1話-邂逅、博麗の巫女 緑side-
「ふぃー…今日も疲れたな…そろそろ寝るわ…やまけんは??」
「仮面さん、お休みなさいです。やまけんさんは、明日朝早くから作業だと言ってだいぶ前に寝に行きました。」
「りょーかい。レイラもとっとと寝ろよー」
「わかりましたー」
いつものやり取りをして自室へと戻る。
特に広くもない部屋だし、本やら実験用の素材やらでさらに狭く感じるが、それが逆に居心地の良さを出している。
布団を端っこに引いて仮面を脇に置き眠りにつく。
ここまではいつもの通りだった。
「…ん??騒がしいな…」
翌朝、外からの言い争いの声で目をさます。時計を見てもまだ朝の6時を過ぎたくらいだ。
「朝っぱらからどこのどいつだ??」
そもそもここに来るような知り合いは少ないし、こんな時間に来るような迷惑極まりない奴に至っては心当たりがない。
言い争いになるということは麗羅辺りが対応しているのだろう…。やまけんなら言い争いになる前にリアルファイトになる。
服を着替え、最低限の身だしなみを整えて外に顔を出す。朝日が眩しくて顔を顰める。
「おい、こんな朝早くから他人の家に来るとか教育がなって…」
言い切ることなく来客が言葉を被せる。
「何が教育よ。よくわからない異変起こしてるのはあんたじゃないの。今までは大人しかったから見逃してあげてたのにいい度胸じゃない。」
スッパーンッ!!といい音を響かせて戸を閉める。今までで一番最悪な目覚めだ。ちなみに2番目は緑青が一緒の布団で寝ていた時である。あれ以来國嵜の連中とは別々に暮らしている。
それはともあれ、最悪なのは現在である。
「夢だ、夢だろ…??」
今まで絶対に関わりたくないと思っていた奴に絡まれている。
「仮面さん!?私まだ外なんですけど!!」
「そーよ、とっとと開けなさいよ!!」
ドンドンと戸が叩かれる。元々丈夫ではない戸が嫌な音を立てている。壊されてはかなわないので、そろっと、顔を出した。
そこにいたのは、まごうことなき赤と白の巫女装束に身を包んだ博麗の巫女であった。
「…これは夢か??」
目の前の巫女に尋ねる。
「私もそう思いたいけどね、どうやら異変が起きたのは確からしいから大人しく成敗されてくれないかしら??」
「待て…まず異変なんて俺は起こしてないし、関わってもない」
「とぼけたって無駄よ、私の勘が貴方だと言ってるもの」
「いやマジで…話を聞いてくれ…」
朝はあまり強い方ではないのだ。正直お腹いっぱいである。
「レイラ、博麗の巫女様がおっしゃっていることを俺にわかりやすく教えてくれ」
「えーとですね、原因は不明ですがどうやら異常事態が起こっているらしいのです。」
「もっと具体的に頼む」
「えーと、同じ人が2人も3人もいらっしゃるとか」
「…そりゃ大変だ。給料も3分の1にしなくちゃならねぇ」
「それでですね、どうやらハクレーノミコサマは仮面さんが異変を起こしたとお考えらしいのです」
「なるほど…おい、巫女様。俺ァ何もしてねー。帰ってくれ」
「そうは問屋が卸さないわよ、大人しく一回成敗されなさい」
どうやら一回成敗されなくちゃならんらしい。別に、死ぬわけでもないから接待みたく戦ってやることにする。
「…へいへい。レイラ、俺の部屋から何でもいいからデッキ持ってきてくれ」
「了解です、仮面さん!!」
しかし、どうやらこの巫女様の勘が当たっているらしいとわかるのはそう遅くない出来事なのだ。