白の狐は何を見る   作:橘 聖

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初めましての方は初めまして
そうでない方はキャピキャピリン
どうも、橘聖です

次話がいつ投稿されるかは私にもわかりません
…どうせ見てくれる人なんていませんけどねっ

さて、では前置きはここまでにして…
『1.氷の妖精』 どうぞ


本編
1.氷の妖精


気が付くと広大な草原にいた。眠っていたらしく体を丸めている。

体を起こすために背伸びをする。

白い体毛と一本の尾。その白い生き物は大きくあくびをした。

 

 

特に行くあてもなく、気の赴くままに移動するだけ。そんな毎日。

しかしその生き物は満足だった。縛られることなく動き回れる、そんな自由な世界に生きているからだった。

 

その生き物に仲間はいなかった。

気がついたときにはまわりに同族はいなかった。

 

その生き物はお腹が空かなかった。

だから動物を狩ることはなかった。

 

その生き物に寿命はなかった。

生きているうちに尾の本数は増えていった。

 

その尾の本数は9本だった。

その生き物はいつの間にかヒトの姿に化けれるようになっていた。

 

その生き物は妖狐と呼ばれた。

それは今もどこかに生きているといわれている。

 

(東洋妖怪編 19項より引用)

 

 

 

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「ふう…目が痛いな…」

 

「こんな時間まで休憩無しで読んでいたらそれは目が痛くなりますよ」

 

袖で口元を隠しながらくすくすと少女…小鈴は笑う。

 

「まあ、一度読み始めたら時間も忘れて読んでしまうからな」

 

膝に書物を置き苦笑する。

 

「それで、霜月さんはこれからどうするんですか?」

 

「うーん…何か少し変わっているところはないか? 刺激がほしくてね」

 

「変わっているところ…それなら紅魔館なんてのはどうでしょうか」

 

「こうまかん…どんな字だ?」

 

「紅いの紅に悪魔の魔、それに館です」

 

「それで紅魔館か…いい名前だ、行ってみようかな」

 

「でも気をつけてくださいね? 吸血鬼が住んでいますから」

 

「分かった、だけどいざとなったら大丈夫だけどな」

 

「ふふ、それもそうですね」

 

「さて、聞きたいことも聞けたし」

 

そう言って席を立ち、小鈴の手にお金を置く

 

「え、代金ならいりませんよ?」

 

「情報代だ、気にせずに受け取ってくれ」

 

小鈴は少し思案した後、申し訳なさそうにお金の乗った手を引っ込める

 

「別にいいんですが…折れませんから言っても無駄でしょう」

 

「よくわかってるじゃないか」

 

笑いながら小鈴の頭に手を乗せる

 

「頑張りなよ、これからも」

 

「ええ、霜月さんもケガには気をつけてくださいね?」

 

「もちろん。それじゃ」

 

小鈴に手を振ってから店内から出る

 

「さて…紅魔館は…、…どこだ」

 

少し考えをめぐらせる

だが紅魔館を探す案は思いつかない

しょうがない、と思いつつ再び店内へ戻る

 

「いらっしゃいませ…どうしました?」

 

「いや、紅魔館の場所を聞きそびれてたから帰ってきた」

 

「かっこよく店を出たのにこれだと恰好がつかないじゃないですか」

 

「はは、それが俺だから…気にするな」

 

はあ、とため息を漏らしながら店を出ていこうとする小鈴

 

「場所を教えますから来てください」

 

言われるがままに店から出る

 

「紅魔館はあっちの方向です」

 

大きな山のある方向を指さす

 

「あの山の中か?」

 

「いえ、麓です。正確にはここから山の直線からは少し外れたところにあります」

 

「わかった、ありがとう。じゃあ今度こそ」

 

「はい、またのご来店をお待ちしております」

 

再び小鈴に手を振り、山へ向かう

 

人里を出て、森へ入る

道なき道…という訳ではないが、ひざ下くらいの高さの草を踏みながら目印となる山へ向かう

 

「にしても…喉が渇いたな」

 

本を休憩無しで二刻(4時間)ほど読み、そのまま森へ入ったから当然と言えば当然なのだろう

 

「何か川か池でも無いかな…」

 

すると

 

「あんた、水が欲しいの?」

 

後ろから声を掛けられ、驚きつつ振り返る

そこには青い服を着ており、氷らしき羽をもつ生物がいた

 

「まあ、そうだな」

 

平然を装い、返事をする

するとその生物は

 

「わかった、こっちに湖があるからそこに来る?」

 

なんと優しいのだろう

 

「ほんとか? あ、自己紹介が遅れた。俺は霜月、人間をやってるよ」

 

「あたいはチルノ、ここ一帯では最強の氷の妖精だよ」

 

そう言ってチルノは胸を張る

…無い胸を張ってどうするのだろう

 

「…あんた、今失礼なこと考えなかった?」

 

「いんや、全く考えてないけど」

 

棒読み感が出たが致し方なし

 

「ふーん…それじゃ、湖に案内するからついてきて」

 

そう言って俺が進んでいた方向から少しそれた方向にチルノは進んでいく

ついていかない道理はない。そう思いチルノの後をついていく

 

あまり時間は経たずして木や草ばかりだった視界が開けてくる

そこには言われた通りの湖があった

 

「おお、意外と大きい湖だな」

 

「そうでしょ、この湖はあたいのテリトリーでもあるんだから」

 

…そういえばさっき最強だとか言っていたな

テリトリーか、嘘ではないみたいだ

 

「…この湖の水は飲んでもいいのか?」

 

「いいと思うよ。よく飲むけど一回も具合が悪くなったことはないし」

 

「じゃあ、いただくよ」

 

そう言って湖の水を両手ですくって口に運ぶ

…うまい。なかなかじゃないか

 

「おいしいな、なかなかの水質だ」

 

褒めるとチルノは少し照れくさそうにしていた

…水だぞ?なぜおまえが照れる

 

「いやあ、なんかむずかゆいね。あたいの湖を褒められるとさ…」

 

なにこの妖精、かわいい

…おっと、思考がずれた

 

「ありがとう、おかげで助かったよ」

 

「いいんだ。あ、でも一つだけお願いがあるんだけど…聞いてもらってもいい?」

 

「俺にできることならいいが、何だ?」

 

そう答えるとチルノは一つ深呼吸をする

 

「ふぅ……笑わないでね?」

 

その言葉に頭を縦に振って肯定の意を示す

 

「…あたいと、と…と…」

 

「と?」

 

「…友達になってくれない?」

 

「…へ?」

 

素っ頓狂な声を出してしまった

 

「…さっきさ、あたいがここ一帯では最強の妖精だって言ったよね。その肩書きのせいで他の妖精からは離れられて、人間からは畏怖されて、友達と言える友達がいないんだ。だからさ、あたいと…友達になってくれない?」

 

簡潔に、しかし要点はしっかりと伝えてきたチルノ。その水より蒼い目には涙がたまっていた

 

「…もし俺が嫌だ、と言ったら?」

 

こんなことを聞く俺は最低だろう

しかし、このまま軽く返事をしたらチルノは…

 

「そのときは…諦めるよ。別に一人でも生きていけない訳じゃないから」

 

そう言ってチルノは後ろを向く

俺からは顔が見えない

…ふむ

 

「チルノ、ちょっとこっち向け」

 

「え?」

 

チルノは言われた通りにこっちを向く

俺はチルノの額にデコピンする

ぺちっ、といい音がする

チルノは突然のことに目を丸にして固まっている

 

「チルノ、お前は少し受け身になりすぎだ。もっと積極的になれ」

 

「え? でも…」

 

「でも、じゃない。そうやってできた友達は友達と言えるか? お前は消極的なやつから急に『友達になって』って言われて『うん』と言えるか?」

 

「それは…言えない」

 

「そうだろ。まあ、端的に言うぞ。お前は遠慮がちなんだよ、もっと積極的にいけ。そしたら自分の気持ちは伝わるだろ」

 

チルノは少し考えるようなしぐさを見せる

すこしして、チルノは顔を上げる

 

「…ありがと、おかげで気持ちが楽になった」

 

「そりゃよかった。んで、どうするんだ?」

 

「…霜月、あたいと友達になって。妖精だけど、まだ誰も近くにいる人はいないけど…こんなあたいでも気軽に話せる友達が欲しいんだ」

 

そう言って、チルノは俺に向かって頭を下げた

その顔からは水滴が何滴も地面に落ち、吸い込まれていった

 

「…こちらこそ、よろしくな」

 

そう言って、チルノの頭をわしゃわしゃする

ズビビ、と鼻水をすする音が聞こえた後、チルノは顔を上げる

目は充血しており、そこから涙が頬を伝っていた

 

「ありがと…ほんとにありがと」

 

そのまま胡坐をかいていた足を叩く

するとチルノは察しているのか俺の胡坐の上に背中を向けた状態で座る

俺はそんなチルノの頭を撫でる

手入れされているかのような空色をしているその髪は指にかかることなくされるがままになっている

 

「それと、さっきはあんな意地悪してごめんな」

 

「…ああ、いいよ。というかむしろありがとう。おかげであたいの心の中の壁がなくなった気がする」

 

「…それはよかった」

 

 

 

俺からすれば「ちょっと変わった出来事」で済まされるこの話

チルノからすれば「人生が変わった出来事」として脳に刻まれるだろう

俺はそんなことを考えながら、ちょっと変わった出来事でできた"友達"の頭を空が赤く染まるまで撫で続けた




…深夜テンションってこわいですね
なんでこうなったんでしょうか
内容は薄いくせにして長いなんてありえない
…もっと精進できるように頑張ります

「東洋妖怪編」はオリジナルです
実在…しないはず…

次話…『2.破壊の吸血鬼』
とかいうサブタイトルにでもするかも…しないかも

霜月「そういえは今日クリスマスだな。作者は何かあった?」
橘「…クリスマスにこれを投稿してるんだ、察して」
霜月「…すまぬ」

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