悪と正義の波紋&幽波紋(スタンド)使い、変化する者の幻想入り   作:(´鋼`)

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第12話 魔王になった人

勇人たちが王を倒したことにより周りの生き残りであるライカンは静かに戦意を失い、ある者は膝を着き、ある者は唖然としていた。

 

勇人に歩みより、話をする。

 

 

「終わったようだな…………」

 

「ああ、京谷か。周りの奴らは?」

 

「生き残りはああなっちまったよ」

 

 

生き残ったライカンたちを指差し、その場の光景を見る。

 

 

「お頭!目ェを開けてくださせェ!!」

 

「いつもの様に強き者が絶対だと教えてくだせぇ!!」

 

『お頭!!』

 

「人望も厚かったようだな」

 

「誰よりも野心家で、豪快な奴だったからな。慕う理由も分からんでもない」

 

「イテテ…………」

 

「お前、怪我してんのか?見せろ」

 

「別に大した怪我じゃないさ」

 

「大した怪我じゃよ。肋折れて内臓も傷ついて何を言っておる」

 

「少し動くなよ」

 

 

右腕を『クレイジーダイヤモンド』に変化させ勇人の体を治す。

 

 

「あれ?痛みが…………」

 

「もう怪我なら治してやったぜ」

 

「それもスタンドか…………」

 

「待ちやがれ!!」

 

 

一匹のライカンが俺たちを呼び止める。

 

 

「お頭の……お頭の!!カタを取ってやる!!」

 

『そうだ!!』

 

 

その一匹のライカンの言葉で他のライカンたちも戦闘準備を始める。それに合わせ、俺たちも各々の戦闘態勢をとる。しかし……

 

 

「待て!!お前らはお頭の信念を知って、カタを取ろうとしてるのか!?」

 

「…………!!」

 

「お頭は常に言ってただろう!!強者こそが絶対と!!お頭に勝ったこいつらは強者だ。俺らがカタを取る理由なんて無い…………」

 

「ぐ…………ッ!!」

 

「とっと行きやがれ!俺らの気が変わらねぇ内に!!」

 

 

涙を堪え、ワナワナと拳を小刻みさせるライカンたち。

 

 

「……そうさせてもらう」

 

 

俺たちは階段へと向かい、ライカンたちを後にする。今回の敵は、根本的な物が違っていた。

 

 

「今回の敵は誰よりもカッコよかったのかもな…………」

 

「そうだな。お?もしかして憧れちゃったり?」

 

「…………さぁな」

 

 

勇人がそんな事を呟く。その横顔は、何処か遠い目をしていた。……あの敵はどちらかといえば、力を根本的に置いていたな。……変なこと考えてなければ良いがよ。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

〜 7階〜

 

この7階……探索しているが……

 

「何もねえ!!」

 

「確かにそうだが…………そのテンション、どうにかならんのか?」

 

「だって、何故か力がみなぎってんだよ!それなのに何もねぇ!!」

 

「はぁ…………」

 

「げ、元気なのはいいと思いますよ?」

 

「限度があるだろうに…………」

 

 

知らんがな。真面目に暇すぎるんだもん。というか何時もの様に咲夜は腕に引っ付いて離れないし(離れさせたくないけど)。おっと、じいさんが勇人に何か言ってるな。聞こえてきたのは……

 

 

「お前さんもすれば良かろうに」

 

「はぁ?」

 

「わ、私は構いませんよ…………//」 

 

「お?ついに勇人もイチャつくのか?」

 

「そうよ、むしろ奥手すぎてこっちが砂糖吐きそうだわ」

 

 

つまりは腕繋ぎの事だろう。ってか、これ何時もの事なんなんだけど。

 

 

「……………………!!」

 

 

何故か勇人は此方に銃を向ける。

 

 

「え?もしかして、怒っ 『パァン!! 』う、撃つなよ!!」

 

 

「ふむ?躊躇いのない、いい狙撃だ。私の体が5匹は死んだな」

 

「え!?」

 

 

後ろから声がしたので振り向いてみれば、あの時居た虫の奴だったのか。

 

 

「お、お前はシアン!!」

 

「京谷!!火だ!!虫には火だ!!」

 

 

スタンドを『魔術師の赤《マジャンズレッド》』に変化させ炎で燃やす。しかし距離を取られてそれは出来なかった。

 

 

「やれやれ。これでは落ち着いて話もできん」

 

「お前らの目的は何だ?どうして、俺らを襲う?」

 

「貴様は家族はいるのか?」

 

 

何の質問なんだ?

 

 

「質問を質問で返すなよ」

 

「ああ…………そうだったな。貴様を魔王にする」

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

「勇人が魔王?冗談にしてはキツイぜ」

 

「勇人さんがそんな事する訳ないです!!」

 

「守るべき人々、友人…………大事にしていたものが、目の前で壊されるのは辛いぞ。それに対して、何も出来ない無力さにお前は、耐えられるかな?」

 

「はぁ……そんなやり方で俺を脅しても、もし俺が魔王になれば最初にその力でお前を殺すぞ」

 

「むしろ、そうであってほしいね。そして、その力を一度手に入れればもう捨てる事は出来ない」

 

「自ら命を絶つかもしれないし、どこか山奥に閉じこもるかもしれないぞ?」

 

「それは無理だな。お前は私と同じで責任感がある。自分に何か出来ると知れば、世界に対して何かをやらずにはいられない」

 

「お前と同じにしないでくれ、バケモノ」

 

「とっとと燃えやがれ!!」

 

 

話長いわ!!燃えやがれ!!!

 

 

「ところで、ネズミ算というのを知ってるか?」

 

「「??」」

 

「私が魔族になってそれなりの年月は経っている。最初は数千匹だった体も、今では随分と増えた」

 

「だから?全て殺してしまえばいいだろ?」

 

「ほら、後ろを見たまえ」

 

 

俺は勇人の後方を見る。するとそこには、1つの黒い『もや』があった。それは虫の大群でもあった。

 

 

「だいたい270万匹と言ったところか?」

 

「勇人!!そっから逃げろ!!」

 

 

しかし時既に遅し。勇人は虫の大群に囲まれる。

 

 

「勇人さん!!」

 

「くそッ!!数が多すぎる!!処理しきれねぇぞ!!」

 

 

勇人は回転式拳銃で応戦するが、これは焼け石に水。全くもって数を減らす事が出来ない。

 

 

「こうなったら!!」

 

 

勇人の周囲から半径5m程の所で虫達が密集していた。つまりは不変化の領域で逃れたのか。そう炎の壁を作りながら思う。

 

 

「ほら!!ここだ!!早く来い!!」

 

 

勇人の手引きで他の奴等全員が不変化の領域に入ったのを見計らい、俺も不変化の領域に入る。

 

 

「よし!!大丈夫か?勇人…………?」

 

「ゴフッ…………」

 

「勇人さん!!」

 

 

見れば勇人の胸にはぽっかりと穴が開いていた。虫で食い破られてしまっていた様だ。俺はすぐに穴を治し怪我を回復させる。

 

 

「だ、大丈夫か?勇人?」

 

「も、問題無い…………!?」

 

 

傷は治った筈だ。だが、勇人の体がおかしい。胸を押さえ、頭を抱え苦しんでいる様に見える。

 

 

「安心しろ、貴様には魔王の魂を入れてやった」

 

「何だと!?なら、今すぐ取り出せば…………」

 

「やめといた方がいい。心臓の一部を食い破ってそこに取り付けたからな。魔王の魂はもはや、心臓の一部だ」

 

「ウゥ……お、俺は大丈夫だ……」

 

「まだ、意識はあるか…………それは記憶を侵食出来る。もう時期、私達が作り上げた記憶に擦り変わる」

 

「「「!?」」」

 

 

その言葉を聞いたじいさんは勇人の肩を掴み、必死に声をかける。

 

 

「勇人!自分を保つんじゃ!!」

 

「…………ス」

 

「ど、どうしたんじゃ?勇人」

 

「コロス、コロスコロスコロスコロス!!」

 

 

勇人から発せられた声は、明らかに勇人の物ではなかった。狂気や憎悪などの憎しみの感情渦巻く声。

 

 

「勇人さん!!」

 

「……!!お、俺は?」

 

 

一時的ではあるが、妖夢の一声で勇人が意識を取り戻した。

 

 

「そうだ!!真実を上書きすれば!!」

 

 

そう思い、俺はオーバーヘブンを発動させようとする。しかし、それを邪魔するかの様に『ある音』が聞こえた。羽音つまりは……虫。

 

 

「な?虫!?火があるはずだぞ!?」

 

「こ、これは!!ボール状に固まって突入してきとる!!外側の虫だけしか死んでおらん!!」

 

「ひとまず引くぞ!!」

 

 

俺は勇人たちを引かせる様に炎を鞭の様に扱い虫達を足止めする。

 

 

「勇人さん!!」 

 

「どうした、勇人…………!?」

 

 

しかし、勇人は一向に動く気配が無い。それどころか苦しみが増している様に見える。そしてシアンが勇人を肩に乗せる。

 

 

「意外にもここまで精神的にもタフとはな…………」

 

「勇人を離しやがれ!!」

 

「こいつは魔族の平和に必要だ」

 

「ま、待ちやがれ!!」

 

 

追いかけようとすると、虫達が残された虫達が邪魔をする。

 

 

「勇人!!くそッ!!邪魔だ!!」

 

 

虫達を炎で殺しに行くが、数も多く手間がかかる。そして虫達が消えると、勇人とシアンの姿が消えていた。

 

俺はその場で握り拳を作り、吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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