「ん~~っ!終わったーー!」
私の横で相方が背筋を伸ばしながら言う。かくいう私もレジ台の上で突っ伏している。
「本当に今日は疲れたね~!まさかあの大量のピン全部青葉ちゃんが買っていくとは……アレ絶対店長の仕業だよね!飛龍」
「青葉さんがまた騙されたんでしょ?てことは今日はご馳走かなぁ~」
横で背筋を伸ばしていた飛龍はこちらを向いてなかなか酷いことを言う。まあ、この鎮守府で青葉ちゃんが痛い目に遭うのは日常と化しているので別に気にはならない。そんなことより、ご馳走である!店長の作るご飯は絶品なのだ。
「ああ~、もう!早く川内ちゃん来ないかなぁ!」
「いや、いくら店長がメシウマでも流石にはしゃぎすぎじゃない?」
興奮する私を飛龍が嗜める。これが私たち二航戦の日常である。一応、私が姉なんだけどなぁ、双子だけどさ……。まあ、この鎮守府の場合、一航戦、五航戦の仲がギクシャクしているからそれに比べたら全然マシなんだけどさ。もう少しお姉ちゃんらしくしたいとも思うんだよねー。
そんなことを私が考えていると、ドタドタとバックヤードから誰かが駆けてくる音がした。川内ちゃんである。
「いやぁ~、ごめんごめん!店長のご飯美味しくて三杯もおかわりしてたらすっかり遅くなっちゃった!」
「三杯も!?よくそんなに食べれたね?」
「そんなことより!メニューは?メニューはなんだったの!」
「近い!近い!落ち着きなよもぅ……いや、まあ気持ちはわかるけどさぁ。んで、今日のメニューは…………お楽しみです!」
「「えぇ~~~~!!!」」
「スチャ」
「待って、その手に持った弓を下げてください!蒼龍さん!?」
「ちょっと!蒼龍!?」
弓を構える私を慌ててとめる飛龍。どうしたのだろうか?なんで私をとめるのか理由がわからない。あっ、そういうことか!
「ごめんね、飛龍。気づいてあげられなくて……」
「蒼龍……?」
「飛龍がやりたかったんだよね?はいっ!コレ」
「違う、そうじゃない」
え?違うの……じゃあ私にどうしろと!?
「蒼龍さ~ん!飛龍さ~ん!ついでに川内さ~ん!」
「え、アタシついで……?」
私が何をしたらいいか迷っていると上から漣ちゃんが降りてきた。
「あんまり騒ぐと飯抜きにするって店長が言ってましたー!川内さんは減給だそうです。」
「え?アタシ巻き添え……」
「orz」
「あ、漣ちゃんこんばんは!少し待ってね、すぐ終わるから!」
とりあえず、さっさと済まして食べにいこうと矢をつがえる私を漣ちゃんは手で制した。
「ストーップ!!蒼龍さん、少し待ってもらってもいいですか~?」
「ん?良いけど早くしてねー!手元狂うかもしれないから」
「ヒエッ!!うっす!了解であります!ではでは川内さん、助けてほしいですか?」
ニヤニヤしながら川内ちゃんに語りかける漣ちゃん。川内ちゃんは顔を輝かせながら漣ちゃんに頼み込む。
「何でもするから早く助けて!!」
「ん?今何でもするって言ったよね?じゃあ先程の夜勤の取り消しと明日の朝勤を継続して、漣の代わりにお願いしますね~」
「待った、夜勤は構わないけど朝だけは勘弁してよ~!アタシが朝弱いの知ってるでしょ!?」
「蒼龍先生、お願いします!!」
「任されました!」
漣ちゃんの言葉で矢を引き絞る私を見て、顔がヒキツル川内ちゃん。
「わかりました、やります!やりますから弓を下げてください!!あと、夕飯は唐揚げでした!」
「「チッ」」
命拾いしたね
さて、泣いてる川内ちゃんはほっといて先ずは唐揚げかなぁ。そう思い、私は先程から黙っている相棒の方へ向き言った。
「お待たせ!ひりゅ……いない!?」
「飛龍さんならさっき上に行きましたよ?先食べてるって言ってました。」
「早く行くよ!!漣ちゃん」
「ほいさグェ!?」
私は漣ちゃんの襟を掴んで慌てて階段を駆け上がった。階段を上がると既に店長と飛龍は食べ始めていた。
「お先いただいてるよ~」
「さっさと座れ、あとその左手の奴を起こしてから食え」
既に食べ始めている二人に言われ、私も左手の漣ちゃんを起こし、食べ始める。
「りょーかいしました!えいっ、それじゃあいっただっきまーす♪」
「はうっ!?ちょっと漣の扱い雑すぎませんかね?それでは漣もいただきます。」
今日もご飯がおいしい1日でしたとさ♪
飛龍視点はそのうちやるかもしれません。