悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」   作:須井化

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前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

敵連合の秘密兵器【脳無】が現れ絶対絶命の窮地に立たされた1-Aだったが…

駆けつけた孫悟空により難を逃れる!!

更にオールマイトの登場により不利と見た敵連合は自ら身を引いていく。

辛くも痛み分けという決着でこの闘いは終焉を迎えたが……

更に向こうへ!PlusUltra!!!


第17話

悟空さん、オールマイトが来てから数分後…八百万さんと教員達がUSJに辿り着く。

 

それから間も無くして警察も現場に到着した。

 

だが時既に遅し、

 

彼らが見たものは無惨に崩壊した施設と泣き崩れる生徒達の姿だけであった。

 

 

 

 

 

 

スナイプ「………」

 

スナイプ「なんてこった。してやられたってやつか」

 

ミッドナイト「これだけ派手に侵入されて逃げられちゃうなんてね…」

 

根津「完全に虚を突かれたね」

 

根津「だが今は生徒の安否が第一優先だ」

 

根津「後は警察(彼ら)に任せようじゃあないか」

 

 

 

 

 

「随分と酷い有様じゃないかオールマイト」

 

「君が担当の筈じゃなかったのか?」

 

薄茶色のコートを着た刑事がオールマイトに話しかけてきた。他の人達とは違いやたら親しく接してるなぁ。

 

それもその筈。この人は彼の旧友…数少ないオールマイトの素性を知る男…

 

オールマイト「久しぶりだな!塚内君!!」

 

 

塚内直正警部その人だ。

 

塚内「見た所今回は遅れて登場したってパターンか?」

 

塚内「場の荒れようにしては闘いの傷痕がこれっぽっちもないじゃないか」

 

オールマイト「はぁ…何ともまぁ……」

 

オールマイト「面目無い」

 

オールマイト「こんな惰弱な姿晒してしまって」

 

オールマイト「残念ながら今回私の出番は無かったぜ」クイクイッ…

 

塚内「どういう事…」

 

オールマイトが指差す方を見るとそこには見覚えのある顔が…

 

その人物は照れ臭そうにしながらこちらに手を振りアピールしている。

 

 

悟空「へ、へへへ……へ」

 

オールマイト「君が1年間探していたヘドロ事件の解決者……その張本人さ」

 

塚内「………写真と完全に一致してるなありゃ」

 

オールマイト「…少し彼と話したい。気になる事がいくつかある」

 

塚内「正気か?君の話が本当なら奴は無免許で敵を2回も…」

 

オールマイト「塚内君、君も来るんだ」

 

塚内「な…」

 

オールマイト「あの方の話を聞いてからでも逮捕するのは遅くない」

 

オールマイト「ダメか?」

 

塚内「………ここの収束がついたらな?」

 

オールマイト「感謝する…!」ペコッ

 

 

オールマイトは深くお辞儀をし、僕を含めた負傷者8人を引き連れ病院へと飛び立っていった。

 

その際悟空さんも彼に同行していったという。

 

他の生徒達は皆ゲート前に集まりそれぞれ点呼を取ってもらった。先程悟空さんが他のゾーンで彷徨っていた人等も集めてくれたので比較的すぐに安否確認を終えられた。

 

……まぁ数人居なかったんだけどさ。

 

 

 

塚内「20人中14人確認」

 

塚内「重傷者の6人を除き全員揃ってるな」

 

ひとまず闘いが終息した事により一安心。

 

指示を待っている間皆はクラスの人と対話を行っていた。

 

葉隠「いやー大変だったね尾白君!」

 

葉隠「君今日燃えてたんだって?よく1人で撃破できたね!!」ポンポン…

 

肩を軽く叩きながら尾白君に話しかける。ってか手袋とブーツだけってあんた全裸でいたのかよ…

 

尾白「何そんな楽しそうに話してんの葉隠さん…」

 

尾白「こっちはこっちで色々苦労したんだから」

 

尾白(結局…あの電気男はあの道着の人が首トン1発で気絶させちゃった)

 

尾白(殆ど互角でケリがつかなかったんだよね)

 

尾白(そりゃ倒してくれたあの男性も気にはなるんだが…)

 

葉隠「私は土砂のとこいたんだ!轟君クソ強くてびっくりしちゃった!!」

 

轟「……」

 

尾白「危ないじゃないか…きっと一瞬で辺り氷漬けにしたんだろ?」

 

葉隠「うん!危うく巻き添え食らうとこだったよー」

 

轟(……葉隠もあの場に…?)

 

轟(フィールド全域を完全に凍らせた訳じゃねぇ…が)

 

轟(傍観できるって距離にしちゃ回避したってのは無理ねぇか?)

 

轟君は不自然に感じながら2人の会話をこっそり聞き耳を立てていた。

 

 

 

 

一方こちらはというと…

 

青山「僕がいた所はね…」

 

青山「どこだと思う!?」ビシッ!

 

青山君が突然皆に問いかける。身振り手振りが大げさなしぐさはその重要性を強調する為なのか…

 

だがしかし誰も耳にしてくれない。

 

常闇「そうか。やはり皆のとこもチンピラ同然だったか」

 

切島「ガキだからって舐めてかかってきやがった」

 

青山「…」

 

青山「どこだと思う!?」ビシッ

 

蛙吹「どこ?」

 

聞こえなかったと思い再度ジェスチャーをしながら皆に訊ねてみる。

 

無視するのも可哀想なので蛙吹さんが返事をするのだが…

 

 

 

青山「秘密さ!!!」

 

じゃあ言うなよ。

 

 

塚内「そうだな…一旦生徒は教室に戻ってもらおうか」

 

塚内「そこで暫く待機。程なくして怪我人の詳細も明らかになるだろう」

 

塚内「校長先生。よろしければ校内も巡回したいのですが…」

 

根津「問題ないさ!権限は君達が上なんだもの」

 

根津「一部じゃとやかく言われちゃいるが捜査は君達の分野だしね」

 

根津「よしなに頼むよ」

 

「塚内警部!!」ダダッ

 

塚内「ん?」

 

話を終えると部下の1人が深刻そうな顔をしながら塚内さんに駆け寄ってきた。

 

「報告致します!現場を捜査した所何やら動物の脚…のような破片が散らばっているのを発見しました」

 

塚内「それは一体…」

 

「とは言うものの全て氷漬けにされており調査もままならない状況でして…」

 

塚内「やむを得んな。全て回収し、科捜研に引き渡せ!」

 

塚内「何らかの情報がつかめるかもしれん」

 

「了解しました!」

 

会話した後すぐに部下はその場を立ち去る。

 

塚内さんは相方の犬…ではなく猫のお巡りさん(二足歩行)に声をかけ…

 

塚内「さてと…三茶」

 

三茶「はい?」

 

塚内「俺はこれから学校で少し野暮用がある」

 

塚内「それが終えるまで、指揮は任せるぞ」

 

三茶「了解」

 

八百万「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後…

 

【対面室】

 

 

 

ガチャ…

 

 

 

 

悟空「おっ邪魔しまーす…」

 

そっと静かにドアを開け小さな声で挨拶しながら部屋に入っていく。

 

既にオールマイトと塚内警部はソファに腰掛けて彼が来るのを今か今かと待ち侘びていた所だった。

 

悟空「…」ジィ…

 

オールマイト「どうぞこちらへ」

 

悟空「お…おう」

 

そそくさに言葉を返し、彼らとは向こう側のソファにポフッと座り込む。

 

いわゆる事情聴取だ。悟空さんに限ってはそれだけでは無さそうだが。

 

塚内「お手数おかけして申し訳ございません」

 

塚内「ご協力感謝致します」

 

悟空「いやぁ…オラにできっ事があんなら喜んで手伝わさせてもらうぞ」ジィ……

 

塚内「では早速幾つかの質問に答えていただきます」

 

塚内「まず身元の確認ですが…」

ポタポタポタポタ…

 

塚内「……」

 

オールマイト「……あの……」

 

 

オールマイト「お茶菓子よかったらどうぞ?」

 

悟空「え?いいんかぁ?」ダラダラ……

 

 

 

ソファとソファに挟まれているテーブルの上にはお菓子の山が。

 

成る程。悟空さんなら涎が溢れ出る訳だ。

 

テーブルに置かれている食べ物を一生懸命観察している事に気付き、彼に薦めた。

 

 

オールマイト「え、ええ…ご自由に」

悟空「分かった」パクッ

 

オールマイト 塚内「「……」」

 

悟空「うめぇぇっ!」モグモグ……

 

 

 

 

ご覧いただけただろうか。

 

オールマイトが喋り終えた瞬間、悟空さんの頰がいきなり膨らんだのだ。必死に顎を上下に振動させ、何を食べているかとテーブルの上の皿に目をやると…

 

あら不思議。お菓子が消滅している。

 

しかもこの手品の一番のミソはこのお菓子が小包装されていたという点だ。なんとこの方袋を開けず中身だけ食べたのだ。

 

これが世に言うトリックというやつなのか…2人は困惑しながらその光景を見る事しか出来なかった。

 

 

 

お菓子を5秒足らずで食べ終わった悟空さんに驚きながらも3人は再び話し始めた。

 

塚内「えー…では最初に身元情報の確認をお願いしたいのですが…」

 

悟空「……」

 

悟空「みもとぉ?」

 

駄目だ。悟空さんの知識じゃ質問の理解すら難解だぞ…流石の彼らも唖然としてしまう。

 

仕方ないので究極的に噛み砕いて説明する事にした。

 

塚内「そうですね…貴方の名前…住んでいる場所…後職業を教えてください」

 

悟空「あーそれなら何とか言えそうだ」

 

悟空「オラは孫悟空…んでこの間までパオズ山に住んでた」

 

悟空「今は……ここら辺ぶらぶらしてる」

 

塚内(住所も分からんのか住所も…)

 

悟空「仕事は…………」

 

悟空「さ、探し中…だぞ」

 

つまり無職ですね、分かります。

 

こんな曖昧な情報だけでは大して参考になる筈が無い。塚内さんは調査の難航さに頭を抱えてしまう。

 

唯一使えそうな物として【パオズ山】というキーワードが出てきていたが勿論知っている訳も無くこれ以上の聞き取りは無意味と判断する。

 

険しい表情になりながら塚内さんは悟空さんにこう言い放つ。

 

塚内「…孫さん。単刀直入に言います」

 

 

 

塚内「貴方は現在3つの罪に問われている」

 

悟空「?」

 

塚内「1つ、個性の無断使用」

 

塚内「聞く所…貴方の個性は不明ですが常人を遥かに凌ぐ身体能力があるようですね」

 

塚内「敵連合の部下の1人も倒しただとか…」

 

悟空「ああ…オラがぶっ飛ばした」

 

塚内「まぁ貴方の個性が断定できない以上これは何とも言えないんですが問題は後の2つ」

 

塚内「不法侵入……そして殺人の罪」

 

悟空「!!」

 

塚内「特に後者の方は一つ目の個性濫用と大きく関わってくる」

 

塚内「しかも貴方の場合今回だけでなく1年前にも似たような事案を起こしてしまってる」

 

塚内「以上の事から…死刑は無いにせよ其れ相応の判決は下る筈だ」

 

悟空「………」

 

悟空「つ、つまりオラはお巡りさんに捕まらねぇといけねぇのか?」

 

オールマイト 塚内「「うん、だいたい合ってる」」

 

塚内「とは言えあくまでこれは僕の主観的理論……ってもほぼ警察の希望に近い」

 

塚内「本題はこれからです」

 

塚内「オールマイトはご存知…でしょうか?」

 

悟空「ああ。知ってっぞ!」

 

悟空「地球で1番強ぇ男なんだろ?一度でいいから会ってみてぇと思ってたんだー!」

 

両手をブンブン振りながら彼との出会いに感動している。興奮し過ぎだ…僕が言えないか。

 

 

 

 

 

 

ガタッ

 

悟空「ん?」

 

 

 

それを見るなりオールマイトは突然立ち上がり彼に深く額ずく。

 

 

 

 

 

 

 

オールマイト「先の敵の撃退……」

 

オールマイト「我が校の生徒(あの子達)を命懸けでお護りくださって誠にありがとうございます…」

 

オールマイト「全校生徒一同…並びに職員を代表し…」

 

オールマイト「深く……深く御礼申し上げますっ」

 

悟空「……」

 

 

 

果たして平和の象徴が地に伏せ誰かに土下座をするという光景を見た事があるだろうか?

 

現在彼の脳内は恐らく混沌とした状況となっているだろう。敵に出し抜かれた悔しさ、己の不甲斐なさ、襲来した敵連合の謎…疑問。

 

様々な感情が行き交う中全て底に押さえ込み、恩人に対し全身全霊の感謝の意を示した。

 

 

 

 

悟空「顔上げてくれ」

 

悟空「オラは大した事をした訳じゃねぇ」

 

悟空「寧ろ謝るべきなのはこっちの方だ」

 

悟空「もう少し…早く動けてりゃ…」

 

悟空「他の奴も助けられてたかもしれねぇのに…」

 

 

悟空「すまねぇ…ホント」ペコッ

 

同様に悟空さんも2人に一礼する。

 

 

 

 

数秒間沈黙の時間が続き暫くしてオールマイトは再びソファにゆっくり座り込んでいく。

 

 

オールマイト「さっき…貴方は私と会いたかった…と仰ってましたね?」

 

悟空「おう」

 

オールマイト「……でも実際…貴方とUSJで顔を合わせた時は…」

 

悟空「……」

 

悟空「どうやらオラ達はすれ違いでお(たげ)ぇ見た事がありそうだな」

 

その驚愕の事実に塚内さんは驚きを隠せなかった。

 

きょとんとした表情でオールマイトに聞き返す。

 

塚内「ほ、本当なのかいオールマイト…」

 

オールマイト「ああ…間違いない。忘れもしない」

 

オールマイト「まさか天高く翔けていくあの巨大な龍を2度も目撃するとはな…」

 

オールマイト「我ながら恐ろしい強運よ」

 

悟空「…やっぱりそうだったんか」

 

悟空「こんな()()もあんだなぁ…」

 

オールマイト「?偶然?」

 

悟空「ああ。オラどうやら異世界…ってとこから来ちまったようでよ」

 

悟空「訳も分からずフラフラそこらへん歩いてたらデケェ気配を見つけたんだ」

 

悟空「そこを向いたらびっくらこいた!緑谷が怪物に襲われ…」

 

悟空「あ」

 

 

 

 

遅いよぉぉ!何バラしちゃってるの悟空さん!!

 

警察に生徒との関係性を大胆カミングアウトしてしまった。

 

汗をかきながら見事にやっちまったと口を開けて暫く静止してしまう悟空さん。

 

 

塚内「……一応…嘘をついていた自覚はあったようだね」

 

塚内「さっきの情報、訂正しときますよ」カキカキ…

 

悟空「わ、悪い。悪気があった訳じゃねぇんだよ…」

 

悟空(すまねぇぇぇぇ緑谷ーー!)

 

悟空(おめぇの事バラしちまった!やべえ!)

 

悟空(このままじゃオラや緑谷どころか…)

 

悟空(おめぇの母ちゃんまで捕まっちまう!)

 

これに対してオールマイトは…

 

 

 

オールマイト「……」

 

オールマイト「成る程。これでようやく…」

 

 

 

 

オールマイト「全てのロジックがつながった」ニッ

 

にやけながらそう答えた。

 

 

 

悟空「?」

 

オールマイト「貴方は1年前…飛び出していった緑谷少年()を救ける為に民衆の前へ颯爽と現れた…」

 

オールマイト「そうでしょう?」

 

悟空「…ま、まぁ合ってるぞ…分かんねぇ言葉あっけど」

 

オールマイト「彼のかめはめ波…というのは」

 

オールマイト「その後ろの【亀】という字に何か関係あるのでしょうか?」

 

悟空「……」

 

ヌギヌギ…

 

悟空「あ!!書いてんな確かに!」

 

今更かよ!

 

道着の後ろに大きく亀と書かれている事に気づいた悟空さん。態々服脱いで確認しなくてもいいです。

 

塚内「……これは詳しく……」

 

塚内「話を聞く必要があるな、オールマイト」

 

オールマイト「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15:00

 

【1-A教室】

 

教室に帰り小一時間が経とうとしていた。

 

長い時間が過ぎて尚クラスの殺伐とした空気は解消せず、皆とても落ち着いてなどいられなかった。

 

慌ただしい雰囲気の中ドアのノック音が聞こえてくる。

 

 

 

コンコン…

 

ガララッ…

 

 

 

入ってきたのは相澤先生…ではなく

 

1-B担任【ブラドキング】先生である。

 

 

ブラドキング「遅くなって申し訳ない」

 

ブラドキング「他の者を速やかに帰らせていた」

 

ブラドキング「その他諸々の事もありかなり手間取っていた所だ」

 

ブラドキング「色々話したいのも山々なんだが今回は急を要する」

 

ブラドキング「簡潔に最小限伝えるべき事を伝え終えた後お前らもすぐに下校してもらう」

 

「…」コクコク…

 

皆は小さく首を振り頷いた。そりゃあんな事があったら返事する気力も失せるわな…

 

ブラドキング「まずは負傷者の症状について軽く触れておく」

 

ブラドキング「生徒の方から…」

 

ブラドキング「6人中5人が打撲擦り傷…」

 

ブラドキング「とは言え他の者と比べれば軽傷に済んだ方だ」

 

ブラドキング「ついさっき目覚めたとの報告を受けた」

 

蛙吹「み…緑谷ちゃん…緑谷ちゃんはどうなの先生!!」

 

声を荒げながら先生に話しかける。

 

まだ残りの1人が僕と決まった訳じゃないっていうのに……あり得ないか他の人じゃ…

 

ブラドキング「落ち着け。今から説明する」

 

ブラドキング「結論から言うと彼も同じような感じだ」

 

ブラドキング「命に別状はない」

 

それを聞くと深呼吸してほっとする蛙吹さん。

 

蛙吹「…っ……よ…よかった……」

 

ブラドキング「ただ箇所が多過ぎるのと傷が深いとの事なので多分1日は寝っきりだそうだ」

 

ブラドキング「問題は教師の方だ」

 

ブラドキング「13号は背中から上腕にかけての裂傷が酷いがこちらも命に関わるような事は無かった」

 

ブラドキング「それに対し相澤…イレイザーヘッドは……」

 

ブラドキング「両腕両脚粉砕骨折、顔面骨折…」

 

ブラドキング「加えて全身に及ぶ打撲多…」

 

ブラドキング「しかも眼窩底骨が粉々になり、何かしら眼の後遺症が出るかもしれない…」

 

ブラドキング「今分かるのはこれだけだ」

 

ブラドキング「現在集中治療で何とか奮闘してくれてはいるが」

 

ブラドキング「一命を取りとめたとして意識が戻るのはいつになるやら…」

 

 

ブラドキング「…というのが怪我人の現状だ」

 

ブラドキング「何か質問ある者は」

 

 

 

上鳴「すんません…少しいいっスか?」

 

 

 

そっと挙手し、ブラドキング先生に声をかける。

 

っていつの間にか戻ってたんだね上鳴君

 

上鳴「その…こんなタイミングで言うのはおかしいと思うけど…」

 

上鳴「相澤先生の復帰の見通し…ってのはもう立てられたりとかは…」

 

ブラドキング「……勿論それにはどうともコメントできん」

 

ブラドキング「ただ明日、明後日と臨時休校にはするが…」

 

ブラドキング「その間に傷が癒えた所で奴はどの道すぐには戻れんさ」

 

爆豪「すぐには…?」

 

ブラドキング「………」

 

ブラドキング「恐らく奴に20人の能力違法行使の責任が問われる」

 

 

冷めていたクラスの空気が突然熱される。

 

敵が先に攻撃を仕掛けておいて【正当防衛】が効かない…こんな理不尽な事あってたまるか。

 

この発言には黙っていられず反論をまくし立て、教室中がざわつき始めた。

 

切島「ちょ…そりゃねぇっすよ!先生!」

 

峰田「俺らは戦わず死にゃよかったって事かよ!!」

 

常闇「あまりに滑稽な…」

 

尾白「今回のこれとそれでは話が別でしょう!?」

 

芦戸「そーだそーだ!」ブーブー

 

ブラドキング「……」ザワザワ…

 

 

 

ブラドキング「喧しいっ!!!静粛に!」

 

大声で先生は嘯いた。

 

身体が痺れる程の喝を入れられ、一瞬でまたもやクラスが静まり返る。

 

……再びブラドキング先生が話し始めた。

 

ブラドキング「いいか。ここでハッキリさせておく」

 

ブラドキング「【正当防衛】と【個性使用の了承】は別物で考えろ」

 

「!?」

 

ブラドキング「正当防衛というのはあくまで個性外で適用されるものだ」

 

ブラドキング「特例であるものを除きだがな」

 

ブラドキング「分かりやすく説明してやる」

 

 

 

 

ブラドキング「例えばある夫婦がいたとする」

 

ブラドキング「その女房が保険金を手に入れたいと考えた」

 

ブラドキング「もしそいつの個性が【洗脳】でその男性を自分に襲わせ、あたかも仕方なく殺害したと見させたとしたら…」

 

 

 

 

 

 

ブラドキング「こんなの正当もクソもないだろ?」

 

ブラドキング「実際今話したのと似たような案件が昔は軽く2、30起きていた」

 

ブラドキング「事態を重く見た政府は直ちに改正し…正当防衛として判断されるのはあくまで個性無使用の時とした」

 

ブラドキング「個性を使っての手口なんざ思いつけばキリ無くなるからな」

 

ブラドキング「現にお前らは敵とは言え何十人もの人間を傷つけ…更にはUSJに多大なる被害を加えた」

 

ブラドキング「これが保証人の許可無しと来るもんだ」

 

ブラドキング「状況が状況にしてもだ…これは見過ごせん。相澤には何かしらの形で処置が下されるだろう」

 

 

 

 

葉隠「そんな…」

 

 

 

ブラドキング「それに準じてのカリキュラム変更…副担からの本担任選出等は…」

 

ブラドキング「今後検討していくつもりだ」

 

ブラドキング「家に帰って今日はとりあえずゆっくり身体を休ませろ」

 

ブラドキング「まぁ…そうは言っても気が気でないかもしれんが」

 

ブラドキング「大きな怪我が無かった分お前らには精神的に傷を負っただろうからな」

 

ブラドキング「一旦頭冷やしてこい…親御さんも心配している」スタスタ…

 

話し終えると彼はその教室から立ち去ろうとする。

 

誰1人としてうんともすんとも反応できる様な情況では無かった。

 

知ってしまった敵の恐怖…プロの世界…子どもの僕等ではとても太刀打ちなどできなかった。

 

そりゃ15の身空じゃ、大人の事情に首を突っ込むなど出来る訳がない。

 

 

 

 

そんな事は分かってた。

 

 

 

 

 

 

 

「悔しい」

 

ブラドキング「?」

 

誰かがボソッと呟くのを聞いたブラドキングは直様後ろを振り向いた。

 

その声の主は……

 

 

 

 

切島「悔しいっすよ…こんなの……」

 

切島「先生や…ダチに護られてばっかで」

 

切島「結局俺らはただ突っ立ってる事しかできなかった!!」

 

切島「俺達ァ何も出来やしなかった!!」

 

切島「あの時勇気振り絞って立ち上がってりゃ……他の奴らだって……!」ブルブル…

 

 

両手は強く握りしめられ、身体が激しく震えていた。歯ぎしりを立て歪んだその顔は強い当惑感を表していた。

 

おおよそその場にいた全員が同じ様に悔やんでいた筈だ。

 

仲間が…師が瀕死にまで追いつめられたんだ。無念や屈辱しか感じられなかっただろう。

 

その感情を…堪える事はできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ブラドキング「……こんな所に襲撃しに来た敵も馬鹿だが…」

 

ブラドキング「それに立ち向かっていったお前らは相当の大馬鹿者だ」

 

切島「…!」

 

ブラドキング「入学後1ヶ月足らずで実践を経験し生き残ったクラスなど…」

 

ブラドキング「少なくとも俺の記憶じゃ過去に一度たりともいなかった」

 

ブラドキング「恥じるな」

 

ブラドキング「お前らはこの闘いの勝利を勝ち取ったんだ」

 

ブラドキング「悔やんでいる暇があるならそれバネにして少しでも強くなるよう努力してみせろ」

 

切島「………」

 

彼のアドバイスを聞いた切島君に普段の笑顔が戻ってきた。

 

自信を取り戻し力強く返事をする。

 

切島「はいっ!!」

 

ブラドキング「では」ガラッ…

 

切島君の返事を聞くなり扉を開けて教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

ブラドキング「今日の戦闘で確固たるものが1つ…」

 

「?」

 

ブラドキング「お前らは確実に強くなった…」

 

ブラドキング「それだけは自負しておけ」スタスタ…

 

 

 

そう言い放ちながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【対面室】

 

オールマイト「umm…」

 

オールマイト「どんな願いも叶えてしまうボール…か」

 

オールマイト「にわかには信じ難いですな」

 

悟空「こう!こーんなデケェ龍が空に現れんだよ!」グオッ

 

必死に全身を使ってジェスチャーする。

 

説明が抽象的過ぎて分かりませんよ、悟空さん…

 

最早塚内さんは失笑してる始末だぞおい。

 

塚内警部は小声でオールマイトにボソボソと話しかける。

 

塚内<お、オールマイト…

 

塚内<本当に君は奴の言う事を信じるのか?

 

悟空「?」

 

オールマイト<当然だ…彼の龍拳が神龍リスペクトなら合点がいくし…

 

オールマイト<何より瞬間移動する所見てるんだから嘘だなんて思えやしないだろう

 

塚内<だが……

 

悟空「どうかしたんか?」

 

オールマイト「い、いえ…なんでも…」

 

悟空「???」

 

オールマイト「ええっと…それで確か就職先をお探ししていたのですよね?」

 

悟空「ま…まぁ一応…うん」

 

オールマイト「ならば私に1ついい提案があります」

 

悟空「え?」

 

塚内「……オールマイト…まさかお前…」

 

オールマイト「どの道空いた穴は埋めなきゃいけない…」

 

オールマイト「多分この人が1番適任だと思うんだ」

 

塚内「だが…それってつまり…」

 

オールマイト「まー……ちょっと法を破る事にはなるが」

 

塚内「………それを僕達に見逃せと?その為に連れて来たんじゃあるまいな…」

 

オールマイト「そ、そこに関しては後生の頼みだ!」

 

オールマイト「何より過去私も似た様な経験をしているからな…」

 

オールマイト「今度は私が許す番だ」

 

塚内「…似たような……?」

 

オールマイト「塚内君には縁の無い話さ。随分昔の事だし」

 

オールマイト「……ですがその前に…」

 

悟空「?」

 

オールマイト「折角貴方が色々とお話ししてくださった」

 

オールマイト「ならば私からも少々語らねばなるまいな…」シュゥゥ…

 

突如オールマイトの身体からモクモクと煙の様なモノが噴き出てくる。

 

悟空「うっお…なんだそりゃ…」

 

オールマイト「そうですね………まずは何処から話そう」

 

 

 

 

 

 

オールマイト「OFA(ワン・フォー・オール)についてでも話してみるか…」

 




須井化です…はい。

主人公不在の回ですた!意外と長くなってしまった!

オールマイト曰くいい職場があるっぽい。とうとう働く時が来たようだなぁ…!<ハタラキタクナイデゴザルッ

実際原作じゃ責任云々の言及はされなかったけど校内だからって暴れたら如何なものなのか…

というわけで今回の話でした。

次回はデク君in病院回です。

って言っても入院生活1日ちょいなんですぐ退院するんですが…

それから学校復帰までいけるといいなぁ…



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月23日(木)以内に第18話の投稿を予定しております。

お楽しみに!

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