一人の少年と10枚の仮面   作:一十百千

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8話-邂逅、白黒の魔法使い やまけんside-

「…あいつらにもよろしく言っといてくれ」

 

そう言い自分自身が消えて行く。

 

「言えるなら俺だって言いてぇんだがなぁ…」

「頼むよ、俺の頼みだ」

「…」

 

彼の体は既に半分近くが無くなっている。

諦めにも似たため息をついてやまけんは言う。

 

「わかったよ。あいつらに言っとく。だからとっとと消えな」

「任せたぜ、またな」

 

それを最後に彼はいなくなった。

先ほどまで彼がいた場所には彼のデッキが残っているのみ。

 

「…どっからこんなもん持ってきたんだろうねぇ」

 

つぶやき、それを拾い上げた瞬間。

 

やまけんは空を飛んだ。

 

「ふ、へ??」

 

間の抜けた声が出るもそのまま空へ。

 

「ふぉおおおおおおおあああああああああああ!?」

 

「おーすげー声だな」

 

「だ、れだ、テメェ!!」

 

見上げるとそこには

 

「私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだ」

 

ザ・魔女。みたいな少女がいた。箒にのっかって何か飛んでる。やまけんはどうやらその柄の先に引っかかっているらしい。

 

「知るか!!降ろせ!!お前らみたいなのにかかわってる時間はねぇんだ!!」

 

「知ってる知ってるー。だけどあんたの用事ってのはあんな状況でも達成できることなのか??」

 

下を見ると里が見えた…が、どうも様子がおかしい。

 

「まさか…全員に起こってるのか??あの異変が」

 

「ご名答~♪っつーわけでこの魔理沙様にちょいと付き合ってほしいわけだ」

 

「嫌だね、降ろせ」

 

「わかったわかった。ほーらよ」

 

空中に放り投げられる。

 

「テメェ!!馬車の上から乗客振り落とす御者があるかぁ!!」

 

風を切る音を聞きながら体を丸める。身体が潰れる衝撃に耐える準備をする。自分は死にはしないが、痛みで失神はあり得る。そして体を突き抜ける衝撃が()()()()()

 

「あっはっはっは!!そんなわけないだろ!!これはこの魔理沙様のパフォーマンスだぜ!!」

 

どうやらアクロバット飛行に付き合わされただけらしい。

 

「ふざけんな!!今日は用事があるから早く出たってのに散々じゃねぇか!!」

 

「いーからいーから♪」

 

「人の話を聞け!!」

 

「お前だって私の話を聞かないじゃないか、どうせ里は混乱の真っただ中なんだから、行ったってなんも出来ないって」

 

「くっそ、緑と言い、どいつもこいつも魔術に手ェ染めてる奴はァ…」

 

「お、ついて来てくれんのか??やりぃ!!」

 

「…もう、なんか色々疲れた。あー!!白縫ぃぃぃぃ!!帰りてぇよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

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「んで??何の用で俺を連れてくんだよ」

 

下に森を望みながら、魔理沙に尋ねる。

 

「私をぶっ倒してほしい」

 

「OK、任せろ。顔は無しにしといてやるよ」

 

「違う違う。ほら、この異変で出来ちまったんだよ」

 

「…もう一人のお前が、か??」

 

「おー、話が早いな。その通りだぜ」

 

指をパチンと鳴らして魔理沙が肯定する。

 

「だけどよー。んなの、お前が自分でやりゃあいいじゃねぇか」

 

「…見れば分かるぜ」

 

「それに、そもそもの話、お前が偽物って可能性もあるわけだ。そうなったら俺は協力なんてできねぇぞ」

 

「…それも見ればわかる」

 

「意味わかんねぇ…」

 

「私も意味わかんないぜ」

 

--------------------------

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

そして、魔法の森奥の魔理沙の家にて沈黙だけが流れていく。

 

「なぁ…」

 

「ひゃいっ!?」

 

家の隅っこで丸まる魔・理・沙・に声をかける。

 

「…」

 

「…」

 

「…(プルプル」

 

「僕は悪いスライムじゃ…悪い何でもない」

 

つい、口走ってしまった、言葉を取り消す。

どうやら長い事、おしゃべりな野郎と一緒にいたせいでそれが移ってしまったらしい。

二人の冷めた視線が辛い。

仕方がないので話題を逸らして本題に戻ることにする。

 

「で、この子がお前の偽物だと??」

 

「な??見ればわかるだろ??」

 

「…紛い物だってのは分かるが、なんで自分で戦わないのかが分からん」

 

「…」

 

「無言で目を逸らすな」

 

「りょ、良心の呵責が…こんなおびえてる子をフルボッコにするだなんて…」

 

「それ根本的な解決になってねーよ!?良心の呵責にあうのが俺になるだけだからな!?」

 

「いやいや、『私』が『あの私』を倒したくないだけだから」

 

「マジで魔法使いってクソだな!!」

 

「緑の事言ってるのか??」

 

「お前もだよ!!つーか知り合いだったんだな!!驚きだわ!!」

 

「それよりもほら」

 

「なんだよ!?あ…」

 

魔理沙が指さす方向に目を向けると

 

「…ぐすっ」

 

自分の出していた大声で涙腺がえらいことになってる魔理沙がいた。

 

「うーわ、泣かせた―」

 

「小学生か!!あー!!もう!!」

 

これだから魔法使いって奴は…!!

 

「わかったよ!!とっとと決闘デュエルすりゃあいいんだろ!!」

 

「おー話の分かるやつだな、お前!!」

 

「お前らの言ってることはマジで意味わかんねぇけどな!!」

 

「…え、え??」

 

「ほら、そこのお前もデッキ持て、始めるぞ」

 

あたふたとしている魔理沙(ビビり)に声をかける。

 

「はい、え、はい??」

 

「悪ぃがやるからには本気で行くぜ」

 

「え、はい!!」

 

「「決闘デュエル!!」」


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