射手編は狙撃手編や攻撃手編と違って色々と趣向を変えていきたいと思います。
ま、何が変わるのかは見てからのお楽しみと言うことで(ェ
修の射手トリガーはどうしようかな。
やはり、ここはチーム戦を想定したトリガー構成にするべきか。
それとも個人戦のみに特化した構成にするべきか……悩むなぁ。
継続は力なり、と言う言葉は修にとっても座右の銘となりつつある。特に天眼以外に特出した能力を持たない自分は地道な努力を続けて、経験を積み重ねていかなければいけない事は重々承知している。一日でも休めば取り戻すまでに三日はかかる事も頭の中では理解している。
だからと言って、現状のこれはあんまりではないかなと嘆かずにいられなかった。
「……さて、いっちょ派手にやろうか。メガネくん」
対峙する強敵、出水公平はやる気満々であった。絶対に勝たないといけない理由が彼にあるからだ。巻き込まれた修の立場からしてみればはた迷惑もいい所であるが、
「よろしくお願いいたします、出水先輩」
言いたい事は色々とあるけど、言った所で状況は変わらない。修は両手にトリオンキューブを生成して、戦闘態勢に移行する。
『出水先輩。分かっていると思いますが修に勝てないようでは修を任せる事は出来ません。まずは修に勝ってください』
修の師である烏丸京介の声が部屋中に響き渡る。この戦いを仕組んだ張本人として端末を通してみているのであろう。その機能を使って呼びかけた内容に抗議の一つも出したかった所だが、それよりも早く出水が応えてしまう。
「分かってるって。
「(ほんと、どうしてこうなったんだろうか)」
時は少しばかり遡る。
***
数多くの
「テレポーターに頼り過ぎだな。米屋先輩の弧月を掻い潜りたいのは分かるが、奇襲一辺倒はいただけない。せっかく天眼と言う便利な能力があるんだ。ここは冷静に受け流して、懐に入るのが良い」
「そうね。それに弧月を無駄に投げ過ぎ、蹴り過ぎ。てか、よくあんな事が出来るわね、あんた」
両脇を陣取る烏丸と小南からダメ出しをくらう。二人の言葉がグサリと突き刺さるが、事実だから言い返す事も出来ない。ちなみに弧月を投げたり蹴ったり出来ないか、と最初に言ったのは小南なんだがここでそんな事を言ったらヘッドロックをされるので絶対に言えないが。
「やっぱ、修に弧月は合わなかったのよ。だから、あれほどスコーピオンにした方が良いって言ったじゃないの」
「弧月を推したのはどちらかと言うと迅さんですよ。……ま、俺も賛同しましたが」
「迅が? スコーピオン使いなのに、何で弧月を推したのよ」
「それは俺にも分かりません」
スコーピオンは迅発案のブレードトリガーである。弧月をブレードメインにしている烏丸が勧めたならばまだしも、迅が弧月を勧める理由が小南には考えられなかった。
「(あいつ、また何を考えているのやら)」
これも暗躍の一つであるかと考えると小南としては文句の一つもしてやりたかったものである。そもそも、そんな面白そうな事に自分を除け者にしたこと事態が面白くなかった。
「やはり、弧月はやり難かったか?」
「そうですね。旋空弧月と言う遠距離技があるとは言え、使い辛いと言えば使い辛かったです。けど、あれはあれでいい勉強になりました」
ブレードメインをレイガストにしている修からしてみれば、弧月は新鮮であった。
けれど、弧月では突破口を開くための手札がなかった事が修にしては痛かった。苦し紛れにやったマンガの技がいくらか功を奏してくれたのは大きいが、あんな曲芸技は早々何度も通じないだろう。
「けど、こうしてみると修って複数戦の方が得意みたいね。東隊の二人と戦っている方が体の使い方が良いみたいだし」
「恐らく奇襲不意打を得意とするからでしょうね。小南先輩がそう思われるのは、相手が複数の方が利用する手段が多く感じるからだと思います」
烏丸の見解は以下の通りである。
真面に戦っても実力以上の相手と戦う事が出来ない。ならば、王道を捨てて邪道で対抗するしかない。その為にはあらゆる手段を講じないといけないのだが、相手が一人の場合だと状況を上手く動かすことが出来ない。それ故に相手が一人だと上手く能力を活用する事が出来ないのだろう。概ね、烏丸の見解は正しかった。
「(最も今回は慣れない
そう考えると今回の修の戦績は決して恥ずかしいものではない。むしろ、弟子の成長振りに褒めてやりたいぐらいである。
「(天眼を開花させてから、修との勝率も徐々に危うくなっている。いずれはガイストを使う事にもなるかも知れないな)」
天眼を使うようになって今日までの烏丸の修に対する勝率は八割弱であった。しかし、それまでは十割だったのに、この僅かな時間で二割も勝率を削られている。今回の模擬戦でどれほどの実力を身に着けて来たのか定かではないが、修の事だ。今回の戦いも無駄にする事無く自分の糧にする事であろう。そうなると自分が勝つ確率もまた減って来るだろう。修の師として早々に負ける訳にはいかないのだ。
「――けど、修。天眼の燃費の悪さは少し考えようね。たった数戦であんな風になると、長期戦は考えものね」
「そうですね。恐らく迅さんもそれを僕に教えたくて、今回の戦いを仕組んだと思うんですが。これに関しては対抗策がなくて……」
烏丸が今後の事を考えている間も、修の反省会は続く。いま、二人が論議しているのは修の天眼の持続性に関してであった。黒江戦から明らかにパフォーマンスが低下している事を指摘する小南に修は苦笑いを浮かべる事しか出来ずにいた。
「そうね。けど、そう考えると
「どうなんでしょう。確かに小南先輩の言うとおり、他のトリガーと比べるとトリオンの消費は少なく出来ますが――」
「――俺としては
そもそも、修を
修の条件でA級に昇級させる為には、最適なポジションと考えていた。けれど、今回は事情が違う。今は戦場を支配出来るだけの特殊能力である天眼を持っている。ならば、戦場を睨みつつ援護をしたり、補助に長けた
「けど、とりまる。修のトリオン量を考えると弾丸をばら撒く
「
今後のチーム戦を見据えると前衛・中衛・後衛と綺麗にばらけた三雲隊(予定)の中核となるのは修になると鳥丸は考えている。千佳がどれほど実力を上げているか定かでないが、あちらは師である木崎レイジが見ている。何の問題もないだろう。
空閑に関しては心配する理由はない。なにせ小南と対等に戦える実力者だ。心配する方がおこがましい話だ。問題は弟子である修だ。ブレインの立ち位置にいる修が早々に簡単に脱落したら試合にならない。それに加えて全力で戦うのに制限時間が課せられると言った欠点を持っている。天眼酔いになる前に試合を決めないと勝利を掴むのは難しいだろう。
「……まぁ、その為のレイガストであるんだろうな。けど、修。今後はもう少しトリガー構成を真剣に考えるべきだな」
それは重々承知していることだが、あえて修は言い返す。
「面白可笑しく僕のトリガー構成を弄っていたのは烏丸先輩達だと思うのですが?」
「……さて、過去ログも見た事だし、久しぶりに模擬戦でもやるか」
「ちょっ。いま、なかった事にしましたよね。無視しないでください、烏丸先輩!」
訓練を始める烏丸を慌てて追い掛ける修であったが、急に烏丸が動きを止めたせいで背中に体当たりしてしまう形となってしまった。
「いたた。……どうしまし、た?」
動きを止めた烏丸に問い掛けが、彼の視線の先にいる筈のない人物がいるのを目撃して目を丸くする。
「出水先輩?」
なぜか、A級太刀川隊の一人である出水公平が玉狛支部にいた。後ろに苦笑する迅の姿を見て、烏丸と修は同じ感想を抱く事になる。
「(この人。また何か企んでいるな)」
***
「いやー。いきなり押しかけて悪いね。あ、これお土産。玉狛支部に訊ねる時はこれを差し入れするのが通例なんだろ?」
なにが通例なのかは定かでないが、出水は玉狛支部でも良く口にするいい所のどら焼きを差出す。
「……はぁ。ま、入ってください出水先輩。立ち話もなんですし」
受け取った烏丸は修に渡して、お茶を用意する様に頼む。
修は嫌な予感を感じつつも、言われた通りにお茶を用意する為に行動を起こすのであった。
案内された出水は彼を見て目を丸くしている小南に会釈しつつも、用意された席に座る。その横に迅が座り、烏丸は出水と対面する形で座った。
「それで出水先輩。急に玉狛支部に来てどうしたんですか? まさか、玉狛支部に異動した訳ではありませんよね」
「違う違う。てか、迅さん。京介達に何も言っていないの? おれ、ちゃんとアポを取ったよね」
全く以って知らぬ存ぜぬ状態の烏丸の様子を見て、自分が頼んだ内容が伝わっていない事に気付いたようだ。言伝を頼んだはずの迅をねめつけると「ごめんごめん」と全く悪びれもない様子で謝り出す。無言の圧力を放つ烏丸に耐えかねたのか、慌てて事情を話し始める。
「いやさ。メガネくんと戦ってみたいらしくてさ。
「またですか、迅さん。先日、
それを指摘したのは師である木崎であるが、あえてそれは口にしない。烏丸としても同じ考えを抱いているので、ウソを言っているつもりはない。
「けどさ、メガネくんは
出水の指摘は最もである。幾ら反省会を開いたところで、本来のトリガーでなければ改善点を見つけるのも難しいだろう。動き方は指摘出来てもトリガーの使い方に関しては助言する事が出来ないのだから。
「それに加えて京介のポジションだと
その申し出は正直言って有り難い話である。烏丸も
その点、出水ならば
「有り難いお話しです。修も喜ぶと思われます。ただ、何で急に玉狛支部へ訪れたのか、と言う疑問がありますが。本部であった時にも出来る話しでしょ?」
「それは――」
「――実はさ、
「……話が見えないのですが」
説明しようと口を開く迅であったが、口で説明するよりも実際に見せた方が早いと考えたのだろう。懐から私用の携帯電話を取り出して操作する。画面にラインを表示させて、それを烏丸に見せたのであった。
メガネ
太刀川:迅!
三雲は攻撃手にするべきだ。
迅 :ちょっと太刀川さん、急にどうしたの?
てか、このグループ名は何!?
太刀川:メガネ
迅 :それは見たら分かるよ。
だから、何でこんな事をしているのかを聞いているの。
太刀川:いやさ。あれからみんなと話し合ったんだが、
やはり三雲は
だから、全員に声を掛けた。
迅 :は? 全員って??
米屋 :
緑川 :その二、剣山。
黒江 :その三、です。
迅 :……は? ちょっとちょっと、何を考えているの?
てか、陽介と駿は参上と見参を間違っているからね。
米屋 :え!? マジですか。
緑川 :やーい。よねやん先輩、間違えてやんの。
黒江 :駿も間違えているじゃないの。
迅 :ストップストップ。話しが進まないから、ちょっと黙ってて。
「……これ、いつになったら本題に入るんですか?」
何時まで経っても本題に入らないので、思わず迅に聞いてしまう。迅自身も似た感想を抱いていたのか「あはは、だよね」と苦笑いしつつ、一度烏丸から携帯電話を受け取り、スクロールして肝心の部分を映し出す。
太刀川:と、言う事で、
俺達は三雲を
迅 :いやいや、意味が分からないから。
何が「と、言う事で」なの? あまり、変な事をすると風間さんに言い付けるからね。
太刀川:その点は大丈夫だ。
何と、今回はあの風間さんも味方してくれる事になった。
迅 :な、何だと!?
太刀川:なんか「アイツは、いつになったら俺の所にくるんだ?」とか、
珍しく怒っていたな。なんか知ってる?
迅 :し、知らないよ。それは俺の暗躍の領域を反しているから。
太刀川:ま、そう言う事だから。
俺達
安心しろ。ちゃんと予備のトリガーは持参する様に各自に言っておいたから。
迅 :こういう時だけ用意周到に根回しするのはやめて!
そのやる気を少しはレポートに気を回して、マジで。
「なんですか、これ?」
正直に言って、訳が分からなかった。全く要領を得ない話しの内容に首を傾げてしまう。
「だからさ! 槍バカ達はメガネくんを
「修がそんな事で気持ちを変えるとは思いませんが、要するに
隣で「私にも見せて」と小南がせがんできたので、迅の携帯電話を彼女に渡して、簡潔に要件を纏めてみたのだった。
「概ねそんな所だ。後は純粋にメガネくんがどこまでいけるか、個人的に気になっていると言うのが正直な話だ」
「なるほど」
腕を組んで思案する。
どちらに転んでも悪くはない話である、と思うのが正直なところであった。
「お待たせしました」
色々と思考を巡らしている間に、お茶を淹れ終わった修が現れる。トレイには出水が買って来たどら焼きと木崎が作ったポテトチップスがのせられていた。少々時間がかかったのは、木崎お手製のお菓子が出来上がるのを待っていたからのようだ。
「修」
淹れたお茶を各自に渡している途中で声を掛ける。
「はい? 何でしょうか鳥丸先輩」
「お前、これから出水先輩と戦え」
「……はい?」
で、何だかんだで冒頭に戻る事になるのだった。
修のトリガー構成が6つと言うのが肝なんですよねぇ。
8つならば、千変万化と思えるほどの戦いぶりを披露させる自信があるのですが。
バッグワームとシールドを入れたら、やれることが限りなく少なくなってしまうじゃないか(プンプン
やはり、特化型で行くべきか。