貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです 作:カルメンmk2
こんな感じにしようと思っておりましたとも。
この話からは非常に胸糞の悪くなるような表現や描写が多く出ます。私個人のオラリオとは実際はこういう街だろうという偏見から来るものですが、間違っているとは思いません。
だって、暇だからという理由で職務放棄する神々がいるんですもの。
構成上、読み難いかもしれませんがご容赦ください。
*後書きを追加いたしました。
|灰被り《シンデレラ》と|無邪気《ジャック》
昔々、神様たちが住む塔のある、大きな街で小さな女の子が生まれました。
お父さんもお母さんも女の子のことを大切に育てました。
いつも、にこにこと笑顔を浮かべます。
お父さんはよく怪我をしていました。お母さんはそんなお父さんを心配しつつ、支えてました。
何度も春が訪れるころには、女の子は少女と呼べる年ごろとなりました。
少女は育ててくれた両親のため、いっぱいいっぱい頑張りました。
二人とも、お友達と遊んできてもいいと言いますが少女は両親の手伝いをする方が楽しいといいました。
また、春が何度か訪れました。
小さな少女は小さなままでしたが、いろいろと大きくなりました。
いろいろとはいろいろです。
少女は変わりました。両親も変わりました。
両親は変わり果ててしまいました。
両親が変わり果てて、二度の春が訪れました。
二人は彼女が物心ついた時のような明るさも優しさもなくしてしまいました。
一生懸命頑張っても、褒めてくれなくなりました。
あんなに仲が良かったのに、喧嘩をするようになってしまいました。
夏が来ました。
その日は仲の良かった二人は少女を連れて外へ出かけました。
少女は安心しました。
戻ってきてくれたんだと安心しました。
大きな館に連れていかれました。
ここで美味しいものを食べるんだよ、と二人は言いました。
見たことも聞いたこともない美味しいものだと聞いて嬉しくなりました。
少女は泣きました。
知らない人が少女にのしかかっていました。
啼きました。
いつの間にか知らない人は居なくなりました。
二人が来ました。
笑顔でありがとうと言いました。
あの日の思い出に残る、輝く水を少女に渡しました。
冬になるころ、二人は死にました。
仕事先で死んでしまったのです。
少女は何度も何度ものしかかられていました。
両親はいなくなりました。
のしかかられることもなくなりました。
でも、のどが渇いて仕方がありませんでした。
少女は記憶を頼りにあの場所に向かいました。
少女は冒険者になりました。
勇敢で力のある人がなれる職業です。
でも、彼女は弱かったのです。
小さなゴブリンを倒すのにも命がけでした。
コボルドには殺されかけました。
少女は強くなることができませんでした。
少女は考えました。
のどの渇きは続きますが、少女は我慢しました。
あの水に恐怖を抱いたからです。
少女は勉強しました。
道具を使い、知恵を使って仲間をサポートしました。
戦えない自分にしかできない戦いを目指しました。
少女が笑わなくなってどれくらいたったのでしょうか?
いったいどれだけ春が過ぎたのかもわかりません。
少女は傷だらけでした。
仲間に裏切られました。
家畜のように扱われました。
道具のように使われました。
ごみのように捨てられました。
今日も仲間がやってきました。
少女の努力をすべて奪いました。
次の日も奪いました。
次の次の日は何もないと怒りました。
次の次の次の日は上機嫌に帰りました。
それがどれだけ続いたのかわかりません。
少女は悪夢に憑りつかれました。
どこまでも追ってくる悪夢から、少女は逃げることができました。
頼れる友達もいない、大きな街を独り、歩き続けました。
どこからともなく、花の香りが漂ってきました。
お花屋さんです。
かつての両親のように優しそうな老夫婦が営むお花屋さんでした。
少女は二人に働かせてほしいと頼みました。
二人は少女の頼みをききました。
次の日、少女の顔には少しの笑顔が戻ってきました。
少女は綺麗になりました。
お花屋さんで働く姿は、小さな体にとても似合っていました。
二人も孫ができたみたいだと笑いました。
少女も笑いました。
少女に笑顔が戻りました。
悪夢がほほ笑んでいるのも知らずに笑顔でした。
ついに悪夢が少女に追いつきました。
暴れます。
暴れ狂います。
少女の居場所をめちゃくちゃにするほどに暴れ狂います。
少女はやめてと懇願しました。
悪夢は笑いました。
明日も来ると言いました。
少女から笑顔が消えました。
となりには表情一つない偉丈夫がいます。
ずっとずっと後ろには二人が笑顔でいました。
嫌いな両親と同じ笑顔の二人がいました。
偉丈夫が悪夢に少女を渡しました。
彼が去ると、悪夢は少女を強かに打ち据え続けました。
少女の瞳は濁りました。
少女は涙を流しました。
また何度か春が訪れました。
巷では騒ぎが起きていました。
冒険者が襲われているのです!
強いはずの冒険者が襲われているのです!
少女は嗤いました。
二人と同じような笑みを浮かべ、嗤います。
気づくと少女の隣に少女がいました。
悪夢はいなくなりました。
とある場所から帰ってこなかったのです。
少女は嗤いました。
少女は少女を抱きしめました。
おねえちゃん、と少女は少女につぶやきました。
私がお姉ちゃんだよ、と少女は少女にささやきました。
彼女はやめるように忠告しました。
少女は彼女の忠告を無視しました。
正しい行いであると信じていたのです。
とある場所で女性を探しました。
見つかりません。
探し続けました。
少女は脅えるようになりました。
瞼を閉じると、帰ってこなかった悪夢が見えてしまうのです。
寄り添う少女に抱き着きます。
少女は少女に大丈夫だよ、とあやします。
碧色の女性が再びやってきました。
やめるようにと言いました。
私は悪くないと叫びました。
少女はもっと脅えるようになりました。
脅えます。
怯えてしまいます。
なんでかって?
悪夢が来ることに脅えてしまいます。
自分の姿に怯えてしまいます。
だって、少女は二人と同じ顔しかしていないのですから。
少女は白い兎と出会いました。
今でも脅えています。
白い兎に脅えています。
その背後にいるであろう、人にも脅えています。
同時に怒りを震えています。
どうして貴方はそんなにも輝けるのかと。
少女は白い兎の一点を見て、思っていました。
少女は自分がわからなくなっていました。
何時の日からか、嗤っていて、脅えていて、怯えから逃げようしました。
灰を被りました。
花のように笑う少女は灰を被りました。
灰を被って誤魔化しました。
自分の嗤い顔を灰で隠したかったのです。
今日も白い兎がやってきました。
けど、後ろには―――――――何が居たのでしょうか?
――――おしまい――――
このような内容となりましたのは、一重に、前書きでも述べている通りにございます。
たかが、二大ファミリアが居なくなった程度で情勢が混沌と化すような都市です。モラルやマナーなど我々基準で考えるべきではありません。
神々がいるではないか? と仰る方もおられましょうが、ではなぜ?
なぜ、ダイダロスの貧民街や上記のファミリアの横暴を無視するのでしょうか?
単純に『興味が無い』からです。
私としても、すべてがゴミとは言いません。救うだけでは意味がないと思う神々だっているでしょう。ですが、是正することは出来たはずです。でも、是正はしていません。単に大手のファミリアに目をつけられるのはまずいから、水面下に移っただけです。何一つ変わっていません。
ともすれば、少女のような行為があったところで問題は無いでしょう。
だって、誰にも目撃されていないし、弱い冒険者なのですから。
私はオラリオという街において、弱さこそが罪と定義しています。
フレイヤやロキが一目置かれているのはなぜか? 誰も逆らえないからです。恐怖の象徴だからです。
つまり、私の中では暴力と恐怖が支配すし、表向きは法治の街である。それがオラリオです。
つまりのつまり、ここからブラックオラリオが開幕するのです。