練習も終わり車長たちが作戦会議の為に生徒会室に集まる。
どうやら河嶋先輩が作戦を考えてきたらしいのでまずはそれを聞く。
「相手の聖グロリアーナは強固な装甲と連携力を生かした浸透強襲戦術を得意としてる。そして相手の戦車は硬い!主力のマチルダⅡに対しこちらの攻撃は100m以内でないと通用しないと思え。そこで・・・・1両が囮になり、相手を有効なキルゾーンまで誘い込み高低差を利用して全員でこれを叩く!」
ホワイトボードには意外と分かりやすく書かれていたし、説明も分かりやすい。
しかも事前に調べていたのか、相手の戦車の情報も頭に入ってる。
河嶋先輩には昨日の夜メールで報告したばかりなのに・・・すぐに調べてきたんだなぁ。
熱心な努力家。そういう人は好ましい・・・・・
しかしそれとこれと話は別だ。
ハッキリ言ってこの作戦は通用しない。
「島田君に西住ちゃん、考え込んでどうしたの?」
「いえ、あの・・・・聖グロリアーナも当然囮を使ってくるのは想定してるかと・・・逆に裏をかかれて包囲されちゃうんじゃ・・・」
そう、みほの言う通り。
だが、やってみるのもいいかもしれない。
これは練習試合だし・・・・失敗から学ぶことだってあるんだ。
しかし勝たせるみたいなこと言っちゃったしなー・・・
「うるさい!私の作戦に口出しするならお前が隊長をやれ!」
河嶋先輩も沸点低いなぁ・・・・みほが怯えるだろうが。
「・・・すみません」
「気にすんなみほ。河嶋先輩は更年期障害なんだ」
会長が干し芋を吹いて笑う。
「島田!お前は私を馬鹿にしてるのか!」
「してませんよ。ちょっとした冗談です」
さて、どうするか思ったら会長が発言する。
「河嶋の更年期は置いておいて・・・西住ちゃんが隊長でいいんじゃない?」
「じゃあみほが隊長な。はいはくしゅー」
「え・・・?え・・・・?」
パチパチと拍手が生徒会室に鳴り響く。
「さて・・・・メインの作戦については河嶋先輩が言った通りでいい」
折角頑張って考えてきたんだ。
どうせだったら使わせてやりたいじゃん。
それに本当に使わないと経験上拗ねる。
「秋人君?」
不安そうな顔しなさんな。
ちゃーんと後の事は考えるからさ。
「しかしメインの作戦が成功するとは限らない。失敗した時の為にもう2、3個俺とみほでサブの作戦を考えてきますよ」
サブがメインになるだろうしな。
「じゃあよろしくー。勝ったらご褒美あげるから」
その言葉に典子が反応する。
「ご褒美ならバレー部復活がいいです!」
「ううん。干し芋3日分ー」
「じゃあ負けた時はなんですか?」
澤が軽く手を挙げて聞く。
「うーん・・・・・あんこう音頭でも踊ろうか」
みほ以外の全員の動きが固まった。
状況を理解していないみほは周りを見渡し首をかしげる。
「あんな屈辱を受けろと言うのか!」
カエサルが会長に抗議するが・・・無駄だ。
良くも悪くもやると言ったらやる人だぞ。
「大丈夫大丈夫・・・・・連帯責任で全員だから」
大丈夫の要素がどこにもない・・・・
絶対踊りたくないし何とか回避する方法は・・・・
「会長。俺は試合後は聖グロの皆さんの相手をする必要があるので参加出来ません」
「ん。じゃあ島田君は免除ねー」
恨みが籠った目で見られるがあの踊りを回避出来るならいくらでも受けてやるよ。
作戦会議が終了し、沙織たちと合流して会議の内容を話す。
「あんこう音頭!?そんなのやったらお嫁にいけないよ~!」
頭を抱えて悶絶する沙織。
「そ、そこまでなんだ・・・」
「少なくても女性がやるものではありませんし・・・・」
あんなぴっちりしたあんこうスーツを着て踊るとか女性のすることじゃないしな。
「生き恥」
否定はしない。
今日も戦車道の授業があるが・・・・・
「これは・・・・一体なにが・・・」
「すみません・・・・・止めきれませんでした・・・」
優花里が悔しそうに言う。
八九式にはでっかくバレー部と書いてあり
38tは全部金に塗装されて・・・・
M3はピンク・・・・
3突に至っては旗まで立ててるだと!?
「Ⅳ号は?」
「外装はなんとか止められました・・・・・外装は」
ああ。中身が想像できる。恐らく沙織や華の趣味通りになっているんだろう。
これ直すにも時間かかるし聖グロ戦にはこのままで・・・・?
ダージリンが笑う姿が目に浮かぶな。
「これって・・・・・」
みほも絶句してるな。当然だけど
「あはは!戦車をこんな風にする人初めてみたよ!・・・・なんか面白いね!」
・・・・みほが笑ってるなら今回は許そう。
「じゃあ練習始めるから集まれー」
俺は号令をかけて全員集める。
「まず・・・・この色は練習試合終わったら即刻消すこと」
「そんな!折角カッコよく出来たのに・・・・:」
カエサルが悔しそうにする。
「せっかく可愛くできたのに~」
「先輩横暴ですー」
どこがだ。他校でやったら辞めさせるレベルなのに。
普通に色消すだけで許してやるんだ。むしろ感謝してほしい。
「これに関しては反論は受け付けない。別に禁止というわけじゃないが・・・・正直同じ学校の人間として見られたくないレベルだ」
『そこまで!?』
当たり前だろう。
それにもし母さんの目に止まったら・・・・満足するまで笑った後は家元モードで説教されちまう。
「そこまでなんだ・・・・・それにあまり印象も良くない。初出場校がこんな色した戦車で挑んだら余計な顰蹙も買ってしまう。その代わり・・・・・内装はルールやマナーに抵触しない限り好きにしていい」
「島田殿!?」
しょうがないだろ。あまり禁止禁止しても委縮させるかもしれないし・・・・どこか落としどころがあるならそうするさ。
「それなら我慢します~」
「残念だけどしょうがないね」
「く・・・・旗だけは取りたくないぜよ」
「むしろ旗が一番アウトだ。デメリットしかない」
「そんな!?」
「旗が邪魔だって!?」
「これは我らの魂だぞ!」
「いくらコーチとはいえ許せんぜよ」
歴女チームが俺に反抗する。
しゃーない。キャラを演出して何とか説得してみよう。
「あの旗がお前らの魂だぁ?笑わせるな!蹴れば折れそうな旗じゃないか。随分安い魂があったもんだ」
『な!?』
「そんなものお前らに必要ない!・・・・なぜなら、既にお前らは自分の内に秘める決して折れることない旗を持ってるだろう!『心』という旗をな!!」
ハッとした様子を見せる歴女チーム。
「そうだったのか・・・・既に我らは手にしていたんだな」
「まさか島田に教わるとは・・・」
「決して折れない心の旗・・・・」
「カッコイイぜよ・・・」
こいつらが単純でよかった。
「じゃあ納得したところで練習を始めるぞ」
『はい!』
練習も終わり再び集合させる。
「今日はこれで終わりだ・・・・伝え忘れたけど日曜は朝6時集合だから」
「辞める」
え?今麻子が辞めるって言った?
「ちょっと麻子!」
そのまま列を離れて帰ろうとする麻子と追う沙織
「朝6時だぞ・・・・人間が朝6時に起きれるか!」
「いえ、朝6時集合なので起きるのはもっと早いです」
「辞める!」
おいおい・・・本気で辞める気か?
麻子がいなかったらⅣ号が上手く機能しない。
主戦力であるⅣ号が機能しなかったらたださえ低い勝率が本当に0になっちまう・・・・
「辞めたら単位足りなくなっちゃうよ!おばぁにバレてもいいの!」
「お、おばぁ・・・」
おばぁ?なるほど、ばあちゃんが麻子の弱点か。
「・・・分かった」
恐らく面倒見の良い沙織のことだ。家まで迎えに行ってくれるだろう。
麻子は心配ない・・・・・
「まぁ、朝が苦手なやつらは酷だろうけど・・・・チームメンバーが支えてやってくれ。じゃあ今日は練習終わり」
『ありがとうございました!』
早いもので練習試合当日。
俺は昨晩みほと作戦会議をした。
「まず河嶋先輩の作戦は失敗する。で、重要なのはその後」
「うん、どう攻める?」
「まずまともにやり合っては試合にすらならない。なら、なるべく障害物のある所が望ましい・・・・市街地だな。失敗して囲まれる前に市街地に移動させてくれ」
あそこなら地の利がある分こちらが有利。
全てにおいて劣っている大洗学園が唯一勝てるだけの条件がそれだ。
どれだけ地の利を生かせるか・・・・問題はそこだ。
「地の利を生かす・・・・」
「それしかないだろ。後は状況を見てみほが判断するしかないが・・・・出来るか?」
「やってみるよ」
本当なら細かく煮詰めたいけど・・・・あまりに時間がなさすぎた。
そして今俺は聖グロの学園艦前にいる。
麻子は沙織達に任せて俺は・・・
「よう、今日はよろしくな・・・・ダージリン」
「ええ、あなたのチームがどれだけやれるか楽しみにして来たんですよ」
ダージリンたちの案内だ。
「で、何で紅茶なんだ?」
俺は今ダージリンたちとお茶会をしている。
「いいじゃない。だって久しぶりよ」
「ダージリン様、すごく楽しみにしてたんですよ」
1年ながら隊長車の装填手を務めているオレンジペコが紅茶を汲んでくれる。
「別に楽しみにしていませんよ。むしろペコのほうが楽しみにしてたくらいで「はい、私とても楽しみにしてました」え?ペコ?」
オレンジペコが俺の腕に抱きついてくる。
「秋人様・・・・私とっても寂しかったんですよ?折角連絡先渡したのに一度も連絡してくれないんですもん」
「いや、要件がないと連絡し辛くてさぁ」
あれ?ダージリンがふるえてる・・・
「ペ、ペコ?淑女が殿方の腕に抱きつくなんてはしたないんじゃなくて・・・?しかも了承もなしになんて・・・・」
「ああ、すみません。つい久しぶりで嬉しくなっちゃって・・・・秋人様は嫌ですか?」
「全然嫌じゃないよ」
「了承はとったのでもう少しこうしておきますね」
ダージリンの紅茶が震えすぎて零れてるんだけど大丈夫か?
「めちゃくちゃ零れてるけど大丈夫か?」
「秋人さん・・・こんな格言を知ってる?『行いが美しい者は、姿も美しい。』」
それ自分の姿のこと言ってるのか?
全く美しくないんだけど・・・・
「あー今拭きますから待ってください」
そしてペコがタオルを手に取り零した紅茶を吹く。
拭いてるときにアッサムが来た。
「秋人さん、今日はよろしくお願いします」
「アッサムか。よろしくな」
「今紅茶淹れますね」
拭いた後はペコが慣れた手つきでお茶を淹れる。
「そういえばローズヒップは?」
「あの子は落ち着きがなさすぎるから艦内の掃除を命じてるの。ついでに今日の試合には出ないわ」
「なに?温存かなんか?」
それにペコが答える。
「いえ、クルセイダーを壊した罰で今は戦車に乗るのを禁止してるんです」
「は?前にあれだけ壊すなって言ったのにまだ壊してんの?」
「あの子は1週間経ったら言ったことを忘れる子よ」
腕は悪くないんだけど、頭が弱い子だからなぁ・・・
あれ?全速力でこっちに向かって来るのって・・・
「秋人さまぁ!」
ローズヒップがこちらにダイブして腰にしがみ付きそのまま押し倒す。
「お久しぶりですわ!ローズヒップただいま登場!ですの」
「・・・・久しぶりだなローズヒップ・・・言いたいことは色々あるがまずはどけ」
どんな登場の仕方だよ。
この学校ペコしかまともなやついないじゃねーか。
俺はローズヒップをどかして立つ。
説教をしてやろうかと思ったが・・・・後ろのやつに任せよう。
「ローズヒップ・・・」
「ヒッ!アッサムさま・・・・」
そして説教が開始される。
「あはは、すみません秋人様」
「ごめんなさいね。あの子は相変わらずなのよ」
「あー気にするな。あいつに関しては諦めてる」
そのままダージリンたちと話して開始まで1時間をきった。
「じゃあそろそろ行くよ」
「ええ・・・・約束は忘れてないわよね?」
「忘れてないから安心しろ」
そのまま俺は艦を出てみほ達のもとに向かう。
既に戦車もスタンバイ完了し、いつでも戦えるようになっていた。
「お、準備完了か」
「秋人遅い!」
沙織に注意された。
「遅いって言われてもな・・・俺は出ないし後はお前らが頑張るだけだろ。麻子は?」
「麻子は起こして無理矢理連れてきたよー」
「そっか・・・ちょっと最後に全員集めるか」
俺は全員を集める。
「俺から最後に・・・どんな結果になっても自分自身のベストをつくすこと。あっちのほうが上手だが・・・・気持ちで負けるな。いいな」
『はい!』
そして試合が始まろうとしている。
俺は観戦席にいる・・・・・ローズヒップとともに。
「何でいるんだ?」
「秋人様が1人で寂しくないようにってダージリン様に言われましたの!御紅茶も持ってきたので一緒に飲みましょう!」
ダージリンめ、押しつけやがったな。
「紅茶は何ある?」
「ローズヒップとダージリンです!おススメはローズヒップですの!」
露骨だな・・・
「じゃあローズヒップで」
露骨だが、犬が散歩を期待するような目で見られちゃ抗えない。
「分かりました!今淹れますの!」
さてさて・・・・
「やっぱりダージリン笑ってやがるな」
モニターでは俺達の戦車を見て笑ってるダージリンが映っている。
「あの戦車はなんですの?まさか新種の戦車ですの!?」
「・・・・そうだ。最近発見された新種の戦車だ」
教えるの面倒だしそのまま勘違いさせておこう。
そもそも戦車が自動的に発見されるとかあるわけないだろう。
「まさかオーバーテクノロジーの可能性が・・・!」
そんな可能性は1㎜もない。
「そんな事より試合が始まるぞ。つーか紅茶まだ?」
「今お出ししますの!」
紅茶を受け取って観戦する俺とローズヒップ。
「これは・・・・囮ですの?」
やはりローズヒップでもすぐに分かるか。
「正解だ。頭撫でてやる」
「やったーですの!」
そのまま頭を撫でてやった。
「でも秋人様の作戦にしては・・・・正直・・・その・・・」
言いづらそうだな。
「俺の作戦じゃないけどな」
「分かりやすすぎですの。作戦立案の方って頭良くないんですの?」
ローズヒップに言われるとは・・・・河嶋先輩ドンマイ。
「まぁ、今回は練習試合だ。色々課題が明確になってくれれば・・・」
そしてⅣ号がキルゾーンまで移動するが・・・
「なんですの?何で味方の戦車がⅣ号を撃ってますの?」
「・・・初試合だし緊張かな」
「あー分かりますの。私も初試合のときは突っ込んで負けましたの」
そして気づいたⅣ号以外が敵に向かって撃つが一発もあたらない。
「適当に数撃てばいいってもんじゃないって練習のとき言ったんだけどなぁ」
まぁ、初試合だ。混乱するのもしょうがないか。
正直一番混乱してるのって河嶋先輩だろうな。
今頃「撃て」しか言ってなさそう・・・
「秋人様のチームにしては・・・・」
言いたい事は理解してるけど・・・
「発足して1週間程度。大会までには形にするさ」
おっと、相手からの反撃か・・・
「あれ?あのM3に似たピンクの戦車に乗ってる人たちが降りましたの」
M3って分かってるのに色塗ったことに気づかないのか?
いやそれより、1年チーム全員が降りてしまったか。
俺は立ち上がる。
「どこに行くんですの?」
「後輩のメンタルケア。紅茶ご馳走さま。美味かったよ。大洗のチームに俺は少し出てくるからって試合終わったら言っといてくれ」
さて、あいつらの行先は・・・
逃げた方向と試合が気になるだろうからよく見える所・・・あそこか。
あ、見つけた。
木に登って試合見てるよ。
俺は気づかれないように木にゆっくり登る。
「あそこで負けちゃうと思ったのに・・・」
「先輩達凄いなぁ・・・残り3両だって」
なるほど、作戦を移行して早速結果を出したか。
「よっと・・・」
『!?』
「驚かせたか・・・・お前らなら大体この辺りにいると思ったよ」
「大体この辺りって・・・・木の上にいるの分かってたんですか?」
澤が俺に聞いてくる。
「短い付き合いだけど・・・・お前らはたまに悪ノリするけど良い子達だからな。試合の行方も気になるだろうし・・・逃げた先と双眼鏡を使って試合が見える場所って言ったらここらへんだろ」
「・・・・先輩」
俺は澤の口を掌で封じる。
「まずは試合を観なさい。話は後だ」
そしてそのまま観戦する俺達。
皆の健闘の甲斐があって最後1対1にまで追い詰めるけどそのまま負けてしまった。
「じゃあ降りようか」
『はい・・・・』
そして木から降りて話をする。
1年生たちがビクビクしてる。
しょうがないよな。怒られるって思ってるんだから・・・
「怖かったか?」
「はい・・・・凄い揺れるし」
「相手はどんどん撃ってくるし・・・」
「怖かったよぉ・・・・」
「そうか・・・「でも」・・・ん?」
「それ以上に・・・・隊長たちに申し訳なくて・・・」
「仲間を置いて逃げて・・・・」
「ごめんなさぁい・・・・」
ああ、彼女達も後悔してるのか・・・
「後悔してるんだ・・・なら、大丈夫だな」
『え?』
「それだけ深く後悔してるなら・・・・もう大丈夫。お前らは2度と逃げないよ」
「なんで・・・・もしかしたらまた逃げるかもしれないのに・・・」
「澤・・・だけじゃないな。お前らは理解したろ。残るよりも逃げた後の方が辛いって」
『あ・・・・・』
「それに今日はあくまで練習試合・・・・勝ち負けよりも大事なこと学べてよかったな」
俺は1年生を順に頭をポンと撫でる。
『せんぱぁーい!!!』
1年たち全員がこちらに泣きながら抱きついてくる。
「ちょ・・・・6人同時は無理!」
腰やら腕やら足やらに抱きつかれたまま俺はその場で倒れた。
「はー・・・あれだ。隊長には謝っとけよ」
『はい!』
「あと・・・・泣かしたことバレたらお前らを特に大事にしてる沙織にキレられるから涙を拭いとけ」
『はい!』
「じゃあ後は先に学園艦に戻っておけ。んで、顔を吹いて隊長来るまで待機な」
『はい!』
俺は1年達を学園艦まで送ったあとダージリンのもとに行っていた。
ダージリンはオレンジペコと紅茶を飲みながらあんこう踊りの生中継を見ていた。
「よう、待たせたな」
「あら、用事は終わったの?」
ペコが俺の分の紅茶も淹れてくれる。
「終わった。今日はありがとう」
紅茶を口に含む。ダージリンか。
「全然いいわ。予想以上に面白かったわよ・・・・・2重の意味で」
あんこう踊りか・・・・
「で、実際どうだった?」
「そうねぇ・・・さすがみほさんって言ったところね。まほさんのチームよりもよっぽど面白かったし、破天荒というか発想というか・・・貴方は今回どの程度関与したの?」
「市街地行けってだけ。後はその場その場でみほ任せ」
「あら、そうだったの。次やるときも楽しみにしておくわ」
上機嫌だな、そういえば・・・
「何でローズヒップ送ったんだよ」
「退屈はしなかったわよね?そういえば、あの子試合の後大洗の戦車をどこで発見したか聞いてたんだけど貴方何か言ったでしょ?」
「ああ、新種の戦車って言っておいた」
「まったく・・・・あの子『新種の戦車かっこいいですわ!』とか言ってたのよ?私恥ずかしくて顔から火が出そうで・・・」
「大丈夫だろ。多分みほ辺りも恥ずかしいと思ってただろうし・・・・今も」
未だにあんこう音頭は流れている。
「これ写真に撮ってまほさんに送ったらどうかしら?」
そういえば最近連絡取ってなかったと思うし・・・いいかもな。
俺は写メでまほさんに送る。
To:まほさん
件名:報告
本文
見てくださいこの写真!みほの恥ずかしい姿ですよ。
あ、みほこっちで戦車道再開したので大会で会えるかもです。
これでいいか。
「なんて送ったの?」
「みほの写真と戦車道続けてるってことだな」
「どんな反応するか楽しみね」
そうしてるとバイブとピロンと音が鳴る
「早いな・・・」
From:まほさん
件名 :報告かんし
本文
わかつた
みほのしやしんもつと
「忘れてた・・・・まほさんって携帯って電話くらいしか出来ない人だった」
「あら・・・なんて書いてあったのかしら・・・」
俺の携帯に覗き込むダージリンが紅茶を吹きだす。
「そういえばメール苦手って言ってたわね。いつも連絡は電話だし・・・・今回は焦ってついメールで返信してしまったって感じかしら」
「しかもこれ更に要求してるぞ。件名も新しくしようと思ったけど意味分からないことになってるし」
誰か教えてくれる人いないのか?
エリカにでも聞けばいいのに・・・・
「さて、面白いものも見たし私達はこれで・・・・賭けの件はまた後で連絡するわ」
「あんまり無茶な願いはやめてくれよ・・・・・またな」
「ええ。また」
「さっきから空気になってるペコもな」
「お二人がゆっくり話してるので・・・・お邪魔かなぁっと」
気を回してくれたんだな。出来た後輩だ。
そしてダージリンが帰った後・・・・
「あんこう音頭お疲れ~」
俺はニヤニヤしながら皆を見る。
『いや~!!!!』
はっはっは、愉快愉快
次回は華の実家かな・・・・カットするかも。気分次第。
後はサンダース戦までいけるかな・・・