ガールズ&パンツァー~島田家の長男~   作:園部

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第3話

季節は流れ夏に差し掛かる。

副会長とのゴシップ記事も皆の記憶から薄れ始めていた頃

今年も戦車道全国大会が開催される。

 

「見てください島田殿!沢山戦車がありますよ!」

 

俺は優花里と一緒に全国大会の会場に来ていた。

 

「当然だろ。とりあえず俺は色々挨拶に行ってくるから優花里は適当に席でも取っておいてくれ」

 

「お任せください!」

 

「じゃあ後で携帯鳴らすから」

 

そういって俺はまず最初にグロリアーナのところに向かう。

すぐに聖グロは見つかった。

だって椅子持参で紅茶を飲んでる高校とか聖グロ以外にないし・・・

 

「ダージリン!」

 

その声に反応してこちらを向いてくる。

 

「あら、秋人さん。応援に来てくれたんですか?」

 

ダージリンが俺を見かけると周りにいた他の子たちが俺の方に寄ってくる。

 

「コーチ応援お願いします!私あれから上手くなったんですよ!」

「わーコーチだ!私達頑張りますね!」

「応援ありがとうございます!」

 

見たのって2,3回なのにコーチ扱いって・・・・

 

「あなたたち、あまり騒ぐのは品がなくてよ?」

 

ダージリンが嗜めると周りに集まった子たちが引いていく。

 

「別にいいと思うんだけどな。試合前だしリラックス出来るし」

 

「それはもっと女の子たちに囲まれたかったってことなのかしら?」

 

「チガイマス」

 

なんだろう。妙な圧力が・・・・

 

「で、今日は誰を応援するのかしら?」

 

「誰をってことはないけどな・・・・しいて言うならみんな?」

 

「そう(特定の個人を応援されるよりはマシね・・・)私たちは今年こそ黒森峰の連覇を止めてみせるわ」

 

気合い入ってるな。いい感じに集中出来てる。

 

「でも黒森峰とあたるのは準決勝だろ?目先の相手に足を掬われないようにな」

 

心配はないと思うけど一応注意はしとく。

 

「もちろん油断はしないわ。貴方はこの後どうするのかしら?」

 

「俺は他の高校にも挨拶してくるよ。時間もないしそろそろ行くな」

 

「ええ、ではまた」

 

俺は聖グロから離れて次に向かうのは・・・

 

「アキーシャ!・・・ふん、久しぶりね!」

 

一瞬笑顔を見せたのは気のせいか?

 

「久しぶりカチューシャ。激励にきたよ」

 

「私の応援に来るなんて分かってるじゃない!」

 

「いや、カチューシャだけじゃないけどね。さっきまで聖グロにいたし」

 

「ムッ!アキーシャはカチューシャのことだけ応援してればいいのよ!」

 

相変わらずで少し安心したな。

俺はカチューシャに肩車する。

 

「これも久しぶりか?重さ変わらないけどちゃんと成長してんの?」

 

「失礼ね!してるに決まってるでしょ!」

 

俺とカチューシャのやり取りが他の隊員たちに見られる。

 

「あれって誰?カチューシャのお兄ちゃん?」

「もしくは彼氏とか!」

「ロリコンか~」

「あれって・・・・多分島田秋人だと思う。あの島田流の」

「え!?それって2年前の?」

「そうだと思う。前にチラっと見たことあるし・・・」

 

ちょっと騒がしすぎたか?

するとノンナさんがこっちのほうに来る。

 

「皆さん静かに。今は整備中のはずじゃなかったんでは?」

 

そう言われ隊員たちは自分の持ち場に散っていった。

 

「お久しぶりですね。すみません挨拶してすぐ帰るはずだったんですけど・・・」

 

「なによ!アキーシャはカチューシャと居たくないっての?」

 

「気にしないでください。カチューシャも喜んでます」

 

「喜んでないわよ!」

 

俺はカチューシャをおろす。

 

「じゃあ俺はそろそろ・・・試合頑張ってください」

 

「ありがとうございます。秋人さん」

 

「今年こそは優勝するから見てなさい!」

 

俺はプラウダから去る。

時間ももうないし理事にも挨拶しとくか?

 

「うちには挨拶に来ないのか?」

 

「黒森峰は正直挨拶し辛いですね。流派的にも・・・・みほやエリカには会いたいんですけど・・・」

 

あれ?俺は誰に返事した?

 

「ほう、みほとエリカだけか・・・・」

 

・・・・ああ、何で彼女がこんな所にいるんだろうな。

 

「ええ・・・・」

 

俺はその場でダッシュするが捕まってしまう。

 

「久しぶりだな秋人。私に何か言う事は?」

 

「久しぶりですね。まほとは中学以来ですか」

 

2年にして黒森峰の隊長、西住まほ。西住流戦車道の後継者だ。

 

「本当に久しぶりだ。この日を凄く待ちわびたぞ。お前なら絶対来ると思っていたしな」

 

「そうですね。出来れば笑顔で言ってほしいんですけど・・・・・怒ってます?」

 

「いやなに・・・・中学の最後のほうから連絡しなかったのを根に持ってるとか、ダージリンのところには遊びに行ったのにこちらには全然来ないとか・・・・別にそんなことを思ってるわけじゃないぞ」

 

思っていたのか・・・

 

「ダージリンから聞いたんですか・・・・」

 

「ああ、この前メールでな・・・・散々煽られたよ。」

 

一体どんなメールだったのか。

 

「まぁ、正直黒森峰には行きづらいですね。立場的にね・・・・許してくれませんか?」

 

「じゃあみほと頻繁にメールをやりとりしてる件について聞かせてもらおうか?」

 

「いや、それは趣味が合うし・・・・ボコ可愛いじゃないですか」

 

「くっ・・・やはり共通の趣味というのは大きいのか・・・」

 

俺とまほの妹のみほの共通の趣味とは、ボコである。

ボコられグマのボコ。一部に人気のキャラクターで俺の妹もハマっている。

毎回毎回ボコられ続けても何度だって立ち上がる姿に俺が感動したのが最初。

みほとはなにかとボコグッズを集めてはそれを見せ合っている。

最近、手作りのボコグッズも作成中だ。

 

「ボコはいいですよー。まぁ、この歳で人形とか退かれますけどね」

 

「いや、別に退かないぞ。私はどんな趣味を持っていても受け止めよう」

 

「あはは・・・ありがとうございます」

 

話していると遠くからこちらに向かって走ってくる人影が見える。

 

「「隊長!」」

 

みほとエリカだった。

 

「あ、みほー。直接会うのは久しぶりだね!」

 

「秋人君!?久しぶりー!」

 

俺はみほと互いの出会いに喜ぶ

 

「ちょっと私達急いでるのよ!」

 

お、エリカか・・・

 

「相変わらずツンツンしてるなー。でもそういうところもエリカらしくて可愛いな!」

 

なんだろう、旧友に会ったからか。

ちょっとテンション上がってるかも。

 

「な、なに言ってるのよバカじゃないの!?さぁ、隊長!こんな男放っておいて行きましょう。時間がありませんよ」

 

「あ、ああ・・・・じゃあな秋人。またそのうちに」

 

「またね秋人君」

 

そして3人が去って行った。

 

 

ちょっと挨拶が長引いてしまったな。

そろそろ第一試合が始まりそうだ。

すると優花里から連絡が来た。

 

「島田殿!良い席確保しました!場所は・・・・」

 

「ああ、すぐ行くよ」

 

俺が連絡を受けて行くと・・・・

 

「あ、いたいた。悪いな待たせてしまった」

 

「いえいえ!さ、ここ座ってください!」

 

俺は優花里の隣に座る。

 

「1回戦は黒森峰対コアラの森学園か・・・・まぁ、黒森峰だろうな」

 

「ジャイアントキリングはありませんか?」

 

「ないな。今年は4強がそれぞれ別れたし恐らく準決勝まで波乱はないと思ってる」

 

「なら、島田殿が注目してる高校は?」

 

注目か・・・・それなら

 

「継続高校だな。隊長が気になった」

 

「継続ですか?中堅校って感じですが・・・・」

 

「実力的には恐らく4強より若干落ちるだろうけど、隊長車だけみれば結構面白いんじゃないかな」

 

試合が始まったが1日目の1回戦は思った通り波乱がなく終わった。

 

「今年は別々の会場で同時開催だったんだな。」

 

「スケジュールの都合みたいですね。2回戦は来月みたいです」

 

来月か・・・・

 

「じゃあ帰るか」

 

「はい!」

 

俺は優花里と一緒に学園艦まで帰る予定だったが母さんからの連絡があり途中で別れて俺は実家にまで帰る。

 

「ただいまー」

 

俺が玄関を開けるとそこにいたのは愛里寿だった。

 

「兄様!お帰りなさい!」

 

俺の腹にダイブする愛里寿。

 

「う・・・・愛里寿いたのか・・・久しぶりだな」

 

「うん!」

 

俺は愛里寿に手を引かれてリビングまで行く。

 

「久しぶりね秋人」

 

「久しぶり母さん。今日は何の用?」

 

「あら、母が子に会うのに理由が必要なの?昔は母さん母さんって常に私から離れなかったのに・・・悲しいわ」

 

「そんなことあったっけ?」

 

ま、小さい頃のことなんてそんなに覚えてないしあったのかもな。

俺はソファーに腰を下ろす。そして愛里寿は俺の膝の上に座る。

 

「今日は高校の全国大会でしょ?秋人なら会場で見てると思って呼んだの。久しぶりに家族と一緒に過ごしたいじゃない」

 

「母さんは隙あらば家族と過ごそうとするよな。俺が家を出てくときもギリギリまで出してくれなかったし・・・・」

 

「当然。家族は一緒がいいわ」

 

その意見は否定しないけどねー・・・・愛里寿可愛いし。

 

「愛里寿は大学はどう?」

 

「えっと・・・頑張ってるよ」

 

ああ、戦車道は順調だけど友達は出来てないって感じか。

年も離れてるししょうがないのか?

 

「そっか。さすが愛里寿だね・・・・」

 

俺は愛里寿の頭を撫でる。

くすぐったいのか嬉しいのか、顔が綻ぶ。

 

「えへへ・・・・にいさまぁ」

 

「本当に愛里寿はお兄ちゃん子ねぇ・・・・母さんもまぜなさい」

 

母さんが俺と愛里寿に抱きつく。

 

「母様重い・・・・」

 

「母さん体重上がった?前より重量が・・・」

 

「失礼な子供たちね!ほら、胸のサイズが大きくなったから・・・秋人触ってみる?」

 

「ノーセンキュー」

 

どこの世界にこの歳で母親の胸に触る息子がいるんだか・・・

 

「私小さい・・・・」

 

愛里寿が自分の胸をペタペタ触る。

 

「愛里寿はこれからよ。私の娘なんだから標準以上にはなるんじゃないかしら?」

 

「おっきくなれば兄様を誘惑できるのに・・・」

 

「残念。もうされてるんだなー」

 

俺は愛里寿を抱きしめる

 

「じゃあちっちゃくてもいい」

 

「兄妹仲が良くて母さん嬉しいわ」

 

割といつもの島田家です。

 

 

「今日は腕によりをかけて母さんがご飯を作るわ!」

 

「「え?」」

 

いつもは家政婦さんの仕事なんだけど・・・・

 

「母さん無理しないほうが・・・」

 

「そうだよ母様・・・・うぷっ」

 

「愛里寿!?くそ、昔の母さんの料理を思い出してしまったか!」

 

あの毒を思い出しちゃダメって言ったのに・・・・

 

「失礼ね!今度は上手くいくわよ。母さんだって日々練習してるんだから!」

 

ぶっちゃけうちの家はお金持ち。

全ての家事は家政婦さんが全て賄ってる。

この家に生まれた母さんも家事なんかしたことがなく・・・・。

そして愛里寿の7歳の誕生日。

何をトチ狂ったのか、料理を作るといいだした。

母の料理は初めて食べるので俺も愛里寿もかなり期待した結果。

 

「初めて救急車乗ったんだよなー・・・・まさか兄妹2人同時に救急車で運ばれるときが来るとは思わなかったっけ・・・」

 

「兄様・・・・・救急車呼んでいたほうがいいかな?」

 

今母さんはキッチンで料理を作っている。

 

「いや、日々練習してると言った。俺は母さんを信用してる・・・・胃薬の準備だけしておこう」

 

「信用した結果が胃薬なんだね」

 

それはしょうがない。

 

「大丈夫。毒見は俺がするから愛里寿に被害はこない」

 

せめて愛里寿だけでも守らねば・・・・

 

「ダメだよ!兄様を1人で逝かせない!」

 

「愛里寿・・・・」

 

愛里寿から強い意志が感じる・・・・少し見ないうちにこんな目をするようになったなんて・・・でも

 

「愛里寿は自慢の妹で愛する妹だ。そんな愛里寿に毒と分かって食べさせられない。気持ちだけ貰っておくよ」

 

「兄様・・・・・」

 

「大好きだよ・・・・愛里寿」

 

「にいさまー!!!」

 

「準備出来たからいつまでも寸劇やってないで運んでちょうだい」

 

「「はーい」」

 

ま、普通に料理では死なないしね。

 

そして出来た料理が・・・・

 

「目玉焼きのせハンバーグ、肉じゃが、鳥の唐揚げ・・・・あまり統一性はないけど見事に俺達の好きなものばっかりだな」

 

俺の好きな物は肉じゃがと唐揚げで愛里寿が好きな物は目玉焼き乗せハンバーグだ。

 

「まず俺が一通り毒見をする。愛里寿は待機」

 

「了解」

 

俺はまずハンバーグから手をつける。

ふむ、ソースはデミグラスソースで上手く肉汁が閉じてあるな。

まずは1口食べる。

 

「に、兄様・・・大丈夫?」

 

俺は反応しめさず次に肉じゃが、唐揚げを食べる。

 

「ど、どう・・・・?」

 

何で母さんが不安がってんだよ味見してないのか?

 

「・・・・美味しいです。花丸です」

 

「本当!?」

 

愛里寿がハンバーグを食べる。

 

「お、美味しいよ!」

 

「だよな」

 

戦車以外出来ない母さんが・・・・

 

「あれからいっぱい練習したんだね・・・・」

 

「母様凄い!」

 

母さんが泣いてる・・・?

 

「母さんどうした!?」

 

「母様どうしたの?悲しいことでもあったの?」

 

「違うのよ・・・・ただやっと母親らしいことしてあげられたなーって・・・・」

 

母さん・・・・

 

「家事が出来なくたって俺達2人にとっては自慢の母さんだし、母親らしいこと?生まれたときから温もりを貰い続けた。それだけでいいんだよ」

 

「うん!兄様の言うとおりだよ!」

 

「秋人・・・・愛里寿・・・・」

 

「さ、食べよう。折角のご馳走が冷めるしね」

 

「ええ・・・・・ありがとう2人とも」

 

 

夕食も食べ終わりお風呂に入った後はリビングで愛里寿と母さんとダラダラする。

 

「兄様って今日は泊まって行くんだよね?」

 

「そうだな。明日の昼過ぎには学園艦に戻るよ」

 

「じゃあ今日は一緒に寝ていい?」

 

「いいぞー」

 

「じゃあ今日は親子3人川の字で寝ましょうか!」

 

「じゃあお布団準備してくるね!」

 

ドタバタと愛里寿が部屋を飛び出す。

 

「まだまだ子供だなー」

 

「12歳だもの。まだ子供よ」

 

それっきり一言も話さずリビングに静寂が広がる。

すると母さんが・・・・

 

「ごめんなさい」

 

「急に何?母親らしいことはさっき「違うの。家のことよ」・・・・」

 

家か・・・

 

「いつか謝らなきゃって思って・・・誰よりも戦車が好きで誰よりも才能がある秋人が後継者になれないのは・・・・」

 

「母さんのせいじゃないだろ。戦車道は女性の嗜みって言われるくらいなんだから・・・確かに小さい頃は何で女に生まれなかった?とか男で戦車乗(笑)って馬鹿にされて悩んでた時期はあったけど・・・・」

 

「・・・・・」

 

俺は母さんに向き合って今の気持ちを言う。

 

「少なくても今の俺は優しい家族と楽しい友人に囲まれて幸せだよ。それに今は周囲に認められてるしねー。だから・・・・男として生んでくれてありがとう。母さんが俺の母さんでよかった」

 

そう言うと母さんが俺を抱きしめる。

 

「秋人・・・・・・・・私も秋人が私の息子でよかったわ」

 

「うん・・・・・」

 

愛里寿が呼びに来るまでこの状態が続いた。

 

 

朝になって俺は学園艦に戻る為準備する。

 

「もういっちゃうの・・・・?」

 

「ごめんね愛里寿。長期休暇の時はもっと居られるからさ・・・・我慢してな?」

 

「うん・・・・」

 

「・・・・そうだ。実はボコの新作グッズ作ってるんだ。完成したら送るな」

 

「本当!?」

 

お、元気出てきたか?

 

「本当。ぬいぐるみとか着ぐるみとか他にも・・・・だから楽しみにしてろよ?」

 

「うん!」

 

よかった。愛里寿は大丈夫・・・・・・で

 

「母さん何か涙脆くない?年か?」

 

「秋人・・・もっと居てくれてもいいわよね?何も朝から行かなくていいじゃない・・・・あと年のことは言わないように」

 

「いやー思い立ったら吉日というか・・・・あんまり長居しすぎると戻りたくなくなるし・・・」

 

心地よすぎるんだよなー

 

「母さんが一生養うから・・・・ずっとニートでいいから家に居てよぉ・・・」

 

「嫌だよ・・・・・もし俺が彼女連れてきたらどうなるんだか・・・・」

 

「え?秋人彼女いるの?」

 

「いや、いないけど・・・・もしもだよ」

 

「そう・・・・よかったわ・・・・・証拠隠滅って面倒なのよね」

 

・・・・聞かなかったことにしよう。

 

「じゃあ準備出来たし行くよ。じゃあな愛里寿。ボコグッズ楽しみにしてろよ」

 

「うん!」

 

「母さんは少しは子離れしといてね」

 

「無理よ」

 

即答かよ・・・・

 

「じゃあいってきまーす」

 

「いってらっしゃい!」

 

「いってらっしゃい・・・・」

 

そして俺は学園艦に戻った。




仲の良い家族って憧れますよね・・・・父親?シラネ
千代さんってあんま喋ってないからよく分からない。

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