ガールズ&パンツァー~島田家の長男~   作:園部

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13話始まりますー
最近もっとらぶらぶ作戦買ったんですよ。
7巻でボコが西住家にやってくる話とか面白かったです(しほさんがボコの着ぐるみ着ただけなんですけどね)
子供みほのテンションが凄い可愛い。

『ぼこだー!』


13話

練習試合が終わった後はⅣ号に乗ったみんなで街を周る。

本来なら麻子も一緒のはずだが御婆さんに顔を見せなきゃいけないらしく俺達とは途中で別れた。

 

「これからどうする?」

 

沙織がそう聞いてくる。

 

「まずは腹を満たしたい」

 

朝は食べたけど昼飯食べてないからな~

時間もお昼すぎだし皆も腹減ってるだろう。

 

「いいですね!」

 

華が即了承する。

この見た目で大食いだからな。

他の面子も特に反対というわけじゃないので近くのファミレスにでも移動しようとすると・・・・

 

「お嬢!」

 

人力車を引っ張ってこちらに向かって来る男がいた。

 

「新三郎・・・・」

 

「え?何それ聞いてないわよ!」

 

「うちに奉公に来ている新三郎です」

 

ああ、華ってお嬢様だったっけ。

奉公人までいるとは思わなかったけど・・・

 

「皆さん初めまして。お嬢がいつもお世話になっています」

 

人の好さそうな爽やかそうな人だ。

 

「いえ、こちらこそ俺達は「華さん」」

 

誰だ?俺の言葉を遮った人は・・・

人力車から降りてきたのは物を着た女性だった。

 

「お母様・・・・」

 

華の母親か。

結構似てる部分もあるし納得。

 

「よかったわぁ・・・元気そうで。そちらの方たちは?」

 

「同じクラスの西住さん、武部さん、島田君」

 

「あ、私はクラス違いますが戦車道の授業で・・・」

 

優花里が言った瞬間華のお母さんの目が鋭くなった。

 

「戦車道・・・・・華さん戦車道をしてるの?」

 

「・・・・」

 

お母さんが華の手を取って匂いを嗅ぐ。

 

「この鉄と油の香り・・・・本当にやっているのね」

 

試合の後とは言えちゃんと洗浄してたはずなんだが・・・華道やってる人って嗅覚強くないと出来ないのか?

 

「はい・・・・」

 

「花を活ける大事な手で・・・・・あぁ」

 

そのままその場で倒れそうになるのを何とか俺がキャッチした。

 

「お母様!?」

「奥様!?」

 

「ショックで倒れただけだ。幸いどこもぶつけてないからこのまま自宅のほうまで運んで養生させるといい。自宅ってここから近いんですか?」

 

俺は新三郎さんに聞いた。

 

「え、ええ・・・・」

 

「なら自宅まで行きましょうか」

 

 

俺達は華の家でお茶を飲んでいた。

 

「すみません・・・・私が余計な事を言ったばかりに・・・」

 

「あれだけ匂いに敏感な人だ。実家に戻る機会があればその時バレてたし・・・遅いか早いかだろう」

 

「そうです。それに・・・・私が母に話していなかったのが悪いんです」

 

あれだけ否定的なら言いづらいのは分かるけどな。

そのとき襖が開いた。

 

「お嬢・・・・奥様が目を覚まされました。お話があるそうです」

 

「私・・・もう戻らないと」

 

「お嬢!・・・・差し出がましいと思いますが、お嬢のお気持ち・・・・奥様にちゃんと話したほうが宜しいと思います!」

 

うん。このままズルズルやってると却って溝が大きくなるしな。

 

「俺もそうしたほうがいいと思う。親子なんだから・・・・話せば分かってくれると思うよ」

 

「秋人さん・・・・・分かりました」

 

 

そして華が移動するのを見て俺達は・・・

 

「さ、華の様子を見に行くか」

 

「そうだね!」

 

沙織は行く気マンマンだな。

 

「え・・・・いいのかな・・・」

 

「家庭の事情ですし・・・私達が立ち聞きしていいのでしょうか?」

 

みほと優花里は気乗りしないと・・・

確かに家庭の事情に他人が入るのはどうかと思うけど。

 

「まるっきり無関係じゃないし立ち聞きくらいならいいだろ」

 

俺達は部屋を移動して襖越しに話を聞く。

 

「申し訳ありません」

 

この声は華か。

 

「どうしたの?華道が嫌になったの?」

 

「別に嫌になったわけじゃないんです。ただ・・・・活けても活けても何かが足りないような気がするんです」

 

「そんな事ないわ。貴女の花は可憐で清楚。五十鈴流そのままよ」

 

「でも私は・・・・・もっと力強い花を活けたいんです!」

 

力強い花か・・・・それが華の目指す華道なのかな。

 

「・・・・昔の貴女はどこに行ったの?これも戦車道のせいなの?戦車なんて野蛮で不格好で煩いだけじゃない・・・・戦車なんてみんな鉄屑になってしまえばいいんだわぁ」

 

落ち着け俺。優花里もイラってきてるけど、俺はもっと落ち着けー

大丈夫。他人がなんて言おうと俺は戦車大好きだ・・・

 

「ごめんなさいお母様・・・・でも私、戦車道は辞めません」

 

ホントに華って意志が強いよな。

 

「・・・・分かりました。だったらウチの敷居は二度と跨がないでちょうだい」

 

「奥様それは「新三郎はお黙り!」・・・・」

 

は?この人自分の娘をなんだと思ってるんだ・・・

俺は襖を開けて中に入った。

 

「ちょ・・・・秋人・・・」

「島田殿・・・・」

「秋人君・・・・」

 

3人の言いたいことは分かるよ。

でも我慢出来なかったんだ。

 

「話は終わったな・・・・・じゃあ帰るぞ・・・・華」

 

「はい、秋人さん。お母様、失礼致します」

 

さて、引き止めてくれるだろうか・・・・

 

「お待ちなさい!華さんを名前呼びだなんて・・・・」

 

釣れたな・・・

 

「貴方には関係ないことでしょ?勘当宣告したんだから・・・」

 

「な!?」

 

何を驚いてる?二度と敷居を跨ぐなってそういう意味だろうが。

 

「これから華がどうなろうと貴方には何も関係がないことですよ。ああ、安心してください。華のことは俺が一生面倒見るので・・・・これからは好きなだけ花を活けさせるし戦車道も続けさせますしね」

 

俺は華の手を引いて部屋を出ようとする。

 

「待ちなさい!」

 

「だから貴方には関係ないと言ってるでしょう。貴女は自分の望み通り動かないことを理由で娘を捨てたんだから・・・跡取りならご自分のお弟子さんを養子に貰えばいいんじゃないですか?ちゃんと望み通りに動けるロボットのようなね」

 

華のお母さんが俺の前に立ちふさがって俺にビンタをする。

すると部屋に甲高い音が鳴り響いた。

 

「華さんは・・・・華は私のたった一人の娘です。他人じゃなく・・・替えのきかない大事な娘です!」

 

痛いなぁ。やっぱ子供を想う母親って強いや。

 

「だったらなんで・・・・そんなに娘のことを想ってるのに二度と敷居を跨ぐなと言った!?なんで娘の強い想いを一蹴した!?」

 

「私は・・・五十鈴流家元として・・・」

 

「分かるよ。俺の家は戦車道の家系だから・・・・でも、それは娘を失うよりも大事なことなのか?」

 

少なくても俺は家族を失いたいとは思わない。

戦車を取るか家族を取るかなんて・・・・迷うまでもない。

 

「・・・・華さん」

 

お母さんが華に向き合う。

 

「はい、お母様」

 

「私は前言を撤回する気はありません・・・・ですが、力強く可憐で清楚・・・・そんな花を活けれるようになったら帰ってきなさい。私は貴女がそれを出来る日をずっと待っています」

 

「お母様・・・・・必ずやり遂げて家の敷居を跨がせてもらいます」

 

はぁ・・・・・これでなんとか・・・

 

「貴方・・・・名前は?」

 

「島田秋人です・・・・・先程は大変失礼を致しました」

 

俺は深く頭を下げた。

冷静になった頭で考えると・・・・俺は他人の家で何をやってるんだろう。

 

「いえ、私も大事な娘を失わずに済みました・・・・ところで・・・」

 

「何でしょう?」

 

「貴方は・・・・華さんの恋人でいいのかしら?」

 

・・・ん?

 

「いや・・・・・え?・・・・なんで?」

 

「だって貴方・・・・華さんのこと一生面倒見るって」

 

・・・・言ったっけ?

あ、そういえば言ったよな・・・・うん。

 

「それは・・・えっと・・・・」

 

「それに華さんも手を引かれた時全く嫌な顔1つしないんだもの・・・・それにお互いの事を名前呼びしてるし・・・隠さなくてもいいのよ?あれだけ胆力のある若い子なら華さんの婿に・・・・」

 

「お母様!?」

 

どうしよう話が・・・・

 

「折角だし許婚にどうかしら?家柄も問題なさそうだし・・・」

 

その時沙織が叫びだす。

 

「あ!あ!もうこんな時間!華も秋人ももう出航の時間になっちゃうよ!」

 

ナイス沙織。

 

「そうだな!じゃあ取りあえず今日のところはこの辺で」

 

「え・・ええ、分かったわ。じゃあ新三郎に送らせるわね」

 

新三郎さんのほうを見るとめちゃくちゃ泣いていた。

 

「うぅ・・・・お嬢!この新三郎・・・・お嬢がお嫁に行っても一生奉公させていただきます!」

 

えー・・・・・

俺の手をガッチリ掴んだ新三郎さんが言う。

 

「旦那様!お嬢のことよろしくお願いします!あれだけ奥様に啖呵を切った旦那様なら信用出来ます!」

 

「お・・・・おう・・・・」

 

旦那様って・・・・

そして新三郎さんが泣きながら俺達を運んでくれた。

 

 

「遅い」

 

俺達を待っていたのは麻子だった。

なぜかカッコイイポーズで。

 

「夜は元気なんだから~!」

 

そのまま6人で走って乗り込む。

 

「貴方たち出航ギリギリよ」

 

「「すまんなそど子」」

 

「そど子言うな!」

 

ギリギリだろうとそど子を弄るのはやめません。

デッキにあがると

 

「西住隊長・・・・」

 

そこにいたのはM3に乗ってる1年チームの面々だった。

 

「戦車を放り出して逃げたりしてすみませんでした!」

 

『すみませんでした!!』

 

1年の謝罪にみほの顔が笑顔になる。

 

「にっしずみちゃーん」

 

生徒会の面々が出てきた。

 

「会長?」

 

「今度から作戦は西住ちゃんと島田君に任せるからー」

 

後ろで驚いてる河嶋先輩は意外に思えたのか?

 

「あとこれ・・・・聖グロから」

 

ああ、ティーカップか。

 

「おお!好敵手にしか送られないあの!」

 

好敵手っつーか気に入った相手だな。

そして・・・・

 

「秋人さん・・・」

 

「華か・・・」

 

俺はデッキで佇んでいるところを華に声をかけられた。

 

「お母様が申し訳ありません」

 

ああ、あのことか。

 

「いいさ・・・それよりも、華のほうが大変だろ?自分の新しい華道を認めさせなきゃいけないんだから」

 

「そうですね。でも、それは遠くないうちに形になる気がします」

 

既に自分の中でおぼろげながらも見えてるのか?

だからこそ、あれだけハッキリと自分の想いを口にできたのかも。

 

「戦車道の大会っていつからなんですか?」

 

「来月に組み合わせ抽選会があって、6月から1回戦が始まって、7月で2回戦。そして8月に準決と決勝があるな」

 

「そうですか・・・それまでには何とか完成したいですね」

 

「俺は華道のことはよく知らないけど・・・・花が好きで毎日笑顔で活けてる華ならきっと大丈夫だと思うよ」

 

「秋人さんがそう言ってくれるなら・・・・頑張れます」

 

後はこのまま夜の海を静かに眺めていた。

月明かりに照らされる華が幻想的に見えて目を奪われたのは内緒だ。

 

 

あれから2週間後。

なんとか形にはなってきた気がする。

恐らく2回戦レベルにはなってるだろうけど、4強以外は抽選だからなぁ・・・

 

「1回戦が黒森峰とかだったら最悪すぎるな・・・」

 

「縁起でもないこと言わないでください!・・・・あ、でも生で黒森峰の戦車見れるなら・・・」

 

ここは組み合わせ抽選会の会場。

優花里が恍惚してるけど残念ながら笑っていられる状況じゃないようだ。

 

「サンダースかぁ・・・」

 

みほがサンダースのところを引いてしまった。

 

「サンダースって強いの?」

 

沙織が聞いてくる。

 

「強いよ。4強の1角で優勝候補だしな」

 

しかしサンダースでよかった。

あそこが本領発揮するのはトーナメント終盤だからな。

1回戦は戦車の保有数が10で制限されてるから・・・

しかし強いことに変わりはない。

 

「偵察と・・・・残り1ヶ月でどれくらい完成度をあげられるか」

 

「でも負けても次がありますし・・・」

 

負けてもか・・・生徒会の面子以外知らないんだっけか。

負けたら廃校になることに。

言ったら更に必死になるだろうけど・・・いや、俺からは言わない。

必要なら会長が言うだろうし。

 

「さて、組み合わせも決まったし出るか。途中で戦車喫茶あったしそこで何か食って帰ろうか」

 

「いいですね」

 

みほを連れてあんこうチームの面々で戦車喫茶に行く。

あんこうチームというのはⅣ号に乗ってる面子だ。

分かりやすくチーム名を動物にしようってことらしい。

他に、歴女チームがカバ、バレーがアヒル、1年がウサギ

気が抜けるようなチーム名だが、彼女たちがそれでいいと言うなら俺から反対する理由もない。

 

「俺はモンブランとアイスティーで。トイレ行ってくるから注文頼んだ」

 

俺はそう言い残してトイレに行く。

 

 

トイレから戻ると誰かと言い合いになってる。

あれって・・・

 

「エリカじゃねーか久しぶりだな!」

 

俺はエリカの肩を組んで笑顔で言う。

 

「ちょっと今そういう雰囲気じゃないんだけど!そもそも何で私にはいつも馴れ馴れしいわけ!?」

 

「え?別にお前だけってわけじゃないけど・・・・自意識過剰?」

 

「本当にムカつくわね!」

 

「秋人・・・知り合い?」

 

沙織が不安そうに聞いてくる。

 

「親友だ!」

 

「ふざけんじゃないわよ!」

 

その割には手をはねのけないんだな。

相変わらず面白い子。

 

「状況は分からないけど・・・大方エリカが挑発したんだろ?コイツいつもツンツンしてるツン子ちゃんだけど実は根は良い子だし許してやってくれ」

 

「う・・・うん」

 

沙織が渋々ながら納得する。

 

「エリカ行くぞ」

 

お、まほさんもいたんだ・・・

 

「おーまほさん。影薄くて気づかなかったわー」

 

「アンタ隊長に失礼でしょ!」

 

相変わらずの崇拝っぷりだな。

 

「それより秋人・・・・・」

 

ん?まほさんが何かを訴えてきてる目・・・ああ、みほの事よろしくってことか。

 

「はいはい、邪魔みたいだしそろそろ行っていいよー」

 

「アンタが肩を組むからでしょ!」

 

そして2人が出ていった。

俺が席に座ると訴えるように沙織や華や優花里が見てくる。

 

「どうした?」

 

「どうした?じゃないわよ!何あの人!?」

 

「黒森峰の隊長と副隊長。みほの姉さんが隊長でツン子ちゃんが副隊長」

 

「もし戦うことになったら絶対倒してやるんだから!」

 

絶対か・・・

 

「あのぅ・・・黒森峰は去年準優勝校で、そしてそれまで9連覇をしたところなんです・・・・」

 

「え!そうなの!?」

 

うーん・・・

 

「で、秋人とはどんな関係?」

 

「言ったじゃん。親友って」

 

「あんな人と?」

 

根は良い子なんだけどねー。それを他人には伝わり辛いししょうがないか。

 

「で、さっき何があったんだ?」

 

「実は・・・・」

 

華がさっき何があったか話す。

なるほど・・・・ま、エリカの気持ちも分かるわな。

苦楽を共にした仲間を見捨てて新しい学校で戦車道をしてるのが許せないんだな。

エリカってみほのことを大事な仲間って思ってるからこそ尚更だ。

暗黙のルールについては、確かにそういう面もあるけど、だから何?って感じだな。

 

「うん、俺から言えることは・・・・気にするな。だ」

 

「気にするなって・・・」

 

「気にしたってしょうがないことをいつまでも気にするな。ほら、糖分と一緒に腹の中にでも入れとけ。麻子なんてもう3個目いってるぞ」

 

「麻子!?食べ過ぎちゃ太っちゃうよ!」

 

「沙織じゃないんだから問題ない」

 

「それどういう意味!?」

 

後は・・・

 

「みほもな。あんま気にするな」

 

「え・・・・うん・・・・」

 

気にするなって言ってもそういうの気にしちゃう子だからなぁ・・・

 

「あんま気にしてるとチューするぞ」

 

「うん・・・・・え!?」

 

やっとこっち向いたな。

 

「秋人!?セクハラは駄目!絶対!」

 

沙織は別にこっち向かなくていいんだけど。

というかその覚醒剤防止ポスターみたいな言い方なに?

 

「冗談だよ。ていうかいちいち気にしてる暇があるなら新しいボコグッズのデザインを一緒に考えてくれ」

 

「ボコグッズ!?新しく作るの!?」

 

「おう、今回は何作るかな?必勝祈願ボコか?ボコのお守りとか最高じゃん。超やる気出るだろ?」

 

「出るよ!凄い出る!」

 

やっと笑顔になったな。

最初からボコの話題ふっとけばよかった。

あれ?周りが退いてるな。

 

「秋人ってそういえばいつも鞄につけてたっけ・・・」

 

「みほさんもですね・・・・戦車乗りには必須なんでしょうか?」

 

「すみません・・・・ボコだけは分かりません!」

 

まぁいい。周りが退くのはいつものことだ。

 

「じゃあ2個目いくか」

 

「私は4個目いく」

 

「麻子は駄目!それ以上食べたら肥満になるよ!」

 

さてさて、残り1ヶ月でなんとか勝てるようにしないとな。

あとボコお守りも1ヶ月以内に作るか。

 




次回は偵察とサンダース戦かな?

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