うそです。好き勝手書いてます。趣味物です。相手のことを考えていないものはその時点でプレゼントではありません。クリスマスプレゼントでさえありません。クリスマストライクレーザークローです。喉笛に食らえッ!
HIPHOPの台頭が、世界を変えた。
篠ノ之束は学会でHIPHOPの価値を訴えたが、失笑を買い、表舞台から消失。
その後なんやかんやあって、2341発以上のミサイルが日本に発射されるも、織斑千冬のHIPHOPによって撃墜される『HIPHOP事件』が発生。
既存の兵器は全てが過去のものとなり、全ての武力がHIPHOPの前にひれ伏した。
熱気バサラの提唱した"音楽は兵器に勝る"理論が、篠ノ之束博士の理論と実践・織斑千冬による実行によって、とうとう学術的に証明されたのである。
世界の音楽バランス、ついでに軍事バランスも、この日崩壊した。
ポップスやロック、バラード等の有名ジャンルは全て駆逐され、オリコンからアニメのOPまで全てがHIPHOPに独占される始末。
ミサイルや戦車、戦闘機や空母も過去のものとなり、HIPHOPに取って代わられた。
HIPHOPに非ずんば価値はない。
そんな風潮が世界に浸透していく。
人々は467人の選ばれしヒップホッパー、あるいは国家代表ヒップホッパー、あるいはダンサーの夢であるモンド・グロッソの頂点を目指してダンスと歌を磨いていった。
HIPHOPの登場により、人々は意識と認識も変革を余儀なくされる。
男尊女卑の意識が少なからず根底に在った世界はひっくり返り、『HIPHOP尊男卑』の風潮が定着してしまう。
全てはHIPHOPを世界に普及させた天才、篠ノ之束の手の平の上であった。
『将来はHIPHOPで食っていけたらと思います、ええ』
画面の中で国立HIPHOP学園の新入生代表として何かを語っているセシリア・オルコットとかいう美少女を見て、繁華街の見本テレビの前で、織斑一夏は一人呟いた。
「お前ら変だよ」
アラスカ条約に基づいて日本に設置された、身体操縦者――ヒップホッパーズ――育成用の特殊国立高等学校、HIPHOP学園。
そこでは国家代表ヒップホッパーや、国家代表ヒップホッパー候補生が鎬を削っているらしい。
「控えめに言ってバカじゃねえの?」
『さあ、踊りましょう。わたくし、セシリア・オルコットと奏でられる円舞曲で!』
「一生踊ってろ」
超辛辣。
でもHIPHOPでヒップとおっぱいがたいそう揺れていたので、年頃の少年である織斑一夏くんはちょっと得した気分になっていた。
『絢爛舞踏!』
画面の中では、一夏の幼馴染がセシリアとHIPHOP対決を行っていた。
HIPHOPの基本技能DIC(ダンシングイナーシャルキャンセラー)によるパワー制御と、そこから繰り出されるブレイクダンスが炸裂する。
遠い世界の人間になっちゃったなあ、と一夏は思った。
(絢爛舞踏とかダンスの技以外のどんな技にも名付けられないな。
むしろダンスの技以外の何にこの名前付けられるの? って感じだ)
絢爛舞踏とかいうワン・オフ・HIPHOPを踊る幼馴染を見ていた一夏に、その時何者かが話しかけてきた。
「お前が織斑一夏だな」
「ん?」
「我らはダンスチーム・ファントムタスク。
真の音楽は体制への反逆とアンダーグラウンドから生まれると信奉する者……」
(まーたこの手の人だよ)
姉が世界最強のヒップホッパーである一夏の周りには、幼少期から色んな人が居た。
一夏が将来ヒップホッパーになると疑わない大人。
「HIPHOPやってくれよ」と姉のようなHIPHOPを期待するくせに、一夏がHIPHOPを披露すると「君とは音楽性が合わない」とか言って失望する子供。
そしてそのどちらでもない、突き抜けた奴。基本はこの三種類だ。
なので、その影響で一夏はすっかりやさぐれてしまっていた。
この一夏は世界の被害者であり、断罪系主人公の素質があり、闇落ち一歩手前なのである。
「HIPHOPの台頭により変わってしまったこの世界を、我らが再び引っくり返す!」
この手合は三種の人種の内、一番最後のやつのようだ。
フードで顔を半ば隠しているが、ちょっと姉っぽい声や顔形なのも一夏には好印象だった。
「我らは国家ほどの力を持たない!
だが熱意はある! 人材もある! この間違った世界に
その言葉には、熱があった。冷めた一夏の心にも染みるような熱が。
「―――ダンス・ダンス・レボリューションだ!」(キメ顔)
「お前真面目に勧誘する気あんの?」
「えっ」
だがその一言で、一夏の心は一気に冷めてしまった。
一夏とこの人物では、根本的に音楽性が合うことはない。
「さようなら。もう二度と会わないことを祈ってるよ」
「待て、織斑一夏! 我々はお前のことを待っているぞ!」
「一生舞ってろ」
ダンスチーム・ファントムタスクはこれからも、世界各地でゲリラライブでもして世界を変えるために戦うのだろう。
世界は変わった。
イスラム教過激派もイスラム教歌劇派に代わり、自爆ゲリラテロは価値を失いゲリラライブへと姿を変えた。ファントムタスクも、歌劇派原理主義と呼ばれる者達なのだろう。
つまり彼女は、HIPHOPテロリストであったということだ。
何か一つボタンがかけ違えば、闇落ちした一夏も彼女の仲間になっていたかもしれない。
一夏は帰路につく。
インフィニット・HIPHOP(無限のHIPHOP)が満ちるこの世界で、まともな人間が真っ当に生きていけるものか。一夏の姉がHIPHOPで食っていくことを決め、それを実践しているという現実が真横にあるから尚更に、一夏はその事実から目を逸らせない。
「あ、弾じゃないか」
その途中で、友人の五反田弾と出会い、声をかけ、数秒後に一夏は激しく後悔した。
「俺、五反田ダンスに改名してHIPHOPで食っていこうと思うんだ……」
「そう……」
「織斑ップ一夏。俺にはお前の力が必要なんだ! ブレイクするために!」
「え? まさか俺勧誘されてる? 待って、待て」
「俺達の力で、世界をひっくり返すんだ!」
人類が全ての武力と兵器を捨て、HIPHOPが天下を取ったこの地球。
この世界は、今日も今日とて平和だった。
"世界で唯一HIPHOPを歌って踊れる男・織斑一夏"みたいな連載誰かやらないもんでしょうか。どうせ誰かがいつか書くだろとか思ってるんですけど