悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」   作:須井化

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前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

A組は轟少年を始めとする選りすぐりの5人が2回戦進出決定。負けじとB組から拳藤少女、普通科からは心操少年も勝ち上がっていく。

第1回戦もとうとう大詰め。最終試合、緑谷少年と麗日少女の対決が今始まろうとしていた…

更に向こうへ!PlusUltra!!!


第29話

マイク「さてさて…1回戦最後の組だなぁ!」

 

マイク「緑谷!麗日!ハリーアップ!!」

 

マイク「多数のリスナーがお前らを待ってるぞ!!」

 

ワァァァア…

 

 

 

 

観客の拍手喝采が止まない中、8試合目に出る生徒2人を呼集する為マイクが会場中にアナウンスをかける。

 

1年A組にとってもこの試合は良い意味でも悪い意味でも注目すべきバトルであった。

 

 

蛙吹「次…ある意味1番不穏な組ね」

 

蛙吹「緑谷ちゃんとお茶子ちゃん…かぁ」

 

耳郎「あたし見るのヤダなぁ…何か」

 

身震いが起こるのを両腕でさすって抑えながら耳郎さんが喋り出す。

 

耳郎「いずれ当たる事を考えれば…確かに体力フルの初戦からぶつかるのは万々歳かもだけどさ」

 

耳郎「実際の所勝ち目はどの位あるの…?麗日」

 

蛙吹「………」

 

彼女の素朴な疑問に蛙吹さんは右人差し指をかじりながらこう答える。

 

蛙吹「…ハッキリ言ってUSJの時の緑谷ちゃんを真近で見ていた私としては」

 

蛙吹「彼に分があるし、何より()()()()()()

 

耳郎「…?」

 

蛙吹「でも…緑谷ちゃんはまだ界王拳を出し惜しみしてる。多分轟君みたいなこだわりじゃないかしら」

 

 

 

蛙吹「お茶子ちゃんがそこをうまいこと突ければ…あるいはね」

 

 

 

 

鉄哲君との激しい死闘を制した切島君。ダメージは予想以上のモノだったがリカバリーガールに手当てしてもらいとりあえず次の試合にも出られる位の身体にはなった。

 

保健室で体力を回復した彼が観客席に戻ってきた。

 

切島「おいっつつ…」

 

葉隠「おー!お疲れ切島君!」

 

切島「まさか1回戦目であんなのと当たるとは…後少しでブッ倒れるとこだったぜ…」

 

傷がズキズキと痛むのを堪えながら切島君は椅子に静かに座り込む。

 

葉隠「治癒してもらったのにまだ痛いの!?相当ボロボロなったんだね」

 

切島「まぁスッゲェ漢らしい奴と熱いバトルできたから良いんだけどよ」

 

切島「次当たんのは緑谷かぁ…これまたドエれぇクジ運持っちまったもんだ」

 

葉隠「まぁ麗日ちゃんに緑谷君が勝ったらの話だけどねー」カキカキ…

 

ため息をつきながら悠々と葉隠さんと喋っていた切島君だったが…

 

ふと彼女が何かメモを記している事に気がつく。

 

待った。葉隠さん…そのノート……

 

切島「なぁ葉隠。お前それ何書いてんの?」

 

葉隠「え?ふへへー」

 

 

 

 

 

葉隠「緑谷君のクラスメイト研究ノート〜」

 

彼女はニコニコと可愛らしい表情でそう答えた。

 

 

いや葉隠さん!?何ちゃっかり持ってっちゃってるんですか!?ってかそう言われてみれば焦ってて無防備のまま放置してたなアレ!!

 

切島「おいおい…流石に他人の私物盗るのは犯罪…というか敵だぞ」

 

葉隠「ちっ違うよ!別に奪おうとしてた訳じゃなくて…ホラ!」

 

誤解を招いてしまった葉隠さんは冤罪である事を証明する為に切島君に僕のノート(証拠品)を提示した。

 

切島「……ん。うわっ汚っ!!」

 

字体が一定になってないゴチャゴチャとした文章の山を目視し、ドン引きする切島君。

 

え、そんな字汚いですか僕……

 

……いや、よく見てみれば僕が観戦していない切島君と鉄哲君の試合のデータじゃないか。ってまさか…

 

切島「コレ…お前が書いたの?」

 

葉隠「へへー。我ながら綺麗にまとめられた」

 

切島「あ、ぁぁ…そう?」

 

切島(1文字も読めないなんて言ったら殺されそうだな…)

 

切島「…それって緑谷に頼まれたのか?よく了承したな」

 

葉隠「ううん。一生懸命書いてる所見ててさ…」

 

 

葉隠「なんとなく、やってあげようかなって」ニッ

 

切島「……」

 

 

 

 

 

葉隠「後ホラ、ウチのクラスとかB組の人のデータ詰まってるし」

 

切島「……」

 

彼曰く、何故かその時の葉隠さんの笑顔がゲスく見えてしまったとか何とか。

※実際に顔は見えてません。

 

 

 

マイク「っにしても遅えな…緑谷達」

 

マイク「放送かけてからもう5分は経つっての」

 

相澤<時間厳守と言った筈だが(ゴゴゴ…

 

マイク「なぁカカロットー。おま2人の位置特定できんだろ?だった…」

 

話しかけながらマイクは隣を向く。

 

 

 

のだが。アラ…スマホを置いて何処かに消えてしまった。

 

マイク「あれ…カカロット?おーい」

 

相澤<……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【廊下】

 

 

入場口に入る手前、僕は数分間そこに立ち尽くしていた。何故かって?

 

 

 

 

緑谷(心臓が途轍もなくバクバクするのですが)ギュッ

 

鼓動が激しいというか痛いというか最早はち切れそうです。後頭痛もする。後吐き気もする。あ、やっぱ。手洗い行かなかったら途端に尿意が湧いてきた。

 

…とまぁ大袈裟な表現ではあるが、これ位の緊迫感は真面目に感じた。こんなんここの入試以来だぞ…というか下手しなくてもその比じゃない!

 

強い感情が高ぶり、締めつけられる胸をグッと力強く掴んだ。この状態でようやく立ってるのがやっとな状態だ。

 

緑谷(ヤバイヤバイ…もう呼び出しくらってから何分も経ってるぞ)

 

緑谷(くそ…動け我が右脚と左脚よ…今こそ出陣の時…)タタッ

 

緑谷「ん…」

 

後ろから小刻みに着地する音が聞こえた。このタイミングでここに来る人と言えば…

 

 

 

悟空「よっ。緑谷」

 

緑谷「ごっごご悟くくく空さんっ!!?」

 

ステージに現れる気配が無い僕を心配し、瞬間移動で悟空さんが現れた。いや…正確には上がる手前でおろおろしている様子が見えたから、なんだろうけど。

 

見慣れた筈の光景なのに不意に現れたがら久々に飛び跳ねて驚いてしまったよ。…リアクションが一々デカすぎ自分よ…

 

悟空「何やってんだー?客の皆も待ってっぞ?」

 

緑谷「い、いぇ…いっ急いで行こうとしてるんですけど…胸がドキドキのバクンバクンで!?」

 

悟空「バクンバ君?誰だそりゃ…」

 

態々手を煩わせて迷惑をかけてしまったと恥をかきながら、僕は更に声を荒げキョドッてしまう。

 

悟空「少しは自信持つようなったと思ったけどよー相変わらずだなぁおめえは」

 

緑谷「だだだだってこれ軽く億越える数の人達見てますし!?うん!」

 

悟空「だってもクソもねぇぞ…むしろオラこんな闘技場で戦えんの羨ましいし」<いいなぁ

 

そちらも相変わらずの戦闘脳で少し緊張和らげましたよハイ…

 

悟空「大体、大勢の奴らに見られながらってのならもう予選と本選通して大分慣れただろ?」

 

緑谷「いや…そりゃそうですけど」

 

緑谷「……まだ不安なんです。この間1年間修行した後に直に戦って…悟空さん以外に初めて負けて」

 

緑谷「午前中の競技は自分の技じゃなくて…どちらかと言うと他の力とか…後運頼みとか」

 

緑谷「本戦の1回戦も見てて…心操君や上鳴君、八百万さんも舞空術習得してたし」

 

悟空「ああっと…それはすまねぇ。頭何回も下げられちまって断るに断れなかったんだよ」

 

そう言って申し訳なさそうにペコペコと今度は自分の頭を下げる。

 

悟空「まぁでもあくまで【舞空術】とちょっとした体術を教えただけで気の概念自体は知らねぇ筈だ」

 

悟空「そこら辺は安心してくれ」

 

緑谷「は、はぁ」

 

緑谷「……敵襲撃から多少は界王拳の倍率も上げられましたけど」

 

緑谷「正直上鳴君の隠し玉や飯田君のレシプロに敵うかどうか」

 

悟空「……んまぁ…確かに飯田はまだしも上鳴の速さはえげつなかったなぁ」

 

悟空「界王拳をいくら無理やり上げても1()0()0()%()()()しか出せてねぇ現状じゃ2人より…てのはちっと無理あっかもな」

 

緑谷「……?」

 

今悟空さんの言葉にかなり違和感を感じたぞ。100%だけの力?100%ってマックスフルパワーじゃないの?

 

悟空「まっ!本当に桁違いにヤベェ奴と戦った時はオラもワクワクどころかビビってた時もあったけどよ」

 

 

 

悟空「どんな時も笑って挑め!モチベが下がりゃ気も小さくなる!」ニッ

 

悟空「結果がどうなろうが誰もおめぇのやった事に文句なんか言えねぇよ!」

 

悟空「オラが見込んだんだ!それなりの自信持って胸張っとけ!!」

 

緑谷「……っ……!」

 

 

いつの間にか服を掴んでいた手は大きく開き、胸からさっきとは別の感情が込み上げてきた。

 

そうだ、僕のバックには世界最強の男がついている。これ程安全な保証があったものか。1年というほんの短い期間だが彼の助言あっての今の結果さ。

 

悟空さんの言葉にはそれがどんな危なっかしい台詞だとしても妙に安心できてしまう。

 

いつも通りに…いつも通りに戦って勝てばそれでOKだ。簡単じゃないか。

 

緑谷「はい…行ってきます」

 

悟空「気ぃつけろよー」ダダッ…

 

悟空さんの励ましもあり、顔にいつもの明るさが戻ってきた。ニンマリとした半端な笑顔で一言挨拶すると僕はそのままステージの方へ駆けていった。

 

緑谷(今は何も気にするな!試合に集中集中!)

 

緑谷(ただ前に突き進め自分!)ダダッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…数分後……

 

僕に待っていたのは歓喜ではなく…

 

 

哀傷であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マイク「おおーっ!ようやく2人のお出ましだ!!」

 

マイク「一体何処で油売ってた!?」

 

マイク「何はともあれ、本戦出場者最後の2選手の登場だぁぁあっ!!」ワァァァア

 

マイク<あ、お帰り

悟空<おう

 

 

 

マイク「予選・本選共に1位とか強すぎ君!!」

 

マイク「ヒーロー科緑谷出久ぅううっ!」ワァァァア

 

緑谷「う、うおおっ…」

 

マイク「俺こっち応援したい!!」

 

マイク「ヒーロー科!!麗日お茶子ぉぉおおっ!!」

 

麗日「っし…」

 

改めて舞台に上がると熱気が違う…!まるで午前中は前座でしかないよっていう位の盛り上がり様だ。

 

それもその筈。今まで順調に行き過ぎただけだが本来の学年人数の事を考えればその内の16人に抜選されるなんて…どれだけ確率低い当たりくじを引いてんだ僕は。

 

プレッシャーが半端ないです。

 

 

麗日「…デク君…」

 

緑谷「……」ゴクッ

 

 

思わず息をのんだ。それ程彼女の眼差しはいつにも無く真剣であった。

 

試合が始まる直前、突然彼女に呼びかけられてしまった。午前中の会話の事もあり何と答えればいいか苦渋するも

 

緑谷「麗日さん……」

 

緑谷「まさか初戦で当たるとは、思っても無かった…けど…」

 

緑谷「戦う以上…手は抜かないから……ね」

 

 

途切れ途切れにそう声をかけた。それを聞いた途端彼女の顔は更に険しくなる。え?何か僕怒らせるような事言った?

 

麗日「カイオウケン…」

 

緑谷「?」

 

 

 

麗日「界王拳使ってない時点で手ェ抜いてるだろっ!!」

 

マイク「START!!」

 

語気を強めながらそう言い放ったと思うと、開始のコールが始まるや否や麗日さんがこちらに猛接近してくる。

 

界王拳…いや確かに午前中には使って無かったけどさ

 

緑谷「でっでもあれは負担デカイし…後無闇に使ったら自爆しちゃうし……」

 

的確な突っ込みに僕はおろおろと言い訳を呟く。というかそれに構ってる場合じゃねぇ!

 

 

悟空「緑谷ー!しっかりしろよ!!」

 

緑谷「ふあっ!?」

 

緑谷(いかんいかん…!今はこの試合の事だけ考えろ!)

 

師匠の声援によりハッと我にかえる。頰を両手で叩き朦朧としていた意識をやっとこさ臨戦態勢に持ち込んだ。

 

麗日「うおおっ…!」ダダッ…

 

緑谷(麗日さん…か)

 

緑谷(今思えば最初あたったのはラッキーというかアンラッキーというか…)

 

 

 

 

飯田君が前回(さっき)指摘していた僕と類似している点…あれは何も性格だけの話には止まらない。

 

彼女の十八番は見た目のほんわかさとは裏腹に()()()()()()()()()事だろう。

 

4月の最初の対人訓練では峰田君のもぎもぎと部屋にあった用具等を利用し、見事ヒーローチーム(蛙吹・常闇組)に勝利を収めており…

 

かっちゃん以外で唯一あの場で黒霧の弱点を見抜いた洞察力を持っている。

 

 

 

 

飯田(麗日君と緑谷君は同じタイプの人間だ)

 

飯田(つまりこれは如何に相手の想定の裏をかけるかで勝敗が変わってくる)

 

飯田(上手く緑谷君の【想定外】の場面をを生み出せればいいのだが…)

 

あ、飯田君…観客席戻ってたんだね。

 

 

 

 

さぁこっからは命懸けの心理戦のお時間だ…

 

僕の決まり手と考えられるのはやはり体術あたりだろうか…そこら辺の技術は人並み以上に体得してると自分でもそれなりの自信はある。

 

だが近接戦は絶対NG。

 

彼女の個性は【無重力(ゼログラビティ)】、触れたら浮かせて場外の即死技。打撃だろうが関節技だろうが事故だろうが麗日さんを触れば彼女が主導権を握る事となる。

 

ならばどうするか?逆に言えば触れずにダメージを与える方法と言うと【気功波】の類か。かめはめ波を適当に撃ち込めば勝てるのでは?

 

 

 

 

そんな単純にはいかない。

 

 

 

麗日さんは僕に近づいていくにつれ、何故か身体が前かがみになっていくのだ。

 

何故だと思う?

 

麗日「……」ダダッ…

 

緑谷「………!」

 

ポキッ

 

 

だらしなく垂れ下がっていた両腕から小さな効果音が発生する。僕が()()()指を曲げて骨を鳴らしたんだ。

 

麗日(今やっ!)

 

その瞬間、突如彼女は前に倒れこみこちらに向かってスライディングする。

 

 

見事に釣られてきたな!

 

緑谷「波ぁっ!!!」ボォオッ!!

 

麗日「うっ…!」

 

 

咄嗟に右腕を地面をかくように前に伸ばしながら麗日さんに気功波を放つ。その衝撃に耐えきれず彼女は後ろに吹き飛んでしまう。

 

ではここで先程の答え合わせと行こうか。

 

切島「ぐぁぁ…手が読まれたか!」

 

蛙吹「緑谷ちゃんはよくあの光線を人の上半身に撃つ癖があるわ」

 

蛙吹「タイミングを見計らって下に行って回避するのが1番利口な策だと思ったけど…」

 

常闇「今回はノーモーションで発動していたからな。更に午前中の様に脚でやる可能性もあった。致し方無しとすればそうだが…」

 

常闇「初手では緑谷に一本取られたか!」

 

 

 

 

そう。僕の実力じゃまだ悟空さんの様に人の身体を丸々覆うほどの気功波は放てない。まぁ界王拳を使えば話は別になるのかもしれないが…

 

だから速攻からの不意打ち…これが最も成功率が高かった。本来ならかめはめ波を放つ素振りが見えた直後に滑り込むつもりだったんだろう。

 

 

そこまで見え透いていたと考慮した上でさっきの指鳴らし(合図)を行ったのだからな。

 

簡単な話だ。かっちゃんとは全く逆のパターン…要は彼女のやり口は僕とかなり似ている。だから次にやるであろう行為が自ずと分かってくる。

 

 

まぁ…これは相手も然りなんだけどさ。

 

 

 

思ったよりも強めに撃って地面を巻き込んだ事により衝突の時に発生した爆煙が視界を防いでしまう。

 

緑谷(麗日さん何処だー…って気探れば分かるけど)

 

緑谷「おっ?」

 

目を凝らして前を覗くと煙から薄っすらと体操着のような服がこっちに近づくのが見えてくる。

 

敢えて相手の視界を封じる事で確実にタッチしにいく方法で来たか。こっちが本命…?だけど麗日さん、それじゃ自分の視野まで狭くするぞ?

 

一早く彼女の接近に近づいた僕は空かさずその体操服を右手で掴み床に叩きつける。

 

…体操服?

 

緑谷(やっべ…反射的に触っちまった!っと…焦るな!このまま投げ飛ば……)

 

緑谷(あれ…服……)

 

そう、掴んだのはあくまで体操服。麗日さんの姿はそこにはなかった。

 

 

 

 

麗日(引っかかった!!)ダダッ…

 

マイク「うおおおっ!!麗日好機とばかりに真後ろに回り込むーー!」

 

成る程…煙幕で視認できない内に直様上着を脱いで、それを浮かせて囮にしたって訳か。一瞬で思いつくような作戦かそれ!?

 

相澤<今度こそ…完全に不意を突けたか

 

悟空「……さぁ…?」

 

 

麗日(ここで浮かせば…!!)

 

そう思い、彼女は僕の身体に飛び込み腕を伸ばす。

 

 

だが悪いな麗日さん、全部お見通し。

 

 

ボォオッ!!

 

麗日「うっぁあ!?」

 

空いていた左手をクイッと後方上空に向け、再び彼女に気功波を浴びせる。さっきとは違いガードをする余裕も無く諸にかめはめ波を受けてしまう。

 

瀬呂「っかー…アレ見てから動いてんの?」

 

上鳴「見えようが見えまいがあの反射神経じゃ煙幕も何も関係ねぇな」

 

飯田(今の選択肢は悪くなかった…いや寧ろ最善だった筈)

 

飯田(やはりあの俊敏力相手に【触れなければ発動できない】麗日君の個性は不利か…)

 

飯田(考えろ…考えるんだ麗日君!!)

 

 

 

敢え無く転倒するも立ち上がり、何とか態勢を立て直そうとする麗日さん。

 

麗日「ならもっかい…!!」ダダッ…

 

マイク「間髪入れず麗日再突進!」

 

緑谷(そんな易々と隙与えるかよ!)ダッ!

 

麗日「!?はっや…」

 

今度はこっちが攻める番だ。急接近し彼女の顔面に右手を近づける。至近距離でかめはめ波を放ち、迎撃する。

 

 

ボォオッ!!

 

マイク「しかし緑谷!近づけさせない!」

 

マイク「つーか自分から距離詰めてレーザー直で食らわせてるよ!」

 

 

 

 

だが麗日さんは衝撃に耐え尚こちらに駆けてくる。

 

麗日「おらあああっ!!」ダダッ

 

緑谷「っそ…!!」

 

ボォオッ!!!ボボォオッ…

 

麗日「まだまだああっ!!」

 

マイク「休まず突撃を繰り返す麗日!!……」

 

マイク「…が…コレ……は…」ボォオオッッ!!

 

絶え間なく麗日さんは僕に突っ込んでいき、僕は麗日さんをビームで吹き飛ばす。

 

初手の数秒からは…ただただその繰り返しであった。

 

 

 

蛙吹「お茶子ちゃん!」

 

耳郎「う、ぅぅ…緑谷…アンタまさかそっち系の?」

 

峰田「え、緑谷のMって魔沿飛須斗のMじゃないの?」

 

違います。

 

 

「あいつ…さっきの変わり身通じずでヤケ起こしてるよ」

 

「止めなくていいのかぁ?もう差は明白だろ?」

 

「クソかな?ってかもうクソやろ」ガヤガヤ…

 

 

緑谷「…」

 

何やら外野が騒がしくなってきたな……観客がクレームをこぼし始めてる?

 

緑谷(いや、気にすんな!今は試合だけに集中しろ自分……)

 

拳藤「……阿っ呆だな、あいつ」

 

塩崎「確かに…見るに耐えませんね。この光景は」

 

円場「本当だぜ。女の子相手にフルボッ」

物間「黙れ」

 

円場「……はい?」

 

 

 

「もう…見てらんねぇ!!」ボォオッ…

 

「おい!そこのそばかす野郎!!いい加減早よケリつけろ!」

 

「女の子いたぶって遊んでんじゃねぇよ!それでもヒーロー志望生か!?」

 

「そーだそーだ!!」Booo…

 

 

 

緑谷「…っ……」ボォオッッ!!

 

とうとう痺れを切らした観客が暴言を吐き出していく。割と傷つくんですがそれは…

 

緑谷(っと…やめとけやめとけ!相手にするだけ無駄…)ボォオッ!!!

 

麗日「……チッ!」

 

や、ヤベェ…こっちも舌打ちしてキレ出した!?青筋立ってますよ麗日さん!!ヒィィ……

 

ん?今何か観客席の方チラッと見てませんでした…?え?…まさかな。

 

 

 

マイク「一部からブーイングの嵐!!って荒らしですねこれ!」

 

マイク「…でも正直僕もそう思いま

緑谷「何か言ったか?トランクス」

 

マイク「なっ何でもありませ…ってトランクスて誰!?」

 

相澤<おいマイク

 

マイク「What!?今取り込み…」

 

 

止めろと言われてもすぐ試合を終了する事などできるはずも無く、観客から湧き上がる罵声を多く浴びながら数分間戦い続ける。

 

麗日「うあああっ!!」ダダッ…

 

「あーダメだ。あいつらやめる気配一切見せね」ボォオッ!!

 

「雄英の面目まるつぶれじゃねえかよ。まぁまだ一坊(ガキ)やな」

 

緑谷「…!」ボボオッッ!!

 

「落ちぶれてんなぁ…どいつもこいつも」

 

悟空「……すまねぇ。ちょっと席外す」

 

マイク「あっちょ!馬鹿止め……」

 

 

 

相澤「今遊んでるっつったのプロか?何年目だお前?」

 

「!」

 

相澤「シラフで言ってんならもう意味ねぇから帰れ。家で転職サイトでも見とくんだな」

 

飯田「…相澤……先生?」

 

 

いきなり司会席から聞き覚えの無い音声が大音量で会場中に流れ出す。指摘されたプロヒーローどころか、その場にいた観客全員が憤懣やるかたない彼の発言に怖じけ、一瞬で騒然たる空気が一変する。

 

 

相澤「ここまで上がってきた奴の力を認めてんだから警戒してるんだろ」

 

相澤「本気で勝とうとしてんだから…」

 

相澤「尚更手加減も油断もできねぇんだろうが」

 

 

 

 

緑谷「……ふぅ…」

 

麗日「……っ…」

 

突進を繰り返していた麗日さんの動きが急に止まった。騒動が収まったからか?…まぁ何でもいい。

 

…いい空気だ。これでまた気が散らずに戦える。感謝の意も含めながら僕は大きく深呼吸を1回する。

 

緑谷(……そろそろ決着つきそーだな……)

 

何故そう思ったかは彼女の姿を一目見るだけで明らかだろう。がむしゃらに攻撃を受け続けて身体がもう言う事を聞かない状態

 

 

 

 

その筈なのに彼女の目から未だ熱は消えていなかった。まだ死んじゃいない。諦念を全く感じさせない表情だった。

 

麗日「はぁ…はぁ…」

 

緑谷(何か…別の超必出す気だな?)

 

正直僕が麗日さんならこの状況の打開策というのはあまり思いつかない。攻略法は依然としてたった1つ、触れる事のみ。

 

真っ平らで何も障害物となりそうな物体もない以上武器としての応用もできないしね…同じように気を扱えるようであるならばまだ勝機はあるかもしれないが。

 

 

ただ…1つだけ気になる事があった。彼女が避ける際にする行為だ。

 

麗日さんは突進を仕掛けている時…回避するギリギリ直前で地面から手を離している。と言うのも、さっきから麗日さんは最初のように前かがみで腕を下ろし、床に手をつけながら走りっている。

 

果たしてここのどこに床を触るメリットがあるのだろうか?ステージ毎浮かすなんて到底無理だろうし…かえって走りにくいだけじゃ…

 

そう思い、ただの過剰反応だと見過ごしていた。

 

 

 

だが、麗日さんに限ってそれはあり得ないのでは…?

 

麗日「…そろそろ……かな」

 

麗日「ありがとデク君」

 

 

 

 

麗日「()()()()()()()()()

 

緑谷「………え?」

 

 

彼女は両手の五指を合わせつつ、僕にそう話しかけた。突然お礼を言われても何が何だかさっぱりなのだが…

 

緑谷(油断しなくて…?じゃあさっきの攻防戦は何らかの意味があったのか?いやでもとてもそういう風には見受けられないけど…超必の時間稼ぎ?なら納得だけど今までの行為にその超必にどういう関係が…ってかそもそも超必があるかすら分からないし?えっと麗日さんの個性は物を浮かす………」ブツブツ…

 

 

【物を浮かす】…その言葉を発した途端僕は一瞬フリーズする。まさかと思い、微笑をこぼしながら上空を見上げた。

 

 

 

 

 

物間「緑谷の距離ならともかくとして…」

 

物間「客席にいるにも関わらず気づかなかった批判者(プロヒーロー)は恥ずかしいね」

 

物間「低姿勢の突進で緑谷の打点を下に集中し続けた」

 

物間「それでもって突進と爆煙で彼の視野を一定時間狭め」

 

 

 

 

 

 

物間「武器の創造を悟らせなかった」

 

 

 

 

 

緑谷「は…ははっ……ま、マジッすか……」

 

 

何と真上に無数の石の瓦礫がフワフワと浮いているではないか……というかアレステージの床か……

 

あっと…コレは……

 

 

 

麗日「勝ぁぁあああつっ!!!」

 

ゴオオッ…!

 

マイク「ぬおおっ!?突如タイルの流星群が会場に降り注ぐーー!?SUGEEEE!」

 

悟空「おめぇ気づかなかったんか…」

 

飯田「これだけの量…!迎撃だろうが回避だろうが隙が出来ない訳がない!!」

 

飯田「行ける…行けるぞ!」

 

やべぇええええっ!!?岩石の山ぁっ!?それアリかよ!?

 

驚いている暇は無い!こうしている間に麗日さんが自分浮かせてこっちやってくる!だけど今僕にこんな大量の物体吹き飛ばす程の気功波なんて出せねーー!やむを得ない…界王拳か?行っちゃうか?500%ここで……

 

 

 

 

いや待てよ…

 

 

緑谷「波ぁああっ!!!」

 

ボォオオッッ!

 

麗日「わぁっ!?」

 

 

 

右手を上空、左手は麗日さんの方に向けそれぞれの標的に目掛け気功波を放つ。

 

倒れるも麗日さんは直様態勢を立て直し、飛行して僕との距離を詰めようとする。

 

 

 

だが見上げてみろ。

 

武器が全て木っ端微塵に吹き飛ばされているでは無いか。

 

 

麗日「……うっそ…なん…で?」

 

緑谷「あっぶな…何とかセーフセーフ」

 

手をガクガク震わせ、僕は呼吸を止めた。急場凌ぎの策にしちゃ上出来な結果ではあるぞ…つん。

 

幸いにも瓦礫の大きさはどれも巨大とは言い難いサイズであった。多分どれも片手で持ち上げられるくらい(自分なら)。ならピンポイントに撃たなければいい。今撃ったのはただ1点に集中した気功波では無く、多の敵に対して放つ拡散弾だ。

 

ぶっつけ本番…つーか今さっき思いついたんだが……何とか堪えたか!

 

 

でも気功波の撃ちすぎでかなり体力消耗してます。

 

緑谷(くぅぅ…武器が無いなら作ればいいじゃないとは…麗日さんらしい!)

 

緑谷(段々なんか楽しくなってきたぞ…悟空さんの影響か?まぁどうでもいい!!)

 

緑谷(これ以上疲れるんならいっそ界王拳使った方が効率的か…?というかこのままじゃ決着着かねえ!)

 

緑谷「まだ行くよ…麗日さん!」

 

にやりと笑いながら両拳を腰に構え、界王拳の態勢に入る。それに応じるように彼女は再び突進を

 

 

 

 

 

麗日「あっ…」カクッ…

 

 

 

緑谷「界…?」ドサッ

 

 

 

……試みるも、脚を前に出そうとした瞬間麗日さんの体は前に傾き、そのまま前に倒れてしまった。

 

何とか立ち上がろうと踏ん張るも 身体は1mmたりとも動きはしなかった。

 

 

 

もう…とっくに許容重量(キャパ)はオーバーしてたんだ。

 

 

 

 

 

 

ミッドナイトが麗日さんに近寄り、ジャッジを取る。

 

ミッドナイト「……立てる?」

 

麗日「……っ〜…まだ……」

 

 

 

 

 

麗日「………とー………ぁちゃ……」

 

 

緑谷「!?」

 

 

 

 

父・母…そんな言葉が突然頭によぎってきた。

 

あれは確か…2週間くらい前の時の…

 

 

『ウチなんか父ちゃん母ちゃんに迷惑かけてばっかだし………』

 

 

緑谷「…っ麗ら…」

 

ミッドナイト「……」スッ

 

 

 

ミッドナイトは静かに右手をこちらに向けた。

 

馬鹿っ…自分は何を口走って……

 

 

 

 

 

ミッドナイト「……麗日さん行動不能」

 

ミッドナイト「緑谷君、2回戦進出」

 

 

 

マイク「……おおおおっ!?激しい攻防戦の最中、勝利の女神が微笑んだのは……」

 

マイク「ヒーロー科緑谷選手の方だぁぁあっ!!」ワァァァア…

 

緑谷「………」

 

 

 

さっきとは真逆に観客からは大きな喝采が湧き上がっていた。皆よほど最後の攻防戦が熱く感じられたのだろうな…

 

 

 

 

 

 

どうしよう。

 

女神様も微笑んでいらっしゃるのに…

 

 

なんで自分はこんなに顔が青ざめているのだろう。

 

 

 

 




須井化です…はい。

今回は緑谷と麗日の原作正夫婦(希望)の夢の対決!!

展開はほぼ爆豪の時と変わらなかったけど最後のあれは1発じゃなかったね。

言われてみれば原作でかっちゃんが麗日の服掴んだのはよく分からなかったりした。今回書いてて。

前振りが長かったな…1/3位取ったんとちゃう?コレは完全に私の計算ミスですねぇ。一部前回に入れるべきだったか…

だが私は謝らない。

あ、物間君の名前表記がいくら経っても直らなかったのは謝ります…はい。

いかがでしたか?



次回はお茶子見舞いと…飯田君トコまで行けるかな?

意外とウラビティのトコで長引きそうなんだよね…回想少し入るし。

まぁ長くなる分気合い入れて書くんですけどね、頑張るゾイ。




何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。か、風邪になったデク君の看病したい人募集中!4/15日までだから急いで書くべし!?

4月8日(土)18:00に第30話の投稿を予定しております。アニメが終わった瞬間始まるぞ!後アニメ次回も体育祭始まらんの!?マジで!?
お楽しみに!

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