ガールズ&パンツァー~島田家の長男~   作:園部

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おつかれ


7話

夏休みも終わり。9月に入った。

今日は全国大会の決勝で俺は優花里と一緒に会場に来ていた。

雨も降っているが普通に決行されそうで・・・

 

「プラウダ対黒森峰。どっちも強豪ですが秋人殿はどっちが勝つと思います?」

 

決勝だけあって人も多い。

席が確保されて本当によかった。

 

「そうだな。正直分からない」

 

「島田殿でも?やはりマウスのある黒森峰が優勢なのでしょうか?」

 

マウスか・・・・

 

「マウスは確かに脅威だが、やり方次第でどうとでもなる」

 

まぁ、各校はそのマウス対策にやっきだけどな。

しかし戦車道に絶対なんて言葉は存在しない。

どんなに凶悪な戦車でも隙はある。

 

「まぁ、プラウダがどんな作戦で来るか見物だな」

 

さて・・・・

俺は席を立ちあがった。

 

「島田殿?」

 

「ああ、委員会に挨拶してくる。結局初日は出来なかったしな」

 

本当は行きたくない。だってあの人いるし・・・

けど、会場に来て1回も挨拶なしは立場上したくない。

 

「そうですか。では私はここで待ってるので!」

 

「ああ、悪いな」

 

俺は大会の役員が集まるVIPルームの前に来ていた。

 

「はぁ・・・・」

 

扉をノックして返事をされるたので中に入る。

 

「失礼します」

 

中に入ると数人の役員が一斉にこっちを見る。

 

「おー島田君じゃないか!久しぶりだね」

 

「お久しぶりです。理事長」

 

先に反応示したのは日本戦車道連盟理事長だ。

母さんの仕事の関係で、ここにいる役員の方々とは何度か面識はある。

 

「しかし島田君が来ていたとは・・・・目当ての選手でも?」

 

「特定の個人はいませんが、2年前の戦友が何人かいますので・・・」

 

「なるほど。で、今日ここに来たのは・・・・」

 

「挨拶です。島田流の人間としては会場に来てるのに挨拶をしないのは皆さんに失礼なので」

 

まぁ、初日は挨拶しなかったけど・・・

 

「そうかそうか。まぁ、ゆっくりしていきなさい」

 

そして俺は各役員に挨拶をする。

1人を覗いて挨拶を済ませた。

最後の1人は一番前に座って会場を見ていた。

 

「お久しぶりです・・・・・しほさん」

 

「久しぶりね。秋人君」

 

まほさんやみほの母親で高校戦車道連盟の理事長にして西住流師範。

それだけじゃなく黒森峰や陸上自衛隊にも師範として指導している。

島田流とはあまり交流はないが、それでも面識はあったので挨拶する。

相変わらずクールだな・・・・

 

「黒森峰の決勝進出。おめでとうございます」

 

「西住流を教えているんだから当然のことよ」

 

帰りたい・・・・

 

「では、私はそろそろ・・・・「待ちなさい」・・・はい?」

 

まさか呼び止められるとは思わなかった。

 

「ここで観戦してきなさい」

 

まさかのお誘いだけど何故・・・・?

 

「試合まで時間はあるし・・・まほやみほと個人的な付き合いをしてるんでしょう?そこら辺詳しく聞かせなさい」

 

これは、娘に手を出してんじゃねーぞコラって言うことなんだろうか・・・・

 

「・・・・分かりました。ただ連絡いれるところがあるので少しお待ち頂ければ」

 

嫌でも拒否は出来ない。

俺は一度部屋を出て優花里に連絡する。

 

「・・・・と、言うわけだ。すまない。一緒に観られなくなった」

 

『そうですか・・・それならしょうがありませんね』

 

「終わったらそっちに行くから待っててくれ」

 

『了解です!』

 

ふぅ・・・

俺は部屋に入ってしほさんの隣に座る。

 

「それで・・・聞きたいこととは?」

 

「あの子達との関係は?」

 

即突っ込んできたな。

 

「普通に友人ですよ。別に恋人ではないので安心してください」

 

やはり島田流と西住流では個人的な付き合いもダメなんだろうか?

母さん的には軽くいいよーって感じだったけど・・・・しほさんの場合厳しそうだし・・・

 

「そう・・・・友人程度ならいいわ。特にみほとは仲良いみたいだけど。」

 

「ああ、趣味が合うので」

 

貴重なボコ仲間だからな。

 

「趣味って・・・・あの変な人形?」

 

変って・・・・

 

「変じゃないですよ・・・ボコです。ボコ仲間は貴重なので・・・しほさんもどうです?」

 

「遠慮しておくわ」

 

分かってたけど即答かよ。

 

「そろそろ試合始まりますね」

 

「ええ」

 

そして試合が始まる。

雨はどんどん強まってるが大丈夫だろうか・・・・・?

 

 

「・・・・・・・」

 

しほさんの機嫌が超絶悪い。一緒に観るの断ればよかった・・・・

なぜ俺がそう考えてるか・・・・それは試合が思いも寄らぬ展開になったからだ。

結論から言うと黒森峰は負けた。

足場が悪いところを走っていて1両川に落ちた。

それをフラッグ車に乗っていたみほが急遽降りて救出。

他のメンバーが動揺した隙に撃たれて負けた。

 

はっきり言ってみほのしたことは間違いじゃない。

俺でもあの状況なら助ける。

雨のせいで暗いし川の流れも早かった。救出隊が間に合わずに死んでいたかもしれない・・・・・。

が、そのせいで黒森峰の10連覇が達成されなかった。

西住流としては許しがたい行為だったんだろう・・・

 

「(し、島田君!)」

 

理事長に話しかけられた。

俺は後ろを振りむくと何かジェスチャーしてる。

しほさんに指を差して、俺に指を差して、口パク?

何が言いたいのか分からない・・・

伝わってないことが分かったのか紙に大きく「機嫌何とかして!!」と書いてあった。

 

「(しほさんの機嫌を俺が何とかして!?ふざけんなジジイ!)」

 

俺は他の役員を見る。

しかし一斉に逸らされた。

 

「(こっちの立場も気にしてくれよ・・・・)あの・・・・しほさん?」

 

「・・・・・ごめんなさいね。無様をみせて」

 

これどうすればいいんだろう・・・・とりあえずみほを褒めればいいのかな?

 

「いえ・・・・あの状況じゃ下手すると救出隊が間に合わなかったかもしれませんし・・・・さすがに大会で人死が出ると戦車道のイメージが最悪になるし3年後の世界大会の為のプロリーグにも影響出ちゃうかもしれないし・・・・さすがみほさんですね。目先の勝利よりも戦車道の未来を取るとは。あの一瞬で好判断。さすが西住流ですよ!」

 

俺は役員に目を向ける。

 

「(褒めて!いっぱい褒めて!)」

 

俺の必死な目に役員連中も気づいたのか。

 

「ええ、島田君の言う通りですな」

「流石西住流です」

「西住流も安泰ですな!」

「10連覇達成出来なかったのは残念ですが、戦車道の未来には代えられませんな」

 

「・・・・ありがとうございます」

 

あんまり機嫌治ってないよ・・・・

 

「じゃあ私はそろそろ帰りますね。皆様今日はありがとうございました」

 

役員に挨拶をして俺は退出する。

 

 

俺は優花里が待っている客席に向かった。

 

「ごめんな待たせて」

 

「ええ大丈夫ですよ!・・・それにしても結果は意外なものになりましたな」

 

「そうだな・・・・お前は黒森峰の副隊長がやったことどう思う?」

 

優花里が考える。

 

「うーん・・・・・私はあの場合はしょうがないと思います。勿論10連覇は残念ですが・・・・人助けなら私は納得します!」

 

うん、やっぱり良い奴だな。

 

「そっか・・・・じゃあ帰るか」

 

「あの・・・・島田殿はどう思ったんですか?」

 

歩き出そうとする俺に優花里が聞いてくる。

 

「俺?俺も優花里と同じ。あの状況なら副隊長と同じように助けに行ったよ・・・・どれだけ後でバッシング受けようともな・・・・」

 

助けなかったら後で絶対後悔するし・・・

 

「バッシング・・・ですか?」

 

優花里は分かってないのか俺に聞いてくる。

 

「あの行動は賛否両論だ。恐らく味方にとっては・・・・ただの戦犯だな」

 

「そんな!?人を助けたんですよ!なのになんで・・・・」

 

そもそも個人的に戦犯は監督だけどな。

 

「そもそも助ける必要があったのか?って思うやつもいるんだよ。救出隊に任せればよかったんだってな・・・・・それに責任を押し付けやすい」

 

「責任・・・・」

 

「そうだ。負けた場合の責任を押し付けやすい。本来の責任は監督だけどな」

 

いくら西住流だからって1年を副隊長にするしフラッグ車にも乗せるし雨降ってんだからルート考えろとか・・・色々言いたいことはある。

俺が言ってもしょうがないけどな。

 

「あの副隊長殿。これからどうなるんでしょうか?」

 

「恐らく負けた責任を取られるだろう・・・・・」

 

まだ決まったわけじゃないけど・・・・考えただけで胸クソ悪い。

まほさんは隊長だし西住流だから庇えないしエリカにそういうのは期待出来ない。

 

「心配ですね・・・・」

 

ああ、本当に心配だ。

俺が近くに居られれば・・・・・

 

「・・・・俺達が考えてもしょうがないさ」

 

後でメールを送るか・・・・

 

 

 

12月になった。

大会から3ヶ月後。俺は頻繁にみほとメールや電話のやり取りをする。

最初は元気を装っていたがやはりバッシングを受けて日々疲弊していた。

そして悪いニュースは立て続けに来る。

 

「みほも心配だけど・・・・こっちもだな」

 

俺は今体育館に向かっている。

持っている書類はバレー部の廃部勧告の書類だ。

 

「正直伝え辛いけど・・・・やるなら俺の方がいい」

 

あの夏休み以降。俺はたまにバレー部の練習に参加していた。

皆良い人だし楽しいし・・・・バレーも上手い。

典子とは名前で呼び合う程度には仲良くなったしな。

 

体育館に着いた俺は典子達の練習を見ていた。

今日は4人か。部員が少なくて試合に出れないのに休まず努力する姿に少し泣きそうになった。

 

「あ、秋人!」

 

磯部達がこっちに気づいた。

 

「今日も練習に入る?ていうか週1でここに来るならもう入っちゃえよ!」

 

「ああ・・・今日は違う。生徒会としての仕事に来た」

 

俺の様子に典子達が心配をする。

 

「大丈夫?」

 

「具合悪いの?」

 

「具合悪いなら根性で直せ!」

 

「典子・・・・・で、本当に何かあったの?」

 

俺は意を決して口を開いた。

 

「全員いるならちょうどいいです・・・・生徒会からバレー部に・・・・廃部の勧告に来ました」

 

それを聞いた典子達は唖然とする。

 

「これは決定事項で今月でバレー部は廃部。詳しくはこの書類を見てほしい」

 

「何でだよ!秋人だって私たちがどれだけ頑張って来たか分かるだろ!?」

 

典子が泣きながら俺の胸ぐらを掴む。

 

「来年は・・・・・来年は絶対に部員確保して大会に出るって・・・・何で廃部なんだよ!」

 

「典子落ち着きな・・・・私は正直こうなるって予想はしてたよ・・・」

 

キャプテンが磯部を窘める。

 

「キャプテン・・・・どういうことですか?」

 

「他の部で去年もこの時期にあったんだよ・・・・・理由は部員不足でしょ?」

 

「はい。年が代わるタイミングで3年を除いた人数が規定に達してなければ・・・廃部になります。バレー部は3年を除いたら典子だけなので・・・・」

 

「うん・・・・分かった」

 

「キャプテン!?キャプテンはバレー部が無くなっていいんですか!」

 

「こればっかりはね・・・・しょうがないよ・・・・」

 

この言葉を聞いた典子は俺に詰め寄る。

 

「何とかしてよ!嫌だよ・・・・先輩達との思い出の場所を取り上げないでくれ・・・・」

 

俺だって何とかしてやりたい。

お前らの努力する姿を半年程度だけど見てきたんだから・・・・

だから、せめて希望だけでもあげたい。

 

「廃部は決定だ・・・・だから新しく作れ」

 

「新しく・・・?」

 

「そうだ。廃部は免れないなら来年、バレーに興味あるやつ集めて新しく作ってみろ。創部の場合の規定人数は6人必要だ・・・・だから最低5人集めて見ろ。廃部の理由が人数なら人集めれば作れる」

 

「・・・・・」

 

「大事な場所を無くしたくないんだろ?なら一度手放せ。そしていつか絶対に取り戻して見せろ。生徒会としては協力出来ないが、俺個人としては手伝う」

 

それでも集まる保障なんてない。

半端に希望を見せる俺は最低だろうか・・・

みほの件でもそう・・・・俺は無力だな。

 

「秋人・・・・・」

 

本当に気が滅入ることばっかだ・・・

 

「だってさ典子。後はあんたに託すわ」

 

「先輩・・・」

 

アタッカーの先輩が典子に言う。

 

「さぁ!そろそろ練習再開するよ!今月で私達3年のバレーは終わりだから一分一秒無駄にしないように!」

 

「キャプテン・・・」

 

「託せる後輩がいるっていいね・・・・・私たちの無念を晴らしてね典子!」

 

「はい!!」

 

俺は用が無くなったので体育館を出ようとすると・・・・

 

「秋人!さっきはゴメン!秋人のせいじゃないって分かるけど・・・・つい」

 

「いや・・・・とにかく今後手伝えることがあったら言ってくれ」

 

「うん!ありがとな!」

 

そして典子は練習に戻った。

俺も体育館を出て生徒会室に戻る。

 

「お疲れさまです・・・・柚子先輩だけですか?」

 

俺が戻るとそこには柚子先輩が書類作成をしていた。

 

「うん・・・・桃ちゃんも会長もちょっと出てるよ」

 

俺はお茶を入れて柚子先輩に渡す。

 

「ありがと。お茶くみも慣れたね~」

 

「ですね。色々やってきたおかげで結構形になってきました」

 

「このロシアンティーの飲み方・・・・紅茶に入れるんじゃなくてスプーンで口に入れてから飲む方法とか初めて聞いたときは少し驚いたな」

 

「ああ、前に友人に教わった飲み方でして・・・・国によってはそうするみたいですね」

 

カチューシャが教えてくれた飲み方・・・・・そういえば優勝おめでとうって言ってなかったな。みほのことで頭いっぱいで忘れてた。

 

俺はソファーに横になる。

 

「バレー部の退部勧告お疲れさま・・・・何かあった?」

 

「いえ・・・疲れただけです」

 

「そっかそっか・・・・それじゃあ・・・」

 

柚子先輩がこちらに来て俺の頭を上げて膝枕をする。

 

「恥ずかしくないんですか?」

 

「恥ずかしいけど・・・・後輩を労うのも先輩の役目だしね!」

 

顔が赤くなってるし無理しなくていいのに・・・・

 

「ま、行為には甘えますよ」

 

「そうそう。色々一人で頑張るのもいいけど・・・・・たまには私を頼ってね?」

 

頼るか・・・・・

じゃあ今だけは甘えようかな。

 

 

っと・・・少し寝てしまった。

時間を見るとあまり経っていない。

柚子先輩を見ると、どうやら寝ているようだ。

俺は膝から頭をどけて毛布を取って柚子先輩に被せる。

 

「ありがとうございました。柚子先輩」

 

そうしていると会長と河嶋先輩が帰ってきた。

 

「おつかれーお?小山寝てるじゃん」

 

「ええ、なので毛布被せておきました」

 

「まぁ、小山も疲れてるしな。たまにはいいだろう」

 

「じゃあ柚子先輩がやる予定の仕事は俺が代わりにしますねー」

 

「お、島田君やる気あるじゃん!」

 

「体力全快ですから!」

 

柚子先輩のおかげで回復した俺はいつも以上に業務を熟した。

 

 

 

2月後半。

バレー部廃部から2ヵ月が経った。

12月の最後の練習には是非参加してほしいと言われたので俺も参加した。

最後は笑いながら3年生達が引退。典子は泣きながらそれを見送った・・・

後は・・・・特に語るべきこともない。普通に正月は実家で過ごしたし、クリスマスは友人たちと過ごして楽しく遊んだ。

 

そんな俺は今みほと電話していた。

 

「この前のバレンタインはありがとう。ちゃんと届いたよ」

 

『ほんと!?よかった~ボコ型チョコ!自信作だったんだ~』

 

「味も美味しかったしな・・・・ホワイトデーは俺のボコクッキーを送ってやろう」

 

『楽しみにしてるね!・・・・そうだ、ちょっといい?』

 

「ああ・・・・・何かあったのか?」

 

『うん・・・・黒森峰から転校しようと思うんだ・・・・』

 

そうか・・・やはり耐えられないか・・・

 

『頑張って耐えてきたんだよ!・・・・・でも、もう・・・・辛いよ・・・・』

 

みほのすすり泣く声が聞こえる。

 

「ああ・・・・・そうしたほうがいいな。でも、どこに転校するんだ?」

 

『戦車道がないところがいい・・・・・もう戦車道したくないから・・・』

 

なら・・・・

 

「だったらうちに来な。うちは戦車道ないしな。昔はあったっぽいけど」

 

『そうなんだ。でもいいの?迷惑じゃない?』

 

「迷惑とかあり得ないから。アパートもちょうど隣空いてるし・・・・それに色々サポートできるしな」

 

『うん!じゃあそこに決めるね!』

 

よかった。ここなら戦車に関わる必要もないし・・・・・

 

「恐らく時期的には4月になるか?じゃあ楽しみにしてるよ」

 

しかしある事態が切っ掛けで大洗学園に戦車道が復活するなんて俺には予想出来なかった。

 




原作入りたいし無理矢理終わらせたった

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