悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」   作:須井化

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前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJにて激戦を繰り広げ何とか敵連合の撃退に成功する1-A生徒達!!

だがその代償も大きく心体共に大きな傷を負ってしまう。

あの後緑谷少年は……?

そして悟空さんの初就職や如何に…

更に向こうへ!PlusUltra!!!


第18話

USJ襲撃翌日…木曜日

 

【某病院:とある一室】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体中が痺れる。

 

頭痛も酷い。

 

意識が戻ってから最初に感じた事はこの2つだった。

 

そしてフワフワとしたベッドの感触でここが先程まで居たUSJとは別の場所だという事まではすぐに分かった。

 

……それで何してたっけかなぁ…

 

確かUSJで………

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お………て」

 

 

 

 

???

 

誰かの声が聞こえてくる。しかもこれ聞き覚えあるぞ…

 

八百万さん?…いや違うなぁ。蛙吹さん……でも無いし。

 

「……てよ」

 

うむむ…

 

聞く限り何かを頼んでいるみたいだな…でも要求されている内容が分からない。

 

……待てよ。このまま目を開けて誰か確認すりゃいいじゃん。

 

 

 

 

 

 

少しずつ目を開いていくと……その先には見知らぬ天井。そしてすぐ横から誰かの声が聞こえてくる。

 

 

「起きてってば」

 

 

えっと……ここはどこで今どういう状況なんだ?

 

意識が朦朧とする中ゆっくり視線を下げていく。

 

 

 

 

 

 

麗日「起き……あ、起きた、デク君」

 

 

声の主は麗日さんだったのか……なんか少し違和感覚えたけど。

 

僕を起こす為ユサユサと身体を揺らしてたらしい。

 

その拍子に目覚めたんだろう。

 

これで1つ謎が解けた…けどまだ色々と疑問は残るんですが……

 

緑谷「えー……と…」

 

緑谷「麗日さん……ここって…」

 

麗日「学校近くの病院。デク君1日寝たっきりだったんだよ?」

 

麗日「もうすぐ目ぇ覚めるかなって思ったらいきなり唸り出したし」

 

唸る?僕さっきなんか苦しんでたっけ…

 

駄目だ。益々不可思議な点が出てくる……

 

病院?寝たっきり?1日?

 

……って事は…

 

 

 

あれ、これ寝過ごしてしまったのでは。

 

 

 

緑谷「ううらっらうらっ麗日さんっ!?」パサッ

 

布団を乱暴に身体から退かしてベッドから飛び起きた。麗日さんの肩に両手をやり、今度はこっちがブンブン身体を激しく揺らし始めた。

 

麗日「ぅぉおっっいなんでっすぅっか!?」ユサユサユサユサ!

 

緑谷「道着の人!あ…あの髪黒くて長い人どこいるの!?」

 

麗日「え?道……ダレソレ?」

 

緑谷「ややややややばばばば…」

 

しまった!敵連合が逃げてったからぐっすり安眠しちまった!!!

 

よくよく考えればあれは最悪中の最悪の展開!!

 

オールマイトが来た事で悟空さんがそのまま逮捕されちゃうじゃん!しかも大勢の生徒達が目撃してるから運良くヒーロー達が見てなかったとしても言い訳できない!!しかもヘドロと脳無で計2回!!って…

 

 

 

 

 

緑谷(あの人まじで脳無殺しやがったぁぁぁぁっ!!?)ガリガリガリ…!!

 

現在とてつもなく深刻な事態に陥ってる事をようやく理解したか。

 

ただでさえ寝癖で乱れていたていた髪型が強く頭を掻かれる事によりさらにグチャグチャになってしまう。

 

何か敵にもいましたねこんなボス。

 

ってそんな事は正味どうでもいい!

 

只今の状況を5文字以内で説明しろと言うものなら正に【いとやばし】!!

 

緑谷(1日…確かにもう14時過ぎ…!!)

 

緑谷(恐らくというか…絶対悟空さんの取り締まり終わっちゃってるよなぁ!うん!!)

 

緑谷(呑気に病院で休んでる暇無いよ!!!)バッ

 

ベッドから立ち上がって即座に走り出し部屋から出ようとするが…

 

 

ピキッ

 

緑谷「っだぁぁああっ!?」ドサッ

 

 

嫌な効果音が聞こえたと同時に全身に激しい電流が流れ出す。

 

少しの衝撃で身体がぶっ壊れそうだ……

 

そういえば4倍まで跳ね上げてたね僕。

 

麗日「ああ…デク君どこ行くの!?」

 

緑谷「い…いやあの…ちょっと…手洗い…」

 

麗日「安静にしなきゃ駄目だよ。もうすぐリカバリーガール来るから」

 

緑谷「リカバリー…?だってもう治癒は……」

 

緑谷「あ」

 

 

 

 

 

 

彼女曰く、治癒は結構体力削るらしい。

 

大怪我もすぐ治る…とは言うものの、前も言った通りリカバリーガールの個性は【怪我人の治癒力活性化】なので…

 

傷が深ければ深い程その人の負担はグッと上がる。ましてや意識が無い人に使えば最悪死んでしまう。

 

だからいつどんな時でもホイホイ使えるような個性では無い。重傷者は予め傷が癒え始めてきてから一気に治してしまうのが定石。

 

という訳で起きてから数分後、リカバリーガールが病室に訪れて治療を施してくれた。

 

その間麗日さんにあの後何が起こったのか一部始終を話してもらった。

 

あの後無事生徒達は皆治療を終え退院している事。

 

今は臨時休校で来週の月曜まで授業は無い事。

 

…1番驚きだったのは相澤先生だ……いや…あんなボロボロだったらすぐ治らないとは思ったけどさ。それだけが問題じゃなかったのが何ともね…腹ただしいというか…何というか。

 

起きたばっかりだってのと治癒で体力使ってた事もあって驚く気力も殆ど残っちゃいなかった。

 

肝心の悟空さんの現状聞けなかったしなぁ。まぁ麗日さんは気絶してて顔すら合わせてないから仕方ないんだけど。

 

 

 

……そういえば今気づいたんだが…

 

 

緑谷「なんで麗日さんは帰ってないの?」

 

麗日「ふぇ!?」

 

麗日「い、いいいいや!べっ別にデク君心配だからここでずっと見張っ…守ってたとか…そんな事じゃなっくてね!?」

 

図星でしたぁぁぁ分かりやす!!

 

真剣に弁解しようとしてるが心の声がダダ漏れでございます麗日さん。取り乱しすぎ!!

 

…え?僕の為に態々…?

 

麗日「皆昨日すぐに怪我治ったけどさ!ウチはなんか打ち所悪くてまだ病院に居たいなぁぁみたいな!?そ、そんな…」

 

緑谷「……優しいね、麗日さんは」

 

麗日「え?」

 

緑谷「入試の時も…赤の他人だったのに転びそうになったとこ助けてくれたりとかさ」

 

緑谷「その…なんだ…恥ずいや。成長してない」

 

赤面になりながらも苦笑した。

 

そうだ。今回麗日さんが傷負ったのも僕に責任がある。

 

彼女にはずっと借りを作りっぱなし…な気がする。何とも情けない。

 

そんな僕を見ながら麗日さんは…

 

 

麗日「……そうかもね」

 

麗日「変わりようがないもんデク君…………」

 

麗日「凄いから」ニッ

 

にっこりと笑いながらそう言い放った。

 

緑谷「…」

 

麗日「初めて会った時から思ってたもん!この人絶対やるなーって!尊敬した!」

 

麗日「あーっ…尊敬!なるほど、私はデク君を尊敬していたのか…」

 

麗日「新たな語彙増えた!これは使える!ふむふむ」

 

 

 

 

尊敬…そんな風に僕の事を称賛されるなんて生まれて初めてだと思う。

 

衝撃的というか…何というか……

 

嬉しい。

 

 

 

 

緑谷「…尊敬…か」

 

緑谷「だったら僕も君を尊敬しているって事になるな」

 

麗日「ひゃい!?」

 

緑谷「だって自分のP分けてまで他の受験生助けたいなんて普通できないよ」

 

緑谷「そこら辺…見習わなきゃって思った」

 

麗日「で…デク君…前も思ったけど……」カァァ…

 

麗日「なんでその事知ってるの?」

 

緑谷「え…ぁ…ああ。せ、先生が…さ、話してくれたんだよ…うん」

 

麗日「〜っ///」プシュゥ…

 

直談の事がバレてて恥ずかしくなったのか突然顔を真っ赤に染めあがる麗日さん。

 

…面映いにしてはなんかニヤついてるけど。

 

緑谷「麗日さん…?」

 

麗日(かぁぁぁぁっのDJティーチャーあれ程他言すんなっっつったのにぃぃっ!?)

 

麗日(普通にバレとるやないかい!!メッチャハズイわ…)

 

麗日(いや〜でもデク君から褒められたし…ってかめっさ嬉し!!)

 

表情の喜怒哀楽を激しく変化させながら脳内処理をするのが精一杯みたいだな。

 

喋りかけても反応しないや。

 

兎に角一旦落ち着かせて、何とか平常心を保たせる。

 

 

麗日「ぅぅ…デク君だけには知られたくなかったのにぃ」

 

と思ったら肩落としてかなり落ち込み始めたよ今度は…

 

は、話しづらい。

 

緑谷「ごめんごめん…からかうつもりで言った訳じゃないんだ」

 

麗日「そんな事分かってるけどさぁ…」

 

麗日「……ウチ、そんな大した事もやってないもん」

 

麗日「確かに試験の時は少しは手貸せたかもしれないけど…」

 

麗日「入学してから何にもデク君にやってあげれてない」

 

麗日「デク君みたいに成績バリバリ優秀な訳じゃないし…」

 

麗日「ちゃんと…自分の言った事貫き通してる……あれ、有言実行ってるよ…デク君は」

 

麗日「ウチなんか父ちゃん母ちゃんに迷惑かけてばっかだし………」

 

緑谷「そっそんな事無いよ…麗日さん明るくてムードメーカー?…だし!義理堅いし!」

 

緑谷「後ほら…ぇぇっと……か」

 

 

 

 

 

緑谷「可愛い…し?」

 

麗日「………」

 

麗日「え、ごめん。デク君聞こえんかった、わんもあぷりぃず」

 

緑谷「…麗日さん…か、かわわ…可愛いし…」

 

麗日「ごめんごめん。聞こえんかった。わんもあぷりぃずぷりぃず」

 

緑谷「いやっ…だから…可愛っ…いい…って」

 

何度も言わせないでくれぇぇ…こちとら恥ずかしい

ドサッ

 

緑谷「…へ?」

 

麗日「」ブクブク…

 

緑谷「………」

 

緑谷「ぎゃああああっ!?」

 

急に麗日さんが泡吹いて倒れタァァア!?

 

何!?何何!?何が起きた!?

 

僕別に変な事…ま、まさか…

 

脳内再生

麗日『うっわデクに可愛いって言われた…』

 

麗日『やば…吐き気が…おろろろ』

脳内再生終了

 

 

緑谷(僕どんな風に見られてんの!?)

 

安心しろ。真反対の事考えてるから彼女。

 

 

麗日(へへぇええへへへへ…デぇくクンにかわわわいぃぃって3回も…)

 

 

…寧ろ知らぬが仏か…?

 

何はともあれ気絶してしまっては仕方ない。

 

よっこらせと麗日さんを持ち上げてベッドに横たわらせる。

 

別にその後如何わしい事とかはしてないんで期待しなくていいです。

 

さてと…僕の寝る場所が無くなってしまったのはいいのだが…

 

緑谷「……」

 

 

緑谷「屋上に誰かいるな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【神奈川県神野市某バー】

 

別称:【敵連合アジト】

 

 

 

敵連合…現在2名。

 

こちらはほとんど無傷で帰ってきたが襲撃に伴う勢力の犠牲が甚大であった。

 

今では幹部1人と頭しか所属していない組織となっていた。

 

 

死柄木「……くっそ…完全にやられた…!」

 

黒霧「まさか…単なるガセ情報として無視してはいたが……」

 

黒霧「実際に正拳1発であんな幻影が表れるとは…」

 

死柄木「それだけじゃねえっ…!」

 

死柄木「ガキ共もチンピラ数十人じゃ手に負えねぇっ!」

 

死柄木「何より……あのそばかすの餓鬼ぃぃぃいいっっ!!!」

 

死柄木「あいつさえ居なけりゃ少なくとも生徒は殺害可能だった!!」

 

死柄木「聞いてねぇよ!!先生!!!」

 

死柄木「この脳無がただの学生1人に手こずるなんてよぉ!!」ガシッ!

 

黒霧「死柄木っ…」

 

死柄木は荒々しく近くにあった液晶に向かって怒鳴りつける。それと同時にそのテレビに両手で掴みかかった。

 

手は激しく震え徐々に握力が強くなっていき今にも個性で液晶を粉々にしてしまうような所であった。

 

黒霧が慌てて止めようとすると…

 

 

 

 

「やれやれ…勘違いはいけないな。弔」

 

「僕はあくまで【平和の象徴用殺戮兵器】を作り上げただけだ」

 

「君達が言うそのゴクウとかいう奴の強さなんて考慮してる訳ないじゃないか」

 

「全く…情けない姿だの」

 

 

 

 

液晶から誰かの声が流れ出す。

 

依然として画面が暗い為その人物の姿ははっきり目視はできない。

 

だが、1人は30〜40代程度の男性、もう1人は老人のような声だという事は分かった。

 

 

「無論、流石に加減はしていたとはいえあそこまで生徒に足止めされるとは思ってなかったけどね」

 

「脳無が弱かったんじゃあない。奴らがやたら強かっただけさ」

 

「正直舐めてかかったのが敗因だね、これは」

 

「ハッ。敵連合なんてチープな名前で良かったわい」

 

「折角ワシが3時間もかけて作った高性能脳無に泥を塗られたぞ」

 

「ははっ!聞いたか弔」

 

「この方僕が3日間でようやく作れるようなモンを制作時間24分の1に収縮して作ってやがる」

 

笑いながら上辺を取り繕うとする謎の2人。

 

まぁこんな状況で笑える筈もなく…逆に更に目つきが酷く鋭くなり液晶に向かって大声で叫ぶ。

 

死柄木「フザケてる場合じゃねえっつってんだろうがっっ!!!」

 

「まぁまぁ落ち着け弔…興奮し過ぎだ」

 

「大体お前さんが効率悪すぎなんじゃ。普通の個体なんか1時間ありゃ十分だわい」

 

「今回だってわざわざ脳無を送るよりかはあい

死柄木「嫌に決まってんだろ」

 

死柄木「()()()()()野郎に頼らずともオールマイトはやれていた……!!」

 

「………脳無の力は借りてる癖にのぉ」

 

死柄木「今何つったじじい!!」ピキッ

 

黒霧「気を沈めてください!死柄木弔!!」

 

 

テレビのある箇所にヒビが割れるような音がした。そろそろ痺れが切れそうだこりゃ。

 

黒霧は死柄木を押さえつけるだけで精一杯。

 

そんな事はお構いなしに話を続ける2人組。

 

 

「まぁまぁそう言ってやさんな先生」

 

「弔は弔なりの考え方があるし…それに僕もその意見には賛成できない」

 

「何故じゃ?」

 

「そうあっさりと一思いに殺しちゃったら意味が無い」

 

「僕が敵連合を作ったのは憎っくき平和の象徴ができるだけ醜く死んで欲しいからだ」

 

「彼だってオールマイトに対する執念なら僕に負けないさ」

 

「ああそうかいそうかい。そりゃさぞいい志しなんじゃろうな」

 

「オールマイトが死のうが死まいがワシには関係ない」

 

「じゃが…今回ワシも何の収穫も得れなかったワケじゃないからのぉ」

 

「へえ…」

 

「ま、とりあえず話も区切りがついた事じゃし」

 

「ぼちぼち行動に移し始めるとしようじゃあないか」

 

「…無理に口調変えなくても良かったんですよ?大先輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【某病院:屋上】

 

 

 

 

ピッ

 

「……」

 

少女は携帯の電源を入れ、今の時間を確認する。

 

…どうやらいつの間にか夕方になっていたらしい。もう16:00をとっくに過ぎている。

 

(……結局顔合わせられなかったな…)

 

(日を改めて今度会いに行こう)ピッ

 

時刻を見た後また直ぐ電源を切り、スマホをポケットにしまう。

 

果たしてこの作業を何度繰り返した事か……本人曰く最低でも10回以上だとか。

 

そのまま彼女はドアに向かって静かに歩き始めた……

 

 

 

 

 

 

ので空かさず後ろから声かけました。

 

緑谷「八百万さーん?どうしたの?」

 

八百万「」ビクッッ!!

 

…そりゃ柵の外から声がしたら驚くわな。反射的に身体が振動してしまった八百万さん。

 

後ろを振り向き、ようやく僕を認識してくれた。

 

八百万「……ど、どこから来ましたの…緑谷さん」

 

緑谷「窓」

 

八百万「…………」

 

言われたら意外と納得するだろ?棟内駆け回るよりかは直接飛んでいった方がはやいしね。

 

緑谷「看護師さんから聞いたんだよ。何か女子高校生が朝から来ていたって」

 

緑谷「誰かと思ったら八百万さんだったんだ」シュタッ

 

……本当は八百万さんって分かってたからここに来たんだけどさ。

 

そう思いながら柵を跨いで地面に着地した、

 

八百万「…え…っええ…まぁ」

 

緑谷「ごめんね…さっき起きたばっかりで相手できなくて…」

 

緑谷「どれ位待たせちゃった?」

 

八百万「う…あ……えーっと…」

 

……なんか八百万さんいつもと様子が違うな。もじもじしてるぞ……緊張?なんで?

 

 

八百万「…じゅ……」

 

 

10時?10時から6時間もここに居たのか…それは悪……ってそんな問題じゃないんじゃ…

 

八百万「10時間程は…」

 

 

 

 

緑谷「………………へ?」

 

待て待て待て……今から10時間前を逆算すると……

 

6時過ぎですね、うん。

 

緑谷「6時から…ここにずっと?」

 

八百万「」コクコク…

 

静かに数回頷いた。

 

 

 

マジかよ。八百万さん10時間も屋上に居たの!?食わず飲まずに!?ケータイたまに開くだけで!?

 

あれ…それ程重要な用事って結構やばいんじゃ…

 

 

八百万「」ダダ…

 

緑谷「へぇあっ!?」

 

唐突に八百万さんが走り出す。

 

 

あ…大体読めましたわ。これ多分

 

(1)包丁等の刃物類でグサグサ

(2)銃火器類で蜂の巣

(3)とりあえず顔面パンチ10発

 

のどれかだよね!?oh…

 

 

 

ダダダ…

 

徐々に走るスピードが速くなってくる。

 

ひぃっ!?頼むからお助けぇぇっ!!

 

わ、悪気があって建物壊したんじゃないんですよ!!相手オールマイト級だから周りの影響とか考えられなかったし!!

 

それともあの時来るの遅かったからか!?いや勿論行こうと思えばもう少し早く行けたけどさ!!でも広間にまだ敵うじゃうじゃ居たかもしれなかったしさ!!迂闊に走れなかったし!?

 

それとも何だ!?胸!?やっぱり胸ガン見してたから!?

 

緑谷「おおおおぱっぱぱ…」ギュッ

 

緑谷「………え?」

 

八百万「…………」

 

 

 

 

近づいてきたと思えば…彼女がいきなり抱きついてきた。胴回りを両腕で抱き込まれ、強く締め付けられた。

 

後1つ…

 

胸が当たってます!もの凄く密着してます!八百万さん!!

 

緑谷「や、八百万さん…どしたの……?」

 

八百万「……」

 

何事かと不思議に思い聞いても何も反応してくれない。

 

どういう事なの……

 

…あ!成る程!ベアハッグ!あったなプロレスでそんなの!あー…だからこんな風に抱き締め……

 

八百万「ごめんなさい」

 

 

 

 

 

緑谷「…?」

 

とても八百万さんとは思えない弱々しい声だった。肩に彼女の顔が乗っている為直接表情は確認できなかった。

 

肩の方に目をやろうとするが…その必要も無かった。

 

 

声を聞いて間もなく、服が湿っていく事に気がついた。

 

 

つまり…これって…

 

 

 

 

 

 

八百万「……ごめんなさい…緑谷さん」

 

緑谷「………やっ…よろ…さん?」

 

 

ポロポロと涙を零しながら僕に語りかける。彼女の身体は強く震え、悴んでいた。

 

…なんで泣いてるの……?

 

 

 

八百万「私……クラス委員失格…です」

 

八百万「あんなに…貴方の事散々馬鹿にして……偉そうな態度を取ってて…」

 

八百万「皆必死に闘ってたのに…」

 

八百万「自分はただ…安全圏で…遠くから皆を見守っていただけだった…」

 

八百万「私がもっと早く適切な指示を送れていたら飯田さんはゲートを抜けられていた!」

 

八百万「私がもっとしっかりしていれば…貴方も他の人も危険な目に遭わせずに済んだ!」

 

八百万「なのにっ…なのに私は何も出来ずに…増してや無傷で生還してきた」

 

八百万「貴方は入試で自分の利害関係なく麗日さんを救けた!!」

 

 

『私の見込み違いですわね…失望しましたわ』

 

 

八百万「初日だって相澤先生の脅迫に物怖じせずちゃんと峰田さんを救い出した!!」

 

 

『そんなに嫌ならば今すぐ辞めたら如何でしょう?』

 

 

八百万「結局…あんな事言っておきながら私は貴方に…3回も……救けられた……!」

 

八百万「所詮私は怠惰で無能な劣等生の1人でしか無かった!!」

 

八百万「()()()()…そもそも委員長なんて務まらなかったんです…いえ…資格だって無かった…!」

 

緑谷「…」

 

八百万「冷静に指揮を取れる飯田さんや…危険を顧みず貴方を救けに行った蛙吹さんの方がよっぽどふさわしかった!」

 

八百万「私なんかっ!!!」

緑谷「駄目」ギュッ

 

 

八百万「………?」

 

緑谷「【私なんて】、なんて言っちゃ駄目だよ八百万さん」

 

 

両腕を広げ彼女の身体を抱き締める。

 

落ち着かせようと、優しく背中を摩り始めた。

 

 

緑谷「……確かに今回…犠牲が出たのは100%君のせいじゃないとは僕は言い切れない」

 

緑谷「僕はさっき意識戻ったばっかりであまり状況とかは把握してないし…さ」

 

緑谷「でも…だからって一概に君()()のせいとも言えないと思うんだ」

 

八百万「私…以外ですか?」

 

緑谷「うん。僕だってもう少し奮闘出来てればこんな結果にはならなかった」

 

緑谷「あんな台詞吐いといてこのザマだ。恥ずかしいや…自信満々に言っちゃってさ」

 

緑谷「それに…もっと早く動いてれば麗日さんとか…他の人達も救けられた筈だ」

 

緑谷「僕にも責任はあるし、皆にだって思う節が幾つがある筈だ」

 

緑谷「言っちゃうと校長先生がオールマイトと対談してなかったらもう10、20分早く来れたしさぁ……ね?」

 

八百万「え…えぇ…間違っては…いませんわね」

 

緑谷「………でもね、これは逆に言えば皆のお陰であるとも言えるんだ」

 

八百万「私達の…?」

 

緑谷「そう…本当、今回ばかりは死ぬかと思ったよ。髪の毛にトドメの一撃触れかかってたからね。これぞまさに間一髪!ってヤツかな」

 

緑谷「皆が体張って作ってくれた1秒が僕らの命を繋いだんだ」

 

緑谷「勿論、八百万さんもね」

 

八百万「………私…ですか?」

 

緑谷「遠くからだからはっきりとは視認できなかった…けど大体分かる」

 

緑谷「八百万さんは…13号先生が殺されそうになったから戦ったんだろ?」

 

緑谷「そうじゃなきゃ今頃死者が出てた」

 

緑谷「君のほんの少しの【勇気】が大きな【希望】に変えてくれたんだよ」

 

八百万「…でもっ…私は…そんな……大それた事は…」

 

緑谷「自分を卑下しちゃいけないよ」

 

緑谷「副委員長が()()()()()()、今こうして皆助かってるんじゃないか」

 

緑谷「今回、改めて実感した」

 

 

 

 

 

 

緑谷「君が僕のパートナーで本当に良かったと思ってる」

 

緑谷「()()()()()、八百万さん」ニコッ

 

八百万「…」

 

僕は満面の笑みで彼女にそう言い放った。

 

…彼女の気持ちは辛い程分かってた。僕も1年前…同じ様な事をしたからだ。

 

自分が弱いから…出来損ないだから…救けられなかった。

 

 

でも悟空さん(あの人)はそんな僕を強い人間だって認めてくれた。

 

それがとても嬉しくって仕方がなかった。初めてだから…そんな事人に言われたのは。

 

彼女も…僕みたいに悲しい思いはさせたくない。

 

少しでも励ましになるように話したつもりが…逆効果だったのか…

 

 

 

 

八百万「………ぅぅ…」

 

八百万「ぅぅ……っ……ぅぅぅ……」ポロポロ…

 

緑谷「え…あ……や、八百万さん?」

 

緑谷「なにかしたっ!?僕何かした!?ねぇ!?」

 

 

 

さっきよりも激しく号泣してしまった…とほほ。

 

……まぁ感涙だったからいいんだけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後…すぐに八百万さんと麗日さんは帰っていき、僕もその日の夜中に無事退院できた。

 

2日ぶりの我が家…かと思いきや、やはり1名足りない。

 

お母さんに聞いてみた所、ただ首を横に振るだけだった。

 

…悟空さんは何処へ………

 

不安が頭の中を過ぎりながら休日3日間が過ぎていった。

 

そして…月曜。久々の学校だ。

 

 

 

 

【1-A教室前】

 

緑谷「……」

 

めっちゃ緊張してます。ロクに連絡も取れなかったから皆どうしてるのだろうか。

 

麗日さんと…八百万さんも元気にはしてそうだが。

 

緑谷(…まぁいつも通りに話せば調子も戻ってくる…か)ガシッ

 

ガララッ…

 

ドアの取っ手を掴んで横にスライドさせる。それと同時に教室にいたクラスメイトに微笑みながら挨拶する。

 

緑谷「オハヨー!皆!!」ドーン

 

緑谷「………?」

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

だが、期待とは裏腹の反応をしてくる。

 

皆静かに自分の机に黙ったまま着席していたいつもならばそれぞれ群がって教室が騒がしくなっている筈なのだが…

 

それだけじゃない。

 

何か……顔がそっぽ向いてない?かなり大きな声で喋った筈が誰もこちらを振り向かない。

 

何だろう…も、もしかして避けられている?なんで?

 

 

 

 

……思い当たる所はあった。

 

 

 

切島『…悪かったな』

 

 

 

この言葉が何日経ってもずっと引っかかっている。

 

なんで切島君は謝ったのだろうか?別に僕は特別何もされた覚えないしなぁ…

 

 

不思議にそう思いながら自分の机に向かって歩き出していた。念の為隣の席に居る瀬呂君に再び話しかけてみる。

 

緑谷「おはよ、瀬呂君」

 

瀬呂「ん…ぁ、ぁあ…よう緑谷」

 

緑谷「???」

 

やっぱり怪しい…というか皆の様子がおかしい。オロオロとした喋り方で違和感丸出しだ。

 

皆何があったんだ。そんな事を考えていく内に1日の始まりのチャイムが鳴り響く。

 

キーンコーンカーンコーン

 

キーン…

 

ガララッ

 

緑谷「?」

 

それとほぼ同時にドアが開くような音がする。教室に入ってきたのは……

 

 

オールマイトだ。

 

オールマイト「おはよう、皆!週末ゆっくり休めたか…」

 

「」ゴゴゴ…

 

オールマイト「What!?」

 

彼もこの異様な空気に気づいたようだ。あまりの空気の重たさに驚いてしまっている。

 

オールマイト「そ…その様子を見る限りじゃまだ疲れが残ったままみたいだな…」

 

オールマイト「無理もないか…」

 

………ん、待てよ…普通に流してしまってはいるが…

 

なんでオールマイトがここにいるの?

 

オールマイト「ええっと…まずHRを始める前に重大発表がある」

 

オールマイト「先日ブラドキングも言っていたと思うが相澤君はしばらく停職となった」

 

緑谷「て、停職…って事は怪我云々じゃなくて…」

 

オールマイト「ああ。恐らくもう一方の理由が決定的になったんだろう」

 

オールマイト「まだ詳しい情報は判明してはいないが…」

 

オールマイト「少なくとも前期一杯は学校に来れるような状況では無い…らしい」

 

緑谷「そんな……」

 

前期って…つまり10月まで相澤先生とは会えないのかよ……

 

まさかとは思ったがこんな不条理な処分が下されるとは……大人の事情に首を突っ込む訳にはいかないがこれはあまりに酷すぎるのでは…?

 

オールマイト「…という事なんで1-Aの新担任を早速決めてきた!!」

 

緑谷(あ、オールマイトじゃないんですね、やっぱり)

 

オールマイト「因みに…その先生は」

 

 

オールマイト「()()が初出勤の教員の為皆…お手柔らかに頼むよ」

 

緑谷「…………」

 

緑谷(え)

 

オールマイト「では先生!こちらへどうぞ!」

 

 

 

 

初出勤?初日なのに担任務まるの?

 

自由な校風が売りとは言うがあまりにも緩すぎやしませんかね。

 

色々と疑問点が残りはするが…雄英教師だ。きっと凄い人に決まって…(ガララッ

 

 

 

 

 

「いやぁ…いざこんな人いっぺぇいる前で話すとなるとすっげぇ緊張するぞ…」

 

緑谷「……………」

 

 

 

1-A「え」

 

今日聞いた皆の第一声がこれである。(瀬呂君除き)

 

さっきの緊張感はどこに行ったのやら皆口を大きく開けたまま停止し、呆然としていた。

 

それもその筈…

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「オッス!オラ悟空だ!」

 

悟空「えっと……とりあえずおめぇら全員と仲良くしていきてぇな!って思ってる!」

 

悟空「よろしく!!」ニッ

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷(なんで悟空さん釈放されてんの……)

 

緑谷(……え?教師?仕事してるの?)

 

緑谷(え?え?え?)

 

 

 

頼む、状況呑み込めないから誰か説明してくれ。

 

 

 

 

 

 




危ねぇぇぇぇぇっ!ギリッギリ間に合った!!後数分かよ!!!

須井化です…はい。

今回はウラビティとクリエティをとにかくデクに絡めただけです。

ヤオヨロッパイの所の文章構成に手間取った…畜生!

あ、後なんか悟空さが働き始めましたね(悲報)

お前だけは自宅警備員予備軍だと信じてたのにぃっ!!

いかがでしたか?


次回は体育祭…は入らんわ。

とりあえず悟空さが1-Aいじめる回かな。

20話までは体育祭の前振り的な感じにするつもりです。

まぁ気長に待ってくだサイヤ。





何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月27日(月)以内に第19話の投稿を予定しております。

お楽しみに!

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