ガールズ&パンツァー~島田家の長男~   作:園部

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夏休みは続く


6話

「ここがプラウダ高校がある学園艦か~」

 

俺は今プラウダ高校の学園艦の前にいる。

理由はカチューシャに呼ばれたから。

プラウダ高校は今年のベスト4に残っている戦車道の強豪校だ。

 

「やっと来たわねアキーシャ!」

 

俺に声をかけてくるが姿が見えないなー・・・・

 

「ノンナさん久しぶりー」

 

「ええ。とは言っても1回戦以来だからそこまで時間も経ってないですよ」

 

そうだっけ?まぁ、ちゃんと会うのが久しぶりっていう・・・

 

「ちょっと!カチューシャを無視するんじゃないわよ!」

 

俺が目線を下に向けるとそこにカチューシャがいた。

 

「あ、居たのか。てっきりノンナさんの肩にいないから中で待ってるのかと・・・」

 

「声かけたじゃない!アキーシャの馬鹿!」

 

「ははは、悪い悪い」

 

俺はカチューシャの頭を乱暴に撫でる。

 

「ちょっと!もっと丁寧にやりなさいよ!」

 

「じゃあ行きますか」

 

「ええ」

 

俺たちはカチューシャを置いて学園艦に入る。

 

「だから無視しないで!」

 

慌ててカチューシャも俺達についてくる。

 

 

「ここがプラウダ高校よ!」

 

カチューシャが胸を張る。

 

「ふーん・・・・ロシアと関係が深いから学園もそれっぽいな」

 

それにしても周りからジロジロみられるのは慣れないな。

女子校だしそれもしょうがないとは思うけど・・・・

 

「すみません。やはり男子に慣れてない子も多いので・・・・」

 

俺が気にしてる事がバレたのかノンナが謝ってくる。

 

「ああ、ノンナさんが気にすることじゃないですよ。こればっかりはしょうがないです」

 

それよりも・・・・

 

「いいんですか?準決って3日後なのに遊びにきちゃって・・・」

 

「構いません。サンダース対策は既に万全なので・・・・今年こそ優勝したいですね」

 

さすがノンナさん。抜かりはないか。

 

「当然優勝するに決まってるわ!」

 

相変わらずカチューシャは自信満々だな。

 

「まずは目先の相手を忘れないようにな」

 

サンダースとプラウダって総合的に差はないし。

 

「分かってるわよ!」

 

まぁ、言うだけ野暮だな。

こんな風にしてるけどカチューシャは有能だし・・・・

 

「では私たちの寮に案内します」

 

「それって男が入ってもいいんですか?」

 

「ええ、事前に許可さえ出せば男性でも入れます。まずは管理人室に行って許可証を貰うので首にかけるのを忘れないで下さい」

 

「了解」

 

そして俺達は管理人室に行って許可証を貰う。

受け取った後はラウンジに案内される。

 

「さぁ、こっちよ!」

 

カチューシャの後についていくとそこには生徒がチラホラ見える。

 

「帰省してる子もいますが・・・・部活動のある子達は残ってますね」

 

まぁ、大会に勝ち残ってる所はそうだろう。

恐らく彼女たちの帰省は少し先か。

 

「じゃあここに座りなさい!」

 

4人用のテーブルに案内される。

 

「はいはい」

 

「ノンナはお茶お願い!」

 

「分かりました」

 

ノンナさんがお茶を取りに一旦離れる。

俺も手伝おうかと思ったが・・・何もしないほうがいいだろう。

 

「お待たせしました」

 

持ってきたのは紅茶と・・・・ジャム?

ああ、ロシアンティーか。

俺は礼を言い紅茶にジャムを入れようとするが・・・

 

「待ちなさい!ジャムは直接舐めて飲みなさい!」

 

実演するカチューシャ。

飲み方なんて好きにしてもいいだろうけど郷に従えっていうし言われたみたいに飲んでみる。

 

「へぇ。結構美味いじゃないか」

 

「でしょ!」

 

家に帰ったらやってみるか?早苗さんに頼んで用意してもらおう。

お茶を飲んだところで一息ついた。

 

「で、今日はこれから何するんだ?」

 

「そうね・・・・考えてないわ!」

 

「ゆっくり話すのは久しぶりです。お互いの近況なんかはどうでしょう?」

 

近況か。いいかもしれない。

 

「じゃあカチューシャからどうぞ」

 

「ふふん。じゃあカチューシャの話をたっぷり聞かせてあげるわ!」

 

そしてカチューシャが語り出す。

戦車については勿論。学校生活についてなんかも・・・・

 

「でね!ノンナったらイジワルなの!」

 

「それはカチューシャが我がままだからです。あまり度が過ぎると誰もついてこれなくなりますよ」

 

「ノンナの馬鹿!アキーシャは分かってくれるよね?」

 

どうやら最近のカチューシャは個を重視するあまりチームというのを軽んじてるらしい。それを窘めたノンナさんにイジワルって・・・・

 

「別に悪くはないよ。」

 

「秋人さん!?」

 

ノンナが驚いてる。窘めてくれるのかと思ったのか?

 

「やっぱりアキーシャは分かってるわね!」

 

恐らくこいつの苛立ちの原因は周りのレベルの低さが原因だろう。

最近大分伸びたからこそのチームメイトとのギャップか・・・

 

「でもそれはチームの為か?」

 

「え?」

 

「チームっていうのは仲良しである必要はない。だが、チームに悪影響を与えるならおとなしくしとけ」

 

「ちょっと!さっきは賛成したじゃない!」

 

「そうだな。それがチームの為ならな・・・・」

 

ノンナが小さく手を挙げる。

 

「秋人さんの言いたいことは・・・・チームの為なら個人主義もいいって意味ですか?」

 

「そう。結局チーム力を高めるのは各々の成長が大事だ。チーム力があっても個人個人が弱かったら力が発揮されない。で、俺の意見を聞いたカチューシャはどうしたい?」

 

「どうって・・・・」

 

「このまま1人で突き進むか・・・・それとも味方と一緒に進むかだ」

 

「そんなの・・・・・皆一緒に成長したほうがいいじゃない・・・それが出来ないからこんなに・・・・」

 

「カチューシャ・・・・」

 

カチューシャだって悩んでる。このままでいいなんてあるわけないのは理解してる。けど、どうしていいか分からないって感じだな。

 

「お前に必要なのは格だ」

 

「格?」

 

「見ただけで相手を屈服させるだけの格。オーラと言ってもいいか。そんな選手になれば他の隊員たちも勝手についてくる。西住まほみたいなな」

 

恐らく今の高校生であれほど完成してる選手もいないだろう。

 

「・・・・・どうすればいいの?」

 

葛藤はあるか・・・・けど、超えるならまず同じ土俵に立たなければならない。

俺はカチューシャの両肩に手を置く。

 

「他の隊員たち以上に努力すること。妥協は絶対しないこと。たとえどんな絶望的状況でもお前だけは絶対折れちゃいけない。そして・・・・いつも通り胸を張って笑顔でな」

 

俺はカチューシャのほっぺをムニムニと形を変える。

 

「うにゅにゅにゅ~!」

 

「あはは、何言ってるかわかんねー」

 

俺は手を止める。

 

「フンッ!やってやるわよ!私はカチューシャなのよ!!どんな相手でも屈服させてみせるわ!」

 

うん?まぁ、いいか・・・

 

「・・・・ありがとうございます。どうなるかと思ったんですけど。カチューシャが元気になってよかったです」

 

「あー・・・・ちょっと思った方向性と違うけど・・・・」

 

「いえ、カチューシャにはあれくらいでちょうどいいです。サポートは任せてください」

 

ならいいけど・・・・

 

 

夕方になり俺は帰る準備をする。

 

「もう帰るの?」

 

「ああ、飛行機の時間あるしな」

 

「・・・・泊まって行ってもいいのに」

 

カチューシャが寂しそうにうつむく。

 

「それは今度だなー。準決勝は見れないけど決勝は見に行くからさ・・・・・」

 

「決勝って9月じゃない!・・・・まぁ、いいわ。私の目指す方向性を教えてくれて感謝してるわ!」

 

「お、おう・・・・」

 

まぁ、ノンナさんがいるなら問題ないよな。

俺はノンナさんに目配せする。伝わったのかノンナさんはお辞儀をした。

 

「じゃあね」

 

そして俺は学園艦を離れた。

 

 

 

8月中旬。俺は学園艦に戻ってきていた。

プラウダも無事決勝進出を決めた。

俺は生では見れなかったのでビデオで確認したが、どうやらカチューシャも問題ないように見えた。

一時は苦戦を強いてたプラウダだったが、カチューシャが仲間を鼓舞するようになり逆転勝利を収めた。

 

「にしても・・・・ノンナと一緒とはいえ2両で突っ込むか?まぁ、その姿に味方が触発されて逆転に繋がったのはいいけど・・・・」

 

だが決勝は楽しみだな。前までとは明らかに違うカチューシャの姿に相手は脅威に思うだろう。

 

「黒森峰の10連覇を阻むか?これは本気で楽しみになってきた」

 

ビデオも観終わって俺はこの後どうするか考えた。

 

「暇すぎるし・・・ちょっと学校に行ってみるか」

 

準備して学園に行く。

校庭では各部活動が練習に励んでいた。

 

「大会は終わったのに熱心だなぁ・・・・」

 

折角だし色々見学してみるか。

そう思った俺はまず体育館に行った。

 

「お、バレー部が練習してるけど・・・・・部員少なくないか?」

 

部員5人だけ。しかも見たとこ1年1人だけ・・・・

 

「典子!もっと気合い入れて!」

 

「はい!」

 

典子と呼ばれる1年生?女子が気合いをいれる。

 

「確かバレーって6人必要だよな?大会にすら出られないわけか・・・・」

 

勿体ないな。素人目線だけど全員上手い・・・と思う。

俺は隅で練習風景を見ていた。

 

「集合!」

 

どうやら一段落ついたみたいだ。

 

「最後に3対2やって終わりにするよ!・・・・・はぁ、せめてもう1人いれば3対3出来るのに・・・・」

 

「キャプテン!それは言わない約束でしょ!」

 

「大丈夫!きっと来年は典子が部員集めてくれるって!」

 

「任せてください!1人でも根性で部員獲得してみせます!」

 

1人って・・・・残りの4人は3年か?

 

「というかすみません。先輩達今年受験なのに付き合ってもらって・・・・」

 

「何言ってんの!私達がやりたくてやってるんだから気にしなくていいの!」

 

「そうそう。典子が気にしなくていいんだから!」

 

「先輩!!」

 

熱いなー・・・・

 

「さ!気を取り直して3対2を・・・・・あれ誰?」

 

気づかれたか?

あんまりじっと見てると失礼だろうから俺は彼女らに近づく。

 

「すみません、暇だったので練習見させてもらいました。迷惑なら引きますけど・・・・・」

 

「ううん、別に迷惑じゃないわ。見学なんて久しぶりだしねー・・・・そうだ!貴方バレー出来る?」

 

キャプテンと呼ばれた人が聞いてくる。

 

「え?体育以外でやったことないんですけど・・・」

 

「それでもいいわ!よければ入ってくれない?1人足りなくてさー・・・」

 

「いや、他の部員の方に迷惑じゃ・・・・」

 

「みんな迷惑じゃないよね!?」

 

「全然いいよー」

「問題なし!」

「大丈夫!」

「問題ありません!」

 

ならいいか。

そして始まる3対3。

俺はポジションとかよく分からないし好きにしていいと言われた。

と、ボールが来たな。

俺はサーブを拾って典子?に返す。

 

「ナイス!」

 

そのボールをアタッカーにトスして決まる。

 

「凄いねー素人じゃなかったの?」

 

先輩アタッカーに褒められる。

 

「素人ですよ。見よう見まねなんで」

 

「そっかそっか。この調子で頼むよ!」

 

肩を思いっきり叩かれる。

ガッチガチの体育会系だなぁ。嫌ではないけど。

 

 

そして3対3が終わった。

こっちの負け。敗因は俺のミス。

 

「すみません。中々難しいですね」

 

「いやいや!素人であれだけやれるなら充分だよ!」

 

「そうそう!気にしなくていいって!」

 

「それに時折こっちも驚くくらい良いプレーするしねー」

 

社交辞令だとは思うが結構嬉しいもんだ。

 

「じゃあ今日は練習終わり!また明日頑張ろう!」

 

俺は帰ろうとするが、手を掴まれる。

 

「折角だし一緒に帰らないか!」

 

「ああ、構わないよ・・・・って名前なんだっけ?」

 

「はは、そう言えば名乗らなかったね。磯部典子だよ」

 

「俺は島田秋人。じゃあ帰るか」

 

俺と磯部が歩き出す。

 

「なー島田はバレー部に入らないのか?」

 

「うーん。今回暇つぶしで来ただけだからなぁ。それに女子バレーに男がいても意味ないだろ」

 

「うーん・・・・そうかもしれないけど。男子バレーがあれば入る?」

 

「入らないな。つーか男子〇〇部なんてないだろ」

 

うちの学校では男子の数が少ないからか・・・・・男子専門の部活動は無い。その気になれば作れるだろうけど・・・・。

 

「勿体ないなー。結構上手いと思ったのに・・・・」

 

「って言われてもな・・・・ただ今日は楽しかったよ」

 

「そっか!じゃあいつでも来てくれ!あ、私こっちだから」

 

俺と磯部は連絡先を交換して別れる。

 

 

「夏休み終わりまでもう少しだよ!」

 

俺は今華と沙織でカフェに来ている。

 

「そういえば宿題やったか?」

 

「思い出させないでよ!」

 

あ、終わってないのね。

 

「そういえば夏休み明けテストありますよね」

 

「華もやめて!」

 

どうやら勉強の話題はNGらしい。

 

「勉強よりも遊びたい!残り1週間しかないんだよ!2人は夏休み何かした?」

 

・・・・プラウダ行って女バレの練習に混じったくらいしかないな。

 

「私は大したことは・・・」

 

「右に同じく」

 

「なら遊ぼうよ!同じ夏は二度と来ないんだよ!」

 

それはそうだ。

 

「・・・・じゃあ沙織は何をしたい?今なら何でも付き合ってやろう」

 

よくぞ聞いてくれました!って感じの目だな。

鞄から何かのチラシを出す。

 

「これ!明日皆でこれ行こうよ!」

 

「これは・・・」

 

「大洗市夏祭り?へー・・・・」

 

「もっとテンション上げようよ!」

 

と言われてもなー・・・・祭りでテンション上がらないし・・・

 

「まーいいんじゃないか?」

 

「ええ、なら浴衣の準備しませんと・・・・」

 

「さっすが華!私はもう準備してるよ!秋人は明日楽しみにしててね」

 

「浴衣か・・・持って来てたっけかな」

 

「え?秋人も浴衣着るの?」

 

あれ?おかしいのか?

 

「地元の祭りでは浴衣で行ってたけど・・・・おかしいのか?」

 

「おかしくないよ!じゃあ楽しみにしてるね!(秋人の浴衣かー。楽しみが増えたなぁ)」

 

「私も楽しみにしてますね(秋人さんの浴衣・・・・写真に収めたい)」

 

浴衣持って来てたっけか?

 

 

俺は集合場所に向かう。

浴衣も無事に見つかってよかった。

1人だけ私服っていうのは少し寂しいしな。

そうして考えてる間に2人が待つ場所に着いた。

もう既に2人は到着してた。

 

「ごめん、待ったか?」

 

「「え?」」

 

あれ?2人ともどうしたんだろう・・・

 

「何かあったのか?」

 

「えっと・・・・・秋人?」

 

むしろそれ以外に何に見えるのか。

どうやら華も同じことを思ってるみたいだし。

 

「そらはそうだよ。あ、髪結んでるからか?普段は結んでないし・・・ただ浴衣の時は結んだほうがいいって言われたことがあってさ。似合ってない?」

 

「そ、そんなことないよ!凄い似合ってる!」

 

「ええ・・・・ちょっと見惚れてただけです」

 

「そっか。そこまで言ってくれてありがとな。2人もよく似合ってるよ。それぞれ自分に合った感じでいいと思う」

 

「あ、ありがと・・・・」

 

「ありがとうございます!」

 

沙織がいつもより元気ないな・・・

 

「大丈夫か?」

 

俺はそうして沙織に近づくと

 

「大丈夫!大丈夫だから!」

 

一気に離れた。やっぱり似合ってないんじゃ・・・

 

「大丈夫ですよ。よく似合ってます」

 

そうして俺の腕に抱きつく華。

 

「ああ、ちゃっかり心読んだのはいいけど・・・・何故腕に抱きつく?普通に歩きにくいんだけど」

 

「ほら、人が多いので逸れないようにしないと・・・・」

 

じゃあ手を繋いでいけば・・・・・いや、止めとこう。

 

「は、華!何で腕に抱きついてるの!?」

 

「逸れないようにです」

 

「手を繋げばいいじゃん!」

 

「手を繋ぐよりも確実です」

 

「じゃあ私もする!」

 

「は?」

 

そして反対の腕に沙織が抱きついてくる。

 

「これなら平等だもん!」

 

何をもって平等とか言うのだろう。

それより歩き辛いし目立つし・・・・

 

「では行きましょうか」

 

え?本気でこれで歩くの?

そして歩き出した俺達は・・・・

 

「やっぱこれ歩き辛いし暑いし目立つし・・・やめないか?」

 

「「嫌(です)」」

 

くそ!たまに通行人に撮られるし最悪だ!ツブッターで晒されてそう・・・・

せめて顔にモザイクしてくれよ・・・

 

「あれ?これなんだろう・・・・」

 

沙織が何かに気付いた。

 

「戦車イベント?」

 

どうやら戦車を広める為の催しがあるらしい。

会場には子供からお年寄りが集まっている。

 

「えっと・・・・あの島田流家元?が大洗で戦車講座をしてくれるみたい。島田って秋人と同じ苗字だね」

 

うん、壇上で分かりやすく説明してるのってどう見ても母さんです。

あ、優華里発見。超集中してるせいでこっちには気づいてないな。

 

「・・・・凄い偶然だな」

 

・・・・母さんから何も聞いてないんですけど・・・・

 

「子供でも分かりやすくビデオや実演でやってくれるみたいですね」

 

「・・・・そうみたいだな。お前ら戦車興味ないだろ?早く別の場所行こう。そうしよう。ハリーハリーハリー」

 

今のこの状態を見られるわけには・・・・

 

「・・・・ではアシスタントやってくれる方いませんか?」

 

どうやら母さんがアシスタント募集してるみたいだな。

探してるうちに逃げるか。

 

「秋人さん・・・・そんなに急かさなくても時間はいっぱいありますよ?」

 

「そうだよー」

 

「お前らと2人で一緒に遊ぶんだぞ。いっぱいあっても足りないだろ?こんな所で足止め食うのは得策じゃない」

 

「え・・・・そっかーそれじゃあしょうがないね!」

 

「ええ!じゃあ行きましょう!!」

 

よし!これで逃げれる・・・・

 

「では、アシスタントはそこにいる高校生3人にお願いしますね。よろしいでしょうか?」

 

うわぁ・・・・「拒否したら分かってるよな?」って目だぁ・・・

 

「呼ばれたよ秋人・・・どうする?」

 

「私戦車したことなんて・・・・」

 

拒否権ないし・・・・

 

「大丈夫だろう。素人向けだし俺達だってなんとか出来るさ。とっとと終わらせてとっとと別の場所に行こう」

 

拒否権がないならさっさと終わらせたほうがマシだ。

 

「秋人が言うなら・・・・・」

 

「折角ですし・・・・」

 

そして俺達は壇上に上がる。

 

「すみませんね。デート中に・・・・」

 

じゃあ呼ぶなババア

そう思った瞬間睨まれた。

 

「いえいえ!デートだなんて・・・・・照れますぅ」

 

照れないでくれ・・・・

 

「しかも両手に花なんて羨ましいわぁ。若いっていいのね」

 

「おばさ・・・・いえ何でもないです」

 

帰りたい。心の底から帰りたい。

そして俺達はイベントを手伝う。

母さんの説明は分かりやすく、老若男女に好評だ。

 

「では、1回目の戦車講座は終わりです。皆様ありがとうございました。次回は30分後を予定していますのでよろしければどうぞ。アシスタントの3人もありがとうね」

 

終わったので俺は2人の手を引いて即退散する。

 

「ちょ・・・秋人」

 

「強引なところもいいですね」

 

そしてある程度離れたところで携帯に母さんからメールが来る。

内容は・・・・

 

「今日は秋人の所に泊まります。まさかどこかに泊まりに行く予定ではないでしょうね?合い鍵は持ってるので帰って来るまで待ちます。お話もあります」

 

うわぁ・・・・すっごい帰りたくない。

 

「秋人!様子おかしかったけど大丈夫?」

 

「具合が悪いならどこかで・・・・」

 

「いや、大丈夫だ。すまない。何でもない・・・・じゃあ行こうか」

 

どうせ色々言われるのは確定なんだ。

心配させるのも嫌だし気を取り直して遊ぼう。

射的、金魚掬い、型抜き等々色々出店を回って遊ぶ。

 

「いや~楽しいね!」

 

今は屋台で買った食べ物各種を持って座れる場所に移動する。

 

「いっぱい食べ物も買えましたねぇ」

 

「値段は凄まじいけどな・・・・」

 

祭りって何でこんなに高いのだろうか?

 

「あ、あそこ座ろうよ!」

 

休憩スペースか。

そして俺達は座ってご飯を食べる。

 

「こういう雰囲気で食べるご飯って美味しいよねー」

 

「ええ、いつもの倍は食べられますよ」

 

え?華さん?

 

「そうか。けど食べ過ぎには注意な」

 

各々買った物を食べる。

 

「ねー花火って何時からだっけ?」

 

「後40分くらいだな。か・・・・戦車で時間食ってしまった」

 

危なく母さんって言おうとした・・・・

 

「あー戦車かー。あの人カッコよくなかった?凛々しいっていうかシッカリした女性って感じで!」

 

「そうですね。戦車道は知りませんが有名な流派の家元らしいので・・・・やはり私生活でもちゃんとした方なんでしょうね」

 

「どうだろうな・・・・」

 

「秋人はああいう大人の女性ってどう思う?」

 

「尊敬は出来るんじゃないか?知らんけど」

 

自分で戦車の話題を振ったのは失敗だったな。

 

「あー秋人は男だし戦車に興味ないか」

 

いや、単純に母親の話題は恥ずかしいだけ・・・・

 

「戦車はいいとして・・・そろそろ場所取り行くか?」

 

俺は話題を切り上げて提案する。

 

「いいね!結構な穴場知ってるんだ!」

 

どうやら地元民だけあって穴場を知ってるらしい。

 

移動した先はちょっとした山だった。

 

「ここの頂上ならいい感じに見えるんだよ!」

 

「じゃあ行くか」

 

そして着いたときには既に始まっていた。

 

「本当によく見えるな。ベストスポットじゃん」

 

綺麗だな。

 

「でしょ!」

 

「空に咲く花も良いですね」

 

その後は黙って花火を見つめる俺達。

 

 

花火も終わったので俺達は帰る。

 

「今日は楽しかったね!」

 

「そうだな」

 

「また来年も来たいですねー」

 

そして各々を送って俺は家に帰る。

 

「電気ついてる・・・・・忘れてた」

 

そういえば今日は母さんが泊まるんだった。

俺は覚悟を決めて扉を開ける。

 

「おかえりなさい秋人。ちょっとこっちに来なさい」

 

「はい・・・・」

 

俺はベッドに座る母さんの目の前で正座する。

 

「今日はありがとう助かったわ・・・・・で、あの子達は誰?」

 

聞かれると思ったけど・・・・

 

「クラスの友人です」

 

「恋人?」

 

「違います」

 

「腕組んでたわよね?」

 

「ノリみたいなものです」

 

「ふーん・・・・・ならいいわ。秋人は私に嘘つかないものね」

 

「はい・・・・・もういいですか?」

 

「いいわ」

 

ふぅ・・・・俺はここで緊張を解いた。

 

「何で家元モードで待ってんだよ!ビビるからやめてくれ!」

 

「デレデレしてる秋人が悪いもん!」

 

家元モードは公私混同を避ける為に作られた母さんの作られた顔。

 

「いやいや・・・・私生活でその顔はなしって言ったじゃんか・・・冷たいし苦手なんだよ・・・・」

 

「秋人も愛里寿も戦車乗ってるときは似たような顔になるでしょ」

 

血筋なのかねぇ・・・・婆様もそうだったみたいだし。

 

「今戦車乗ってないじゃん・・・・・」

 

「全部秋人が悪いの。彼女はいない?明らかに好意もたられてるじゃない!」

 

ぐ・・・・・薄々気づいてはいたけど・・・・

 

「やっぱり母さんもそう思う?」

 

「好きでもない男の腕を組む女なんて売女くらいよ!」

 

売女って・・・・

 

「はぁ・・・・」

 

「秋人は彼女たちが好きなの?」

 

「好き・・・・・恋愛的な意味では・・・・・分からない」

 

実際分からない。

 

「そう・・・・まぁいざとなれば囲っちゃいなさい」

 

「何を言ってるのか・・・」

 

「一応日本は一夫多妻制だし問題ないわ。色々条件は厳しいけど秋人なら大丈夫よね」

 

「・・・・・・ま、色々考えるよ」

 

「そう・・・・・話は終わったからお風呂入ってらっしゃい」

 

「ありがとう」

 

俺は風呂に入って色々考える。

実際告白されたわけじゃないけど・・・・勘違いならそれに越したことはないし。

つっても今日明日でどうにかなる問題じゃないし・・・

 

「今考えてもしょうがないか・・・・」

 

「そうねー告白されてからでいいんじゃない?」

 

なぜちゃっかり身体を洗ってるのか・・・・

 

「私も入ってないもの。家族だし問題ないでしょ?」

 

「さすがにこの歳で母親と風呂は笑えない」

 

また友人にバレたくない秘密が出来たじゃないか。

そして身体を洗った母さんが浴槽に入ってくる。

 

「やっぱり狭いわね。改築する?」

 

「ここマンションだから!」

 

はぁ・・・

 

「あら?もう出るの?母さんに欲情しちゃった?」

 

「狭いし出るよ。後してないから・・・・」

 

距離感が近すぎなのも考え物だな。

 

 

そして寝る直前・・・・

 

「なんで同じ布団に入るのか・・・・」

 

「だって他に布団ないじゃない」

 

そういえばそうだった。別に布団は二つもいらないしいいやって思って買ってなかった。

 

「まぁ、仮にあっても一緒に寝るけどね」

 

「・・・・・何か今日は随分構ってくるけどどうしたわけ?」

 

いつもの比じゃない気がする。

 

「いつも通りよ。ただ・・・・まだ夏休みが残ってるのに学園艦に戻った息子を心配して仕事に託けて来てみれば女の子2人とよろしくやってるなんて・・・私の心配を返せとか嫉妬とか色々あるけど・・・・愛里寿が見たらどう思うかしらね?」

 

ええええ・・・・

 

「愛里寿かぁ・・・・ちょっとブラコン気味だな」

 

「ちょっとどころじゃないんだけどね・・・・・」

 

うん、分かってる。ちょっととボカしたけど・・・・

 

「そこも考える。なんとか兄離れしてほしいけど・・・・」

 

「無理よ。私と愛里寿は似てるから・・・・」

 

それ子離れする気ないって聞こえるんだけど・・・・

 

「・・・・寝るか」

 

ダメだ。今日は疲れた・・・・

 

「ええ、おやすみなさい」

 

 

朝になると既に母さんはいなかった。

手紙によると別の仕事があるらしい。

夏休みも残りわずか・・・・9月の最初の土曜に戦車道全国大会決勝戦が始まる。




キャラの口調把握しきれません!
一夫多妻制?こことは違う日本ですし・・・・



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