万が一の事があれば悟空さんが気のバリアを張ってくれるから問題無いっちゃ問題無いが…

 

ミサイルの墜落の衝撃で髪が波立ち、服が激しく揺れる。

 

ゴオオッ……

 

拳藤「…ぉー…並の破壊力じゃないなこりゃ」

 

拳藤「掠りでもしただけでお陀仏だ」

 

拳藤「それにしても…」

 

 

 

 

 

八百万「っぁ……はぁ…!」フワフワ…

 

拳藤「結構ギリまで堪えてたつもりだけどなぁ」

 

拳藤「やっぱり避けられるのな〜」ポリポリ…

 

八百万「そんな…小細工で倒せると思わないで…!」

 

 

どうやら反射的に舞空術を使ったようで飛んできたミサイルとの衝突は免れた。

 

追尾弾とは言ったものの、あくまで彼女が創った代物は【近くの人間をサーチしてそれに接近する】ロケットランチャー。わざわざ近づく必要だって無いし今の八百万さんの個性ではこれ位が限界の技術だろう。

 

だが当たる寸前に避けられてしまえばその前方にいる人を標的に変えるに決まってる。まぁもしあれが拳藤さんのみを探知していたとしても目前で回避されちゃ軌道変更もクソも無いんだがな。

 

とりあえず砲弾を受けなかっただけでも一安心だ。危うく重症じゃ済まないところだったぞ?

 

八百万(咄嗟に…緑谷さんの助言が無ければ今頃……)

 

八百万(感謝しますわ)

 

八百万「今のも駄目なら…!」シュタッ

 

そう言いながらステージに着地し、また武器を創造し始める

 

 

 

 

が…

 

 

拳藤「小細工ねぇ…じゃ」ダッ…

 

八百万「!?」

 

拳藤「小細工無しはどうかな?」

 

 

一瞬にして再び八百万さんは間合いを詰められてしまう。彼女の耳元で拳藤さんが今の言葉を囁いた瞬間……

 

 

 

ズドォッ…

 

 

それと同時に鋭い打撃音が八百万さんに襲いかかる。

 

 

八百万「ぐぅっ…」ズザザ…

 

八百万「はっ…ぁ…!」

 

拳藤さんの掌底打ちにより後ろに吹き飛ばされそうになる八百万さんだったが、必死に踵に力を入れ脚の動きを止める。何とか場外だけは回避した。

 

偶然にも前に出していた腕がクッションになり、ガードも成功した…

 

 

 

瀬呂「筈だろ?なんであんなに息荒れてんだ八百万…」

 

蛙吹「…さっきから銃やらミサイルやらの武器を大量生産して体力が大幅に減少しているのか…」

 

 

蛙吹「或いは単にガードを貫通する程の威力だったりね」

 

 

恐らく後者の説が有力だろう。タイミング、位置…僕からすればどれを取っても完璧な構えだった。それにも関わらず何故あれ程苦しんでいるのだろうか?

 

そりゃ拳藤さんがめっちゃ強いからに決まってる。

 

拳藤「はぁっ!」ダッ…

 

八百万「…っの…!」

 

拳藤さんは走り出し、再度攻撃を仕掛ける。今度は正拳突きをお見舞いしようとするが八百万さんは右に移動してこれを避ける。

 

八百万「そう何度も食らいませんわ!!」

 

お返しに右脚を勢いよく振り上げ、拳藤さんに頭部めがけ上段蹴りを仕掛ける。

 

 

 

スカッ…

 

八百万「っ…!?」

 

拳藤「へぇ。中々いい蹴りじゃん」

 

 

しかし、さっき攻撃を避けられてただでさえ姿勢が崩れていた筈も下にしゃがみキックを軽く避けてみせる。

 

やばい。まだ脚振り切ってないぞ彼女…

 

八百万(間に合わな…

 

拳藤「でもまだ…」

 

 

 

拳藤「遅いっ!!!」バキッッ!!

 

八百万「……っぁぁ…!」

 

 

 

ガラ空きになった彼女の腹部に拳藤さんの膝蹴りがクリーンヒット。さっきの衝撃以上の大きな効果音を放ちながらめりめりと拳藤さんの脚がお腹の筋肉に食い込んでいく。

 

諸に攻撃を食らってしまい、強く内臓を圧迫された為八百万さんは咳き込んでしまう。

 

八百万「ごほっ…はっ…」

 

拳藤「…言ってなかったかもだけど…」

 

拳藤「これでもあたしちょっと()()()()()()()()…知ってた?」

 

マイク「知らねえええ!?てかちょっと所じゃねええ!そこらのチンピラの1人や2人ぐらいは制裁出来るよねそれ!?」

 

拳藤「はっ!!」ダダッ…

 

八百万「ぐっ…!」

 

続けて拳藤さんが次々に拳打や蹴りを繰り出していく。八百万さんは防御を試みるもすぐに崩され、カウンターを狙おうとしても容易く受け流されてしまう。

 

 

先頃も言ったが悟空さんが教えていたのは舞空術だけではない。寧ろ、悟空さんは彼女の弱点である格闘技術を磨くのが特訓の目的であった。

 

八百万さんの個性の特筆すべき点はやはりその汎用性にあるだろう。その場に居る相手の個性に応じて様々な道具を駆使し、その相手の不利な状況を創り出す。

 

分子構造まで理解しないといけないこの個性を使いこなす彼女にとってはこれが理想的な戦法であると同時に得意な戦法であるのだ。

 

だが裏を返せば想定する場面が限定されていない前提の格闘選手には大抵の武器は弾かれる。目には目を、歯には歯を、拳には拳しか無い。

 

それが広範囲の視野を持つ彼女の中で唯一の死角と言えよう。

 

僕や尾白君のようなA組の生徒ならばこの1、2ヶ月で多少なりとも対策を立てる余裕はあっただろうが…

 

 

緑谷(そもそもいくら肉弾戦が得意だからって銃やミサイル避けるような人なんて見た事ないぞ…!?)

 

緑谷(彼女の個性が手の巨大化って分かってる以上あれは拳藤さんの身体能力の高さによるものでしかない!)

 

 

悟空「1、2週間つっても期待以上に八百万は鍛えられた方だ…」

 

悟空「けど…こいつは……」

 

悟空さんは親指を噛みながら深刻そうな顔つきで試合の様子を眺めていた。彼が冷や汗を垂らす所なんて考えられもしなかった。それ程彼女にとってこれは最悪の状況下なのか…!?

 

緑谷「八百万さん……」

 

 

 

バキッドゴッ!ガッ…

 

マイク「激しい攻防戦が繰り広げられる!!…つぅか……」

 

耳郎「一方的なフルボッコじゃん…」

 

芦戸「八百万〜頑張って……!」

 

 

 

 

 

ガッッ!!

 

 

胸部から背中にかけ、激しい衝撃が八百万さんに襲い掛かる。強烈な正拳突きを胸部に食らってしまい後ろに大きく吹っ飛んでいく。

 

数mもの距離を移動して地面に強く叩きつけられるが落下した時のダメージよりも今の拳藤さんの攻撃の方がよっぽどこたえるだろう。

 

心臓を強く打たれ、ズキズキと痛む胸を手で強く掴みながらフラフラと立ち上がる。

 

拳藤「もう何発も食らったから結構ボロボロだろ?」

 

拳藤「まぁ…まだ闘るってんなら付き合うけど」

 

八百万「……っ……!!」

 

緑谷(無茶だ…打撲何ヶ所つくったと思ってるんだ……!)

 

緑谷(これ以上続行すれば身体がイカれるぞ…)

 

緑谷(でも……棄権を催促する訳にも…!)

 

八百万「ぜぇ…ぜぇ……っ!」

 

緑谷「八百万さんっ…!!」

 

 

 

 

八百万(私は…未熟者だ)

 

八百万(何も努力しなかった訳じゃない。本戦にも出れたし結果はある意味実ったと思う)

 

八百万(でも…他の皆やB組の人達もきっと私以上に努力したり、才能があったりするんだろうな)

 

八百万(たった10日余りの特訓で飛躍的に強くなれるはずがない。1から始めたって追いつける訳ない……)

 

八百万(だけど……それでも……)

 

 

 

八百万「まだ……負けない…負けたくない!」

 

八百万「()()()を越えたいから…っ!!」

 

緑谷「…………」

 

拳藤「()()()…ね。誰に言ってるのか知らないけど」

 

拳藤「そこまで言うならつき合っ…」

 

マイク「……お?あのポージングは……」ザワザワ…

 

 

 

 

その光景を見た観客達はそれと同時に一斉にざわつき始めた。何故ならば…

 

 

 

八百万「…はぁ…はぁ…」スッ…

 

 

撃てる筈のないかめはめ波の構えをし出したのだから……

 

 

葉隠「あ、あれは…緑谷君の?」

 

障子「何故あいつが…?」

 

悟空(嘘だろ…あいつには何も気の事については触れてねぇ)

 

悟空(撃てる訳が……)

 

緑谷(でも…八百万さんなら或いは自分で編み出し……)

 

緑谷(…いや……気功波なんて技術独自で創り出すのはほぼ不可能じゃ…)

 

 

拳藤「…」ザワザワ…

 

 

拳藤さんは悩んでいた。果たして八百万さんにかめはめ波は撃てるのか?個性の性質上あくまで物体を創り出すだけ…ならばあり得ない筈だ。だが現に舞空術も使えたので物間君のようなコピー系の効果もあるのかもしれない。

 

相手が彼女だったからこそ尚の事警戒しなければならなかった。そう…優秀な彼女だからこそ……

 

拳藤(もう八百万には体力は残ってない)

 

拳藤(本当にビームが撃てようがただのハッタリだろうが…多分これがあいつの最後の策)

 

拳藤(どちらか判断がつかないのであれば先に攻めに行ってケリをつけるのが手取り早いけど…)

 

拳藤(もし八百万が実際に…その何とか波ってのが使えるのならあいつに近づいた瞬間撃たれて吹っ飛ばされるってオチが見え見えだ…)

 

八百万「か……め……」

 

 

とうとう気功波発射までのカウントダウンが始まってしまう。今までのように撃つならかめはめ【波】のところで気功波を放つのが定石だろう。

 

だが八百万さんの意図が判明していない以上、不意を狙って撃つ目的であればそれより前の字を言ったところで放つだろう。

 

逆に言えば態々最後まで言い切る理由が無いので4文字目まで言い終わった時点で撃ってこなければハッタリだと断定できる。

 

下手に動くのは危険と見て拳藤さんはガードの構えを取りながら彼女の様子を伺う事にした。

 

八百万「は……!」

 

悟空「八百万っ…!」

 

八百万「めっ……」

 

緑谷「…」

 

 

 

拳藤(…撃ってこない……か)

 

拳藤(やっぱり隙狙いのハッタリだったのかな?)

 

拳藤(まぁいいや…兎に角トドメを)

 

 

 

八百万「っ!!」キッ…!

 

拳藤「………!」

 

 

 

一瞬で疑惑は確信へと変わった。

 

【八百万さんはかめはめ波を使える】、そういう結論に至っただろう。

 

彼女の今までの戦い方からして本当にハッタリをかますだけの相手なのだろうか。どうしてもその一抹の不安を捨てきれずにいた。

 

だが、八百万さんの目つきが急に鋭くなったのを見てある試合の出来事を思い返す……

 

 

この眼は…1回戦の時の麗日さんのそれと全く同様のものだ。

 

 

ハッタリなんて曖昧な可能性を考慮する訳がない。恐らく何かしら勝てる確信を持って挑んでいる。

 

そう判断せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

ダンッ!

 

拳藤「くっ…!」

 

 

となれば今の表情の変化は言わばかめはめ波の撃つタイミングを知らせる合図のようなものだろう。

 

相手に「もうハッタリだな」と一旦油断させてからかめはめ波を撃ち込む…そういう作戦なのだろうと拳藤さんは予測した。

 

だが焦って急いで回避しようとしたせいで気功波が放たれる前にジャンプしてしまい、失策してしまう。

 

空中で身動きを取れないんじゃ、相手の格好の獲物だ。まるで芦戸さんと戦った時の結末を再現しているかのような…そんな感覚だった。

 

という事は…?

 

 

 

 

八百万「波ぁぁっ!!」

 

両腕を勢いよく斜め上に突き出す……も、やはり気功波は放たれない。

 

マイク「え…あれ、ビーム…撃ってな……」

 

悟空「撃たなかったんじゃなくて撃てなかったんだろ」

 

悟空「でも…これで隙ができたぞ」ニッ

 

マイク「あ…そういえば空中に行っちゃってたねあの娘……」

 

拳藤「やばっ……」

 

八百万「自由のきかない空中に飛んでいくとは…」

 

八百万「狙えと言っているようなものですわ!!」ダンッ!

 

高く飛び上がり、上空から落下してくる拳藤さんに向かって飛び蹴りを浴びせる…

 

上鳴「っしゃ!決まる!!」

 

緑谷「行けっ!!!」

 

 

 

 

 

 

ガシッ…

 

その筈が、突然彼女の目の前に人を覆える位の巨大な掌が現れる。慌てて態勢が崩れるとすぐさまその手に掴まれ、身動きが取れなくなってしまう。

 

何とか外そうと掴んでいる指を思い切り押すがビクともしない。

 

 

八百万「こ…これは……まさか貴方の個性……!?」

 

マイク「っかぁぁぁ!八百万!!拳藤の【大拳】に見事捕らえられてしまった!!」

 

拳藤「惜しかったね…上手い作戦だったけど…」

 

拳藤「…でも上に行きたいのはあんたらだけじゃないんだ」

 

バッ…

 

それだけ言うと拳藤さんは握っていた手を開き、八百万さんを離した。

 

八百万(ま…まず

拳藤「巨拳(ジャイアント・フィスト)…!」

 

 

ズドオオッッ!!

 

強大な拳藤さんの拳が八百万さんの全身に打ち付けられる。そのまま彼女の身体は押し飛ばされ、ステージ外の地面と激突する。

 

 

 

ドオオンッ!

 

大きな衝突音が観客の耳に響いてくる。背中を強く地面に打ってしまい、起き上がろうとしても身体はもう微塵も動けやしなかった。

 

八百万「…ぅ……」ピクピク…

 

戦いを続ける気力も体力も…彼女には全く残されていなかった。

 

 

 

あまりの傷の痛みに身体が耐えきれずとうとう気絶してしまう。

 

 

 

 

 

ミッドナイト「八百万さん!!場外!」

 

ミッドナイト「拳藤さん3回戦進出!!!」

 

ワァァァア…!

 

拳藤「やりぃ!」

 

無事に着地を終えた拳藤さんは観客等の多数の歓声に包まれながらその場を立ち去った。

 

 

緑谷「…っ……」

 

拳藤「…ふふ」ピッ…

 

 

こちらを向いて右手の二本指を頭の横で振りながら……

 

 

 

緑谷「……八百万さん……」

 

ミッドナイト「早く運んで!傷が思ったよりひどい!!」

 

 

 

ヒーロー科1年A組八百万百。

 

彼女の体育祭は悔しくもベスト8位内に収まり、一旦幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 




須井化です…はい。

今回はヤオヨロメイン。

容赦無く人に銃火器ぶっ放すヤオヨロッパイマジ姉貴。

まぁ避けた拳藤さんも拳藤さんでヤバイけど。

とりあえず今ば癒しが欲しい(ボソッ

いかがでしたか?



次回はデクVS切島君ですねぇ。

本当は今回に食い込むかと思いましたけど予想以上に字数を稼いでしまった…

この分だと次話も1戦かな…できれば轟&上鳴も入れるつもりです。

お楽しみに!














<親父ぃ…なんなんだいこれはぁ…

<なんで1週間以上も遅れているの!?

や、やめるんだブ○リー!落ち着けぇ!!

<できぬぅ!!

もはや何もかもおしまいだ…(ボーピー


デデーン…



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