この素晴らしい世界に神様の査察を!   作:ぷらもん

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キャベツは自然に自生しない。いいね?


この神様に衣服を!

「全部『魂』のが悪いんです」

 

あ、はい。納得しました。そっかー……あの御方の仕業ですか。

 

前回に引き続き、エリスです。クエストを終えた私達は冒険者ギルドで晩ご飯をとっています。

 

ダクネスがパーティーを募集してる人達とお話に行っている間にお父さんから事情聴取ということで。

 

そうしたら、お父さんの幼女化には『魂』様が関わっていると。あのアクア先輩を創った問題神筆頭な御方が……よく二人でお仕事をサボっているところをお父さんに見つかって、拳骨からの正座でお説教コースでしたね。

 

「それでなんでそんな姿に? しかも言葉遣いまで……」

 

「うーん、多分」

 

 

『!? この魔法陣ッ! よく見たら『送還』意外にも効果あるじゃねえか!? 『魔力減少』『身体能力激減』『幼児化』に……おいこら『女体化』ってなんだオイ!???』

 

 

「あの時の魔法の、『幼児化』が原因ですかね。肉体が幼くなるだけかと思っていたんですが、まさか私の精神にまで及んでいたとは……正直甘く見てました」

 

「『魂』様の魔法は直接相手の魂魄を書き換えますからね……」

 

恐ろしいことに、あの御方の魔法はそういう類のものなのです。新しい魂を生み出すことや死者を転生させる、あるいは『壊して』、純粋なエネルギーに昇華させたり好きなように作り替えたりします。

 

お父さんが『理』を書き換えて周りから整える力なら、『魂』様は魂を内側から書き換えて侵食する力。内と外からでは内側からの作用の方が効果は大きい。

 

「神としての格は同格ですからね。術の解読と解除に時間をかければすぐに元の姿と口調に戻せますよ」

 

「時間をかければって、どのくらい?」

 

「安心しなさい。たったの千年ほどですよ」

 

ゴンッ! という音がギルドに響く。クリスがテーブルに頭を打ちつけた音だ。

 

千年……千年ですか……。

 

父たちの感覚で言えば確かに千年なんてあっという間でしょうけど、私からすれば長すぎます!! お願いです『魂』様! 早く私のお父さんを返してください!!

 

これから千年、ロリなお父さんと過ごすことが半ば確定した瞬間だった。

 

「あぁ、なんだ。パーティーメンバーを募集していたのはカズマお兄ちゃんでしたか」

 

「あ、ダクネスが……お父さん、今なんて?」

 

お。お兄ちゃん?

 

「そうそう。カズマお兄ちゃんは日本からの転生者だから、あとでサポートをしてあげてくださいね」

 

待って、お願いだからこれ以上爆弾を増やさないで!

 

あれ? どこ行くんですか? え、帰る? お風呂入って寝る? お風呂って女湯ですよね!? ルールだから仕方がない? そうは見えませんよ!?

 

行かせませんよ! どうしてもここを通りたければ私を倒してから……グハァッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルマです。

 

いつもの農家からおはようございますをお送りしています。最近、私はこの農家の娘になった気分です。いえ、孫でしょうか?

 

おじいちゃん、おばあちゃん、息子さん、ペットの熊と一緒に朝食を頂いて、その後に朝一番のお仕事を手伝ってからギルドに向かうのです。

 

「今更ですが、毎日朝ご飯を食べるだけでレベルアップしている生活に疑問がわきます」

 

「ご飯がおいしい証拠やよ」

 

おばあちゃん、貴方が神か。いえ、神は私でした。

 

それにしても昨日は散々でした。

 

お風呂です。お風呂に入るのに苦労したのです。

 

何故か鼻息の荒い娘に妨害されました。まったく、困った子です。女の子の私が女湯に入るのになんの問題があるのでしょうか? いいや、ない! ないったらないのです!!

 

なのに不潔だの助兵衛だのと名誉毀損もいいところです。女性の裸を見て鼻の下を伸ばすような子供だと思うなかれ。私は紳士です。今は幼女ですが。

 

それにしても、エリ…クリスの全裸を見て色々と驚きでしたが。いえね? 私は『娘』を創ったつもりだったのですが実は『息子』だったのかと錯覚しまして……それを言ったらぶっ飛ばされました。まさかのお父さん、敗北です。

 

私は成長したら絶対にバインバインになってやると言ったら泣かれました。ごめんなさい。お父さんは貴方のお母さんではないので女の子の悩みは分からないです。『理』の神様なのに不甲斐ないです。

 

お風呂のことはもう忘れましょう。今晩も行くけど。

 

さて、今日は収穫日です。畑で育てたお野菜を籠に詰めてアクセルの街まで出荷します。

 

そのお手伝いですが、残念ながら参加できるのは途中までです。

 

ペットの熊、熊というか一撃熊ですが、のペット登録の為に一度冒険者ギルドに向かわなければならないからです。書類手続きは昨日終わったのですが、首輪を受け取りに行かなければならないので。

 

「収穫するのはなんていう野菜ですか?」

 

畑に向かいながらおじいちゃんにそう尋ねます。畑仕事は主におじいちゃんがやっているので私はあまり関わりがないからです。

 

「キャベツじゃよ」

 

へー、キャベツかー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャベツが並ぶ大きな畑。

 

そこは、アサシンの狩場でした。

 

 

いや、いやいやいやいやいやっ!?

 

またですか農家の皆さん! 

 

ナイフを構えたおばあちゃんがキャベツの背後に回り込み、キャベツの芯に刃を突き刺す。その動きに微塵の隙もなく、また気配すらない。陽炎のごとく揺れる身体は目の錯覚か残像か。

 

あ、おじいちゃんは指でひと突きして仕留めています。秘孔でも点いたのですかね? 商品に傷をつけずに収穫する。なるほど、素晴らしい技術です。

 

なんて言ってる場合か。冒険者カードに暗殺者系のスキルが増えていくんですがおかしいですよね? この農家怖い。

 

私の職業は最弱職の冒険者です。ですが、冒険者には全ての見聞きしたスキルを習得出来る利点があります。本職に比べれば効果は落ちますが、です。

 

なのに農家の仕事ぶりを見てるだけで戦闘系スキルが増えていく謎……この世界はわからないことばかりです。だから、私、『理』の神様なんですがね……。

 

キャベツの収穫をお手伝いする前に、おばあちゃんからこう教わりました。

 

 

キャベツは強く、逃げるのが速い、と。

 

 

この世界の野菜が動くことは先日知りました。どうやらこの世界の野菜は意思があるらしく食べられたくないと逃げ出すという。それも当然です。誰だって『食べられたい』なんて思わない。

 

ですがこれは……。

 

 

おばあちゃんの教えその一。キャベツは畑から刈り取ったならば逃げ道を塞ぐべし。

 

……大地から解き放たれた瞬間に全力でジャンプするそうです。キャベツが。

 

おばあちゃんの教えその二。右手は添えるだけ。左手は突き刺すだけ。

 

……逃げたキャベツを片手で掴み、もう片方の手に持った刃物でキャベツの芯を刺して殺すのです。

 

おばあちゃんの教えその三。死んだフリには注意せよ。

 

……攻撃が甘ければ殺しきれません。倒したと思って放置したキャベツが逃げ出すこともあるそうです。確実に息の根を止めるべし。

 

おばあちゃんの教えその四。商品に傷をつけるべからず。

 

……売り物ですしね。キャベツの葉を傷つけないように芯を攻撃すべし。

 

 

以上、おばあちゃんからのキャベツ収穫レクチャーでした。

 

では、早速やってみましょう。

 

キャベツの球体部分を掴み、ナイフの刃を入れます。ザックリと音を出して芯が切断されると、

 

「!!」

 

キャベツの葉に目のような記号が浮かび上がり動き出しました。

 

「非常識な!!」

 

意思の宿ったキャベツが手の中で暴れ始めます。私の手の大きさを遥かに超える、それはもう立派に育ったキャベツは私の手には余るサイズで。

 

「あっ!」

 

慣れてないからか、それとも傷を付けないように慎重になりすぎて押さえつける力が弱かったのか……いえ、言い訳ですね。未熟な私ではキャベツの捕獲すら失敗してしまいます。

 

逃げたキャベツを追いかけようと立ち上がると、

 

「逃がしゃんよ」

 

「!!」

 

サクッ、という軽い音が聞こえたと思えば、気配なく回り込んでいたおばあちゃんが手にしたナイフを逃亡キャベツの芯へと突き刺していました。

 

「アルマちゃん。キャベツが逃げても、ばあちゃがみーんな殺ったるけぇ安心しな」

 

「は、はい」

 

こ、恐い……農家恐いよぅ……。

 

ちなみに、息子さんでもキャベツを逃さずに『収穫』出来ている模様。これができない農家は野菜の大量脱走を許してしまい、最悪冒険者やギルドに始末されて買い叩かれてしまうらしい。もちろん、それらの売上が農家に還元されることはない。何故なら、キャベツの大脱走は世界中で起きているので、報告したとしてもその頃にはどこの農家が逃がしたのかわからなくなってしまうからだ。

 

生活のためですもんね。そりゃぁお仕事にも殺気立つのも仕方ないですよ、ね?

 

「ククク、どこに行くんじゃ? 貴様はここで生まれ、ここで死ぬんじゃよ?」

 

「甘い、甘いのう。味もこれくらい甘くなってれば嬉しんじゃがねぇ」

 

「これも売上のためなんだ……恨まないでくれよ、なぁ?」

 

「グ、グアァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

が、頑張れ! 熊コダイーーーーンッ!

 

 

 

 

もうお昼前です。

 

私と一撃熊はアクセルの冒険者ギルドまで来ています。キャベツの収穫? 高速移動するおじいちゃんとおばあちゃんによって瞬く間に終わりましたよ。

 

さて、街の中にモンスターがいることについては問題ないです。えぇ、ないですとも!

 

何故ならこの子はちょっと大きいだけの熊ですから! 魔物じゃないでーす! 野生動物でーす!

 

 

無茶苦茶? ノー! 私が『(ルール)』だ!

 

 

「あるから! 無茶しかないからアルマちゃん!!!」

 

「おぉ! 愛息子よ!」

 

「娘です!!」

 

間違えました。えり、クリスは娘、女の子です。例えまな板でも、風呂屋の番台さんに女湯に入ろうとして止められたとしても、女の子ですとも!

 

一撃熊を引き連れて冒険者ギルドに入った私達を出迎えたのはクリスです。そうかそうか、そんなにお父さんに会いたかったのですね。

 

「街中にモンスターが出たって大騒ぎだったんだけど!?」

 

「そんな! 大剣かついだアルマちゃんがクマさんに跨って歩いていただけなのに!?」

 

「それが原因でしかない!」

 

どうやらアクセルの街を一撃熊と一緒に歩いていたのが問題だったようで。

 

むぅ、子供や老人たちは手を振ってくれたのに……。

 

よく見るとギルドに来ていた冒険者たちのほとんどが戸惑っているようです。武器に手をかける者、仲間の背に隠れるもの、机の下で念仏を唱える者。あ、『神様助けて』って頭に響いてきた。大丈夫ですよ、私はここにいます。

 

「で、アルマちゃんは何しに一撃熊なんてギルドに連れてきたの?」

 

「この子の首輪を受け取りに来たんですよ」

 

「グア!」

 

一撃熊を引き連れてギルドの受付に向かいます。窓口に並んでいた冒険者たちが慌てて逃げ出していますが気にしてもしょうがありません。むしろ順番を譲ってくれたと思いましょう。

 

「ルナさん。この子がペットの熊です」

 

「ほ、本当に一撃熊をティムしたんですね……」

 

ティム? 調教ですか? そんなことしてませんよ。ちょっと拳で語り合っただけです。

 

「それではこちらがギルド登録用の首輪になります。それで、名前はどうしますか?」

 

「この子の名前、ですか」

 

ふーむ、どうしましょう?

 

クリスを見る。『エリス』と名付けたあの子の名前。あの時はどうやって決めたのだったか。あれ? クリス? なんで涙目? 誰だ私の娘を泣かせたのは!? 

 

まぁそれは後にしよう。

 

うーん、クマさん……森で出会ったクマさん……よし、決めました!

 

「では、『ダックス』でお願いします」

 

「グアッ!」

 

「はい。それでは『ダックス』と首輪のプレートに刻みますので少々お待ちください」

 

待てと言われても手持ち無沙汰です。クエスト掲示板へ仕事を探しに行くか、クリスの元に様子を見に行くか……娘の心配をしてあげましょうか。

 

一撃熊改め、ダックスを連れてクリスのいるテーブルに向かいます。すると、そこにはダクネスと……あ。

 

「カズマお兄ちゃん!」

 

「アルマさ、ちゃん!?」

 

「「お兄ちゃんッ!?」」

 

クリスを含め、数人の女の子に囲まれた少年、カズマが慌てた様子でそこに居た。その手には何故か……女の子のパンツを握り締めて。

 

「………大丈夫、男の子ですものね」

 

「待ってください。その慈悲深い微笑みは心を抉られます」

 

なら握り締めたパンツをこちに向けないでくださいな。というか、誰のですかそのパンツ。

 

「私のです」

 

おや、初めまして。カズマお兄ちゃん、アクア、クリス、ダグネスの他に一人見知らぬ少女がいました。見た目は魔法使いのような格好ですが……。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」

 

「…………(厨二病?)」

 

「(違いますお父さん。この子は紅魔族です)」

 

脳内でクリスとの会話。そうですか、この子が例の……厨二集団、紅魔族ですか!

 

紅魔族。生まれつき高い知能と魔力を持つ一族。その身体的特性から一族の殆どが高位の魔法使い職『アークウィザード』だ。そして、一族の全てがアレな病を患っていることでも有名である。かの一族についてはアクセルの街での聞き込み長さで知っていたが……まさか本当にこのような性格とは……。

 

ですが礼儀には礼儀を。挨拶には挨拶で返さなくては。

 

……えーと、こうでしょうか?

 

「我が名はアルマ! 一撃熊『ダックス』を引き連れた冒険者にして、『超神刀・豊穣丸』を携えし、全宇宙の頂点に立つ者……!」

 

すっかり自分のものとなった農家特製の大剣を構えて、マントを翻し、初級魔法で戦隊ヒーローのような爆発エフェクトを辺に響かせて名乗りを上げます。

 

実はこういうの、嫌いではありませんので。

 

「す、凄いです! 小さな身体に大きな武器、爆発による演出! 完璧ではないですか!!」

 

「ふふん、そうでしょう」

 

「「ええぇー?」」

 

なんですか? 古今東西、英雄(ヒーロー)というものは演出が大事なのですよ? 歴史を神々の都合良く動かすのに地上の人間をプロデュースするために色々と研究してるんです。主に、『魂』のがですが。

 

「ところで、なんでクリスが涙目でカズマお兄ちゃんがパンツを握り締めて?」

 

「いや、アルマちゃんこそなんでカズマをお兄ちゃんって呼んでるの? このロリニートに弱みでも握られたの?」

 

「ちょ、おま! ふざけんなよ?! 誰がロリニートだこの駄女神が!!」

 

アクアよ。説明しなきゃダメかな? そしてお兄ちゃん、ロリニートと呼ばれているのですか? ……ロリ? え?

 

「グアァ」

 

私がアクアのロリ発言に引いているとダックスが立ち上がり私を後ろへと隠します。動物の本能が何かを察したのでしょうが?

 

「おいアクア。お前のせいでアルマちゃんどころか、俺を見るこのギルド中の冒険者の目が冷たくなっているんだが?」

 

「自業自得よ、このロリマさんが!」

 

「ごめんなさいカズマ。私も少し身の危険を感じ始めたのですが」

 

「お前もかめぐみん!?」

 

めぐみんという紅魔族の少女も、言ってはなんだが幼い体型をしている。お兄ちゃんの守備範囲に入りそうなロリ具合なのだろうか。

 

「あのー。それで、結局パンツの真相は?」

 

ダックスの後ろからダクネスに訪ねます。彼女は高潔な騎士。この騒ぎでも取り乱すことなく落ち着いた様子を見せているので質問しても大丈夫でしょう。

 

「あぁ、実はカズマがクリスから習ったスティールでめぐみんのパンツを奪い取ったのだ」

 

「それは………」

 

成程。確かにそれは変態的行為です。女性の下着を奪い、返すことなく握り締め続けるとは……アレ? じゃぁうちの娘が涙目だったのはどゆこと?

 

「あたしも盗られました……」

 

クリスを見ると、私から目をそらしながらそう言う娘の姿があった。

 

「いや、不可抗力なんだって! 俺だってまさかパンツばっかりクリティカルヒットするなんて思っていないし!」

 

おい、『スティール』って相手とのレベル差、そして使用者の運の強さで奪えるアイテムが変わるっていうスキルだろう? なぜ女神であるお前が負けてるんだよ。それ程この少年の運の強さが高いといのか? それともまさか、お前も私同様に運の値が低いのか? 人間以下? 神が?

 

それはあんまりだろう……。

 

「お兄ちゃん、私にもスティールをかけてください」

 

「ちょっ、アルマちゃん!?」

 

「正気ですか!?」

 

クリスやめぐみんという被害者が声を上げる。私の言葉に信じられないと、周りの者たちも絶句し、ギルドに静寂が訪れた。

 

しかし、私は引けないのだ。

 

このパンツ泥棒という不名誉な視線に晒されている少年の為、そして私達神々の沽券のためにも!

 

私の運がそこまで悪いはずがない!!

 

ダックスの影から飛び出し、バッと両手を広げてカズマお兄ちゃんに身を晒す。かかってこい人の子よ!!

 

「さあ、どうぞ!」

 

「じゃ、じゃぁ……スティーーーーーール!!!」

 

カズマお兄ちゃんの突き出した右手が私に向けられ、スキルが発動する光に包まれる。

 

さぁ勝負だ!

 

 

……。

 

………。

 

…………。

 

……………あれ?

 

 

 

「カ、カズマ……あんた」

 

「わわわわわわざとじゃない! ホントだって、信じてくれ!!!」

 

「だだダックスネス! 早くアルマちゃんを隠して!!!」

 

「落ち着けクリス! 私と一撃熊の名前が混ざってるぞ!?」

 

「い、いいから早く何か着せるものを!!」

 

 

…………何これ?

 

先程までの静寂が嘘のように、ギルド内が喧騒に包まれる。主に、私の周囲がだ。

 

で、私はだ。

 

何故か、身体が涼しく、スースーとする。

 

何故か、目の前に手を伸ばしたカズマお兄ちゃんがいる。

 

何故か、カズマお兄ちゃんの手が私の頭の上に乗せられている。

 

何故か、私の後ろからガラン、と何かが落ちたような音がする。

 

 

何故か、私は全裸である。

 

 

「な、なんという鬼畜の所業!! 幼女を全裸にひん剥いて奪い取るとは!! やはり私の目に狂いはなかったぁッ!!!」

 

ダクネスが見たままの光景を口にして叫ぶ。そうです、私は全裸です。

 

「な、な、な、みぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「グアァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

すぐにダックスに抱きつく私。彼は私を抱きとめるとそのまま床に散らばった衣服や大剣を回収してギルドから転がるようにして走り出す。

 

「ま、待っておとッ、アルマちゃー―ん!!」

 

娘よ、追ってくれるな。父は、父は、アイテム扱いされる程運がないんだ!!!

 

「人間なんて、人間なんて………大好きだよバッキャローーーーーー!!!!」

 

 

次やったら来世は魔物に転生させてやる!!!! 覚えとけ!! だから許す!! 許してやんよぉおおおお!

 

 

ちくしょうぉ。

 

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!! ……繰り返します』

 

 

え、なんの放送?

 

 

 




『魂』 「エターナルロリータァァッ!!」

『物質』「説明しよう! 『エターナルロリータ』とは、対象がなんであろうと幼女にしてしまう魔法なのだ!!」

『命』 「何故『エターナルショタコーン』を開発しなかったのだ!!!! そうすれば弟にあんなことやこんなことを出来たのに!!!」

『魂』『物質』「「こいつはやべえ」」


ちなみに。

『魂』…少女。『物質』…女子高生。『命』…(人化)くたびれたOL。

『理』…青年、だったのになぁ。

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