この素晴らしい世界に神様の査察を!   作:ぷらもん

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ルビ振ってないんですが、『理』と書いて『ことわり』と読みます。ルールと読んでも可。


この神様にお小遣いを!

「本当に……本当に来てしまった」

 

地面に両手を付いた少女が力なく項垂れてる。

 

彼女の背後には『駆け出し冒険者の街アクセルにようこそ!』と書かれた看板が立っており、目の前は街の大通りであった。馬車が車輪をゴロゴロと音を立てて走り、多くの人々が少女のことを珍しそうに見やりながら歩いていく。

 

ただいま絶望のまっただ中にいる彼女の名はアルマ。

 

いちおう、宇宙創造の四柱神の一柱、『理』の神である。

 

「身体は……十二歳くらい、か?」

 

ついさっきまで大人だったのに! と嘆くがどうにもならない。自分も神の端くれ、この程度の逆境はどうとでもなると『変身魔法』や『成長魔法』などを試みるが発動する気配すら無し。

 

……あのババァ。

 

どうやらかなり念を入れた妨害が施されているようだった。

 

改めて自分の現状を確認してみる。

 

『理』の神アルマ。

 

種族  :人間。

 

性別  :女。

 

肉体年齢:十代前半。

 

体格  :身長百二十センチ。体重わかりませんキログラム。髪型、金髪のセミロング。青目。

 

服装  :黒いズボンに白いベスト。両手には金属製の篭手をつけ背中にはフードの付いた白地のマントをかけている。

 

装備  :無し。

 

………あ、うん。少女だ。間違いなく。というか装備なしってなんだ無しって!! 私の神具は!? まさかのボッシュートですか!?

 

まずい、泣きそう。でも泣かない! 神様だもの!!

 

「……とにかく、街でも歩くかー」

 

現地調査の基本は聞き込みと足である。

 

 

 

 

 

 

「お嬢ちゃん、飴んこ食べるかい?」

 

「あ、いただきます」

 

農家のおばあちゃんに飴を貰いました。美味しいです。

 

アクセルの街は意外と大きかった。

 

高い城壁で街全体を囲み、街を割るかのようにして大きな水路が引かれている。小舟が行き交うほどの大きな水路の周りには民家が立ち並び多くの子供たちの姿が見れる。釣りをする者、遊ぶ者と微笑ましい光景である。

 

城壁の内側には民家のみではなく農地も広がっており、畑や酪農地域もちらほら見えた。流石に人口密集地の付近では家畜の匂いが気になるらしく立地は城壁の隅ギリギリだという。まぁ世間様というのは世知辛いものだがしょうがなくもない。

 

で、だ。

 

神である私が何故農家の御婦人から飴玉を施されているのかと言えば、だ。

 

「ありがとうねぇ。重いだろう荷車」

 

「いえ、鍛えてますので」

 

収穫物のお野菜が満載の荷車を引いている、そのお駄賃である。ほんと、世知辛い。

 

街を歩いていて気づきました。私、無一文です。

 

金がなくてメシが食えるかぁああああああああああああああああああああ!!!

 

飴玉! 舐めずに入られない!! そして腹の音は止まらない!!!

 

働かざる者食うべからず、である。それが常識、ルール! だからこそ私は労働に励むのである! 決しておばぁちゃんが食べていた美味しそうなお弁当に屈したわけではない! ないったらない!!

 

「お嬢ちゃんのその格好……お嬢ちゃんも冒険者なのかい?」

 

「いえ、今日アクセルに着いたばかりでして……冒険者とはどうやったらなれるものなんでしょうか?」

 

などと言ってみるが、実は知っています。冒険者は皆、冒険者ギルドと呼ばれる場所で必要な手続きをすれば誰でもなれる職業です。

 

「(……でも、細かいことは知らんしなぁ……)」

 

今まで散々地球人をこの世界に転生させてきたのです。知らないと言うはずはありえません。……いや、ありえない、よな? 部下の女神達もしっかり把握してるよな? まさか現地に送るだけ送っておいて後は放置、なーんてこと……してないよな!? してたら職務怠慢でぶっ飛ばすぞ!!

 

「この世界の女神は……確かエリスだったか」

 

「おや。お嬢ちゃんもエリス教徒かい? おばーちゃんちもみぃんなエリス教徒なんよ」

 

荷車の上から農家のおばあちゃんがエリス教徒だと言ってくる。

 

ごめんなさい。私は彼女の上司です。

 

 

 

 

 

 

「ありがとよ~」

 

「こちらこそありがとうございま~す」

 

おばあちゃんを自宅へと送り届けると、お小遣いを貰いました! あぁ、人類よ善行を重ねよ!

 

その額、千エリス! 

 

「とりあえずこれで冒険者登録ができる……」

 

おばあちゃんに聞いたところ。この街の冒険者ギルドでは登録料に千エリスを支払わなければならないのだという。

 

……『魂』の奴! 私を無一文にして困らせるつもりだったな!?

 

半ば確信じみた考えをする私は悪くない。絶対に悪くない!!

 

というか、そうか、エリスか。通貨になっているのか部下よ。

 

「現地の信者が多ければ多いほど神はその力が増すというが、国の指定通貨になっているとは……」

 

同僚に弱体化させられたこの身からすれば羨ましい限りである。神であるこの身が人類にちょっと毛が生えた程度のステータスしかないとか……もうやだ帰りたい。

 

「いっそ、『理』を書き換えて通貨をエリスからアルマに……いいや駄目だ! それはルール違反だ!!」

 

 

にょほほ! 悩んどるの~!

 

 

「黙れ『魂』の!」

 

脳裏にあのロリババアの愉しそうな声が響く。にゃろう、見てるな!!

 

とりあえず軍資金は手に入ったんだ。ギルドに登録に向かおう。

 

そう思い、ギルドのある方角へと足を向けたところ……頭上に光が降ってきた。

 

 




その頃のアクセルの中央広間。

「あああ……ああああああ………あああああああああ!!!」

「おいうるさいぞ! 俺まで頭のおかしい女の仲間だって思われたらどうするんだよ!!」


次回出会います。


ちなみに『理』の神様ことアルマちゃんのステータス。

人類(勇者)に毛が生えた程度のステータスです。

これでも弱体化しまくってます。本来は太陽と木星でお手玉出来る程度のステータス。

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