悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」   作:須井化

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前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!第1種目の障害物競走もぶっちぎりの1位で予選通過!

更に第2種目の騎馬戦でも八百万・拳藤少女、常闇少年と共に数々の奇襲を退け、1位で本選突破となる!!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

第1試合の骨抜少年vs心操少年ではなんと両者共に相手に触れる事無く決着が着いてしまうが…?

更に向こうへ!PlusUltra!!!



第27話

不穏な空気がスタジアム中に漂いながら、本戦トーナメント初戦は幕を閉じた。心操君は骨抜君が保健室に運ばれていくのを見送ると後ろを振り向き、すぐに入場してきた方へ戻っていった。

 

淀んだ空気に包まれた会場をマイクが実況で再び盛り上げようとするも…

 

 

マイク「ヘ、ヘイ!!第1試合は見事心操の策略勝ちだーーっ!!」

 

マイク「結構早くケリ着いたな!?コレ最速記録更新したんじゃね!?」

 

シーン…

 

マイク「………o、ohhh…」

 

 

よっぽど後味の悪い観戦だった為か誰も彼のノリに乗ってこない。ただでさえ先程急にかっちゃんが退場となってしまい、不平不満があったからなぁ。期待外れだって感想(クレーム)が今にも殺到しそうだ。

 

何とかカバーしてもらおうとマイクは隣にいる悟空さんにヘルプを求めるが…

 

マイク「か、カカロットもなんか…その…一言………」

 

悟空「………」

 

マイク「おーい…ちょっとー」

 

 

駄目だ。心操君の分析中で忙しい彼には相手をする余裕などある訳ない。黙まりとしたまま暫く固まってしまう。

 

相澤先生も同様にその場から立ち去っていく彼の後ろ姿をただただ静かに見届けるのみであった…

 

相澤<……

 

相澤(学力で言や爆豪にも劣らぬ実力は持っていた…)

 

相澤(無表情で退く辺りは相手に対する礼儀・尊敬か…)

 

心操「…」スタスタ…

 

 

相澤(ありゃ……まるで…)

 

相澤(昔の俺そっくりじゃねぇかよ)

 

 

歩き去っていく彼の背中とかつての頃の自分の雄姿を重ね合わせながら……

 

 

 

 

 

 

 

鬱屈としたムードの中、それでもプログラムは進行する。第2試合の選手2人にステージに入場するようマイクがアナウンスを流し、呼びかけた。

 

控え室で待機していた轟君は予想よりもかなり早く終わった事に驚きながらもすぐに退室し、闘技場に向かって歩き始める。

 

廊下には蛍光灯がいくつも搭載されてはいるものの、実際の光量は少なく、明るさで言えば少し薄暗い程度。

 

だがそれにも関わらず、一部の道は明るく照らされていた。気にしながらその道の角を曲がった先には……

 

 

 

 

轟「……邪魔だ」

 

轟「退け、親父」

 

エンデヴァー「…………」

 

 

エンデヴァーがステージまでへの進路の前に立ち塞がる。両腕を組み壁に寄りかかっており、いかにも待ち伏せしていたような様子であった。

 

 

エンデヴァー「醜態ばかりだな、焦凍」

 

エンデヴァー「左の力を使えば、障害物競争も騎馬戦も圧倒できたはずだろう」

 

轟「説教垂れは試合終わってからにしてくれ。後が支えてんだよ」

 

悠々と語りかけるエンデヴァーに嫌気がさし、そそくさとその横を通り過ぎようとする。

 

エンデヴァー「いい加減子どもじみた反抗をやめろ」

 

エンデヴァー「忘れたか?お前にはオールマイトを超えるという義務があるんだぞ」

 

轟「……」スタスタ…

 

話し続けても一向に足を止める気配が無い轟君。真面目に聞く気が無いと見るや、エンデヴァーは身体に取りまく炎の勢いを強くしながら怒鳴りつけるように大きな声で彼に話し始めた。

 

エンデヴァー「分かっているのか!?兄さんらはお前とは違うんだ!!!」

 

エンデヴァー「お前は俺にとっての…」

 

エンデヴァー「()()()()と言っているだろうっ!!!」

 

轟「うるせえ」

 

 

とうとう堪忍袋の緒が切れてしまったか。立ち止まり、普段よりも声のトーンを下げつつ反発する。

 

 

轟「それしか言えねぇのかテメェは」

 

轟「お母さんの力だけで勝ち上がる。戦いでテメェの力は使わねぇ」

 

轟「そんだけだ…」スタスタ…

 

 

それだけ言葉を吐くと彼は再び入口へと歩き出す。相変わらずの息子の様子には呆気にとられる父親だったが、彼も同じく一言…

 

 

エンデヴァー「学生の内()は通用したとしても、すぐ限界が来るぞ」スタスタ…

 

 

という捨て台詞だけ吐き、廊下の奥の方へ歩き出し立ち去っていった。

 

 

 

 

轟「……っ……」ググッ……

 

怒りが込み上がった故か……彼の顔は忌々しそうな目つきとなり、痛みを感じる程に強く両手をグッと握り締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マイク「レディィィィスァァエエエェンド!ジェントルメン!!」

 

マイク「おー待たせ致しました!!第1試合は何かアレだったけど気取り直して行ってみ・YO!!」

 

ワァァァア…

 

どこかで聞いた事ありげな仕切り直しでようやく会場に活気が戻ってきた頃、第2試合の選手2人が闘技場に登場する。

 

 

マイク「優秀!!優秀なのに拭いきれぬその地味さは何だ!?」

 

マイク「A組!瀬呂範太ぁぁあっ!!!」

 

瀬呂「ひっで」

 

雑すぎる紹介にしょんぼりする瀬呂君。両腕をグッと伸ばしストレッチしながらの入場だ。

 

マイク「対するは…一度は緑谷を追い詰めたこの男!その強さ、泣く子も黙る虎児の如し!!」

 

マイク「A組!轟焦凍ぉぉおおっ!!!」

 

轟「………チッ……」

 

一方こちらは小さな舌打ちをしながらステージ上に颯爽と現れた。エンデヴァーの子(虎児)とダメ押しに褒めた(煽った)結果、彼の怒りを増幅させてしまったのだろう。妙にいつもより足取りが荒い歩き方であった。

 

 

両者共に出揃い、会場も盛り上がっていく中遂に試合開始のゴングが鳴る!!

 

マイク「START!!!」

 

ワァァァア…

 

 

いかにも闘るのが嫌そうな顔を相手に向けながら瀬呂君はグッと伸びをする。何せマイク曰く虎の子だ。今回の有力な優勝候補者が相手じゃ相当部が悪いと感じているのだろう。

 

瀬呂「いや〜まぁ勝てる気しねー訳ですが」ググーッ…

 

 

 

瀬呂「つっといて…!」キッ…

 

そう呟くと突然彼の目つきが変わる。さも野生の猛獣()を狩るハンターのように、その眼光は確実に獲物を捉えていた。

 

狙いは…上半身と下半身。

 

 

 

シュルルッ…

 

轟「っ…!」ギュッ!

 

瀬呂「敗ける気もねぇぇぇ!!!」グオッ!!

 

両肘から素早くテープを発射し…右のテープは轟君の右腕から左腕にかけて、左のテープは両膝の箇所に二、三重に巻き付けた。

 

拘束されてしまった轟君。これでは身動きが取れない。絡まっては元も子もないので右肘のテープを千切って……

 

そのまま瀬呂君は残ったテープを左へ勢いよく引っ張る。成る程、場外狙いの速攻か。

 

マイク「おおおー!この選択は割と最善なんじゃね!?」

 

マイク「轟全く抵抗できずーっ!?どんどんラインに近づいていってるぞ!」

 

マイク「つーか正直やっちまえ瀬呂ぉおおっ!!」

 

悟空「………」

 

 

 

 

 

 

轟「悪りぃな」ギロッ

 

 

 

 

 

 

彼が強く睨みつけた瞬間、その場にいた観客は口を開けたまま凍りついたように静止した。

 

いや…だって読んで字の如く…

 

 

マイク「…………ぁぁ…あ?」

 

パキパキ…

 

瀬呂「はは…は」ピクピク…

 

瀬呂「でっすよねぇ」

 

 

 

 

一瞬にして瀬呂君を凍らせたのだから。

 

僅かながらに凍り切ってない箇所があった為、生死には関わらなかったがほぼ完全に氷漬けにされ、地面と接着してしまう。

 

後少しでも本気を出していたら冗談無しで心肺停止とかあり得たぞ。

 

あ……まぁ…うん。

 

 

 

緑谷「………こ、お…り?」

 

拳藤「う、うひょー…デカイデカイ」

 

ゴオオッ…

 

 

 

ドームの2倍近い高さの氷塊作られて加減してるって言われても説得力無いんですが。

 

特に瀬呂君がいる方向にいた観客達は目の前に巨大な氷塊が現れ、視界が封じられる始末であった。

 

観客席の設計のように斜め上に凍らせていかなければ今頃観客にも被害が及んでいただろう。これでもギリギリ氷塊に触れるか触れないかの瀬戸際なのだから。

 

 

轟「……」パキパキ…

 

バリッ!

 

巻き付いていたテープも凍ればただの薄い氷の板のようなもの。空中に浮いていた轟君は四肢を少し力み、いとも容易く二本のテープを粉々に粉砕。そのまま地面に着地した。

 

序でに凍らされた審判、ミッドナイトは瀬呂君にまだ試合は続行できるか確認をとるがこんな状態で動ける方がおかしい。

 

ミッドナイト「せ、瀬呂…く、ん。動…ける?」

 

瀬呂「んな…阿呆な……」

 

ミッドナイト「瀬呂君行動不能………と、轟君…2回戦進出…!」

 

 

 

こりゃアレだ。【凄い】を通り越して【とんでもない】だ。心操君の試合とは別の意味で腰を抜かされた観客達は再び反応に困りながら…

 

「ど、どんまい…」

 

「どんまーい」

 

「どーんまい!」

 

とただ慰めの言葉をかけることしかできなかった。

 

これじゃ試合続行もクソもないので左の炎熱で氷を溶かしていく。大きさが大きさなだけに数分かかったぞコレ…

 

瀬呂「や、やりすぎやしませんかね…」ボオオッ…

 

轟「…すまねぇ、イラついてた」

 

緑谷「……」<どーんまい!どーんまい!

 

 

自然と沸き起こったどんまいコールの中、自身が凍らせたのを左手で溶かしていく彼の姿が…

 

僕には酷く悲しく見えた。

 

まるで……父が母を嗾ける光景を再現しているかのような……

 

そんな感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷が溶け、大量の水でびしょ濡れになってしまったステージを乾かして10分後、続きましては第3試合。上鳴君と塩崎さんの対決だ。

 

 

マイク「まずは〜B組からの刺客!!キレイな華には何とやら!?」

 

マイク「塩崎茨ぁああっ!!」

 

塩崎「???」

 

マイク「続いて〜A組男子!通称【スパーキングキリングボーイ】!!」

 

マイク「上鳴電気ぃいいっ!」

 

上鳴「キリングって…殺人鬼かよ」

 

またもや…というか寧ろ酷さが増している雑な煽り紹介にはほとほと呆れてしまう上鳴君。塩崎さんに至っては…

 

塩崎「申し立て失礼いたします。刺客とはどういうことでしょうか。私はただ勝利を目指しここまで来ただけであり殺傷を目的にこの体育祭に参加しているのではないのです。つきましては今の解説に不適切な表現があるとして訂正していただきたいと私からお願

マイク「ゴメン!!訂正します!!ええ!喜んで!!」

 

隙あらば問答無しに教員に抗議してしまう程である。率直でド正論なツッコミである。反論した瞬間頭部のツルがこちらに襲いかかりそうだ。

 

上鳴(あー…B組にもこんな感じのいるのな…)

 

淡々と一方的な口論を繰り広げる塩崎さんの姿をじっと見つめていた。マイクが何度謝罪しようともこれでもかと論じ続ける彼女のその真剣な眼差しに魅了されながらも、彼は塩崎さんへの対策をたった今考案中なのである。

 

上鳴(どんぐりまなこでキレイな面してっけど実力はガチめっぽいなぁ…)

 

上鳴(さてどうしたもんか…いきなり放電すりゃ即死だしなぁ)

 

上鳴(にしてもあの位の悪ノリでも敏感に反応しちゃう娘か…いいじゃないの)

 

上鳴(これはアレだ…うん)

 

 

 

上鳴(ラッキースケベしても正当化したら許して貰えるんじゃね?)

 

上鳴(そんでもって恥じらってる隙にボカン!乳揉めるし一石二鳥だ)

 

上鳴(やべえ…俺天才)

 

とても天災的で個性的なアイデアだがそれだけはやめてくれよ!?何だか思考回路が随分と別の方向に行ってますけど大丈夫ですか?上鳴さん?

 

上鳴(B組にもあんなけしからん奴がいるのか…なんて羨ま)

 

上鳴(じゃねぇじゃねぇ…奴の身体能力を測る為にも今こそ我が体眼を使う時!!)

 

性的な目つきから一変し、彼女の体格の分析を開始。そうそう…そういう事をして欲しい。

 

上鳴(ス○ウター計測開始…)

 

 

上鳴(身長167cm…体重は53kgと見た。ほっそりとスリムな体型。肌めっちゃ綺麗ー…どっかの某郎さんとは大違いだな)

 

オイ。

 

 

上鳴(バストサイズはあれか。Eカップか。Eってデケェなぁ…あ、でも八百万よりかは1つ下か)

 

オイオイオイ!?

 

 

上鳴(さてさてお待ちかねの下着ターイム!きになる色

止めろ!落ち着け!!

 

 

直向きな目線からまたダメな方向に走ってしまった…つられて顔がにやけてるぞコラ。これ以上言うと彼女の個人情報以前に色々アウトなのでやめておこう。

 

……え?知りたい?丁重にお断りする。

 

 

上鳴(俺の嫁ランキングTOP17には入りそうな女子だぁ…!)

 

世界一更新早そうなランキングだねそれ!後17て何故微妙!?

 

彼女の美貌に完全に虜になってしまう上鳴君。とりあえず胸部に目線を集中するのはやめよう。

 

上鳴(滅茶糞可愛いんだよなぁ…ぁあ……これ負かしたら泣いちゃいそう…)

 

上鳴(敢えて敗けてあげようか!?可哀想だし!)

 

上鳴(よし!そうしよう!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチッ……バチッ…

 

上鳴「……って訳にもいかねぇんだよな…うん」

 

悪ふざけモードから突然の臨戦態勢突入。冴え冴えとした瞳で塩崎さんを正視する。ふと喋りかけられたと思った塩崎さんは抗議を中断し、後ろにいた彼に相槌を打つ。

 

塩崎「…?何でしょう」クルッ

 

迸りながらも彼は己が全身に激しい電光を纏わせる。その時点でA組の誰もが放電の態勢に入ったのだと察しただろう。

 

 

だが…おかしい。

 

放電にしてはいつもよりイナズマが小さい気がする。加減して弱めた…?何故そうする必要がある?

 

上鳴君はそのまま喋り続けていった。

 

上鳴「なぁ…今夜…飯でもどうよ」

 

上鳴「俺で良ければ奢るぜ?」

 

上鳴「あと()()()

 

いきなり食事のお誘いを受け、彼の発言の意図が読み取れず塩崎さんは困惑する。

 

塩崎「……何を…」

 

上鳴「多分この勝負………」

 

 

 

 

上鳴「3秒で終わっから」

 

マイク「START!!!」

 

右手首を上下に振りスナップを利かせながらそう言うと、試合開始の合図が出される。塩崎さんさんが静止したのに乗じてマイクが送ったのである。

 

マイク「さ、さぁ!全方位全距離可能なツルに対し上鳴どう対処スルー!?」

 

悟空「涙拭けよ」

 

開始早々塩崎さんは頭髪のツルで防御態勢に入る。髪を切り離し、僅か1秒足らずで身体の全部を覆う壁を作る。

 

塩崎(この方は確か電気系統の個性を持っていた筈です…)

 

塩崎(ならば壁で感電を防ぎながらツルで捕獲するのがベス…

 

上鳴「後ろ取〜った」ガシッ

 

 

 

 

 

 

塩崎「ハッ!?」

 

壁を作った直後、突如上鳴君が背後に回り、両手で塩崎さんの両肩に摑みかかる。

 

 

分かるか?壁を作っている間に移動したんだぞ?

 

1秒未満で10m以上もの距離を移動したのだ。

 

 

 

何より彼女が驚きだったのは前方に上鳴君が居たにも関わらず、後ろから彼の声がした事だ。彼を見失わないようツルとツルの間に隙間を作って動きを把握しようとした矢先これだ。

 

何が起こったと後ろを振り返って確認しようとすると…

 

 

 

 

 

 

 

ドサッ…

 

塩崎「……ぁ……れ……?」

 

上鳴「こーんにちわ」

 

確かに後方に上鳴君は居た。だが変だ…観客席が見当たらない。というかアレ…身体が何かと接触したような……

 

目線を前に戻してみると……

 

 

目の前にあったのはツルの壁ではなく、ただの地面。

 

塩崎(そんな…!?確かに私は個性を発動していた筈!)

 

そう思って周りを見渡すと…ありました。後ろにツル。

 

という事はだ。ツルが消えたのではなく正しくは()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 

後ろを振り向いたその瞬間にまた20数m移動したのか?そんな馬鹿な…

 

彼の行った行為は分かったが

何故それが彼に可能な所業だったのか、彼女には到底理解し難かった。

 

 

 

 

 

 

緑谷「………ぁぁ…!?」

 

麗日「うっそ…やろ?」

 

ただ1つ…観客達の反応から

 

 

マイク「ななな…!」

 

悟空「へぇぇ…」

 

確信できる事があった。

 

塩崎さんは顔を少しだけ上げ目線を下にして後ろの地面を覗くと……

 

 

一本の白い線が彼女の目に入った。

 

マイクの解説の時間、塩崎さんが壁を構成している時間、そして上鳴君が彼女を白線の場所まで移動させる時間。

 

 

宣言された通り、合計約3秒で場外に出されてしまったのだ。

 

ミッドナイト「し、塩崎さん場外!上鳴君2回戦進出!!」

 

ワァァァア…

 

 

観客席から大喝采が湧き上がる。

 

入試4位障害物競走4位とB組の中ではトップを独走していた塩崎さん。この試合が始まる直前までは彼女の話で持ちきりであった。

 

ましてや前半然程大きな活躍もしなかった上鳴君に期待していた者は数少なかったであろう。

 

 

だがその株をたった3秒によるどんでん返しで一気に急上昇させた。

 

マイク「マジで!マジでやりやがった!!」

 

マイク「正に刹那の瞬間!!呼吸する間も無く…」

 

マイク「奴は圧倒的速度で敵を叩き潰したぁああっ!!」

 

ワァァァア…

 

上鳴君は肩を押さえつけていた両腕を離し、解放させる。直様彼女は立ち上がり唖然としてしまう。

 

塩崎「な、何故…こんな事に……私は……!?」

 

上鳴「そんなにタネが聞きたきゃいつでも大歓迎だぜ?」

 

上鳴「あ。後飯の返事よろしくー」スタスタ…

 

ドサッ

 

それだけ言うと彼は入場口へと歩き去っていった。塩崎さんはそれを見届けながら地面に膝をつく。そして一言

 

 

 

塩崎「悔……っしぃ……」

 

 

と呟いた。

 

 

 

ワァァァア…

 

緑谷(驚いた…まさかこんな結果になるとは…)

 

峰田「なんてヤツだ…!上鳴め…ちゃっかり床ドンしやがって!」

 

そこじゃないよね。

 

耳郎「うわっ…あいつ初対面の人にセクハラしていったよ…」<ヒクワー

 

そこでもないよね。

 

上鳴君もB組と似たような作戦で観客の目を惹きつける作戦に出てたのか!しかも何なんだ、あの技は……

 

彼の個性はただ電流を纏うだけな筈……

 

 

 

「電流を流す時に自分毎移動させただけだっての」ポンポン…

 

緑谷「!?」

 

急に肩を叩かれたので焦ってすぐ後ろを振り向くと…

 

 

上鳴「まぁ10秒以上持続させると身体がバテてイかれちまうけど」

 

あれ!?上鳴君!?今ステージから丁度降りてきた筈…って居ねぇ!?

 

なんでもう観客席の所に戻ってきてるんだよ…!まさか今の技を使ってここまで来たのか!?

 

上鳴「隠し玉ってのは最後の最後に使うべきだとは思ったんだけどよ〜」

 

上鳴「ちょっと午前中の見ててそうも言えなくなったわ」

 

 

 

上鳴「期待外れにはなってくれんなよ?お前用の対抗兵器なんだからな」

 

そう言い放ち、僕の肩から手を離し自分の席へゆっくりと戻っていく。

 

緑谷「……」

 

麗日(デク君…黄昏とる?)

 

 

正直冷や汗かいたよ。

 

視認もできない、気も感じられない。いや…感じる暇も隙もあったもんじゃない。

 

轟君ばかりに目を行き過ぎていた。心操君も、上鳴君も…全員数百人の中から生き残った強豪選手達。油断すればすぐに落ちてもおかしくない状況だった。

 

こんな緊迫感入試以来だぞ……

 

 

緑谷「皆僕を本気で殺しにかかってきてるなぁ…はは」

 

 

そう苦笑しながら頭の中に驚愕の色を浮かべていた。

 

 

 

 

 

だが上鳴君。君の敵はすぐ目の前にもいるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

ステージに第4試合の選手2人が立ち並ぶ。

 

マイク「速さで言やぁこいつも劣らねぇ!今爆裂にポピュラーなあのインゲニウムの実の弟!!」

 

マイク「飯田天哉ぁああっ!!」

 

飯田「兄さん…更にプレッシャーがかかるな」ワァァァア…

 

マイク「予選42位と、ある意味偉業を成し遂げたこの男!!糞イケの我らがハクバ・プリンス!」

 

マイク「青山優雅ぁああっ!!」

 

青山「ふふ…」

 

 

インゲニウムの話題もあり人気が飯田君に偏りがちだが、同ビーム勢である青山君にも個人的には注目している。

 

マイク「START!!」

 

青山「フフフフ!」スッ…

 

試合が開始すると同時に彼は腰につけているベルトに手をやる。ベルトは事前にミッドナイトと交渉し持ち込みOKとされたらしい。あ、申請すれば行けたんだね…

 

そう言われてみれば体育もヒーロー基礎学もいつもベルトを装着して授業受けてたな…何か深い意味があるのか…いや無かったらそもそも通らないとは思うけどさ…

 

 

青山「悪いけど飯田君…この勝負頂いたよ☆」ゴオッ!

 

へそから巨大な1本のレーザーを射出する。そのビームは一瞬にして飯田君を貫……

 

 

 

飯田「」フッ

 

青山「!?」

 

 

いたが、当たっても飯田君はピクリとも動かなかった。というか…あれ…なんか歪んで見えてきたぞ。

 

 

 

 

飯田「こっちだ!」

 

青山「!?」

 

バギィッ!!

 

 

 

すぐ右から声をかけられたと思えば青山君の後頭部に彼の強烈な横蹴りが炸裂する。

 

そのまま青山君は強く吹っ飛び壁に衝突する。ピクピクと身体を震わせながら地面に落下し気絶する。

 

ミッドナイト「青山君場外!!飯田君2回戦進出!」

 

ワァァァア…

 

民衆から多いな称賛を受けながら見事に勝利し、よしっと両腕を上げガッツポーズを取る飯田君。ごめん、それ両手バンザイ。

 

悟空(オラや緑谷が見せたように残像を残して叩きに行ったんかー…)

 

悟空(今のもかなり速かったぞ…)

 

マイク「速い!!誰もが太刀打ちできない驚異のレシプロバースト!」

 

マイク「だが……お、おお!?次あいつと当たるのって…」

 

そう。準々決勝、上鳴君が相手するのは飯田君だ。どちらも1年の中で1、2を争う速さを持っている彼等だ。

 

その試合で潰し合ってもらってその中で突ける欠点を見出すしかない…!

 

マイク「2回戦第2試合は最速vs最速の夢の対決!!果たして高1一番のスピード王者の座はどちらに明け渡されるのか!?」

 

マイク「見逃せないぜ!!」

 

 

 

 

さてと…ここで丁度第1回戦の前半が終わったので一応伝えておこう。

 

 

ここまでの試合経過時間、合計して30秒未満。

 

なんてこった。つまり平均すれば1試合10秒もかからずケリが着いてしまったという計算になる。轟君、上鳴君、飯田君に関して言えば5秒も経ってない。

 

少なくとも1分は戦うのかなぁと思ってたら予想が361°ひっくり返された試合ばっかりでしたハイ。特に轟君のデカイ氷塊・上鳴君のフルスピードには度肝をぬかれてしまった。

 

 

 

いつか対決し得るであろう上鳴君の隠し玉に対抗すべく策を練る為にブツブツ呟きながらノートにメモをし始める。

 

麗日「…」チラッ

 

緑谷「…って事はもう初っ端から界王拳使うしかないかな…いやでも実際雷のスピードだったら界王拳だろうがオールマイトだろうが無理ゲーだ…あれこれって勝ち目ないんじゃいや、でもよく考えれば雷の速さで走ってたら多分一瞬にして塩崎さんバラバラになると思うんだよって事は雷の様な速さってだけで実際は結構遅かったり…ああでも加減してるって可能性もあーコントロール出来ないとか言ってなかったっけか」カリカリカリ…

 

麗日「…む、むむ…」

 

黙々(呟いているのですが)とノートに文章を書き出す僕の姿を2つ左の席にいる麗日さんがチラッと覗いてくる。

 

まぁ僕自身はせっせと書いてる事に夢中で気がつかなかったけどさ…

 

ふぅ…と相変わらずの様子に呆れながら彼女は立ち上がり席から離れていった……?8試合目までまだかなり時間はあるのだが…

 

そうこうしている内に第1回戦の後半戦が始まろうとしていた。

 

緑谷「…っとと…いけないいけない…別の人の試合も見ないと」

 

緑谷「次次…次は……」

 

一旦ペンを止め、第5試合目の対戦者を確認する。えー…芦戸さんと……

 

 

緑谷「拳藤さん……か」

 

マイク「さぁ!後半8人によるガチンコバトル!!先の4試合以上に熱い戦い、見してくれよ?」

 

 

 

拳藤「さてと…いよいよあたしの出番だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が終わった直後、飯田君は一先ず控え室に戻った。レシプロバーストによって消費してしまったガソリンの補給の為、荷物を取りに来たのだ。

 

リュックの中身をガサゴソと手探りし、中からオレンジジュース(紙パック)を取り出す。

 

差し込んだストローを口に咥えジュースを飲み始めた。椅子に座って一休憩。

 

飯田(次の相手は上鳴君か…)チュゥ…

 

飯田(ある意味緑谷君や轟君より厄介な相手と当たってしまったな)

 

飯田(……弱気になるな、飯田天哉。俺の背中(バック)には兄さんが付いている)

 

飯田(インゲニウムの名を恥にはさせまい…!)

 

燃料補給をしながらそんな風に上鳴君との闘争心に燃えていた飯田君。

 

そんな時、控え室のドアから誰かが入ってきた。

 

 

ガチャ…

 

飯田(む…?5試合目の選手か?いや…まだ始まっていない筈…)

 

 

 

 

 

 

麗日「あ、飯田君。いたんね」

 

飯田「…麗日君……!」

 

 




須井化です…はい。

今回は一回戦前半まで。結局拳藤ちゃん出オチだったorz…

申し上げます!塩崎さんの個性ダイレクトに間違えてましっタァ!第23話の紹介訂正しやしたよ!

うろ覚えで壁が身体から離れてたので何処からでも生やせるのかなぁと。原作のハゲ説明には大草原、ツル生やしたかった。

そしてなんか上鳴君が強キャラ化してきましたねー。ただのアク○ルフォームじゃねぇか。

……なんでこう…上鳴にライ○ー要素絡んでくるんだろ、作品と関係ないのに。

ん?10秒が限界なら4〜8秒何回も繰り返せばいいじゃないって?そんな甘々な設計ではないんですよ奥さん…

いかがでしたか?



次回は女子メインの回かな。

拳藤・八百万・麗日ってやたら豪華だなオイ。

まぁ麗日ちゃんはただ飯田君と団欒するだけですが。

CPネームがいい茶かだっちゃで迷ってます。麗日にラムちゃんスーツって似合うのかな……

あ、メイド服じゃないよ。




何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。か、風邪になったデク君の看病したい人募集中!15日までだから急いで書くべし!?

4月1日(土)18:00に第28話の投稿を予定しております。アニメが終わった瞬間始まるぞ!後アニメも麗回なそうな!?
お楽しみに!


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