この素晴らしい世界に神様の査察を!   作:ぷらもん

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社会人になるとですね、「会社用」「プライベート用」「自宅用」で三つの顔を使い分けています。偶に使い間違えて周りがびっくりしちゃうのが問題です。ストレス? 凄いよ?

会社「僕、この間の連休にデジモンのフィギュアを買ったんですよ」

プラ「NXエッジのアルファモン買った! オメガモンと並べるといいなぁコレ!!」

自宅「金? まープラモとかフィギュアとかに使ったかなー」


同じ話題でこんな感じです。


この神様に娘との会話を!

さて、クリスに報告を済ませた私はそのままエリス教会を後にしようかと懺悔室から出ようとして、ふと思いついたことがありました。

 

「そうだクリス。ちょうどいいので一つ、私の話を聞いてはもらえないですか」

 

ここは懺悔室。私の愚痴のひとつも吐き出してもいいでしょう。

 

「いや、アルマちゃん。急いで『物質』様を抑えないと」

 

「構いませんよ。しばらく放っておけばいいんです」

 

「……は?」

 

『物質』のが何かを企み暗躍している。それは結構。そんなのは何時ものことです。今更慌てたところで何も変わりません。

 

「むしろ、懸念すべきは企みを中途半端な状態で放置されることです。貴方も、自分の管理する世界に処分不可能な『爆弾』を放り出されたくないでしょう?」

 

「………確かに」

 

『物質』のは何をするにしても、結局は『創る』のが楽しいという問題児だ。やらかすとしたら『芸術活動』だろう。

 

で、それによって『作品』を創っているとして、その製作を途中で放棄される方が問題なのだ。地球で例えるなら、原子力発電所の原子炉を造りかけたまま放置されるようなものである。

 

……だったら早めに手を打ったほうがいいのではないか? そう思うかもしれませんが、既に遅いのです。

 

こと創り出すという工程で『物質』のの速度に追いつける存在はこの次元には存在しえません。彼女が何かを始めたと気づいた頃にはもう手遅れです。

 

「正直なところ、私はもう『作品』の一つや二つは完成していると思っています。なので、それを壊すのではなく、使わせない方針でいきましょう」

 

「頭痛くなってきたよ……」

 

クリスは頭を抱えていますが、いい加減諦めて慣れなさい。こんな事態はぶっちゃけ何時ものことです。

 

「大方、天界の本体はこう考えているんでしょうよ。泳がせて向こうが自分から暴露するのを待って拳骨入れろ、と」

 

「そんな悠長な……」

 

何が起きるでしょうね? 私としては月が変形して巨大な砲台になっても驚きませんし、太陽と同じ大きさの巨大ロボットがパンチを繰り出してきても既に経験済みです。

 

「そんな経験積みたくもありません」

 

「修行不足ですよ」

 

「オカシイ……やっぱり最高神の常識オカシイよぉ……」

 

「想像力が足りませんね。地球の言葉を勉強しなさい。『人が想像できる事は必ず人が実現できる』という言葉を残した作家がいたように、神の想像力はそのまま創造力となります。それで遅れを取るようではまだまだ未熟者ですよ」

 

「妄想癖があるのかと心配されそうなんですけど」

 

妄想結構。何事も最初は思い描いた頭の中の設計図から作り出されるのです。今ではあって当たり前の物だって、最初は誰かの妄想から生まれたのですから。

 

懺悔室で説教をするのはいいのですが、する側とされる側が逆転していますねこれ。

 

「頭の硬い貴方に世間話という息抜きをしてあげましょう」

 

「うわー。ありがとうございまーす」

 

生真面目なこの子は頑張りすぎて空回りする癖がありますので、余裕を持たせてあげないと潰れてしまいます。会話というのはいい気分転換のひとつです。一つ問題に頭を悩ませているのなら、別の話題で一度頭の中を切り替えてしまったほうがいいでしょう。

 

「敬虔なるエリス教徒様。仕事先で娘たちが破廉恥な格好をしています。どうしたらいいでしょう?」

 

「えぇ!? まさかそれあたしのことかな!?」

 

当たり前です。おへそ丸出し、太腿見せ放題、胸は布あてを巻いただけで上着を着ない。地球でそんな格好をしていれば、まぁ一部の地域を除いて痴女扱いでしょう。お巡りさんに呼び止められること間違いなしです。

 

「なんです? 家では真面目なふりして外ではハッちゃけてるんですか? 何時からそんな不良娘になったんです」

 

「違います! これは盗賊職だから軽装なだけでッ、別に自分から肌を見せてまわってるわけじゃないからね!?」

 

「しかも自分の信者達を騙すなんて言語道断ですよ。女神エリス像とか肖像画を見たとき私がどれだけ情けなく思ったことか……」

 

「それどこを見て思ったの!? 思ったんですか!!」

 

胸ですよ胸。

 

この世界にある女神エリスを象った肖像画や銅像は全て豊満な胸の女性の姿で作られています。本人は悲しいほどにまな板だというのに……。

 

「そんな虚しい見栄を世界規模ではらないでください。お父さんは恥しいです」

 

「創った張本人がそう言う?! 私だって人並みの大きさならこんなこと…って何言わせるんですか!!」

 

「自爆を人のせいにしないでください。ちなみに本体は大きいサイズが好みです」

 

「余計に腹が立つんですけど!? なんであたしの胸こんなサイズにしたし!!」

 

「実務優先、コスト削減。自分の性癖を押し付ける程変態でもなし」

 

「この堅物親父!!! だったらアクア先輩とかどうなのさ! あの人お尻丸出しだよ!?」

 

「あそこの家は裸族の家系なのでノータッチです」

 

「家系でいうなら親戚でしょうが!!」

 

や、だって『魂』のは言わなきゃ自分から服を着ない全裸主義者ですし。下界じゃ動物に囲まれて森の中で全裸でごろ寝してるロリBBAですし。そんな彼女が創ったアクアがきちんとした身だしなみをしていたら製作者を疑います。

 

「全裸いうなら自分だって脱ぐじゃないか」

 

「私が裸になったのはどれも不可抗力でしょう。というか、脱がせたカズマお兄ちゃんに文句言ってくださいよ。訴えたら勝てますよねアレ」

 

思えば地上に降りた神々が皆露出癖あるみたいじゃないですか。なんですかこれ。違いますよ? 神様は皆変態だなんて思わないでください。お願いします。

 

あ、やだ。変態で思い出した。日本在住の『理』の分体がいました。あの変態とだけは記憶共有したくありません。

 

「エリスは日本にだけは来てはいけませんよ」

 

「え、なんで?」

 

「アクシズ教徒みたいになりますよ?」

 

「分かりました」

 

素直でよろしい。まぁ、この子だって日本という国がどういうところなのかわ知っているでしょうが、自分の足で降り立って見ないと実感はわかないでしょう。

 

あの国はアクシズ教の理想郷ですからね……。

 

「破廉恥といえば、この街は驚くほど治安がいいですよね。血気盛んな男性冒険者や露出の多い女性冒険者が昼間から歩いているのに性犯罪など一件も起きていません」

 

「あ、それはあたしも不思議なんだよね。スケベな冒険者はいるけど犯罪は起こさないんだよ。なんでだろ? まぁいいことなんだけどね」

 

死地に片足を突っ込んでいる冒険者達は多くがどうせ明日は死んでるかもしれないから、と今日を大事に、思い残すことなく過ごしている。でも、そういう人間は犯罪にも走りやすくなるので危険だ。だというのに、この街の冒険者、特に男性たちはというと、まるで高僧の修験者のように落ち着き払っているというか、悟りを開いているかのように振舞っている。どちらかというと女性冒険者の方が血の気が多いぐらいだ。

 

「……この街って『大人の夜の店』とか充実してましたっけ?」

 

「……娘に聞く? 自分で夜の街にでも繰り出せば?」

 

「アルマちゃんは小さな女の子だもん! 夜はいい子にして寝てるもん!」

 

「背筋が寒くなる声出さないでくれないかな!?」

 

ぶりっ子を装ったら怒られました。見た目相応の態度をとったら怒りを買うとは解せぬ。

 

「だったら普段どうり喋ればいいのか? あ? 違和感しかなくて酷いだろうが、えぇオイ?」

 

「ごめんなさい。子供口調でお願いします」

 

忘れてるかもしれねぇだろうが、こちとら頭の中は子持ちの男なんだよ。ガワが幼女だから周りに合わせて口調と一緒に思考まで餓鬼にしてる苦労を理解しろ。

 

「あぁ……分体になった以上、一生女児で過ごさないといけないのが辛い」

 

「お父さんはその、そのまま女性としてこの星で生きていくのです?」

 

「魔法使えば性別ぐらい変えれるが、基本は女として生きなきゃならんよ。人並みに成長もするから男捕まえて子供でも産んで大地に骨でも埋めるよ。当然、寿命もお前より早く尽きるしな」

 

「下界に降りた分身体の運命(さだめ)ですね……」

 

神の分体は神の一部であって神ではない。超常の力を持った下界の生物に成り下がった存在だ。ただ、中身が神として自覚があるかないかで話が変わってくる。

 

私は自分が『理』の神だと理解してる。だから天界の本体から制限付きで権能を引き出すことができる。人間以上女神未満ということだ。

 

……まぁ、稀に分体の分際で天界の本体を圧倒してその座を奪い取る個体が生まれることもあるんですけどね。私にその気はありませんが。

 

「……書類仕事から開放されましたし」

 

「え、今なんて?」

 

「なんでもありません」

 

危ない危ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、アルダープの屋敷から回収した神器はどうしたんですか?」

 

「……あー、あれね。アレなら今持ってるよ。本当はとある湖に沈めようと思ってたんだけど」

 

おや? 以前アルダープという悪徳領主が所持していた二つの神器を回収してからどう処理したのか。それが気になってクリスに聞いてみたのですが。

 

「神器になにかありましたか?」

 

「そっちは無事だよ? ただ……隠そうと思ってた湖が使えなくなったというか……」

 

湖?

 

聞けば、クリスはアクセルの街から南下した位置にある山の湖に神器を投げ入れようとしたのだという。

 

なんでせっかく回収した神器をポイ捨てするんだ阿呆、と思いましたが。どうやらその湖には『クーロンズヒュドラ』という巨大な多頭のドラゴンがいたらしい。日本で言えばヤマタノオロチを思い描いてもらえばわかりやすいだろう。

 

そう、いた(・・)らしい、と過去形なのだという。

 

「クーロンズヒュドラは大地の魔力を吸収し、周りを汚染しながら力を蓄える性質を持つドラゴンなんだ。だから、その中に投げ込めば神器の放つ神気を感知できなくなるし、ヒュドラが住み着いてるから誰も手を出せないと……思って……」

 

「予想を越えて、ヒュドラを倒されちゃったから廃棄場所を考え直すしかなくなったと」

 

「……はい。もうこれは天界に持って帰ります」

 

「それがいいです」

 

そもそも、『魔物を召喚して使役する神器』とか『他人と入れ替わる神器』なんて勇者候補に渡す特典としては物騒すぎるでしょう。性能ではなく倫理的に。百歩譲って『魔物を召喚~』のほうはいいかもしれませんが、人格を入れ替えるのは駄目でしょう。聞いてて犯罪臭しかしませんし。

 

にしても。

 

「クーロンズヒュドラが討伐されていたとは……一体どこの凄腕冒険者の仕業でしょうか? それとも王都の騎士団が?」

 

あのモンスターはその性質上、力を蓄える前の早期に倒すのが得策なのですが、如何せん強力な個体ですので手ごわいのです。しかも、クーロンズヒュドラは死ねば蓄えた魔力を大地に還元する性質も持っているのです。還元された魔力を吸った大地は肥え栄え潤うといいます。その後の経済効果は目覚しく、討伐報酬の金額に上乗せされるほどらしいのです。ですので、あえてすぐには倒さず収穫時期を待つ農家のように魔力を溜め込むまで焦らして討伐する狩猟法があるとかで。ヒュドラが住み着いた土地の持ち主はギリギリまでギルドに依頼を出さないとまで言われているほどです。

 

なのに、人知らず討伐された? 

 

それ程のモンスター。高額の賞金が動く相手が討伐されたというのに噂にもなっていない。これは異常です。

 

まさか?

 

「……ギルドに報告がいっていない?」

 

「そうなんだよ。というか、依頼主も聞かされていないかも」

 

あーらら。偶にあるんですよね、こういうことが。

 

討伐依頼を受注した冒険者が現地に行ってみると既に対象のモンスターが死んでいた。こういうことは実はよくあることなんです。

 

何故そんなことがあるかというと、原因は上級冒険者にある。駆け出しの街で張り出されている討伐依頼は、この街では高難度の依頼でも、王都に所属する冒険者からすると楽な仕事なのだ。そんな高ランクの冒険者が偶々見つけた討伐モンスターを知らずにサクっと倒して歩いていっても誰が責められようか。

 

そういう、依頼が知らないうちに消滅していた場合、気付いた者が報告しておけば少しばかりの報酬が出る仕組みになっている。

 

なのに、全く報告されていないということは……ギルドの仕組みを知らない者の犯行? いえ、別に悪いことをしているわけではないですが。

 

「クーロンズヒュドラって、討伐報酬を欲しがってなく、ただモンスターを倒したってだけじゃ理屈に合わない強敵ですよね?」

 

「上級冒険者だけで構成されたベテランパーティーか、王国の騎士団が長期にわたって攻略する相手だよ? それをたった二人でなんておかしいよね?」

 

「は? いま二人って言いました?」

 

「言った。目撃者がいてね。あまりに衝撃的すぎて白昼夢か何かと思ってるみたいだけど、その人が言うには全身けむじゃくらで体の大きな二人組だったって……どうしたの?」

 

「………いえー……別に」

 

何やってるんですかもう。

 

「色々と調べてからギルドに報告しようと思ってたんだけど、どうだろう?」

 

「クーロンズヒュドラが討伐されたのは間違いないのでしょう? だったら早く報告したほうがいいですよ」

 

どこの熊と農家がやったかは知りませんが、元気そうでなによりです。

 

早く帰ってこないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の『物質』のアルマことテンちゃんは。

 

「いい夜だねー君ぃ」

 

「ッ!? だ、誰ですか!?」

 

もう就寝時間も間近という、静まり返った夜の街で。その屋根の一つに登って夜空を眺めて居る時に見つけた悪魔っ子を見つけた彼女は。

 

「サキュバスかー。夜も遅くに盛んだね! 頑張って子作りしておいで!!」

 

「こ、子供は作りませんから!! ご飯をいただくだけです!!」

 

なんだ、つまらない。

 

ロリサキュバスのそんな面白みのない言葉に落胆していた。

 

アクセルの街を夜な夜な飛び交うサキュバスの影。それがこの街の治安を守っている存在の姿だった。彼女達は男性冒険者と共生関係にあり、少しばかしの精気を頂くことで生活している。これにより、サキュバスは生きられる、冒険者は気持ちよくスッキリできると互いにイイことづくめらしいのだ。

 

カズマ少年曰く、皆が賢者タイムなら争いは起こらない! だ、そーだ。

 

「若い男女の営み、産めよ増やせよ子宝を! 一番原始的な創作活動なのになー」

 

この街の冒険者たちはサキュバスに玉を抜かれているからか、なかなか結婚もしないし子供も作らない。由々しき問題だと思う。

 

『魂』のはエロスの権化なのでサキュバスはウェルカム! 頑張れ! だし。

 

『命』のは人間が増えない? いいぞ頑張れ! だし。

 

『理』のは人間の出生率が下がるんじゃ死ねぇぃッ!!!だし。

 

え? 僕? 僕はねー……リっくんを誘惑したいから教えて! ってお願いしてみようかな!

 

あ、どっかの屋敷の窓が割れてさっきの子が逃げ出した。痴女のもつれかな? 怖ーい。

 

さーて、準備は終わった。

 

アルマちゃんにも全部バレてる頃だよね? 久しぶりに思いっきり遊べそうだよ。

 

「どうせ怒られるのなら全部やりきって、後悔なく怒られたいよね!」

 

天界の『理』先輩が苦笑してるのが目に浮かぶ。あの人、感情の切り替えが凄まじいからなー。もう僕のことは許してるし、怒っている最中なんだろうね。

 

甘くて優しくて、厳しくて怖いお人だよ。

 

「じゃぁ遊ぼう。皆で楽しもうよ。この宇宙は僕らの泥団子。叩いて丸めて投げ合おう」

 

 

「だってその方が面白いだろう?」




『理』 「日本のアイツを思い出させるなぁぁ」

『魂』 「……どんまい」

『命』 「あの子がいると筆が止まらない! 加速する!!」


地球日本在住、『理』のアルマの分体。(高校生)

分体という自覚があるけど、魔王寄りな自由人。魔法使って不老不死、性転換、年齢操作なんて当たり前。彼女を作って彼氏を作って、嫁さん作って夫を作る。息子と娘と孫を看取りながら、今日も元気に若い子供たちに混ざって青春してまーす! 性別? 気分で変わります。クラスのみんなには内緒だよ! 

『理』 「頭いてぇぇぇ」

『魂』 「どうしてこんなのが生まれたのか…バグ?」

『命』 「でも、『理』の分体の中じゃ一番強いぞ?」

アルマちゃんとはロイヤルナイツと七大魔王的な関係。

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