この素晴らしい世界に神様の査察を!   作:ぷらもん

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何故にFGOの武蔵はCV林原ではないのか。それが悔やまれる。ネタ的に。

FGOが面白すぎて課金しっぱなしです。アンソロに。ゲーム? DLすらしてません。


この神様にサムライの力を!

息子さんとダックスを見送り、私は一人で歩いて豚王牧場へと戻りました。

 

カズマお兄ちゃん達を置き去りにしてきたのと、もう一人、話をしておきたい方がいたからです。

 

「ただいま戻りました」

 

「おかえりー」

 

よかった、まだいましたね。

 

私を出迎えたのはアクアでした。彼女は何をするでもなくのんびりと過ごしています。

 

他の三人はしっちゃかめっちゃかしていましたが。

 

「アルダープ! 一体どうしたんだお前は!? あの欲望に塗れたいやらしい目付きをどこにやった!!」

 

「おい! 稼いだ金が国に取り上げられるんなら俺の賞金はいつ支払われるんだよ!?」

 

「私の爆裂魔法を差し置いて最強を名乗るなど笑止! 今すぐ私の魔法と勝負です豚王!」

 

などと、アルダープと豚王に詰め寄っています。

 

まぁそれはおいといて。

 

「アクア、今回の報酬です。百万エリスでいいですか?」

 

「え!? 百万!!? ありがとうアルマ!!」

 

息子さん捜索の依頼。その成功報酬を渡そうと懐から金貨の詰まった袋を取り出すと、

 

「「ちょっと待て!!!」」

 

先程までアルダープに言い寄っていたダクネスとカズマお兄ちゃんが慌てた様子で走ってきました。

 

「高すぎる! 今回の報酬なんて無くてもいいくらいだ!!」

 

「いや待て、無いのも困る! せめて十万でどうです!?」

 

どうにもこの二人、報酬額が高すぎると文句があるようです。人が良いですね。そういうところは好ましくあります。

 

「いいんですよ。今回の依頼は無事に達成されています。それに、とても愉快なものの見られましたしね」

 

アルダープや息子さん、ダックスの成長。それらはとても素晴らしいものです。

 

いえ、未だその途上ではありますが、それがいいのです。

 

人の子の進む先がどうなるかなんて神にもわかりません。運命の神だって、人の選択枝の先にある未来を見ているだけなのです。つまり、未来を創っているのはその人の子自身なのです。

 

これから先、アルダープや息子さんがどう成長していくのか、その始まりを見ることが出来たのです。なんなら一億エリスを支払ってもかまいませんよ? 私は。

 

「それに………ギルドの酒場で作った借金の返済にも必要でしょ?」

 

「「うっ!」」

 

「アルマ! この二人を甘やかすな!!」

 

ダクネスはそう言いますが、カズマお兄ちゃんは私の『お兄ちゃん』なので、身内の作った借金は家族が立て替えてもいいはずです。そしてアクアはガチの身内なのでこれも私が立て替えてあげてもいいでしょう。

 

もちろん、立て替えてあげるだけです。しっかり返してもらいますよ。

 

「利子はそこそこ貰いますから大丈夫ですよ?」

 

「「え?」」

 

「私、こう見えてお金の管理にはうるさいですからね? 早く返しにこないと利息だけで凄い額になっちゃいますよ?」

 

伊達に宇宙の管理はしていません。

 

「あわ、あわわわわ!! カズマ! カズマしゃん!! 依頼! 急いで次の依頼探さないと!!」

 

「分かってるよ! おい、めぐみん! ダクネス!! 街に戻って次の仕事探すぞ!! もうなんでも来いだ!!」

 

「そ、そうか!! なら、一撃熊の討伐なんてどうだ!? いくらどんな強力な一撃でも私が全て受けきってやるぞ!!」

 

「いえ! 強力なモンスターに爆裂魔法を撃ち込むことこそ私の役目でしょう!!」

 

焦りや歓喜、期待を入り交じらせながら、カズマお兄ちゃん達は急いでアクセルの街へと戻っていきました。

 

「騒がしいですね。でも、元気なのはいいことです」

 

「そうですな。お久しぶりですアルマ様。お元気そうでなによりです」

 

おや、アルダープ。

 

「貴方も随分と逞しくなられましたね」

 

アルダープは脂肪たっぷりとした、でぷっ、とした体型だったにも関わらず、いまやその肉の毛布を鎧に変えるほどに鍛えられていました。

 

なにより、その両の眼が見違えるように輝いています。例えるなら、綺麗なアルダープ、と言った所でしょうか。

 

「改めてお礼を申し上げます。アルマ様のお導きによって、私は新たな人生を見出すことができました」

 

「見出しすぎじゃないですかね?」

 

とても素敵になりましたが。

 

「母から賜ったこの肉体を育て上げ、それが他の者たちの肉体をも育てる源になる。やはり農家とは素晴らしいものです」

 

「悟りましたね。なんか、もの凄く、明後日の方向に」

 

この人、何千年か前に出会った宗教の開祖と同じ目をしているんですけど。

 

「ダクネスに何か言われてましたけど、大丈夫ですか?」

 

アルダープの悪行三昧はかなり知れ渡っており、このアクセルの街はおろか王都にまで及んでいる。なので、ダクネスのような国に忠誠を誓った貴族ならばそう簡単には信用しないのは仕方ないでしょう。

 

「えぇまぁ。彼女には酷いことばかりしてしまいまして。その報いと思えば……」

 

「そうですか」

 

ちなみに、アルマは知らないことだが。

 

アルダープは幼い頃のダクネスに一目惚れした生粋の変態である。その変態具合といったらもう。ダクネスと結婚するために養子を得るほどである。

 

ダクネスと同じ年頃の少年を自分の子供とし、結婚させ、その息子と身体を入れ替わらせる。その為の手段はあった。神器というアイテムを使うことで。

 

しかし、その願いは既にない。彼は目覚めたのだ。

 

…………いろんな意味で。

 

そしてアルダープも知らない。

 

アルダープが恋焦がれたダクネスの理想の男性像もまた彼のようなクズ男だということを。しかし、彼女はすでに別の男を見ているようだが。

 

「アルマ様、見ていてください。私はこの生涯をかけ、人々の笑顔の為に農家を極めて見せます!!」

 

 

きゅん。

 

 

……え?

 

なに、今の?

 

アルダープのとてもいい笑顔を見たら、何故か胸の奥が高まりました。

 

今のは一体……?

 

「む、あの紅い娘は去っていったか……爆裂魔法とやら、昔のように身体を鍛えるいい刺激となったものを……」

 

豚王がそんなことを言いながら残念そうにアクセルの街を眺めています。

 

そうですか。爆裂魔法を喰らってもそんな認識なんですか。

 

……今度めぐみんに教えてあげましょう。日課の爆裂魔法のいい的ができたじゃないですか。

 

「アルマよ。そこの豚よりも我の妻とならんか?」

 

「貴方にはオークの夫がもういるでしょう?」

 

イラッときました。あぁ、うん。なんだか胸焼けというか、今日は色々あってお腹いっぱいですのでもう帰りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

あの後、農家のお爺さん、お婆さんの待つ家に帰り息子さんのことを報告しました。

 

すると、二人とも嬉しそうに笑っていました。

 

邪魔者が出ていった、という笑いではなく。巣立ちした雛鳥を喜ぶ笑みで。

 

私はそのまま二人の家にお世話になっています。

 

息子さんとダックスという働き手が居ない以上、お手伝いすることも多いので。

 

アクアやカズマお兄ちゃんのパーティーは毎日ギルドのクエストを頑張っています。私に作った借金を返済するために必死だそうで。

 

でも、冬が近づくに連れて手頃な依頼が無くなって来ているので少々焦っていました。そのせいか、偶に農家からの依頼も受けているようで……。

 

気が付けば、カズマお兄ちゃんのレベルもそこそこ上がっていました。

 

この前、草原で魔物と戦っているのを見かけましたが、「シャォーーーーーーーーーーーーッ!」と奇声を上げながら飛び上がっていました。何を学んでいるんですか何を。

 

農家と言えば。

 

カズマお兄ちゃんが「お米が食べたい」と駄々をこねていました。

 

コメ。日本人の主食にして転生者の誰もが一度は願う故郷の味。その洗礼をカズマお兄ちゃんも受けたようで、アクセルの街中のお料理屋さんを駆け回っていました。

 

しかし、お米を扱っているお店はアクセルの街に一軒だけ。しかも、貴族御用達の超高級店でした。

 

「なんでだよ!」

 

とお兄ちゃんは叫びましたが、仕方がないのです。

 

米は四季のある地域でしか栽培できず、また手間も時間もかかる食材です。さらに、自然災害や獣害などの驚異もあり、この世界には魔物の驚異もあります。

 

ならば、値も貼るというものです。

 

だから私はこう助言をしました。

 

「だったら米農家をお手伝いして、その報酬で少しだけ分けてもらえばいいじゃないですか」

 

と。

 

「それだ!」

 

と意気揚々とお兄ちゃん達は走っていきました。米農家に。

 

それがまた、新しい驚きと発見に繋がるのですが、まぁ終わって見ればいい思い出でした。

 

お手伝い募集の依頼を出していた米農家さんのお宅。そこは若いご夫婦の農家でした。

 

夫の名はコジロウさん。

 

妻の名はムサシさん。

 

ペットの猫が一匹いて、二人と一匹と、アルバイトを募っての収穫作業となりました。

 

名前も和風ながら服装も和風なお二人でした。先祖に日本人の転生者でもいるのでしょうか? 

 

あと、何故かカズマお兄ちゃんが二人を見て頭を抱えていました。

 

なんでも、銀河を駆けるとかホワイトホールとか白い明日が待ってるとか、そんなことをブツブツ言っていました。よくわかりません。

 

コジロウさん宅の農地は、山の斜面を開拓した段々畑で、そこに水田がありました。面積は小さいですが、数が多く、日本で言うところの有名な「千枚田」のようでした。

 

「き、きつい」

 

「腰が、腰が痛いよ~」

 

「情けないぞお前達!」

 

「いえ、私も結構キツイです」

 

お兄ちゃん達は早々に値をあげていましたが、コジロウさんご夫婦は余裕でした。なにせ、その背に、腰に、武器である刀を携えながら収穫をしていたのですから。

 

「あの、何故に武器を?」

 

私は堪らずそう訪ねました。すると、意外というか、やっぱりというか。

 

「あぁ、それは魔物対策でござるよ」

 

と、ある意味予想通りの答えが。

 

コジロウさんは長刀を。ムサシさんは二刀を。どちらも日本刀でした。

 

魔物、魔物ねー。米と言えばスズメというのが日本人の脳裏に過ぎるでしょう。鳥よけに案山子を立てたり目玉を描いたバルーンを浮かせたり、最近では光を反射するCDを吊ったりしてと色々な対策をしている記憶があります。

 

なのに武器ですか。

 

「む! いかん! 皆の者ッ、敵だ! 武器をとって迎撃の準備をせよ!!」

 

コジロウさんが叫ぶと、確かに敵、魔物の類が空から接近してきました。

 

そう、空。

 

やはりスズメかと思いましたが、スズメなんて可愛いものではなかったです。

 

「今年も来たか、鬼スズメめ!!」

 

「ちょーーーーっと待てーーーーーッ!!!!」

 

「お兄ちゃん五月蝿い!! なんですかもう!!」

 

「いやだって、だってさぁ!?」

 

鬼スズメ。犬のように巨大なスズメで額に角が生えていることから鬼のようだと名付けられた鳥類型モンスター。その巨大さなのに素早く、その速度を活かした突撃により《つのでつく》攻撃が強力なモンスターである。

 

「行くぞムサシ!」

 

「わかった!」

 

「ニャー! ………っす」

 

「待てそこの猫! 今なんつった!? 鳴き声の後になんつった!?」

 

何故か飼い猫の鳴き声にお兄ちゃんが騒がしかったですが、それどころではありません。鬼スズメはすごい数で、空が黒く染まるほどの大群でした。もう電気ネズミに纏めて十万ボルトでも落としてもらいたいくらいです。……私は今何を?

 

「これは……拙者の秘剣・スズメ返しを見せる時が来たようでござるな…」

 

「燕返しじゃないの!?」

 

「わたしも、伊舎那大天象を見せる時が来たようね」

 

「なにそれ!?」

 

よく分かりませんが、奥義だそうです。きっと、米農家には必須なのでしょう。うん、きっと、多分。

 

そこからもう筆舌に難しく、凄まじい光景でした。

 

米を狙って飛来する隕石と化した鬼スズメ。それを瞬く間に斬り捨てるコジロウ、ビームサーベルを放つように鬼スズメを纏めて薙ぎ払うムサシ。

 

「……こいつらが魔王倒せばいいんじゃね?」

 

「農家は魔王軍の驚異よりも作物への被害を恐れるので無理です」

 

「理不尽だ」

 

冒険者を差し置いて魔物を倒しまくる農家の夫婦。私たちの仕事? それはひたすら稲穂を刈ることですが何か? といった具合のお仕事でした。

 

 

そしてお仕事が終わった頃には。

 

大量の鳥肉と、米俵一つを頂いて帰りました。

 

「今年は鬼ドリルがこなくて楽勝でござったな!」

 

「そうねコジロウ!」

 

「ニャー! ………っす」

 

私、帰ったらお爺さんたちと美味しいご飯食べるんだ!

 

現実逃避した私は悪くない! ないったらない!!

 

 

 

 

そうして秋が終わりました。でも、息子さんはまだ帰ってきてません。

 

はやく会いたいなー。




『理』 「お前何した!? 本当に何した!?」

『魂』 「別にー? 何もしとらんぞ?」

『理』 「嘘を付け!! 精神、本能を形作るは『魂』の領分だろうが!!」

『魂』 「ふっふっふ、ようやく気付いたか間抜けめ!」

『理』 「なん……だと!?」

『魂』 「そうさな、刻み込んでやったのよ! 乙女回路を!!」

『理』 「貴様ーーーーーー!!!!」

『物質』「喧嘩してる? チャンスっす!!」

 
『魂』『理』 「「ん?」」



『理』さん、受難は終わらず。

自分が乙女になるのではない。乙女になっていく自分を見るのだ。耐えられるかな?

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