弾丸の雨が容赦なく修へ降り注がれる。
出水の先制攻撃、弾丸トリガーの一つ
「
出水の
「甘いぜ、メガネくん!
今までの戦いで修が行うであろう戦法は既に頭に入っている。次に修が行動を起こす前に
「
しかし、修が取った選択は回避ではなかった。再び
「
黒煙の中から螺旋状を描くトリオンキューブが出水に向かって飛来する。二人の弾丸は衝突する事なくすれ違い、それぞれの標的に向かって走り出す。
「いっ!?」
まさか反撃が来るとは出水も思わなかったのであろう。
直ぐにシールドで防御を図ろうとするのだが、第六感が防御をしたら危険だと訴えて来たのだった。確証はないが、出水はその直感を信じる事にした。しかし、相手は合成弾だ。生半可な回避は敗北につながってしまう。
「(だったら)……使わせてもらうぜ、メガネくん。
両手に
修の
「(けれど、これで)」
出水の
辺り一面は修の
「スラ……っ!?」
レイガストのスラスター斬撃で奇襲を図ろうとするが、出水がトリオンキューブを生成したのを確認して中断する。このまま斬撃を放てばダメージを与えられたかも知れないが、相手はA級1位の部隊に所属している精鋭だ。無闇に突っ込んだら蜂の巣にされかねない。
その判断は正しかったと言えよう。
「
造り出した弾丸は
せっかく身を隠せたのに、出水の
「あっぶねぇ。随分と状況判断が早くなったんじゃないか? まさか、あそこで
「あなたと戦うには、危険を承知で反撃しないと勝てないと思ったので」
「なるほど。合成弾の生成速度も悪くなかった。だが、合成弾は何も
――
二つの通常弾を生み出して融合してみせる。出水が最も得意としている合成弾のそれは、通常の
――
「(まずい)」
出水の攻撃はただでさえ破壊力が抜群なのに、
「
「(まさか、また合成弾!?)」
合成弾はただでさえ隙の大きい大技だ。それ故に破壊力は抜群であるが、トリオン消費も激しい。そう容易くポンポンと使える様な技ではないはずなのに、出水は更なる合成弾を解き放つ。
――
先と同じ様に上空と前方からによる
「(ダメだ。躱しきれる場所がない)」
鷹の眼の予測線を持っても、出水の攻撃をやり過ごせる事は不可能と言っている。このまま何もしなければ、修のトリオン体は出水の合成弾によって木端微塵に粉砕されてしまうであろう。
「(このまま、何も出来ないで負ける訳にはいかない)」
相手との戦力差など初めから分かっている。けれど、模擬戦をした以上は何もできずに蹂躙される訳にはいかない。
「(避けきれないのならば)」
――スラスターオン
レイガストシールドモードを突き出して、出水の
「(避けきれないと悟って、最小限のダメージで留めようとするつもりだな)だが、そうはいくかメガネくん! 俺の合成弾はもう一つあるんだぜ」
「(っ!?)」
――
修の行動パターンを読んだ出水は容赦なく第三の合成弾を生み出す。
――
修を包囲する様に展開された
***
「うわー」
二人の戦いを見守っていた小南は引いた。それはもう、あからさまにドン引いた。
『出水先輩、大人気なさすぎです』
同様に烏丸も似た感想を抱いたのだろう。二人の戦いが終えると同時に怒りの籠った声で出水を批難する。
「仕方がねえだろっ! 手心を加えたら、絶対に突拍子もない奇襲戦法を使って来るんだから」
その判断は正しいと言えよう。それに、今回は自分の実力を修に見せるのが目的であった。そう言う意味では成功と言えなくもないが、やはり大人気なさ過ぎであった。あんな合成弾のオンパレードを相手に出来る変人などA級隊員でも限られているはず。それにも関わらずB級隊員の修に使ったのはそれだけ修の実力を認めていると言えなくもない。
『けどやり過ぎよ。あんな合成弾の連発なんて、普段のランク戦でもしないじゃないのっ!!』
小南の言うとおりだ。
出水にとっても、あんな合成弾の連発など今回が初めてである。
「そうでもしないとメガネくんに手を打たれちゃうだろっ!! メガネくんに勝つなら、圧倒的な手数で攻めないと無理だと思ったんだよ」
数は力。文字通り数の暴力によって修の策略が働かない内に完膚なきまで叩きつけるのが今回の出水の作戦であった。下手な小細工をして痛い目に合うよりか、自身の持ち前のトリオン量による圧倒的な弾幕で押し通す事にしたのだろう。その考えは間違えではない。幾ら回避能力に優れている天眼であろうが、躱しきれない程の弾丸の雨を放ち続ければ被弾する事は必然。例え視えていたとしても、修にはどうする事も出来ない。
『……出水先輩。アウトです』
烏丸から判定が下される。幾ら修に実力を示せと言ったが、あんな戦い方をするような人間に大事な修を預ける訳にはいかない。
「はぁ!? なんで、そうなるんだよ」
だが、当然の如く出水が納得できる訳がない。
『いやいや、無理ですよ。あんな戦い方、修が出来る筈もありません』
「あれは、あんな戦い方もあるぜ。と言う先輩からのメッセージだよ」
『いやいやいやいや。あれは傍から見たら、ただの後輩イジメです。ここに遊真や千佳、宇佐美先輩がいなくてよかったですね。無事に帰る事が出来ませんでしたよ』
「なにそれ、こわっ!? って、違うんだよ。今回だけは張り切ったと言うか……。な、メガネくん。メガネくんからもなんか言ってくれよ」
ここで、まさかの修に白羽の矢が当たる。
終始話しを見守る心算であった修であったが、矛先が自分に向けられてしまった事で会話に参加せざるを得なかった。
「えっと……。烏丸先輩。僕としては今回の戦いはいい勉強になったかと」
『だからと言って、あんな戦い方は参考にならないだろ?』
「そ、それは……」
「ちょっと待ってメガネくん。なんで目を逸らすわけ!? ちゃんと言い返してよ。ねえってば!!」
烏丸の指摘通り、今回の戦いは
「分かった、メガネくん。もう一戦。もう一戦しよう。今度はもっとうまく立ち回るから」
「あ、あはははは」
先輩からの頼まれごとを嫌と言えなかった修は、この後に五戦ほど行うのだが五戦中零勝五敗と惨敗する事になる。
『出水先輩、アウトー』
「だから、何でだよ」
五戦とも修の奇襲を嫌って物量戦で勝負を図る故に、烏丸からアウト判定を下されるのは言う間でもなかった。
こうして書くと、出水戦って非常に難しいですね。
圧倒的な物量戦で戦われたら、修なんてイチコロでしょうし。
てか、出水先輩大人気なさすぎ!