三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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も、モチベーションが……。

だ、誰か。俺に原作の続きを読ませてくれ。


SE修【天眼】迅悠一の苦労

 迅悠一。自称実力派エリートの彼は未来を視る事が出来る副作用(サイドエフェクト)を所有している。それが故に誰も与り知らぬ所で良き未来へ誘う為に動く事が多く、周囲からは趣味が暗躍と言われていたりする。

 未来が視えると言う事は、同時に未来を知る者としての責任を負う事であると本人は考えている。最良の未来を掴みとるために人知れず奔走するのは当然だと考えている迅からしてみれば暗躍と貶された所で何とも思わないが、ある者にとって不利益な未来へ繋がる事になると分かっていても選択しないといけない重圧に悩まない訳がない。

 

 

「(メガネくんは順調に実力を付けてきている。けど、まだ足りない……か)」

 

 

 メガネくん。迅悠一が所属している玉狛支部の後輩であり、ここ最近は台風の目となってボーダーに新風を巻き起こしている頼もしき仲間。修がボーダーに入ってからと言うもの、色んな事が動き出した。空閑を仲間に引き入れ、レプリカから得た情報のおかげで色んな事が進展したと言えよう。

 最弱のボーダーと言われていた修であったが、天眼と呼ばれる副作用(サイドエフェクト)の恩恵のおかげでA級隊員の強者共達も人目を置くほどの存在となっている。

 けど、まだ足りない。これから起こり得る事件、大規模侵攻時に修が生存する確率は驚くほど少ない。

 誰かに護衛を頼む事も考えたが、それでは多くの市民が被害にあう可能性が高くなってしまう。そうなってしまうと少しずつ育んできた信頼性を損なってしまう。それだけは絶対に避けなくてはいけない。

 

 

「(何が足りない。どうすればいい)」

 

 

 修の生死を考えに入れなければ、取るべき選択肢は幾つかある。けど、それは最良とはいいがたい。三雲修の存在は数多くの未来に関わってくる。ここで彼を失うのはボーダーとしても大きな損害になる事だし、何より自分が引き込んだ人物を失うのは心が痛む。

 

 

『――たとえ、どんな困難が待っていようが、これが僕の選んだ道です。僕がそうするべきだと思ったからです!』

 

 

 どの未来でも三雲修は力強く告げ、強敵と相対して破れてしまう。

 

 

 

 鷹の眼が開眼する前は――。

 

 

『ハッ。まさかアイツと同じ眼を持っているとはなっ! が、俺の○○が視切れないとなると鷹の眼を開眼していない様子。悪いがこいつで仕留めさせて貰う』

 

 

 数人の近界民(ネイバー)と善戦するものの、砲撃によりトリオン体が破壊されてしまう。本来ならばトリオン体が破壊されると同時に緊急脱出(ベイルアウト)が発動するのだが、修は千佳を護る為にトリオン体を解除し、彼女を逃がす時間を稼いで絶命している。

 

 

 

 攻撃手(アタッカー)陣と戦う前は――。

 

 

『見事だ。まだ俺の領域まで踏み込んでいないとはいえ、未熟な天眼でよく戦った。だが、俺の○○○○○はお前と相性は最悪だったな』

 

 

 どうにか先の敵を倒す事に成功するもの、新たに現れた自分と似た敵に呆気なく倒されてしまう。そこから先は前と同様だ。

 その彼らも完全機能(パーフェクト・ファンクション)が開眼した事で切り抜ける事が出来るようだが、相手の大将格をあと一歩の所まで追い詰めた直後にトリオン体は崩壊して戦闘続行が不可能になってしまう。そして最後に修が取った行動は自分自身を囮にし、長距離からの風刃による斬撃で倒す自爆戦法であった。

 驚くべきほどの確率で強敵と相対し、他の隊員よりも多く危険にあう。それが三雲修の大規模侵攻の未来だ。

 

 

「(まったく、うちのメガネくんは人気がありすぎて困ったものだ)」

 

 

 けど、この場を乗り越えれば大きな見返りが来るのも確か。その見返りを得るのに三雲修の存在は必然と言えよう。ならば――……。

 

 

「(残り少ない時間、メガネくんにはとことん試練を与えるとしましょうかね)」

 

 

 決意を改め、今日も迅悠一は暗躍を始める。

 

 

「……おっ、迅。いい所で本部にいたな」

 

 

 ――と、思った矢先に厄介な人間に見つかってしまう。

 

 

「や、やぁ太刀川さん。悪いけど、今日は忙しくってランク戦はできないからね」

 

「ぼんち揚げ食いながら言っても説得力はないんだがな。だが今日はランク戦の誘いじゃないんだ、悪いな」

 

「……え? まさか、俺にレポートを手伝えって? まだ終わっていなかったの? また風間さんにどやされるよ」

 

「ちげえよっ! 既にどやされた後だよ。じゃなくってっ!!」

 

 

 どやされた後なんだ、と苦笑いする。

 太刀川慶。我がボーダーが誇る第一位部隊の精鋭なのだが、戦闘以外はからっきしダメ。噂によると忍田が大学の講師に掛け合って、レポート絡みの件が発生したら報告してくれるように話しを通したとか。

 

 

「今から対三雲会議を始めようと思うんだが、お前も付き合え」

 

「……はい?」

 

 

 思いがけない太刀川の一言に迅は目を丸くさせずにいられなかった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 強制的に連行された先は、太刀川隊の隊室であった。

 

 

「だからっ! 三雲先輩を倒すには体で反応出来ない程の機動力で撹乱するのが有効なんだよ。なんで、それが分からないかなぁ」

 

「それで負けたのは駿じゃない。三雲先輩に有効打を与えるには速攻からの一撃よ。駿の乱反射(ピンボール)じゃ、三雲先輩の通常弾(アステロイド)変化弾(バイパー)のいい的よ」

 

「そう言う双葉も三雲先輩のレイガストで真っ二つにされたじゃん。三雲先輩が天眼酔いしていたにも関わらず。ぷぷ」

 

「いい度胸ね、駿。何なら、いまここでどっちが正しいか証明する?」

 

「望むところっ!!」

 

 

 緑川と黒江の怒号が飛び交う。入るなり二人の諍いを目の当たりにした迅は胸中で溜息をせざるを得なかった。

 

 

「二宮さんも分からない人ですね。メガネくんを倒すには圧倒的な物量による総攻撃に限るんですよ。何度も倒した俺が言うんですから」

 

「バカを言え。あんな攻撃が何度も通用する訳ないだろうが。アイツが鷹の眼とグラスホッパーを併用すれば、お前のフルアタックも回避しきるのが容易に想像できる。そもそも、アイツがグラスホッパーを選んだ理由が出水、お前のフルアタック対策である事を何故気づかない」

 

 

 別の所では射手二人組が修の過去の対戦ログを見ながら討論に花を咲かせていた。咲かせていたと言うよりか、互いの主張をぶつけ合い火花を散らしていると言った方が正しいかもしれないが。

 

 

「やっぱ、下手に策を弄するよりも真正面から切り結ぶ方が得策と思うんですよ、風間さん」

 

「米屋の考えに一理あるな。間合いの広さは向こうにある。炸裂弾(メテオラ)で姿を眩ませてから攻撃されたら不利になる一方だ。ここは接近戦に持ち込んで、相手の動きを封じるのが得策だろうな」

 

「(か、風間さんまで……)」

 

 

 まさかの風間の参加に迅は天井を仰がずにはいられなかった。

 

 

「やってるな。おーい、みんなっ! 聞いて喜べ。自称実力派エリートを連れて来たぞ」

 

 

 太刀川の一言で、討論を続けていた一同の視線が集まる。

 

 

「……や。ど、どうも。随分と集まったね。……で、なにこれ?」

 

「あん? だから言っただろう。対三雲作戦会議ってな」

 

 

 何を言っているんだ、お前は。と冷めた目を向けられた事に若干だがイラっとするが、迅は平然を装って話しを続ける事にする。

 

 

「い、いやさ。それは分かってはいるんだが……。なんで、こんなたくさん? 何気に風間さんまでいるし」

 

「俺がいて悪いか?」

 

「い、いや。そうは言ってはいませんが……。なんかちょっと意外で」

 

「俺も奴にいっぱい喰わされた身だ。それに今後の事を考えると、こうした意見交換を得る場は欲しいと思っていた」

 

 

 まだ一度しか、しかも修が天眼を使い熟す前しか戦っていない風間であるが、あの成長振りには目を見張るものがあると感じている。なにせ、不利な場面で修は太刀川と加古、そして米屋の三人に勝っているのだ。今後のランク戦などを考慮するとこう言った機会は渡りに船と言えよう。

 

 

「そうです。三雲先輩の天眼は脅威と言えます。何か対策をしないと良い様にやられちゃいます」

 

「双葉の韋駄天や二宮さんの両追尾弾(フルアタック・ハウンド)すらも見切る能力なんっすよ。再戦する時、何も対策なしで戦ったって二の舞になるのが必然でしょう」

 

 

 双葉と緑川の二人は揃って修に負けている。中々再戦の機会を得られないが、次に戦う為に対抗手段の一つや二つ模索したい所であろう。

 

 

「二宮さんのせいで迅さんの下位互換未来視なんてものも会得しちまったみたいですしね」

 

「……ふん。あれは太刀川達が余計な事をしなければ、てかむしろ、出水が早々に脱落しなければよかった話しだ」

 

 

 更に射手二人組からも援護が飛んで来る。師と言う立場にいる二人であるが、うかうかしてしまうと弟子の修に直ぐ追い越されてしまう。簡単にやられる訳にはいかないと考え、こうして厄介な敵の分析を得られる場に参加したのだろう。

 

 

「ちなみに、後で東さんも参加してくれる事になった。どうだ? 面白くなって来ただろ」

 

「あ、東さんまで!? ちょっと、みんなメガネくんの事を意識しすぎじゃないのっ!?」

 

「バカを言え。あんな面白いやつ、意識するなって方が難しいだろ。だろ?」

 

 

 太刀川の言葉に全員が同意を示す。

 

 

「そこで、迅。どうせお前の事だ。俺達の知らない所で、三雲に色々とさせているんだろ? 聞かせろよ」

 

 

 ……あかん。この先、どんな選択肢を取った所で逃げられる未来はないと自身の副作用(サイドエフェクト)が告げている。さて、どうしたもんかとしばし考え「ふぅ」と息を一つ吐く。どうせ逃げられないならば面白い方向性へ誘う方がいい。

 迅は肩を竦めて「わかったよ」と降参の意を示し、自身が知る限りの情報を告げるのであった。

 

 

「……ほぉ。先視眼(プレコグ・アイ)とな。そいつは面白いトリガーを作ったじゃないか。どうして、俺にそれを教えない」

 

「いや、太刀川さん。あれって玉狛トリガーだから、本部仕様の正式トリガーじゃないし、ランク選では使えないでしょ」

 

「ばっか。んなの、隊室のトレーニングルームなどを使えばいい話しだろ。俺の隊室ならいつでもウエルカムだ」

 

 

 この時、太刀川が嬉々となって修と戦い続ける未来が視えてしまう。その後、出水やなぜか風間の姿もあったので、修の為にもしばらくの間は太刀川達に会わない様に助言しようと決意する迅であった。

 

 

「ずるいなー。俺も玉狛支部にお邪魔しようかなぁ。そうしたら空閑先輩や三雲先輩と戦えるんでしょ? 迅さん、やっぱり俺。そっちの子になってもいい?」

 

「いやいや。緑川は草壁隊でしょ。そっちはどうするんだよ?」

 

「大丈夫! 今流行りの二刀流スタイルで行くから!」

 

「意味が分からないわよ、駿。けど迅さん。私ももう一度、三雲先輩と再戦したいです。あんな戦いでは納得がいきません」

 

「そう言われてもなぁ。いまメガネくんは完全機能(パーフェクト・ファンクション)を使い熟す事で精一杯みたいだし」

 

 

 ここで緑川や双葉を玉狛支部に誘ったら、俺も俺もと多くの人間が玉狛支部に雪崩れ込んでしまう。多くの人と戦い経験値を稼ぐ事は必要な事であるが、今はその時ではない。

 時間は有限。遠くない未来、大規模侵攻が起こる。今の修に必要な試練は吟味する必要性があると言えよう。ここで無闇矢鱈に誰かをぶつけても良いものか、と考えていると。

 

 

「その割には那須隊と一戦交えたそうじゃないか、迅」

 

「それは俺の与り知らぬ場所で起こった事だから。てか、二宮さん。そのログ、どうやって手に入れたの? 俺も初めて見るんだけど」

 

 

 那須隊VS修のログを見せられるが、修が勝手にやった事なので自分が責められるのはお門違いもいいところだと言い返したい。だが、それよりも早く風間が会話に割って入る。

 

 

「ほぉ。俺の所に来ないと思ったら、随分と面白い事をしているんだな」

 

「(まだ行っていなかったの、メガネくんっ!?)」

 

 

 まさか、まだ風間の所へ行っていなかった事実を聞かされて頭を抱えてしまう。そう言えば自身も修に風間が待っている事を告げてはいなかったと思い出す。だからと言って、後輩の京介が未だにその事を修に告げていないと誰が想像できようか。

 

 

「やっぱ、一度みんなで玉狛支部に行くべきじゃなくね?」

 

 

 太刀川の言葉に大きく頷く一同。このまま話しが続けば冗談抜きでこの場にいる全員が修を訪ねて玉狛支部に突撃してくる事であろう。それだけはなんとしても避けたい未来だ。

 どうにか話題を変えないと思考を巡らし、気付く。そう言えば対三雲会議にいても良いであろう人物がこの場にいない。

 

 

「……そう言えば、木虎の姿が見えないが? 対メガネくん会議なら、いても良いと思うんだが」

 

 

 他にも狙撃組やら東隊の二人の姿も見えないが、一番いても不思議ではない人物の姿が見えない事に首を傾げる。

 

 

「あー。木虎ね。アイツなら、今頃……」

 

 

 

 ***

 

 

 

 嵐山隊、隊室。

 

 

「あ、藍ちゃん。そのログ、今日だけでもう18回目だよ」

 

「合計74回目だね。そんなに三雲君の事が気になるなら、会って来ればいいのに」

 

「ハハ。まあ、あの三雲君だ。木虎も気になって仕方がないんだろう」

 

 

 綾辻、時枝、嵐山の三人の言葉など聞こえていないのか、それともあえて聞こえない振りをしているかは定かではないが、木虎藍は修が完全機能(パーフェクト・ファンクション)に目覚めた戦いを視るのに夢中であった。

 

 

「(なによこれ。私の事をそっちのけで、こんな事をしていたわけ、三雲君は。それにこの動き。以前よりも動きだしや判断能力が向上している。いくら二宮さんの援護があったからと言って、こんな事が本当に出来るの?)」

 

 

 修が2秒先の未来をシミュレートできる完全機能(パーフェクト・ファンクション)に目覚めた事を知らない木虎は、修の成長振りに驚きを隠せなかった。

 

 

「(まず、三雲君の目眩まし戦法をどうにか攻略する必要があるわね。炸裂弾(メテオラ)を撃った瞬間、撃ち落とせればいいけど今の私の技術では……)」

 

 

 今後、起こるであろう修との再戦に木虎は脳内でシミュレートを繰り返す。だが、何度戦った所で良くて相打ち。最悪の場合、手出しできずに負けてしまう結果となってしまった。どうにか打開策を考えてみるものの、中々いい手が思いつかない。

 

 

「(……やっぱ、藍ちゃんって)」

 

「(綾辻先輩、それ以上は禁句です。言ったら、木虎の雷が落ちますよ)」

 

「(……ん? 何の話しだ充)」

 

「(何でもありません、嵐山さん。あの状態になった木虎に何を言っても無駄ですから、賢が来るまでお茶でも飲んでましょう)」

 

 

 時枝充。嵐山隊の名サポーターである彼は今日も平穏の未来の為に場の空気を調整する。

 嵐山隊の平穏はとっきーの手にかかっていると言えよう。

 

 

 

 一方、その頃の三雲修は……。

 

「な、何なのよそれ!? チートよ、チート。どこぞの黒の剣士か、アンタっ!!」

 

 

 香取が撃ち放った通常弾(アステロイド)追尾弾(ハウンド)を殴り、斬りおとしていた。




そう言えば対三雲会議なるものを書いていなかったな、と思って書いてみました。

まだ、会議らしい会議は何もしておりませんが(苦笑

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