悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」   作:須井化

16 / 43
前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJにて救助訓練最中になんと敵が出現!

生徒達が各ゾーンに散らばってしまうが戦力差を実力で補い見事に敵の猛攻を掻い潜る。

決死の脱出作戦も失敗に終わり次々と生徒が倒れていく中八百万少女は単身脳無に立ち向かう!

そこへ駆けつけたのは我らが英雄緑谷少年!!!

更に向こうへ!PlusUltra!!!







第15話

身体からボボッと紅いオーラが迸る。体内のあらゆる部分が激しい痛みに襲われる。

 

脳裏によぎった。真正面から突っ込んでっても勝てる訳が無い、慎重に作戦を立てるべきだった。だがそんな事この際どうでも良かった。

 

 

 

 

 

こんなに怒りを覚えたのは生まれて初めてだったから。

 

緑谷「………」

 

 

 

脳無「…」

 

吹っ飛ばされた脳無はゆっくりと立ち上がる。成る程、カスったどころか応えずケロッとしている。

 

緑谷「…飯田君…麗日さん」

 

…情けない。もっと早くここに来ていれば少しは負傷者を減らせていたかもしれないのに。

 

僕はクラス委員を全うできなかった…何人もの仲間を見殺しにしてしまった。

 

 

 

なら…せめて…せめて八百万さんだけでも…死守してみせる!!

 

 

 

 

八百万「…緑谷…さん」

 

緑谷「……ごめん。辛かった、よね」

 

緑谷「でも…もう怯えさせない」

 

緑谷「僕には皆を助ける義務があるから…っ!!」

 

 

 

死柄木「…」

 

黒霧「あの子ども…」

 

突然の生徒乱入には流石の敵達もおったまげる。……がそれよりも驚いたのは僕が発している紅いオーラである。ハッキリと目に移るその魂には鬼気迫るモノを感じ取った。

 

黒霧「個性…でしょうか」

 

黒霧「増強系…」

 

死柄木「か弱い乙女の危機に颯爽と現れ敵を退ける…」

 

死柄木「かっこいー…まるで」

 

 

死柄木「オールマイトじゃないか」

 

 

 

 

 

仮に…脳無が今の僕の実力で渡り合える程度の奴だとしても…ワープホールとあのボスもまとめて相手っていうのは無理がある。

 

僕が今取るべき最善の手は……

 

緑谷「…八百万さん、ちょっと頼みがあるんだ」

 

八百万「は…はい」

 

緑谷「今すぐ入口に向かってここを出てくれ」

 

緑谷「君が先生達を呼んでいる間…なんとか時間稼ぎしておく!」

 

八百万「で…でも…」

 

緑谷「【創造】を使って乗り物か何かを作ればすぐ行けるはずだ」

 

緑谷「今はこれしか…手立てが無い!!」

 

八百万「………」

 

何か言いたげな顔でこちらを見つめている。なんとなく言いたい事は分かる。相澤先生が瞬殺されるような相手にどう足掻いたって殺されるに決まってる。

 

僕だって怖いんだ。今すぐ逃げたい。確実に負けると分かっている闘いに身を投じるなんて絶対に御免だね。

 

って言ってただろうなぁ昔なら。

 

 

緑谷「安心して。誰も殺させはしない」ニコッ

 

緑谷「必ず…皆生還させる」

 

緑谷「だから…お願い副委員長!」

 

八百万「!!………」

 

八百万「…分かりましたわ。絶対に…絶対に間に合わせます!!」

 

そう言うと出口の自動ドアに向かって一直線に走っていった。

 

 

 

……また無駄にカッコつけちまったよ。心配させない様に咄嗟に笑顔作って送り出しちゃったけど…

 

正直勝てる気がしねぇぇぇ!!

 

心の中で数秒前の自分の行動に後悔しながら嘆いていた。

 

死柄木「おい脳無。女追いかけろ」

 

脳無「!!」シャッ

 

目にも留まらぬ速さで彼女に接近する。

 

おっとそいつは…

 

 

 

緑谷「いけないなぁっ……!!!」シャッ

 

黒霧(速い!)

 

緑谷「ジャン拳…」

 

 

脳無「ッ!!?」ドッッ!!!

 

緑谷「グゥゥウッッッ!!!」

 

脳無の腹部に強烈な右ナックルを繰り出す。そのまま脳無は吹っ飛び地面と衝突する。

 

これで一旦脳無との距離は取れたかな…

 

と安心するのも束の間。今度はワープゲートの奴が動き出す。

 

黒霧「行かせませんよ!!!」ズズッ…

 

緑谷「やっば…」

 

敵との距離がかなりある!ここからじゃ追い付けない!!今にもワープしようとする敵だったが…

 

 

 

ギュッ!!

 

 

黒霧「ぐっ…これは…」

 

緑谷「舌!?」

 

 

蛙吹「先走り過ぎよ緑谷ちゃん…」

 

蛙吹「まぁそのお陰で百ちゃんは助かった訳だけど」

 

蛙吹さんだ!移動する寸前に本体を狙って舌で拘束したんだ…というか蛙吹さんも気づいてたんだなあの違和感に。

 

緑谷「梅雨ちゃん!相澤先生は!?」

 

蛙吹「とりあえず避難させといたわ。広間の奴等も大体片付いたし」

 

 

 

麗日さん達がどんどんやられていっていた事は気を探っていて分かっていた。

 

相澤先生を発見した後峰田君・蛙吹さんと二手に分かれてすぐにここに向かってきたという訳だ。

 

……その時の先生の姿はもう言うまでも無いだろう。生きているのが不思議な位の身体にはなってたよ。

 

これで敵の1人は行動不能にできた。問題は…

 

 

死柄木「おいおいとりあえずその触手は離そう、な?」スッ

 

敵のボスが蛙吹さんの舌に触れようとする。自分で八百万さんを追いかけるよりもテレポートの方が確実性があるからな。

 

…勿論これも黙って見てる僕等ではない。

 

前方から無数の球体が飛んでくる事に気付く。

 

死柄木「次から次へと何だおい…」ビュンビュン…

 

ベタッ

 

死柄木「何?」

 

峰田君のブヨブヨだ。両足と地面が見事にくっつき更に両手、敵の周りの地面に多数のブヨブヨが接着する。

 

これで動きが封じられる。

 

緑谷「ナイス…峰田君!」

 

峰田「ひゅ…ひゅぅう…」

 

手をブルブル震わせながら冷や汗をかいている。2人とも…無理言ってごめん!

 

そうこうしている内に自動ドアの開扉音が聞こえてくる。

 

八百万さんが無事着いたんだ!

 

黒霧「ぐっ…」

 

死柄木「おっおい脳…」

 

 

ウィィ…

 

八百万「皆様…行って参ります……!!」

 

ダダッ

 

 

 

無事USJから抜け出せた彼女はそのまま学校に向かって走っていく。

 

敵の包囲網を掻い潜り等々脱出できたのだ。

 

後は頼んだよ…八百万さん。

 

 

 

 

死柄木「あーー」

 

死柄木「あーーー……」ポリポリ…

 

ボロボロ…

 

死柄木「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」ポリポリポリポリポリポリ

 

生徒を取り逃がし、計画が崩れた為かいきなり両手で頭をかきながら敵が発狂する。その間に個性を発動し手についていたブヨブヨを壊していった。

 

峰田「ギャァァァ!俺の髪がぁぁあっ!?」

 

死柄木「……油断した」

 

死柄木「さっき…あのガキ殺しときゃ」

 

死柄木「こんな事にはならなかったよなぁぁあ!?黒霧!!!」

 

黒霧「……」

 

何やら仲間割れが始まったのか部下に対して激しく怒りを露わにする。黒い敵は表情を変えず黙りとしていた。

 

ボスの敵はしばらく頭を掻き回しながら考え込む。それから数秒後、奴は思わぬ言葉を口にする。

 

 

死柄木「…あーあもういいや」

 

死柄木「今回はゲームオーバーだ」

 

 

緑谷「!?」

 

死柄木「雄英の奴等勢揃いじゃ流石に劣勢だ」

 

死柄木「今回は大人しく引き下がろか」

 

死柄木「今度また攻めよう」

 

自分達で何言っているのか分かるのか?

 

オールマイトを殺す算段があるにも関わらずここで引き下がるんだぞ?それではだだ雄英のこいつらに対する危険度を上げるだけだ。

 

奴等の行動の意味が読めない…

 

だけどまぁ帰ってくれるなら帰って欲しいんだけどさこっちは。

 

その方が穏便に解決す

死柄木「ただし…この糞餓鬼共にはそれ相応の落とし前をつけて貰わねぇとなぁ…!!」ビキビキ…

 

死柄木「そうでもしねぇと治まらねぇよこの腹の虫…」

 

 

あ、はい。分かってました。

 

 

僕達の行動が奴等の逆鱗に触れてしまった。顔の形相が激しく変わり、殺気剥き出しの表情であった。

 

おお…まずいまずい。

 

蛙吹「峰田ちゃん!ブヨブヨあいつに投げ続けて!!」

 

蛙吹「早く入口の皆を助けに行くわよ」

 

峰田「はぁぁぁぁ!?相性最悪だって!触れたら即粉砕だぜおい!!」

 

蛙吹「それでも時間稼ぎにはなるでしょ…ほら早く!!」

 

峰田「へ、へい…」ブチブチ…

 

渋々髪を千切っていき、再び敵達に投げつけていく。足止めをしながらこちらに走っていき、僕の方へ近づいていった。

 

…が敵達の中でもまだ動ける奴が1人だけいた。

 

 

死柄木「おい脳無。餓鬼3人とも血祭りに上げろ」

 

脳無「ッッッ!!」ダダッ

 

脳無だ。こちらに向かって急接近してくる。

 

…ん、待てよ。

 

その前に前方にいる2人がやられるじゃないか!!

 

 

緑谷「くっそ…!!」ダダッ

 

 

急いで2人の所へ駆け出すが…駄目だ!距離と速さが違いすぎる!!

 

間に合わない!!

 

脳無が彼らの所へ辿り着くまで数m程しかなかったその時だ。

 

 

 

 

パキパキィィッ

 

 

緑谷「…へ」

 

蛙吹「ケロ…」

 

死柄木「氷…?」

 

峰田「お前……!!」

 

 

峰田「轟!?」

 

 

轟「危ねぇ危ねぇ…何とか間に合ったみてぇだな」

 

間一髪轟君が僕達の窮地に駆けつけた。脳無が動けなくなるよう、下半身を氷結させる。

 

これで3人とも身動きが取れなくなった。

 

 

 

だがやって来たのは轟君だけではない。

 

 

 

「蛙!!舌離せェェッ!!」

 

蛙吹「!?」

 

「ファインプレーだぜ峰田!お陰で…」

 

 

爆豪 切島「「()りやすい!!!」」

 

ドゴォッッ!!ボオオッッ!!

 

 

 

爆撃、正拳…猛烈な二連撃を残りの2人の敵に浴びせる。

 

黒霧「ぐぅっ…」

 

爆豪「おっと…」ドッ

 

拘束を解かれた途端爆発の不意打ちを諸に受け後ろに倒れこむ。その際敵はかっちゃんに地面に強く押さえつけられ、動けなくなってしまう。

 

爆豪「はっ。タネが分かりゃ大した事ねぇ能力だなぁオイ?」

 

 

爆豪「要はテメェの個性は()()()()()()()()()()()()()()()()()…そうだろ?」

 

黒霧「な…」

 

爆豪「でなきゃあ物理無効人間の口から『危ねぇ』なんて発言出る訳ねぇからな」

 

爆豪「実体部分はそのモヤで覆ってたとすりゃ合点がいく」

 

驚いた……かっちゃんあそこの会話でそこまで推測できたのか。服の時点で触れられる事くらいは僕も分かってたけど…

 

流石、雄英筆記入試で1位ぶん奪っただけあるなぁ。

 

て…関心してる場合じゃないだろ…!

 

爆豪「動くんじゃねえよ…もし怪しい動きをした」

 

爆豪「と俺が判断したら即爆破だからな?お前」ニヤァァ

 

まぁ何ともいいゲス顔で恐ろしい事言ってるんだこの人。すぐにでも殺る気満々だよ…

 

かっちゃんもう敵でいいんじゃないかな。

 

この脅迫には流石の敵連合も恐怖を感じてしまう。

 

黒霧「っ…!」

 

死柄木「ってぇぇ…ははマジかよ」

 

死柄木「攻略された上に全員ほぼ無傷とか…」

 

死柄木「最近の子どもは恐ろしいねぇ」

 

轟「…テメェらが何企んでんのか…どんな奴なのかは知らねぇが」

 

轟「生半可な試みで落とせる程甘くはねぇぞ」

 

轟「雄英(ここ)はよ」

 

切島「……」

 

切島(え!?俺台詞無し!?)

 

別世界と違ってちゃんと敵殴れたから良かったじゃないか。

 

 

 

 

 

死柄木「いけない…いけないなぁこういうの」

 

死柄木「思い通りに行かない…」

 

死柄木「1番腹立つ」

 

バギィッッ!!

 

脳無は無理やり脚を動かそうとするが無論、そんな事できる筈も無く無残に下半身がボロボロと崩れていった。

 

これだけ見ればただ自爆したとしか思えないが…こいつにとって身体の一部などどうでも良かった。

 

脚が壊れ倒れた脳無に皆目をやると…

 

脳無「…」ズズ…

 

緑谷「嘘…だろ」

 

蛙吹「脚が……再生されていく?」

 

たった10秒足らずで新しい脚が生えてくる。まるで何事も無かったかのように平然と立ち上がってしまう。

 

何よりこいつ…体を千切ろうか何だろうが出血しない。尚更気味が悪いのだ。

 

切島「へっ…超怪力の上に超再生かよバケモンか」

 

切島「何度蘇ろうが何度もぶっ潰すだけだぜ!」

 

切島「6vs3!皆でまとめてかかりゃ何とか勝てるさ!」

 

切島「なぁ!委員長!!」

 

緑谷「…………」

 

 

委員長…か。何ともまぁ…軽い気持ちじゃ務まらん仕事なんだか。

 

 

 

 

緑谷「いや、皆は怪我人引き連れて早く行ってくれ」

 

切島「…え?」

 

緑谷「あいつとは…1vs1でやりたい」

 

緑谷「ああ…違うな。()()()()()()()()()()()

 

切島「んなっ…今回は流石に俺肯定できねぇよ!」

 

切島「ただでさえワープホール野郎と個性不明のボスがいるってのによ!!」

 

緑谷「だったら尚更だ。クラスの皆を危ない目に合わせる訳にはいかない」

 

緑谷「それに多分あの2人は僕に近づけない」

 

切島「…?」

 

 

そうだ。これ以上皆を傷つけさせる訳には行かない。クラスを守り抜く…それが僕の義務なのだから。

 

 

緑谷「頼む…行ってくれ」

 

緑谷「こっから先は僕の仕事だ」ニッ

 

 

 

脳無「……」

 

死柄木「ぁぁ…そうだな…誰から殺そう」

 

死柄木「女の子から痛めつけるか…いや、それを妨害した氷野郎にするか…」

 

死柄木「……まず厄介そうなのから始末するか」

 

死柄木「脳無、爆発小僧殺せ」

 

死柄木「出入口の奪還だ」

 

爆豪「あ?」

 

シャッ

 

敵の方を振り向いた瞬間目の前に脳無が現れた。一瞬でかっちゃんの所へ…さっきよりも速度が段違いだ。

 

 

 

 

ドゴッッ!!

 

鋭い衝撃音がその場にいた人全員の耳に走る。反射的に音のした方向を見ると…

 

 

 

緑谷「ぐっ…ぅぁあっ!」ググッ

 

脳無「……」

 

爆豪「は……」

 

辛うじて脳無の正拳突きがかっちゃんに直撃するのを防いだ。ガードも完璧だ….

 

だが重い!たった1発のパンチで押し潰されそうだ!ただでさえ咄嗟に界王拳2倍まで跳ね上げたってのに……

 

敵の攻撃に耐えながら皆を広間に移動する様必死に説得する。

 

緑谷「今の僕じゃあ…精々できる事と言ったらこの怪物を足止めする事位だ…!」

 

緑谷「増してや先生達がいちゃ戦い辛い…」

 

緑谷「皆は…早く広間に…!!」

 

切島「で…でもよぉ緑

 

切島「やぁっ!?」グイッ

 

どうしても納得いかない切島君に轟が肩を引っ張りながら声をかける。

 

轟「委員長命令だ。黙って言う事聞け」

 

切島「命令って…おま仲間見殺しにするってのかよ!」

 

轟「違ぇよ」

 

切島「じゃあなんだってん…」

 

轟「あそこまでご丁寧に遠回しに言ってくれてんだ。察してやれ」

 

切島「はぁ!?」

 

轟君の発言の意味が理解できず混乱してしまう。どうやら蛙吹さんは分かっているようだが…

 

蛙吹「……轟ちゃん…」

 

 

暫く沈黙の時間が続きよく惟た結果…

 

()()()()()()()()()()()解釈に至ってしまう。

 

切島「………っ……」

 

切島「そっ…か。そりゃ…それなら…」

 

切島「仕方ねぇ…よな」

 

峰田「え?なんだ?つまり?え?」

 

峰田「と、兎に角早く行こうぜ!殺される!」

 

訳も分からず話を聞いていた峰田君だが彼にとってはそんな事よりも命の方がよっぽど大事だった。

 

ボスについていたブヨブヨもとうとう無くなってしまう。

 

死柄木「さぁて…暴れるぞ」

 

切島「………分かった。行こうぜ皆」

 

切島「爆豪!!おめぇもだ!早よ!!」

 

爆豪「……」

 

緑谷「かっちゃん…早く!!!」ググッ

 

すぐ避難するようかっちゃんを急かすが反応が一切無かった。

 

 

あいつはそんな事どうでも良かったんだ。

 

……デクが見えなかった。またデクに助けられた。

 

あらゆる思考が脳内に張り巡り、平常心を保ってはいられなかった。

 

 

 

 

ガシッ

 

切島「爆豪!!!」

 

爆豪「…!」

 

手を掴まれ大きく名前を叫ばれてようやく我に返った。だが依然として状況把握がままならないでいる。

 

爆豪「テッメ…何……」

 

切島「いいからこっち来い!!」グイッ

 

かっちゃんが必死に抵抗しようとするが否応無しに無理やり彼の腕を引っ張る。

 

良かった。これなら思いっきり闘え

切島「緑谷」

 

 

 

緑谷「?」

 

 

 

 

 

切島「…悪かったな」

 

小さくボソッと…それだけ呟くと切島君はかっちゃんを連れて広間へと走り去っていった。

 

…なんで…

 

 

なんで今謝ったんだ?

 

 

 

 

何はともあれ…これでようやく準備が整った。

 

 

 

ババッ

 

緑谷「…」ボボボ…

 

脳無「……」

 

脳無は一旦攻撃を中断し後ろに下がった。とうとうこいつも…臨戦態勢に入るのだ。

 

というか2倍界王拳と互角のパワーで手抜いてるってどうなのさ……もう本当勘弁して下さい。

 

 

死柄木「はぁぁ…いいねぇいいねぇ」

 

死柄木「仲間の為に命張って……」

 

死柄木「憎たらしい!腹立だしい!!」

 

死柄木「実に不愉快だ!!!」

 

死柄木「俺は子どもを追う。黒霧は脳無のサポートしろ」

 

黒霧「御意」

 

死柄木「帰ろうぜぇ…こんな下らねぇ()()()()クリアして」

 

 

 

 

 

その時頭の中にあったある糸がぷつんと切れたような感覚がした。

 

そうか。奴らは…今さっきまで僕達の命を使ってゲームをしていたのか。

 

こんな大胆に奇襲を仕掛けてきて…

 

友達や先生を沢山傷つけて…

 

遊び感覚で人々を殺そうといたのか。

 

 

 

 

 

緑谷「……」

 

緑谷「1つだけ…言っておくよ」

 

死柄木「ああ?」

 

俯いていた顔を上げ敵に向けた。

 

僕はどんな顔をしていた?怒っていた?悲しんでいた?それとも笑っていた?

 

…いや、多分……

 

 

無表情だったと思う。

 

 

緑谷「現実に残機なんてモノは存在しない」

 

緑谷「今あるこれが全てだ」

 

死柄木「……はぁ?何言ってんの?」

 

緑谷「お前らは命をぞんざいに扱い過ぎた」

 

緑谷「教えてやるよ。生命の重さ…そして…」

 

緑谷「ヒーローの真価を……!!」

 

 

 

そう言うと静かに体を力み始める。次第に纏っていたオーラは烈度を増していき、身体全体に圧がかかっていく。

 

今にもこの圧力で押し潰されそうだ…身体のあちこちが痛い…

 

だけど……

 

これ以上皆が傷めつけられるのに比べれば十分マシだ!!!

 

緑谷「体もってくれよ!!!」

 

 

緑谷「3倍界王拳だぁぁあああっ!!!」ボボオオオッ!!!

 

 

 

 

ゴォォッ

 

黒霧「くっ…近づけん…」

 

切島「す…すっけぇ風圧だ!」

 

轟「これがあいつのフルパワー…なのか?」

 

 

体温が異常なまでに高くなり激しく風が吹き荒れる。

 

その衝撃は脳無を除き誰もが一瞬でも気を緩めれば吹き飛ばされるほどの強烈さだった。

 

界王拳の倍率1つ上げるだけでこうも違ってくるものか……

 

緑谷「さっさと始めようか」ボボボ…

 

脳無「…」

 

シャッ

 

脳無「?」

 

 

 

ドッッ!!!

 

脳無「ッッ!」ビュンッ!!

 

緑谷「…」

 

黒霧「な……」

 

峰田「ななな何だ今の!触れずに吹っ飛んでったぞ!!」

 

全員が目を疑っただろう。いきなり姿が消え、気づけば敵の至近距離に移動しておりいつの間にか脳無が独りでに吹っ飛んでいった。

 

だがこれはただ単に僕の動きが捉えられなかっただけに過ぎない。

 

正確には素早く移動し打撃を2、3発腹に入れてアッパーカットで空中に浮かせた。

 

な?単純だろ?

 

死柄木「おいおい…トータル0.5秒でんな事できる訳ねぇだろ…」

 

壁の方に飛んでいった脳無に追撃を図る為僕も軽く地面を踏み蹴り、飛んで行く。

 

シャッ

 

緑谷「せーの…」

 

脳無「!?」

 

黒霧「脳無が飛んでいった先に…一瞬で?」

 

 

 

緑谷「っああっっ!!」ドガッッ!

 

脳無「!!?」ゴォッ…

 

脳無の背後に回り込み後頭部に蹴りを入れ、元いた入口の方へ再び吹き飛ばす。

 

そのまま勢いよく自動ドアと衝突…

 

 

 

ズドッ!!

 

脳無「…」

 

緑谷「へっ…」

 

蛙吹「壁に着地したですって…」

 

 

 

とは行かず余勢を殺し上手くドアに着地した。

 

グッと腰に力を入れてこちらに勢いよくジャンプして接近してくる。

 

 

ダンッ!!

 

緑谷「来た来た…!」

 

タイミングを見計らい、敵に右ストレートを食らわせようとするが…

 

あっさりと掴まれる。

 

 

ガシッ

 

緑谷「やば…」

 

脳無「!!」ブンッ

 

お返しと言わんばかりに脳無ももう片方の腕で僕に殴りかかる…

 

が勿論これを阻止。

 

 

緑谷「っとと」ガシッ

 

脳無「ーーッッ」ミシミシ…

 

緑谷「うぉぉっああぁぁあ…!!」ミシミシ…

 

お互い両手を防がれた、ここからは力比べだ。

 

相手の右手と左手を強く握り、両腕を押し付け合う。互いに一歩も引かず徐々に腕骨にひびが入っていくのが効果音ではっきり分かる。

 

なんっつう腕力…こりゃ腕何本あっても足りないよ。

 

 

キリがないと見たか双方共に掴んでいた両手を離し少々距離を取る。

 

今度は真っ向正面からの殴り合いだ!!

 

緑谷「だぁああっ!!」

 

脳無「ッッッ!!!」

 

ズドドドドッ…

 

その連打はマシンガンの如くUSJ内に鳴り響く。正拳と正拳がぶつかり合い1発1発が強い衝撃を生み出す。

 

もはやこの闘いに迂闊に手を出せる者など到底いなかった。敵連合もかっちゃん達もただ呆然と僕らの戦いを眺める事しかできなかった。

 

緑谷(ただ…そんな馬鹿正直に付き合うと思うなよ!!)

 

激しい空中戦の最中、攻撃を止め敵の攻撃を避けながら脳無の足下に近づいていく。

 

足下がお留守だよ…っ!!

 

 

ガシッ

 

脳無「!?」

 

緑谷「っらぁぁぁあああっっ!!!」ブンブンブンッ…

 

左足を掴み過激に旋転する。

 

入口付近にいた敵達2人に向かって思い切り投げつけた。敵達への直撃は避けたが今回ばかりは地面との衝突は免れなかったらしい。

 

 

 

 

 

ドォオオンッ…

 

コンクリートに大きなクレーターが出来てしまった。肝心の脳無はというと…

 

 

 

 

脳無「…」ゴキッゴキッ

 

無傷。僕の攻撃を何発食らったはずが全くもって応えていない。

 

首の骨をポキポキ折って正に『その程度か』と言わんばかりのアピールであった。

 

呆れるというか…ムカつくというか…色々思う節があったがこちとらそれ所ではなかった。

 

めっちゃ身体痛い。

 

緑谷(くっそ…3倍だ。相当の負担かかるとは思ってたが…)

 

緑谷(今にも気絶しそうだ…まだ戦って1分しか経ってないのにこれだけの負荷………!)

 

緑谷(早めに蹴りつけたい…けど)ボボボ…

 

 

 

 

何処かが引っかかる。

 

如何に強く床に叩きつけようと強力な攻撃をあびせようとも全く怯まない……

 

不自然すぎる。しかもさっきは剥き出しにされている脳に蹴りを直撃させたのだ。

 

何が一体どうなっている……

 

 

 

そんな僕の疑義に気がついたのかボスの敵が喋り出す。

 

死柄木「ははは。ガキのヘナチョコパンチが効く訳ないだろ」

 

死柄木「こいつはオールマイトの100%パワーにも耐えうる超高性能サンドバックさ」

 

死柄木「あらゆる衝撃を軽減する…いわゆる【ショック吸収】だ」

 

緑谷(こいつ…再生能力だけじゃなくてダメージまで吸収して無くすのかよ…!)

 

緑谷(しかも本気のオールマイトの技まで耐えるだって…!?)

 

ちまちま攻めたって効きはしない。かと言って一部一部壊そうとしたって再生される。これを見る限りタフって所のスタミナじゃ済まなそうだしな…

 

とすると攻略法は1つ。かめはめ波で細胞レベルにまで粉々にしてしまえばいい。

 

……いや…まぁ分かったのはいいけどさ。

 

緑谷(実際そんな事出来るのか…?)

 

300%のパワーですら敵わない相手をかめはめ波で消滅できるのか…そもそも奴にそんな悠長に撃たせてくれる隙があるのか…

 

不安と恐怖で頭がいっぱいだった。正直この勝敗は最初から見え据えていたようなものだったのだから。

 

オールマイト級の奴にたかが15の少年が勝てるなんて自分だって思っていなかった。せめて時間稼ぎ…とは言うものの勝率1%の博打に賭けたってそりゃ見込みがある訳ない。

 

 

 

…何今更弱音吐いてんだ自分…

 

そう言い聞かせて再び士気を取り戻す。

 

 

脳無の所へ急降下し、傍の地面で着陸する。

 

さぁ戦闘続行だ!

 

 

脳無「ッ!!」ブンッ

 

緑谷(敵が現れたら即殴る…)

 

緑谷(思考が単純すぎる!)スカッ

 

脳無のパンチを頭を伏せて回避する。慣れてくれば避けるの簡単だ!挙動が激しいし。

 

ブスッ!!

 

かわした直後、脳無の両眼に右人差し指と右中指を突き刺す!

 

ラビットピース的なアレだ。

 

死柄木(そもそもラビットピースは叩く技なんだが)

 

無駄に心読まなくていいです。

 

 

緑谷(兎に角これで視覚は失った…!)

 

緑谷(1秒でもいい!反応を遅らせろ…命懸けの戦いでその一瞬が…)バッ

 

脳無「?」クルッ

 

緑谷「命取りぃっっ!!!」ズドッッ!!

 

脳無「ッッ!?」

 

眼は失えど聴力はまだ生きている。後ろに足音が来たら普通反射的に振り向くだろ。それを利用して不意打ちを仕掛けた。見事に鳩尾にエルボーがハマってくれた。

 

休む間も与えず猛攻を続ける。次は…

 

 

緑谷「かかと落としっ!!」ドッ!!

 

脳無「!!」

 

脳無の頭部に踵を強く打ち下ろす。諸にキック入れられた!

 

緑谷「背すじぴーんと!!!」ドガッッ!!

 

脳無「……ッ」ゴッ

 

態勢を崩した所に今度は真下からの右アッパー。見事に顎にクリーンヒット。

 

そして身体が空中に浮いた所を狙って…

 

 

 

緑谷「はあああっっ!!」バギィッッ!!

 

ビュンッ!!

 

脳無「ーー!!?」ドガァッ!!

 

 

腹に後ろ蹴りを喰らわせる。

 

脳無はそのまま吹っ飛び、壁と激突する。少しは効いたのか地面に膝をつけしばらく静止した。

 

ドサッ

 

緑谷(お…効果アリアリか?攻撃受けすぎて吸収も追いつけ…)

 

シャッ

 

緑谷「え」

 

脳無「!!」ブンッ

 

 

 

不覚を取った…!いつの間にか脳無が射程距離内に入っているじゃないか!

 

脳無は左腕を大きく振りこちらに攻撃を図ろうとする。咄嗟に僕も正拳突きで相殺しようとするが…

 

緑谷「ぐっ…!」

 

ガッッ!

 

脳無「……」ググッ

 

緑谷「っだ…!!」ズキズキッ…

 

…さっきより力が入らない。徐々に脳無に押されていく。身体が悲鳴を上げている。ダメだ…とうとう限界か!!

 

緑谷「んああっ!!」ゴッ!!

 

何とか押し返し脳無の腕を弾いて意地を見せる。……がその際に身体が前に傾いてしまう。

 

どうにか態勢を立て直そうとするが…

 

緑谷「とと…っ!!」

 

脳無「ッッッ!!!」ゴッッ!!

 

ギュルッ…

 

緑谷「っぶねぇ!」キキィッ

 

同じく右脚のかかと落としで僕の頭部を狙ってくるがギリギリ回避成功。

 

……だけど掠ってはいる。

 

 

緑谷「はぁ…はぁ…」

 

心臓が痛い…筋肉痛も…酷い…

 

段々脳無の速さについていけなくなる。

 

 

緑谷(だからって…)

 

緑谷(こんな所でくたばっ)ブンッ

 

脳無「」ガシッ

 

緑谷「っ!!」

 

背後に回り直様攻撃を仕掛けるが…

 

まずい。捕らえられた。

 

掴まれた右腕は徐々に上がっていき僕の身体は吊り上げられる。左手で脳無の腕を剥がそうとするがビクともしない。

くそ…身体が自由に…

 

 

 

 

死柄木「壊せ」

 

 

 

ズドドドドッ!!

 

緑谷「ぐっ…がはっ!」ドガッ!

 

顔面…腹…ありとあらゆる部位に何十発もの打撃が打ち込まれる。

 

臓器は勿論、骨までもが砕けていってるのではないのかというえげつない衝撃音が僕の耳に入ってくる。

 

唾液はおろか口から吐血してまう程の威力であった。

 

峰田「ひっ…ひぇぇぇえっ!!」

 

 

 

数秒間殴り続けた脳無は気が済んだのか僕を軽くひょいっと放り投げる。

 

 

ドサッ

 

 

緑谷「ぅ…ぉぁ…」

 

脳無「……」

 

 

尋常じゃない痛みだった。今にも気絶しそうな位…滅茶苦茶痛かった。身体中が痺れ言う事を聞いてくれない。万事休すだ。

 

そして、オーラの色が段々薄くなっていきとうとう消えてしまう。

 

死柄木「…ふむふむ。3分程度か」

 

死柄木「餓鬼にしちゃ手こずっちまったな」

 

黒霧「死柄木弔、早速他の生徒達の始末に向かいましょう」

 

死柄木「そだな。おーい脳無」

 

死柄木「そいつはもういい。今度はこっちだ、ついて来い」

 

脳無「…」ズドッズドッ…

 

敵の言うがままに僕から離れ広間に歩いていく脳無。

 

……や、やった。距離ができた。

 

このまま…死んだフリ…しとけ…ば……

 

オー………

 

 

 

 

オールマイト『人助け(正しい事)した人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ!!』

 

オールマイト『綺麗事!?上等さ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ!

 

脳無「ー?」

 

死柄木「…お前なー…」

 

 

 

 

緑谷「はぁ…!はぁ…!!」

 

満身創痍になりながらも脳無の左脚に掴みかかる。脳無が歩こうとしても床に這い蹲り無理にでも進行を妨害しようとする。

 

切島「緑谷……」

 

轟「野郎…!」

 

焦ったくなったか……脳無は僕の顔面を思い切り蹴り飛ばす。

 

 

バギィッッ!!!

 

爆豪「…!」

 

受け身なしで食らったもんだから身体が勢いよく上に吹き飛び、空高く舞い上がってしまう。

 

2、3回転した所で地面に強く叩きつけられる。

 

 

 

ドサッ……

 

 

死柄木「…今度こそ倒れたか」

 

死柄木「ちっ…手間掛けさせやがって…」

 

緑谷「て…よ」

 

死柄木「?」

 

 

 

 

緑谷「待てって……言ってんだろ……!」

 

 

 

 

全身ボロボロで立つのがやっとの状態だ。出血が酷く、軽く触れただけでも倒れふような重傷だった。

 

 

 

 

死柄木「……なのに…なのに」

 

死柄木「なんで…立ち上がる……!」

 

緑谷「はぁ………はぁ…」

 

蛙吹「緑谷ちゃん…もう……もう貴方…」

 

 

 

 

………ばっかみたいだな

 

1人のこのこと逃げようとして

 

先生達は何してた?敵に怯えて逃げてたか?恐ろしくてビビってたか?

 

いいや…違う。

 

そうだよなぁ…ヒーローはいつも命懸けなんだから。

 

ヒーローってのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷 オールマイト「『命を賭して綺麗事実践するお仕事だ!!』」

 

緑谷「界王拳4倍だぁあああああっっ!!!」

 

 

ゴオオオオオッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 




日曜夜投稿→月朝wktkしながら感想返信

がいつの間にか(いい?悪い?)習慣となってきた。

須井化です…はい。
(これもう定期更新でいいんじゃないかな)

今回は轟・爆豪・切島の三強怒涛の参戦!!すぐ退場したけどね!!

うぅむ…やっぱりかっちゃん不遇やなぁ。台詞少ない。地味にケロインがケロインしてて可愛いんですがそれは。

とりあえずヤオヨロッパイが脱出成功したんでどうにかしてくれるでしょう!(適当)

……いや間に合わねぇなこれ

いかがでしたか?

次回はとうとうUSJ編クライマックス!!

緑谷達の運命は!?敵達との闘いの行方は!?そして悟空さとオールマイト!

早く来てくれぇぇぇぇ!!!

何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月16日(木)以内に第16話の投稿を予定しております。

お楽しみに!



…多少レイアウト変えたけどどうかな?

<そんな事知るか

ヘェアッ!?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。