『理』のアルマさん……デュークモンクリムゾンモード
『命』のアルマさん……ジェネシックガオガイガー。
『魂』のアルマさん……パズドラの転生パールヴァティー。
『物質』のアルマさん……天元突破グレンラガン。
あくまで見た目の脳内イメ~ジです。
喧嘩するのはいつも『理』と『命』。仲裁するのが『魂』で、後始末が『物質』。
あー、なんというか……酷い一日でした。ただのおつかいで何故もこう疲れるのでしょうか。
こういう日はお風呂にでも浸かって疲れをとるとしましょう。夜遅くになる前にアクセルの街に向かい大衆浴場に出向きます。
しかしアクセルの街の外の農家を拠点にする私です。街に入るまでが遠く、行く道が暗い夜道も相まって一人の寂しさを感じております。ダックス? あの子はもうお休みですよ。動物は寝るのが早い。
その途中、街外れの丘の上にある共同墓地を横切るととてもいい匂いが……これは肉の焼ける臭いでしょうか? 香ばしく弾ける肉汁の匂い、それと楽しげに聞こえる人の声。
焼肉? みんな仲良くバーベキューですか?
は? 墓地で? 焼肉!?
「どこの罰当たりかぁッ!!?」
「ひぃ!? ごめんなさい!!」
魂魄の休まる墓地で騒がしくしている連中に注意してやろうと乗り込むと、そこに居たのはよく知る面々でした。
「カズマお兄ちゃんのパーティーじゃないですか」
「アルマ様!? どうしてここに?」
『様』を付けるな『様』を、と言いたいですがあえて無視。こういうことは指摘しないでスルーしたほうが誰も気にも留めないものです。
夜遅く、共同墓地の近くでキャンプまでしてバーベキューを行なっていたのはアクセルの駆け出し冒険者達四人でした。
そうです。カズマ、アクア、めぐみん、ダクネスの四人です。
「墓地で騒いじゃダメじゃないですか」
「いやすまん。しかしこれには訳があるのだ」
「聞きましょう」
年長者であるダクネスに事情の説明をしてもらいます。貴族として、人の上に立つ者として常識を知る彼女なればこそ、こういう非常識な行為を諌めるべきなのです。アクア? 論外ですね。
「ゾンビメーカーの討伐依頼の為に野営中だったのだ」
「詳しく」
アンデッドは殺す! 二度殺す!! 皆殺ーッす!!!
ことの始まりは、アクアのレベリングだったそうな。
少ない資金でパーティーの装備を整え、いざクエストを受けようと意気込んだところにパーティーの戦力不足を痛感。そこで、回復魔法は得意ではあるが攻撃手段に乏しいアークプリーストのアクアを鍛えようということになたそうな。
その手段が、ちょうどギルドの依頼掲示板に張り出されていたゾンビメーカの討伐。
ゾンビメーカー。つまりは墓地にゾンビを蔓延させる傍迷惑なモンスターのことである。この世界での死者の埋葬は土葬だ。ゾンビメーカーは悪霊の一種で、新鮮な死体に乗り移るばかりか、周りの死体までも手下として操るのだという。
はい、アレですね。死者への冒涜に加えて『死んだものは蘇ってはならない』という私が決めた『理』への反逆です。
ははは、ハハハハハハハハハハハハハハ!!
面白いなぁ、おい。クソアンデッド風情が神に喧嘩売ってますよー? ウッケルー。
「あの、アルマがとても怖いのですが……」
「あぁ。全身から神々しく視える程の魔力を溢れさせているのに顔がすごい凶悪だな……」
「アレ? 私、あの顔どこかで見た覚えがあるんですけど。どこでだっけ?」
「お前ら見るな! 忘れろ! 余計なことは絶対に言うなよ!? 絶対だぞ!!」
なんだか周りが騒がしいけど気にしない気にしない。
しかし残念ですね。アンデッド退治になるのなら『超神刀・豊穣丸』を持ってくればよかったです。えぇ、そうです。今晩の私は無手ですよ。素手で
素手といえば、アクアよ。お前ゴッドブローはどうした? 確かに一般的なプリーストなら攻撃魔法は覚えないから攻撃手段に乏しくもなる。だからこそのゴッドブローじゃないですか。
「まぁなんにせよ。アルマも討伐に参加してくれるというのなら心強い」
「ですね。正直アクアのレベリングの為とはいえ、墓地で爆烈魔法を放つわけにもいけませんし」
「ダクネスは攻撃が当たんねーし、俺は《片手剣》スキルしか攻撃手段なかったし、肝心のアクアはここぞというときはポンコツだし……アレ?」
「ちょっとカズマ! 誰がポンコツよ聞捨てならないんですけど!!」
うん?
「あの、カズマお兄ちゃんはともかく。ダクネスやめぐみんならゾンビ程度瞬殺できるのでは?」
焼肉を頂きつつ、おかしな発言があったので確認してみます。ダクネスの攻撃が当たらないとは? めぐみんも別に爆裂魔法以外の上級魔法を使えばいいのでは?
そう尋ねたら……。
「「…………………………」」
ふいっ、と無言で顔を背けられました。
あれ? え?
「ちょっと、カズマさんカズマさん。まさか皆、アルマちゃんに内緒にしてるとか?」
「言ってやるなよ……皆子供にいいカッコしたい奴等ばっかなんだよ」
カズマお兄ちゃんとアクアがこそこそと何やら話しています。なんでしょう? 私に内緒な秘密があるのでしょうか? 少し疎外感が……寂しいです。
「あ。すいません、ちょっと失礼しますね」
「ん? どうしたの?」
私は皆にそう一言告げるとその場を離れます。いえね? 今更ながら、お世話になっている農家の方々に今晩は遅くなるという連絡をしていないことを思い出したのです。元々、街でお風呂に入ってきますと言っていたので。
草原に跪き、目を閉じて両手を合わせて祈ります。
思い浮かべるのは農家の息子さんの姿。
……息子さん。息子さん。聞こえますか?
…………え? アルマちゃん?
……いま私は貴方の頭の中に語りかけています。
………くっ、こいつ、直接脳内に!?
……そういうネタはいいです。というか、そんなネタどこで覚えてきたんですか?
………ゴメン。いや、昔オヤジがね? それでどうしたの?
……友人の仕事を手伝うことになりました。今晩は帰りが遅くなるか、もしくは帰らないかもしれません。
………わかった。気をつけてね? 危ないことしちゃダメだからね?
……ありがとうございます。それではそれではそれでーわー………。
「ふぅ。息子さんの優しさは癒されます」
合わせた両手を薄目を開けて見ながら崩し、ゆっくりと立ち上がります。その後ろにはカズマお兄ちゃん達の姿が。
「あの、アルマは何をしていたのですか?」
「《ゴッドテレパシー》です」
神託ともいう。
親指で軽くサムズアップしてみせて答えます。
突然祈り始めた私の姿にめぐみんは驚いたことでしょう。しかしご安心を。今のは心に思い浮かべた相手にメッセージを送る以心伝心、いえ
「めちゃくちゃ便利なスキルじゃないですか! ん? ゴッド?」
「わーーーーッ! なぁアクア! 魔力は無駄にしてないだろうな!? ゾンビメーカーを目の前にして回復魔法が使えないなんてことのないようにな!!」
「何言っちゃってんのカズマ? こっちはアンデッドを浄化するために《花鳥風月》だって我慢してるんですけどー。というか、ねぇゴッドって……」
「黙ってろ駄女神!!」
「どうしたんだカズマ。墓地で騒ぐんじゃない。それよりも今ゴッドって」
「蒸し返さんでいいこの脳筋クルセイダー!!!」
「はうっ!」
一気に騒々しくなったパーティーを微笑ましく思いながら眺めます。カズマお兄ちゃんの罵倒に周りも感化され罵り合いが発生しても、その根底には仲間たちへの信頼が感じられます。
人と女神。互いの立場を知らぬせいか、そのおかげか、このパーティーは遠慮というものがない。アクアが、アクアも同等の立場で……馬鹿をやっている。
だが、それがいいのだ。
人間とは賢い馬鹿である。思いついた馬鹿を行うために最高の叡智を振り絞る。それを全力で取り組める人間だからこそ、進歩を続けてこれたのだ。
そこに人間と神との差など、ない。神だって馬鹿なのだ。賢いフリをした馬鹿なのだ。そんな自分だからこそ、今まさに苦労を重ねているのではないか。神は乗り越えられる試練しか与えない、という教えを広めたのは誰であったか。
そんなことはない。人間は何時だって神の予想を上回る。
だから面白いのだ。
「臭い、臭い、臭い。これはかなり臭ってきてます」
「本当ね。間違いなくアンデッドがいるわ!」
カズマです。
今俺の目の前で二人の女神が鋭い目付きで墓地の匂いをかぎわけているところです。曰く、アンデッドの悪臭が漂ってきているらしい。なんなの? 女神って警察犬の親戚なんだろうか。
「なぁカズマ。アルマのことなんだが……」
「なんだよ。俺は今核弾頭の側で爆竹に火が点かないか心配でお前の相手をしている暇はないぞ」
そう、アクアというトラブル製造器がアルマ様を大爆発させないか恐ろしくてしょうがないのだ。
「アルマは神族との混血かその子孫じゃないのか?」
「お前何言ってんの?」
どうぢよう。この頭が残念なドMクルセイダーは時たまぶっ飛んだ発想で正解を言い当てる。
でもな、混血でも子孫でもない。神そのものだよ!
「そういえばさっきアルマは《ゴッドテレパシー》とかいうスキルを使ってましたね。神と名の付いたスキルなんて普通ありませんよ。あったとしてもかなりのレアスキルです」
おいこらめぐみん。お前も便乗するな。ていうか、お前前にアクアがゴッドブローを使ったのを見てなかったか? いや、あの時はゴッドレクイエムだったか?
「貴族の中には稀に先祖が神とか勇者だったと嘘ぶく輩がいるが真実の場合もある。王族とかがそうなのだが……どうしようカズマ。アルマの素性がいよいよ恐くなってきたぞ。流石の私もこういった恐怖は別腹なのだ」
「お前がなんでそんなに貴族事情に詳しいのかは知らんがつついたら不味い藪があることだけは覚えとけよ?」
こいつら、アクアが女神だと名乗っても痛い子扱いのくせに、なんでアルマ様だと気になってしょうがないんだよ。
いや、わかるよ? あんな小さな子供が大剣振り回して高難度のクエストを達成してるの見たらそりゃ目も止まるわ。しかも可愛いし。ここ重要。
「もうさっさとゾンビメーカーを討伐して帰ろうぜ? ……お、早速《敵感知》に反応が……」
アレ? 敵感知の反応が多くね? 三つ、四つ? おかしいな……ギルドの説明じゃ取り巻きは精々二、三体と聞いたんだが……まぁこの程度、誤差だな誤差。
そんなことを考えながら歩いていると、墓地の中、開けた場所が青白く光っているのが見えた。よく見るとそれは地面に描かれた魔法陣の光。その中心にフードを被った黒いローブの人影が見えた。
「あれがゾンビメーカーか?」
「いえ……なんでしょう? ……どこか違うよう、な?」
自信なさげなめぐみんの返しに不安になるが、あれが今夜の討伐対象なのは間違いないだろう。
「どうするカズマ? 突っ込みたいところだが、アルマもいることだし不安要素は極力減らしたい。私一人で突っ込めというのなら喜んで引き受けるがッ」
ダグネスがアルマ様をチラチラと見ながらソワソワするという器用な行動をとっている。アルマ様が気になるのなら頼むから自重してくれ。
「安心しろ。お前を囮にするのは最初から決まっている」
「そうか!」
気持ちのいい返事を返すんじゃない。
なんて思っていたら。
「「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」」
アクアとアルマ様が揃ってとんでもない行動にでた。
二人が突然駆け出す。向かうのは勿論、目の前の怪しい人影にだ。
「おい、待て! 待ってくださいって!!」
なんて言っても聞きやしない。俺の静止を無視して二人はローブの人影を取り囲むとビシッと人影を指さした。
「リッチーがノコノコこんなところに現れるとは不届きなッ! 成敗してやるッ!」
「成敗なんて生温いッ!! 魂のひと欠片も残さず消滅させてくるわッ!!」
リッチー。
それはアンデッドモンスターの最高峰。魔法を極めた大魔法使いが、魔導の奥義により人の身体を捨て去ったノーライフキングと呼ばれるアンデッドの王。強い未練や恨みで自然にアンデッドになってしまったモンスターと違い、自らの意思で自然の摂理を捻じ曲げて、神の敵対者になった存在。
よ、よりにもよってぇええええええええええええええええええええええ!!!!
ここにその、自然の摂理を定めた『理』の神様がいるんですけどッ!!!!
『魂』 「ワシが一番不利じゃないか?」
『命』 「我は最近ようやく覇界王の設定が出てきたからできればそっちがいい」
『物質』 「僕は大きさを全く活かせてない役割なんですが」
『理』 「アニメ版かX抗体版か……」
本編に登場する予定は全くありません。