夏。7月
全国大会もベスト4が出揃った。
大方の予想通りの結果で、聖グロリアーナ、黒森峰、サンダース、プラウダの4強で決まった。
聖グロリアーナVS黒森峰
サンダースVSプラウダ
どこが勝ってもおかしくないが、やはり黒森峰が頭一つ跳び抜けてる印象だろう。
俺がそんな事考えてると武部に水をかけられた。
「も~なにボーっとしてるの?」
「暑いんだよ・・・・」
「じゃあプールに入ればいいじゃん」
俺がいるのは大洗学園のプール。
今は授業中という名の自主時間で各々好きに勝手してる。
「今は皆の水着姿鑑賞中だ。邪魔すんな」
「エッチ!」
また水をかけられる。
「あまり女性をジロジロ見るものではありませんよ」
五十鈴か・・・・
「こればっかりは男の性だししょうがないだろう」
「開き直ればいいというわけではありませんよ・・・・そんなに見たいなら私だけ見てください」
「華!?」
大胆なこと言うなー・・・・
「皆さんを狼の目から守る為です。私が犠牲にな「別にいいよー」「島田君なら見られてもいいしねー」「見られたくなかったら隔離してるし!」・・・・皆さんを守る為に私だけ見てください」
言い直した・・・・
「あー・・・パスで」
「パスってなんですか!?」
おおう、結構大きい声を出すなぁ・・・
「いや・・・だって恥じらいがないし・・・・女の子が顔を赤くなってこっちを意識するからこそ価値があるんだよ。五十鈴の場合はそれがない。だから俺は今回武部を見る」
「何でこっち見るの!?」
ほら、これだよこれ。
水に浸かって顔を赤くして胸元を隠す。
「いい感じの恥じらいだな。分かったか五十鈴よ」
「分かりました・・・・こうですか?」
「駄目だな。恥じらいがない」
ポーズだけマネしたところで・・・・
「どうしたらいいんでしょう・・・・」
「どうもしなくていいんじゃないか?武部がツッコミ放棄してるせいで止め時が分からなくなったし」
「私のせい!?」
「沙織さん・・・・」
「武部さん・・・」
「沙織ツッコミ放棄しちゃダメだよ」
「武部がんば!」
「ほら、クラス中からも責められて・・・・」
ノリの良いクラスメイト達だな。
「何でクラス中から責められなきゃいけないのよ!」
「知るか。じゃあそろそろ入ろうか五十鈴よ」
「はい師匠!」
「最近華おかしくない?大丈夫?」
大丈夫だろ。多分。
「プール楽しかったなー」
昼休みになり今日は中庭で昼食を食べる。
「楽しくないよ!何で私一人が・・・・」
ブツブツと不満を言ってるようだけど・・・・
「そんなことより昼飯くれ」
「そんなこと!?・・・・うぅ、はいこれ」
俺は弁当を武部から受け取る。
「ありがと」
「はい、華。華のは大盛りにしといたよ」
「ありがとうございます。」
なぜ弁当を作ってもらってきたのか・・・・それは単純に武部の女子力アップの為の練習台の為だ。
俺は弁当を開けて中を見る。
中に入ってたのは種類が沢山のおかずとお米。
見た目も華やかでいい感じだ。
「美味そうじゃないか。いや見た目に騙されるな・・・・昔の母さんの料理も見た目は普通だったはずだ・・・」
油断は出来ない・・・・くっ!保険に胃薬を持ってくるべきだったか?
「何葛藤してるの?ほら食べて食べて!」
「・・・・味見はした?」
「え?当然じゃん!人に食べさせる為に作るんだから常識でしょ!」
俺は確信した。この子絶対料理上手い。
箸を持ってメインのおかずであろう唐揚げを食べる。
「美味いよ!時間経ってるのにここまで美味しいとは思わなかったなー」
「でしょ!前に唐揚げが好きって聞いたから頑張ったよー」
覚えててくれたんだな。ちょっと嬉しいかも。
「この煮物も美味しいですね」
「えへへ、これで女子力上がるかな?」
それは知らない。
「でもこれだけ美味しく作れるならいつか彼氏出来たときは胃袋ゲットできるかもよ?毎日食べたいって思うし」
「「え・・・・」」
ん?俺なにか変なこと言ったっけ?
「えっと・・・・秋人は毎日食べたいの?」
「だってこんなに美味しく唐揚げ作れるんだよ。毎日だって食べたいさ」
「(プ、プロポーズだよね!?華もいるのに・・・やだ~もー)それならそうと言ってくれればいいのに~」
ん?何で恋愛脳モードに入ってんだ?
「あ、秋人さん・・・・それプロポーズですか?」
「は?何で?」
「え?だって毎日食べたいって・・・・」
もしかして・・・・毎日食べたい=毎日一緒にいてくれって誤認させた?
味噌汁を唐揚げに置き換えたバージョン?
「ごめん、単純に唐揚げ毎日食べたいぜ!ってことしか考えてなかった。プロポーズのつもりは1㎜もなかった」
「1㎜も・・・それはそれで可哀想にみえます」
しかしどうするか・・・
「ねー秋人はどこで式をあげたい?私は教会でも神社でもいいけど・・・そういえばいい加減苗字で呼ぶのやめてよ~私達夫婦になるんだよ~」
「・・・・・五十鈴さん助けてください」
「ご自分で蒔いた種なので・・・・・あ、私もいい加減名前で呼んでくださいね」
どうしよう・・・・
「あー・・・・沙織」
「なに?ダーリン♪」
えーダーリンって・・・・
「・・・・誤解だ」
「え?」
「あれは言葉通り唐揚げ毎日食べたいってことでプロポーズじゃない・・・・というかおかしいと思え。何で告白吹っ飛ばしてプロポーズなんだよ」
時間が止まった。
「誤解?」
「ああ。正直申し訳ないと思ってる」
ああ、自分の奇行思い出して顔が赤くなってる・・・
「イヤー!!!!恥ずかしい・・・・恥ずかしい・・・・」
orzみたいになってる。
「大丈夫だ沙織。お前の奇行は生涯覚えると誓おう」
「誓わないでよ!忘れてよー!」
「沙織さん・・・・」
お、華が慰めに入るか。
「私もバッチリ覚えていますよ」
止めを刺した。
「やっぱり変わったよ!昔の華なら慰めてくれたもん!」
「あらあら・・・・私は変わっていませんよ。成長したんです」
「悪い意味でね!秋人のせいだー!華が変わったの秋人のせい!」
「私関係ありません」
「あるよー!もうやだ~・・・・」
うーん・・・どうすれば・・・
「沙織。気にするな・・・・・お前の暴走は持病だって思うからさ」
「持病じゃないもん!フォロー下手すぎ!」
・・・・いい加減面倒になってきたな。そろそろ戻るか。
「華、そろそろ戻るか」
「あらら、放っておいていいんですか?」
「え?」
沙織がこっちを見る。
「いいよ。沙織なら直に回復するさ。1人で落ち着いたら戻ってくるだろう。俺達の友人はずっと落ち込む程弱くないしな」
「・・・・そうですね。沙織さん、落ち着いたら教室に戻ってきてくださいね」
俺は華と教室に戻る。
沙織sideout
置いてかれちゃった・・・・
「秋人・・・・」
私は秋人と初めて会った頃を思い出す。
ただ1人のクラスの男子で女子に人気で勉強が出来て顔も良くて・・・・だから教室では誰も声をかけなかった。高嶺の花?って感じで。
始めて会話したのは食堂で。華の食べる量が多かったから気になって向こうから声をかけてきた。女子に対して失礼じゃない?って思った。だからつい言ってしまった。
「少し女子に人気だからって何を言ってもいいと思ってるの!」
そうしたら秋人は「え?何が?」だもんね。自分が女子に人気なのも知らないしデリカシーが欠けてるし少し可愛いと思ってしまった。
それから秋人と話すようになった・・・
私が恋愛恋愛煩くても話には付き合ってくれるし優しいとこもあるのは分かってる。少しイジワルだけどそれも仲が良いからこその証拠だと思う。
いつからだろう・・・・秋人を意識するようになったのは・・・・
特に特別な切っ掛けはない。けど、そういうものだと思う。
映画やドラマじゃないんだから人を意識するのに切っ掛けなんてそうそうないかもしれない・・・・だから今回のことは正直嬉しかった。
「毎日食べたいか・・・・・」
それも勘違いで暴走して恥かいて・・・・・
「あー・・・好き・・・なのかなぁ?」
よく分からない。彼氏は欲しいしモテたいと思ってる。
でもこれが恋愛感情なのかなぁ・・・・
「彼氏いたことないしね・・・・」
分からないし様子を見よう。
大丈夫。まだまだ時間はいっぱいあるしね!
「さて、戻ろうかな」
私が教室に戻ると華と秋人が1枚の紙を持って唸っている。
どうしたんだろう?
「2人ともどうしたの?」
秋人が無言で紙を渡してくる。
「ん?なになに・・・・『例の1年男子!三角関係!?今度の相手は同級生だ!』これは・・・・」
まさか・・・・
沙織sideout
俺と華が教室に戻るとクラスが騒がしい
「どうした?何かあったのか?」
適当にクラスにいる女子に聞いてみた。
「え?・・・ううんなにもないよ?」
本当に何があったんだ?
「華と戻って来たよ」
「じゃあ本命は五十鈴さんなの?」
「ていうかこれ信憑性あるのかな?」
「新聞部だしなー・・・・」
集まって一枚の紙を見てる?
俺は彼女たちに近づいて紙をひったくる。
「「「「あ」」」」
「悪いが見せてもらうよ」
俺が見たのはまたしてもゴシップ記事だった。
「なんて書いてあるんですか?」
華が俺に聞いてくる。
「『例の1年男子!三角関係!?今度の相手は同級生だ!』多分中庭でのやり取りで勘違いしたんだろうな・・・・」
「まぁ・・・・」
副会長との噂が沈静化したと思ったらこれだよ・・・・
「しかもこれによると俺が沙織を捨てて華を選んだって書いてあるな」
「ああ、あの場面ですか・・・・」
俺が沙織を置いてきたのが仇になった・・・・というか、これをあの短時間で新聞にして学園中にバラまいたのか?やってることはアレだが能力高いなぁ・・・・
「どうしましょう?」
「別にどうもしないさ・・・・・ただ、お前らに迷惑がかかるなら話は別だけどな」
その時は容赦しない。
「私は別に・・・ただこれ沙織さんが見たら・・・・」
うーん・・・・
「どうしたのー?」
ちょうどよく戻って来たか・・・・
まぁ、とりあえず見せてみるか。
「ん?なになに・・・・『例の1年男子!三角関係!?今度の相手は同級生だ!』これは・・・・」
「沙織の思った通り新聞部だ。お前のorzの姿のまま俺と華が去ったから妙に信憑性があるのがタチ悪い」
「晒し者になっちゃうの?」
んー・・・・
「恐らく2年以上ならあんまり信じないだろう。慣れてるから。同じ1年なら信じても・・・・しょうがないかもな」
「えー・・・・うちのクラスは?」
俺は周りを見てみると・・・
「普通に話してるね?」
「険悪ってことはなさそう・・・」
「やっぱデタラメか」
「だと思ったー。あの3人仲良いしねー」
「問題なさそうだな。早く噂を無くすなら常に3人でいれば・・・・」
「うん。消えそうだね」
「なら、いつも通りで大丈夫そうですね」
そう思っていた数日後。
『例の1年生が公認二股!?お相手は振られたハズのあの子と残ったあの子!』
・・・・もう好きにしてくれ。
そう思い俺達は新聞部のやることを気にしなくなった。
今日は終了