白の狐は何を見る   作:橘 聖

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キャピキャピリン
どうも、久しく登場する橘聖です

再び1ヶ月空いてしまいました、申し訳ありません
宴会回の書きにくいこと書きにくいこと
展開が思いつかずに今話で無理に切った感じになってしまいました

…いまさらUA数1000記念やってもねぇ、と思ってしまっています
皆様のおかげであと1000足らずで10000超えるので、ですが

はい、前置き終わり
では『27.月夜の宴は星空の下で(下)』、どうぞ


27.月夜の宴は星空の下で(下)

「しもつきぃいひひ」

 

「やめろ、気持ち悪い」

 

境内に戻ると顔を赤らめた妹紅がすり寄ってきた

寄って来たらそのまま腰に腕を回され、さっきの変な声を出してきた

 

「しもつきぃ、しゅきぃ」

 

「はいはい、そういうのは本命に言おうな」

 

酔いによる勢いで妹紅から告白されたが、多分からかいだろう

本気だとしてもその気持ちには応えられない

だって…妹紅って貴族じゃん?

ただの一妖怪が付き合うのはお門違いってものだろう

 

「ぶー、本気だもん」

 

「本気でもダメなものはダメ」

 

「なんで? 胸がないから? 他に好きなやつがいるから? 私に魅力がないから?」

 

…妹紅の目から光が無くなっていってるんですが

待って、これが紫の言ってたヤンデレってやつ?

めっちゃ怖い。なに、こんなのを好む人いるの?

 

「ち、ちょっと待て妹紅。別に絶交とか言ってるわけじゃない。だから機嫌直せ、な?」

 

「…じゃあひとついい?」

 

目の光は戻らないまま妹紅は話す

俺は無言で首を縦に振る

 

「私は霜月のことが好き、それは変わらない。だからせめて私がいいるときは一緒にいて」

 

「…それは無理だな」

 

「…! じゃあ――」

 

「だが、別に妹紅といることが嫌なわけじゃない。時間があったら構ってやるから、それでいいか?」

 

「…霜月がそう言うなら、それで我慢する」

 

妹紅の目に光が戻ってきたところで、俺は胸をなでおろす

しかしここで疑問が一つ頭に浮かんだ

 

「なぁ妹紅、一つ聞いてもいいか?」

 

「ん、なに?」

 

「…いつからだ?」

 

「え、何が?」

 

「いや…俺に好意を持ったのはいつからなのかな、と思って」

 

俺が好かれるような行動はしてないはずである

外の世界でいう『ふらぐ』も立てていないと思いたい

妹紅は依然腰から離れないまま、少し考えてから答える

 

「最初から、かな」

 

関係なかった

 

「その理由も聞いてもいいか?」

 

「別にいいけど…女の勘ってやつ?」

 

直感ですか、そうですか

でも勘で俺に好意を持たれてもなぁ…

 

「俺の好きなところは?」

 

「えっ…尻尾?」

 

お前もか

そんな渋そうな顔を見て妹紅は続ける

 

「嘘。凛々しい顔とかすらっとした体とか、まあ全体かな」

 

「…そうか」

 

別に悪い気はしないのだが、やはり少しこそばゆい

そんなことを考えていると、妹紅は俺の手を引っ張って縁側に俺を座らせる

急に何かと思えば、外に顔を向けるようにして、俺の太ももに頭を置いた

 

「…しばらく、このままでいさせて」

 

夜空に消え入りそうなほどの妹紅の声に、俺は尻尾の一本でゆっくり頭を撫でて応じる

星が(またた)く夜空は、全てを凌駕するような闇を、光を、夢を孕んでいるように思えた

 

 

 

 

 

「…んむぅ」

 

背中には平たくも人肌ほどのぬくもり

そして太もも辺りに何かが乗っている

 

「そうか、あの後寝てしまったのか」

 

上半身をゆっくりと起こし、周りを見渡す

食べ物はすべてなくなっており、大きい器や杯などが散乱している

そこにはそういった物だけではなく、酔い潰れてそのまま寝た者もいる

これは後片付けが大変そうだ

 

先に後片付けを終わらせようと思い、妹紅を降ろそうとして尻尾を動かそうとすると動かない

不思議に思って尻尾のある方を向くと、紫が俺の尻尾を枕代わりにして心地よさそうに寝ていた

(よだれ)まで垂らしやがって

 

一度尻尾を消し、再度尻尾を出す

そこには透明の液体で濡れて固まっている毛がいくつもあった

 

「…はぁ、後で藍に何か罰でも考えてもらうか」

 

寝起きの頭ではそんなことを考える余裕もなく、涎で濡れたもの以外の尻尾で妹紅を降ろす

そのまま宴会の終わった境内の後片付けを始める

すると、神社の裏から水を流すような音が聞こえることに気づいた

尻尾が汚れないように食器等を重ね、尻尾の上に置いたものが崩れないように気を遣いながら音の聞こえたところへ向かうと霊夢が井戸水で食器を洗っているところだった

 

「霊夢か、早いな」

 

背後から声をかけられ、少し肩が跳ねる霊夢

なんか悪いことしたな

 

「…霜月じゃない、何か用?」

 

しかし冷静だと言わんばかりの顔と声色(こわいろ)でこちらを向く

別に隠さなくてもいいんだが…

 

「食器とか持ってきただけだ。そこに置いておくぞ」

 

 

尻尾に載せていた器や杯を霊夢の横に置く

境内にはまだまだ食器類が残っているので戻ろうとする

 

「あ、霜月」

 

霊夢に名前を呼ばれ、振り返る

 

「えと、あの、そのー…」

 

言い淀んでいる霊夢に疑問を持つ

言いにくいことなのだろうか

 

「あ…あり…ありがと…」

 

そう言ってすぐに洗いを再開する霊夢

お礼は大事だよな、誰かみたいにお礼も言わずわがままばっかり言う奴とはやっぱり違う

 

 

そのとき、至る所の人妖が一斉にくしゃみをしたというが、その噂の真偽を知るものはいない




今回の後書きは特になし!
それではまた次回、さようならぁ!





霜月「あ、吹雪酒と月乃酒が飲まれてる」
紫「霜月が買ってきたお酒、おいしかったわぁ…スヤァ」(寝言)
霜月「てめぇか、一度死なないと気が済まないようだなぁ?」
紫「あっ、ちょっと、そこはだめっ…」
霜月「…どんな夢見てるんだ。やる気なくなったし…片づけの手伝いしてこよ」
紫「…ああ、そこ。肩が凝ってるのよ、はぁー…スヤスヤ」

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