どこにでもいる無個性少年緑谷出久。
彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!
遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!
体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!
心操少年の意外な個性、上鳴少年の新たな技術…
様々な強豪等が圧倒的な強さで勝ち進む中、第1回戦後半の部がスタートする!
更に向こうへ!PlusUltra!!!
1人控え室でジュースを飲んで休憩していた飯田君。ドアが開く音がしたと思いその方を振り向くと麗…
かじゃなく眉をひそめた麗日さんが中に入ってきた。空かさず飯田君はツッコミを入れる。
飯田「う、麗日君。うららかじゃなくなってるぞ…」
飯田「眉間にしわ…」
麗日「みけん?……ああ!」
表情の変化に気づいた麗日さんは深呼吸して自分の緊張をほぐす。顔がいつもの麗らかな表情へ戻り照れ隠しながら返事をする。
麗日「ご、ごめんごめん…緊張が高まてた…」
飯田(タカマテタ…)
飯田(緊張…か。そういえば彼女の次の相手は……)
麗日「いやー!しても飯田君決まってたねー!」
麗日「レジプロバースだっけ?アレめっちゃかっこよかった!」
彼女はキックのモーションを入れながら飯田君の【レシプロバースト】を称賛する。技名が間違えられた事に少しショックするも褒誉の声をくれた事に赤面しつつ照れる飯田君。
飯田「そ、そうか…嬉しい限りだ」
飯田「……」
麗日「…どしたの?飯田君」
だが、突然彼は俯いて考え込んでしまう。
麗日さんの初戦の相手…それは
入試でのインフェルノ1撃撃破、入学初日にプロヒーローと互角以上に渡り合い、更にその教師ですら惨敗を喫したあの
結果だけ見れば同じ敗北ではあるが相澤先生以上に奮闘していた所を見ると、個性の相性はあれど並のプロヒーローかそれ以上の実力が窺える。
彼らにとって僕との対峙は1匹の蟻が1頭の恐竜と遭遇する事と何ら変わらない事である。住んでいる世界が違う、歴然の差であった。
何とかして彼女の気を少しでも紛らわせてあげたいと飯田君は話題を黙想していたのだ。
飯田「……あ」
麗日「い?」
そんな時ふと、ある事を思い起こす。前々から聞こうとは思ってはいたが気乗りせず保留にしていた話だ。静かに椅子に座り込む麗日さんに飯田君がその事について話し出した。
飯田「なぁ…麗日君」
飯田「少し問いても良いだろうか?」
麗日「う?」
飯田<……えお
麗日<ノリ良い!飯田君!
一方スタジアム中央部では大盛況の中遂に2人の女子選手のお出ましだ。今まさに、第1回戦5試合目が始まろうとしていた…!
マイク「さぁ!お次は今大会、結構レアな
マイク「最初に名乗りを上げたのはA組女子!芦戸三奈ぁあっ!!」ワァァァア…
マイク「見た目の可愛さとは裏腹に個性の酸が恐ろしー!破茶滅茶女子高生!」
芦戸「破茶滅茶……」
マイク「お次はB組女子!地味に繰り上がり無しで来てるB組君だけか!?」
マイク「佳人!!拳藤一佳ぁぁあっ!!」ワァァァア…
拳藤「い、いやはや…そこまでおだて上げんでも」
午前中、障害物競走・騎馬戦共に彼女の活躍を見る間も無くプログラムは終了してしまった。騎馬戦に至ってはメンバー上やむ無しとは言え拳藤さんはただ手を上げ続けただけだからなぁ。
万一、準決勝で当たった時の事も考えて2人の対策を練らねば…
八百万「…緑谷さん?」
緑谷「ふあい!?」
後ろから今度は声がやって来たよ。やめてくれ…ただでさえさっきの上鳴君のでビビってるんだから!
八百万「突然にやついたりしてどうしましたの?この試合の方々が来てからずっとですわ」
緑谷「え…あ…ニヤついてた?僕?」
すぐに八百万さんはコクコクと頷いた。え…無意識の内かな……そんなつもりは無かったけど。
いや…まぁ確かに……目線は拳藤さんにずっと向けていた…というか集中していたというか。
何だろう。彼女と逢ってから大分調子が狂うな…そりゃ……あれだ。まさかまた会えるなんて思ってもいなかったからあの時嬉しいっちゃ嬉しかったけど…あーというかやっぱり綺麗だなあの娘。
じゃねぇよ!ってかどこに着眼点置いてるんだ自分は!これじゃただのド変態じゃん!!
緑谷(ああぁぁ!自分がムカつく〜!!)
八百万「……?」
顔を上下左右に振った挙句髪を搔き乱して混乱している僕を不思議そうに眺める八百万さん。彼女はふてくされた顔になりながら椅子から立ち上がりそのまま歩き出していく。
……今思ったけどさ、後ろなのにどうやったら表情見えるんだろうね。
試合開始前、気軽に対戦相手に話しかける拳藤さん。敵同士だがヒーロー科同士でもあるのであくまで仲良く精神。
拳藤「A組の人初めまして…てさっき食堂で会ったけか」
拳藤「うーんと…確かあ…あし……」
拳藤「芦○愛菜?」
芦戸「芦戸三奈だよ」
拳藤「あっ…ごめんごめん。さっきデクに
悪気が無いってのは分かるんだけどさ…その言い方はまずいよ、拳藤さん。ほれ見ろ。コケにされた芦戸さんは…
芦戸「ん〜?あーダイジョブダイジョブ。気にしてない」ゴゴゴ…
拳藤「お、なら良かった良かった」
邪気を纏いながら満面の笑みで返事していますよ。そして案の定変化に気づいていないー!?
実は芦戸さん、始まる以前から彼女にかなり悪印象を抱いていた。?食堂では何も無かったろ、だって?
芦戸(何故だが知らんがウチの男子と数分間ウチらの前でイチャイチャしたのを見せびらかすのは確かにいただけん!)
芦戸(何より…あたしが1番ムカついたのはっ!)
芦戸(チアコスしたあたしらが応援してたのを見て!腹抱えて笑いながらレク楽しんでいた事!!)
芦戸(あたしにだってA組としての意地がある!負けてられっか!)
芦戸(後
イラついてしかめっ面になったり興奮して赤面になったりと忙しい表情変化の中、静かに闘志を燃え上がらせる芦戸さん。…あの人って誰だ、凄く気になる。
そして、とうとうマイクによる試合開始のコールが鳴る!
マイク「START!!」
拳藤「早速で悪いけど、勝たせてもらうよ!!」
そう言うなり走り出した彼女は右拳を大きくし芦戸さんに向かってその握り拳を振り下ろす。
マイク「おー!開始早々拳藤が攻めに出た!不意のジャイアントブロー炸裂か!?」
悟空「思ったよりも速ぇな…」
芦戸「よっ」ダダンッ
拳藤「ぬおっ!?」
だがこの攻撃を先読みしていた芦戸さんはジャンプで軽く避けてみせた。
芦戸さん目掛けて放っていた拳は地面に激しく衝突する。地面にヒビが入るあたり威力は筋金入りと言った所か。
だが避けてしまえば問題は無い。
マイク「おーっと!芦戸上空に高く飛び上がるー!ってか高くね!?助走無しで10〜11m行ってるぞ!?」
相澤<大方孫さんの
悟空「へへ〜」
この2週間の間に悟空さんは僕等A組に数々の無茶振りを仕掛けてきた。1vs20のサッカーやら1vs20の綱引きやら…
内容はどれもバカらしいお遊びであったがその難易度もある意味馬鹿馬鹿しい。百人力どころか万人力以上の超人に誰も敵うわけが無い。
それでは全て無駄だったのかと言うとそうでもない。この2週間の間その無茶振りに身体を酷使させる事で著しく身体能力を上げる事には成功した。
芦戸「バ〜カ!速攻勝負に出たんだろうけど、考えが単純なんだよ!」
芦戸「喰らえ!あたしの最高火力!!」ヒュゥゥ…
芦戸「超溶がばっ!?」ドゴオッッ!!
でもね芦戸さん。空中じゃ自由きかない。
今だと言わんばかりに
着地直前、拳藤さんの射程範囲まで近づいてしまった芦戸さん。勿論舞空術みたく避ける術などある筈もなく…
見事にフラグ回収し、彼女の顔面に飛び横蹴りがクリーンヒットした。
マイク「おぉっと技名言ってる途中で拳藤攻撃ーー!ヒーローのお約束そっちのけかい!!」
マイク「そしてー!?」
芦戸「ひゃふ!?」ガンッ!
身体は遠くまで吹っ飛び、後頭部を強く壁とぶつけてしまう。そのまま地面に倒れ、頭上に星を3つクルクルと回しながら気絶する。
芦戸「ふにゃぁ…」
ミッドナイト「芦戸さん場外!拳藤さん2回戦進出!!」
拳藤「っしゃあ!」ワァァァア…
無事芦戸さんに勝利した拳藤は両手を強く握ってガッツポーズ。ああ。それです、それ。
ここまであまり目立っていなかった彼女も第1回戦を制した事により一目置かれる存在となった事だろう。観客からの大歓声も止まない。
マイク「オウオウ!2回戦目のB組出場者が1人出たぞ!ここまで来れば否が応でも人気出るぞコレ!」
悟空「いや〜スゲーな今の奴…」
相澤<B組の方…ですか?
相澤<まぁ確かに個性が手に限定されているのに対して障害物競走もかなり応用してましたけど…
悟空「…そこじゃねえ。寧ろそのデケェ手を軽く振り回すぐれぇの筋力等がある事だ」
悟空「相当鍛えた結果だろうなぁ…昔のチチみてぇだ」
相澤<……と言うと…アレですか?
悟空「……緑谷と同じタイプだろーなぁ。多分」
マイク「拳藤の真価はいわば【その個性を自在に操る肉体】にあるってか」<まぁ発達いいけどさ
相澤<お前は一々余計な一言多い
上鳴「うひょーなんて素晴らしい蹴りだあ!俺もあの美脚で蹴られてえ!」
峰田「ふざけるな!八百万が…宇宙一なんだ…!」
峰田<でもあっちの方がデカイカモ…
上鳴<だろ?
緑谷「…っかぁ…」
改めて見ると本当に凄いと思うや…あの女の子はこうも強かったのかと驚かされる。個性使い慣れてるなぁ。動きにブレがない!反動でスピード遅くなるとか思ってたけど…
たった数秒なのにあの娘に見入ってしまった。
…い、言っとくがやましい気持ちがあって見てるんじゃないからな!?勘違いするなよ!?うん!?
拳藤「…あ」ワァァァア…
拳藤「ハハッ」
しばらく拳藤さんを見つめていると、どうやら彼女もこちらの目線に気づいたらしく笑顔でこちらに手を振って返してきた。
上鳴「うおおっ!俺に手振ってくれたぜ!おい!」
峰田「なんだと~!?勘違いするな!この俺に振っているんだ!」
どっちも違います。
それにしても…嬉しくてついこっちも手を振って返してしまったものの……
緑谷「…」
拳藤「デ〜クー」ゴゴゴ…
緑谷(何か彼女からスッゴイ威圧感を感じるのですが…)
あの笑顔は決して僕に対しての奉迎では無い。彼女のあの表情に込められたメッセージはいわば【首洗って待ってるからせいぜい勝ち進め】みたいな感じだろう。
紛れも無い、拳藤さんも強敵の1人だ。
拳藤一佳。個性【大拳】
左右の手を大きくする事が出来る。本人曰くズームには限界あるっぽい。
何故か僕の呼び方が【デク】。
緑谷(参ったなぁ…予想通り順当に行けばさっきの3人と準決勝当たるじゃないか)
緑谷(常闇君はほぼ物理攻撃無効にするし、八百万さんはその場に応じてアイテム出せるし…)
緑谷(味方として見りゃ申し分ないけどいざ相手するとなるとおっそろしい面子だなぁ…)
ノートに芦戸さんと拳藤さんのデータを書き留めながらそんな風に複雑な心境を抱いていた。改めて考えると騎馬の組み方は正解だったのだろうか……
その後、ステージから退場した拳藤さんは愚痴をこぼしながら廊下をとぼとぼと歩いていた。
拳藤「ったく…あんな呑気に解説してるからああなる…」
拳藤「空中は格好の的だっての」
という風に独り言をしていると前方に誰かの人影が目に入った。
八百万「……」
拳藤「…お。あんたは……そうそう、八百万」
八百万さんその人である。観客席から離れた後、すぐに試合が終わると悟っていたのか…既に闘技場に向かっていたようだ。
最初こそ硬い表情で相見えていたがすぐに微笑みながら返事をする。
八百万「まぁ…覚えていらしたのね」
八百万「意外でしたわ。芦戸さんの名も忘れていたので…てっきり分からないかと」
拳藤「いやいや!流石にあたしだってチームメイトの名前位覚えてるわー!」
拳藤「常闇でしょ?八百万でしょ?後デク!」
拳藤「全くさ…不運も良いところだよなぁウチら。何たって高確率でさっきのメンバーと当たるんだから」
拳藤「参っちゃうよ、なぁ?」
続けて喋ろうとする拳藤さんだったが話時間長くなると見た八百万さんは一旦話を切り、その場を去ろうとする。
八百万「別に私は構いませんわ」
八百万「相手が誰だろうと私は私なりのベストを尽くすだけですもの」スタスタ…
拳藤「ふーん…そう」
拳藤「あ、でもでも八百万」
八百万「…」
すれ違いざまに、拳藤さんが歩いていた彼女の耳元でささやく。
拳藤「…あんたもデクと戦いたいんだろ?」
八百万「っ!?」
拳藤「その様子じゃ図星ってトコかな?」
拳藤「もしそう思うんだったら頑張って勝ち続けな」
拳藤「そんで這い上がっていけ。準決勝まで」
八百万「…無論、そうさせてもらいますわ」
拳藤「…ま、何にせよ常闇勝ったら次はあたしだ」
拳藤「いい勝負になんの期待してるよっと」ドッ
八百万「きゃっ!?」
そう言うと拳藤さんは八百万さんの右肩を掴み、入場口の方向へ彼女身体を強く押した。
ふいに八百万さんは後ろに振り返るが、言葉を発す間も無く拳藤さんは走り去っていった。
呆れながらも八百万さんは彼女のその背中を満面の笑みで見送った。
八百万「…」ゴゴゴ…
もはや満面の笑みの使い方間違っているのでは……?
八百万さんの身体からは芦戸さん以上に強くはっきりとした殺気が漂っていた。
八百万(この私を差し置いてデクなんて呼ぶなんて!麗日さんですら【デク君】ですのよ!?今日初対面なのに爆豪さんや麗日さんみたいに付き合い長かったり別に仲良かったわけじゃありませんのよ!?なのになんで…緑谷さんも緑谷さんですわ!あの娘を見てニタニタと笑っていて!完全に骨抜きにされてますわ!!)
とりあえず落ち着いてください…八百万さん。
八百万「見てらっしゃい!言われずとも…」
八百万「常闇さんにも貴方にも……」
八百万「緑谷さんにも敗けるつもりはありませんわ!!」
そう宣すると同時に再び身体を入口の方へ向け、ステージに向かって歩き出した。
【控え室】
麗日「え?う、ウチの志望動機?」
飯田「ああ。以前、俺から君達に【兄に憧れたから】とは言っていたが…」
飯田「そういえば緑谷君と麗日君の
麗日「……え……と…」
麗日「し、知りたい?」
飯田「」ブンブンブンブン
飯田君は身体毎上下に激しく振動させ頷いた。直後、言いにくい事情なのではないかと彼は一瞬後悔するが、自分から吹っかけた話な以上引き下がる訳にも行かなかった。
麗日「そーだなぁ…究極的に言えば……」
麗日「お、お金儲け?」
飯田「カネ…!」
麗日さんの両親はある建設会社を経営しているのだが仕事の依頼が少なく、安定した収入を得れていない。
このヒーロー社会、個性1つあれば家の1軒や2件誰でも手軽に作れるようになっていた。タダでさえこんな状況の中、態々小さな会社に頼む必要などある筈もなく便利な大手の会社に依頼が殺到していく。
そうやって他の建設会社は衰退していき、最終的に全て撤退するのだ。他が必要としなければそのモノは存在価値を無くし、気づかぬ内に消滅してしまうもの。
ある意味ではこういった問題はこのヒーロー社会の1つの課題とも言えるだろう。
麗日「なんかゴメンね…不純で」
麗日「飯田君は立派な動機なのに」
飯田「そんな事無かろう…生活の為に目標を掲げるのは恥ずべき事では無いぞ?」
飯田「しかし、ならば直接個性使用の許可を得てその建設会社に就職すればノーコストだし効率も良いのでは…?」
麗日「そう!ウチもそう思ったんよ!…でもね」
幼き頃、実際に両親に提案した事はあったがすぐにその話は撤回されてしまう。
彼女の父と母は自分らの経済を惜しんでも娘の夢を優先させたかったのだ。逆に家庭を裕福にさせる為にと麗日さんの手を煩わし、将来を奪う事こそ彼らにとって酷で不幸な事なのだ。
だがそうやって苦しむ父と母を見ていられなかった麗日さんはある決断を下す。
麗日「私は絶対、ヒーローになってお金稼いで…父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ」
飯田「……」
純粋になりたいという【憧れ】だけでなく、今置かれている状況…【現実】を加味した上での将来設計。
そんな彼女の発言に飯田君は何も答えられず唖然とする。かえって憧れが大半を占めている自分の動機の方が不純だと恥ずかしさまで感じてしまった。
麗日「ぅぅ…あんまし…こういうプライベートな話はしちゃいけない…とは思ったけどさ」
麗日「飯田君も言ってたし…」
麗日「……むぅ…」
少しの間沈黙の時間が続くが、暫くして再び飯田君が喋り出す。
飯田「……何処か、似てるよな。君と緑谷君」
麗日「ふぇ!?」
飯田「何だか…他人を放っておけない所とか」
飯田「思いやりがある所…とか」
麗日「ふ、ふぇ!?」ボッ
突然
麗日「ん、ななななそんな事ないよ私!」
麗日「たっただのファザコン・マザコンみたいなものだし!?デク君の方がよっぽどしっかりしてるよ!」
飯田「む…そうか?す、すまない」
麗日「いや…別に謝る必要は無いんだけどさ……」
グッと肩を伸ばしながら麗日さんはそう言った。真っ赤に染め上がった彼女の顔は一変。表情は曇って晴れ晴れしていなかった。
飯田「…?」
麗日「そう。デク君はすごいよ」
麗日「だから……」
麗日「超恐い」
場面はステージ上へと戻り第1回戦6試合目。常闇君と八百万さんが壇上に上がってくる。
マイク「さぁ!お待ちかねの第6試合!」
マイク「攻撃無効のチーターこと常闇踏陰VS武器作成のチーターこと八百万百!!」
マイク「戦いの行く末、どちらのチート野郎に勝利は明け渡されるのか!?」
八百万「…よろしくお願いしますわ」
常闇「嗚呼」
緑谷(単純に考えればこの勝負最強の矛と盾を兼ね揃えている常闇君に勝機が見えるが…)
緑谷(既に黒影の致命的欠点はチーム内のメンバーには割れてる!)
緑谷(そこを上手く突ければ或いは…)
マイク「START!!!」
試合開始と共に早速職人、八百万さんは閃光手榴弾を創造し始める。
八百万「常闇さん!貴方の攻略法はもう織り込み済みですわ!」ガシッ
体内から出てきた手榴弾を掴み直様放とうとするも…
常闇「思考が単純すぎる!!
黒影<アイヨ!!
八百万「…っ!」ガァッ!
常闇君の命令に応じ、黒影は素早く八百万さんに接近し、勢いよく吹っ飛ばす。吹き飛ばされた八百万さんの先に待ち構えていたのは触れた瞬間
マイク「うおおっ!!先手必勝!?常闇の相棒黒影が八百万に猛タックル!」
マイク「八百万が場外へ一直線!!」
「なーんかさっきからこの展開ばっかだなあ」
「ああ。吹っ飛ばして場外ハイおしまいって…」
「ワンパターンにも程が…」
一方が相手を吹っ飛ばし場外のお約束の展開に観客達もそろそろ飽きてきて嫌気が差してきた事だろう。
だが残念。今回のオチは場外
八百万「…」ピタッ
常闇「何っ!?」
緑谷「え…」
悟空「おっ!」
なんという事でしょう。
八百万さんが地面に背を向けたまま浮遊してるではないか。そう…まるで舞空術を使ってるかのように…
浮いたまま静止する彼女に常闇君を含めたその会場の観客は茫然としてしまう。
そんな時、スタジアム中に不気味な笑いが響き渡る。
八百万「ふふふふふふ…」
八百万「単純なのはどちらの方かしら!?」ピッ
常闇「しまっ…」ブンッ
ステージ外の空中から彼女はピンを抜いた閃光手榴弾を投げつける。
その瞬間会場が眩い閃光に包まれていく。
カッッ!
マイク「っあああ!マビィ!見えねぇぇ!!」
緑谷「くっ…」
常闇「黒影……!」
黒影<アクマタン…
黒影は強い光によって弱気になり身体を縮こませてしまう。回復させようと何とか時間を稼ごうとするが…
そんな隙を与えてくれる程彼女は甘くない。
ダダッ…
常闇「!?」
八百万さんは
常闇「ま…さっ…」
八百万「遅い!!!」
バヂィッッ!!
彼女の右手に握っていた物体の先端に触れた瞬間、全身に激しい電流が流れてくる。
騎馬戦で使った時と同様のスタンガンだ。
常闇「な…るほ…ど…」
常闇(見事…)
常闇はその場に倒れ気絶する。個性が封じられちゃ攻撃の手段も防御の術も無い。
八百万さんの作戦勝ちだな。
ミッドナイト「常闇君行動不能!!八百万さん2回戦進出!」
八百万「よしっ」ワァァァア…
常闇君に見事勝利した八百万さん。顔に喜色を浮かべながらこちらもガッツポーズ。
安定の場外ー?からのまさかの大逆転を目撃した観客は半ば興奮気味に彼女に称賛の声を上げる。
だがしかし、A組一同はとても笑える状況では無かった。
なんで創造の個性なのに飛べるの!?という疑問しか思い浮かばなかっただろう。安心しろ。僕も似たような感じだ。
こんな事を可能とする方法は1つしか無い。
その元凶と思われる人物の方を向き、にっこりと微笑みを見せると、両手を合わせてお辞儀をしながら…
悟空「わ、悪い悪い…つい」
と謝罪してました。やっぱり悟空さんが稽古をつけて八百万さんに舞空術教えてたんだな〜?
でもなんで?
八百万『お願いいたします!私にどうか体育の補習を…!!』
八百万『今のままでは駄目なんです!特訓させてください!』
悟空『え、えぇ…困ったなぁ……』
悟空(意外と戦いのセンスもあっしこいつの頼みを聞きてぇのは山々だけど…)
悟空(緑谷が他の奴に気の事バレねぇ様に用心しろって言ってっからなぁ)
悟空(…でも……)
悟空『じゃあ分かった!少しだけ付き合ってやるよ』
八百万『本当ですか!?』
悟空『…ただし!条件として……』
悟空(緑谷の活もお陰で取り戻せたし、八百万も八百万でこの2週間の修行でかなり気が上がったぞー)
悟空(こりゃ期待大だな…)
悟空「ナイス!」
悟空さんは八百万さんに向かって親指を立ててジェスチャーをすると、彼女からもGJサインが返ってきた。
八百万「ふふ…」
彼女が喜んでいるなら何より何だがお陰で舞空術を使う奴が2人出てきた為話が拗れてしまうぞ……
僕は新たに湧き出た問題に頭を抱えながら肩を落とす。
緑谷「はぁ……」
緑谷「……あ。そうだ。8試合目…」
もうじき自分の番が回ってくる。そう思った僕は焦って席を立ち上がりステージへ歩き出した。
葉隠「…………」
【控え室】
マイク<では!次の第七試合はー…
第7試合のアナウンスがスピーカーから流れ出す。麗日さんが出場する第8試合まで後数分程しか時間は残されていなかった。
麗日「そろそろ…来そうやな」
飯田「……正直な所緑谷君には突く隙はないからな」
飯田「恐らく君の個性も研究しているだろうし」
麗日「うん…初めて会った時もそうだったけど…改めてやるなあって思った」
麗日「だってちゃんとB組の個性もあの爆豪君やった人のもノートにとってる」
麗日「ちゃんと先見据えて行動してる」
麗日「どんどん凄い所見えてくる」
麗日「多分ウチは最初飯田君があんな事言ってなかったら騎馬戦でデク君と一緒になってたかもしれない」
麗日「恥ずかしくなった。あれ聞いてて」
飯田「……」
突然彼女は椅子から激しく立ち上がる。
麗日「皆将来に向けて頑張ってる!」ガタッ!
麗日「そんなら皆ライバルなんだよね…だったら…」
麗日「決勝で会おうぜ!」
そう意気込み飯田君にGJサインを送りながら、部屋から立ち去っていった。
飯田「……ああ。俺は…どちらも応援し…」 ガチャ…
飯田「…ている………」バタン
飯田「……あまり…かけられなかったな声…」
少しでも麗日さんに助言を与えたかった飯田君だったが、何も手助けできず見送ってしまった自分に彼は無慈悲を感じながら、ふうっとため息をつくしかなかった。
1回戦第7試合、個性ダダ被りな切島君と鉄哲君は3分間に渡る激しい攻防戦を繰り広げていた。
切島「っらあ!!」
鉄哲「ぐおっ…!」バギィッッ!!
切島君の右ストレートが鉄哲君の顔面に直撃。
ならば倍返しにと鉄哲は強烈なボディーブローを切島君に浴びせる。
鉄哲「っめんな野郎!!」ズドォッ!
切島「ぐっ…ぉぁ…」
その鉄拳の威力に思わず嘔吐しそうになるが口をすぼめながら何とか耐える。
「個性もさる事ながら実力もほぼ互角…」
「いいねいいねぇ!こういう暑苦しいの見てるとこっちもハラハラする!!」
悟空「いっけぇぇ!切島!そこだーー!!」
彼らの繰り広げる白熱の試合に観客席から多数の嘶きが発生する。お、悟空さんも吠えてる吠えてる…
2人共もう既に極限状態だ。フラフラと身体がおぼつかず、小さな衝撃1つで気絶しそうな程身体のダメージは深刻であった。
それでも勝利を掴む為、最後の力を振り絞り彼らは互いに駆け寄りトドメの一撃を放つ。
切島「うおおおおっ!!」ダダダ…
鉄哲「ぐあああらっ!!」ダダダ…
バキドゴォッッ!!
切島「……おぼ…」
鉄哲「……が、がご…」
相手の強烈な正拳突きを両者共に己の顔面に諸に食らってしまう。一時頰にパンチをめり込ませたまま2人は停止するがやがて気を失い、その場に崩れ落ちた…
2人の元にミッドナイトが駆け寄りジャッジをする。
マイク「判定は!?ミッドナイト!」
ミッドナイト「……両者、気ぜ…」
勝利の執念故か…
気絶した筈の切島君は膝をガクガク震わせながらその場に立ち上がる。そして…
切島「こ…こんくれぇ…どって事ねぇ…スよ」
と自ら健全(?)をアピール。
ミッドナイトは小さく綻びながら…
ミッドナイト「鉄哲君行動不能!!切島君2回戦進出!!」
拳藤「あっちゃぁぁ…鉄哲も負けちゃった」ワァァァア
拳藤「惜しかったのにぃ…」
塩崎「でもA組の方も満身創痍でしたし…まさに紙一重といった所でしょうか…」
拳藤「むむ……という事はもしかしなくてもB組進出者って…」
小大「ん」チョンチョン
隣にいた女子生徒が拳藤を小さく指差しながらアピールする。
拳藤「やっぱりぃいい!?」
物間「……」
そして…第1回戦最終試合……
マイク「お待たせぇぇぇ!!第1回戦のラストを飾るのはこの2名!!」
マイク「予選・本選共に1位とか強すぎ君!!」
マイク「ヒーロー科緑谷出久!!対!」
マイク「俺こっち応援したい!!」
麗日「っし…」
マイク「ヒーロー科!!麗日お茶子ぉぉおおっ!!」
須井化です…はい。
今回は麗日の回想回&1回戦の後半戦。
相変わらず戦闘シーンが省かれる暑苦組てどーなの…まぁ文字数的には仕方がないのですが。
実は体育祭前にギクシャクさせたのも麗日さんの動機聞かせない為ってのもあったんですよねぇ。
アニメの麗回も楽しみにしておりますぞ!←まだ見てない
いかがでしたか?
っと…今回は少し尺が余ったのでQ&Aコーナーでも設けますか……?そんなコーナーあったっけか、だって?
自由な校風がウンヌンカンヌン。
Q1.なんで敵連合襲撃後の臨時休校が2日もあるの?
A.これは生徒の被害の拡大と急遽悟空さの就任が決定した事と関わってきますなぁ。
正味生徒の被害小だとしても1日しか休校にしないのはどうなのか…まぁフィクションだから何とも言えんか。
その代わり体育祭の日程もちょい変わってます。そもそも原作がいつ開催とか細かいのは決まってなかったと思うけど…
Q2.なんで体育祭のくじ引きの時間が違ってるの?
A.これは須井化としての何か変なこだわりにありますなぁ。
くじ引き後、原作じゃ尾白君がデク君にアドバイスしたじゃないですか?なんかああいうのは少し反則というか…尾白君自身プライド云々言ってた割には何故それに出た!?って感じでした。
いや…そういう情報戦の目論見も兼ねたプログラムの立て方とかだったらいいんですけど。やっぱり特定の人物に絞って第1回戦を想定するのは体育祭の根本の目的と少しズレてしまう気がします。後ズルのしようがある。
だったら極力ギリギリまで決めずに1回戦で当たるまでの時間短くした方がいいんじゃね?
という私の独断です。
Q3.エイプリル・フールのあれは何だったの?
A.(°U°)………
何なんだぁい?それはぁ…
知らないです…はい。
次回はお待ちかねデクvsウラビティ!
原作じゃ叶わなそうな寧ろ叶いそうなこのドリームバトルを見逃すな!
いつかは麗日ファン増えるといいなぁ…フフフ!
何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。か、風邪になったデク君の看病したい人募集中!4/15までだから急いで書くべし!?
4月5日(水)以内に第29話の投稿を予定しております。
お楽しみに!
<ふぁーふぁふぁふぁ!今回も無事18:00達成という訳だぁ!
<また遅れたwなどとその気になっていたお前の…
<ん?
予約 19:00
<……
現在時刻18:05
<ゑゑゑゑゑゑ!!!
下着<これも全部薄汚いパ○ガスの仕業なんです!
野王<何だと!?それは本当か!?
ご飯(どこかで見た事あるような…)