三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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ふと思った。本編で戦いがない話って片手も満たないことに。
人が多すぎて正直失敗したなぁ、と思ったり……。

さて、そろそろ千佳ちゃんも参上させないとね。


SE修【天眼】吐かされる未来

『任務失敗』

 

 

 出水から送られてきたLINEの内容を見た二宮は思わず自身の携帯電話を投げ出してしまいそうになる。

 

 

「……あら、その様子だとまた失敗したのかしら?」

 

 

 太刀川隊の隊室で待機していた加古望は二宮の様子を見て察したのだろう。自分から集合するように召集したにも関わらず、まさかのドタキャンだ。

 こう見えても隊室に集まった一同はそれほど暇ではない。こうやって全員が集まる機会など中々難しいことは出水も重々承知しているはずだ。

 けれど、出水は任務失敗と連絡をよこした。これで二回目だ。流石の二宮の機嫌も悪くなるのは無理もない。

 

 

「出水君にも困ったものよね。……これは、もう一回教育し直さないといけないかしら?」

 

「か、加古さん。できれば穏便にお願いいたします」

 

 

 以前、ドタキャンをかました出水に教育と言う名のお仕置きを敢行した情景を知っている那須が嗜める。

 

 

「あら、心外だわ那須ちゃん。そう言うあなただって、出水君に色々と言ったじゃないの」

 

 

 肉体的なダメージを与えた事は自覚しているが、精神的なダメージを多大に負わせたのは那須の方が大きいと加古は思っている。

 何せ彼女は表情一つ変えないで「出水君に任せたのがいけなかったのよ」とか「弾バカさんだもんね」と絶妙なタイミングで出水の精神を削っていったのである。その時の彼女を見て「なんて末恐ろし子なの」と慄いたことだろうか。

 

 

「ったく。あいつはひと一人まともに勧誘してこれないのか」

 

「それ、二宮くんが言えること? 小隊を組むのに大層苦労した二宮くんが」

 

「うるさい、加古。それより、なぜ俺たちがB級ルーキーの隊員を待たないといけない。あいつの模擬戦を見たが、弾丸トリガーを使ったのは木虎・緑川戦だけだ。佐鳥戦の時なんか、あいつは狙撃トリガーを使っていたぞ。射手(シューター)を舐めているのか」

 

 

 正確に言えば修の模擬戦データは少なすぎて判断材料に欠けるが、二戦目で狙撃トリガーを使ったことが気に食わなかったのだろう。そんな奴の為に自分の貴重な時間を割くのは面白くないと感じた二宮の言葉に加古と那須は大層驚くのであった。

 

 

「……二宮くん。なんだかんだ言って、事前に情報は集めていたのね」

 

「その……。私も失念していました。けど、三雲君って狙撃手(スナイパー)希望なんでしょうか?」

 

 

 まだ面識のない二人は修の事情や人柄を知らない。二宮の話を聞く限り、三雲修と言う人物は『風間を倒し、木虎と緑川を翻弄させてかつ狙撃が出来る期待のB級隊員』としか知らない。まさか修を巡って水面下で争奪戦が行われていることなど露も知らないのだ。

 

 

「知るか。出水が言うには「必ず射手(シューター)にさせる」と言っていたが、優柔不断な奴に射手(シューター)が務まるとは思えん」

 

「あら、そう判断するのはまだ早いんじゃないの。あの出水君が認めた子なら、将来有望株かもよ?」

 

 

 射手(シューター)のなり手は案外少ない。C級の時に通常弾(アステロイド)変化弾(バイパー)を選ぶものは少なくないが、銃手(ガンナー)と違って弾丸のトリガーは色々と面倒な設定を考えなくてはいけない。初めの頃は面白おかしく使っていた使い手も次第に設定を考えるタイムラグのせいで敗北し続ける結果に陥り、他のトリガーを選び直す者も少なくない。

 よって射手(シューター)は弱者と強者の境界線が確りと引かれているのだ。この場にいる二宮をはじめ、加古と那須は射手(シューター)として上位の隊員と言える。出水を入れて射手(シューター)四天王なんて噂が広がった事もあるぐらい射手(シューター)と言えばこの四人の名前が挙げられる。

 四人は射手(シューター)人口を増やす為に色々と模索しているが、中々射手(シューター)を希望する者は少ない。そこで今回名前が挙がった修に興味津々であったのだが、未だに邂逅する機会は設けられていなかった。

 

 

「そもそも、今日はなんで失敗したのかしら?」

 

 

 ふと、疑問に思った加古が二宮に問う。それは二宮も思った事なのか、失敗した理由を聞くと出水から「攻撃手(アタッカー)陣と模擬戦で力を使い果たしたから」と返って来た。

 その返信を見て二宮の機嫌が下がらない訳がない。

 

 

「なになに? 攻撃手(アタッカー)陣と模擬戦で力を使い果たした?」

 

 

 そう言えば、と加古は思い出す。今日は小隊員の黒江が迅に頼まれて模擬戦をしに行くと連絡が来ている。珍しいな、と思いつつ別に大した問題でもないから「分かったわ」と了承して快く見送ったのだが……。

 

 

「(まさか、ね)」

 

「……どうします? 肝心の三雲君が来れないのなら、今回の射手(シューター)会は解散致しますか?」

 

 

 那須の提案に一考する二宮。肝心の人物が来ない事には今回の射手(シューター)会は初めようがない。だがしかし、ここで待ちに徹していたら気のせいか今後も会う機会がないだろうと思えてならなかった。

 ここはひとつ、攻める姿勢をとってもいいのかもしれない。

 

 

『……出水。いま、貴様はどこに居る?』

 

 

 ラインで現在地を問い質すと――。

 

 

『東隊の隊室です』

 

 

 旧小隊の隊長の部屋に行くかどうか、少しばかり悩んだのは言うまでもなかった。

 

 

 

***

 

 

 

 二宮は自身の小隊を組むまでは東が率いるA級一位の小隊員として活躍していた。

 ボーダー規定で東がB級隊員に降格したのと同時に小隊を解散したとは言え、数少ない尊敬する先輩隊員であることは言うまでもない。

 射手(シューター)組は東隊の入り口前まで到着すると――。

 

 

「ちょっ! ちょっとタイムタイム、タイム! ちゃんと説明するから。説明するから生身で弧月を向けないで! お願いプリーズ!!」

 

 

 ――聞き覚えのある人物の悲鳴が東隊の隊室から聞こえてきたのだった。

 

 

「あら、この声って?」

 

「……とにかく入ってみるぞ」

 

 

 軽くノックをした後に「どうぞ」と返事が来たので、三人は東隊の隊室に足を踏み入れる。すると一番初めに映った光景は簀巻きにされている迅に弧月を突き付けている黒江の姿であった。

 

 

「……なんだ、これは」

 

 

 当然、事情を知らない二宮は驚愕の声を上げるしかなかった。そんな様子の二宮に自身の隊室に来てから事情を伺った東が苦笑いを浮かべながら説明しだしたのだ。

 

 

「どうやら、迅の奴が三雲くんに無理をさせたみたいでな。いま、黒江を初めとした奴らが迅にお仕置きをしている所だ」

 

「迅が? 話しが見せませんが」

 

「三雲くんにサイドエフェクトがある事は知っているか?」

 

 

 その問い掛けに「いいえ」と否定する。後ろにいた加古と那須も同様に否定した。

 

 

「そうか? 結構噂になっていたんだがな。まぁ、その高性能なサイドエフェクトを磨くために迅の奴が無理な注文を三雲くんに吹っかけたらしくてな。その実験台にさせられた攻撃手(アタッカー)陣――主に黒江が憤慨してな。いま、その暗躍エリートをお仕置きしているって感じだ。ところで、お前たちはどうしてここに?」

 

 

 東は修のサイドエフェクトが【強化視覚】であることを話し、わざわざ自隊の隊室に来た用件を問うたのだった。

 

 

「はい。俺達は――」

 

「――げっ!? 二宮さん? 加古さんに那須も……。もしかして、待ちきれなくなって来たんですか!?」

 

 

 迅戦で力尽きた修をベットに寝かしつけた出水がこの場にいない射手(シューター)組を見て顔を顰める。

 

 

「出水。三雲の様子はどうだ?」

 

「あ、はい。東さん。サイドエフェクトを使いすぎただけみたいなので、しばらく横になっていれば大丈夫だそうです」

 

「そうか。……所で、射手(シューター)四天王と呼ばれているお前達はどうして――って、三雲くんを勧誘しに来たのか?」

 

 

 この場にいる理由を察した東が自己完結させる。そもそも、修は射手(シューター)志望であることを本人から聞いている。それに加えてこの四人が新たな射手(シューター)の誕生を望んでいる事も知っていた。自然とその結論に達するのは当然であろう。

 

 

「あの、出水君。三雲君は具合が悪いのかしら?」

 

「あ? さっきも言ったけどサイドエフェクトの使いすぎて少々気分を悪くしただけだ。アイツのサイドエフェクトは使いすぎると乗り物酔いみたいになったりするらしいからな。……迅さんはそれを踏まえて、今回の訓練を仕組んだみたいだが」

 

「それは分かったけど、それでどうしてうちの双葉があんなに憤慨しているのかしら? 珍しく随分と怒っているようだけど……」

 

「まぁ、何と言うかあれですよ。自分の番だけ全力で戦えなかった事に対する苛立ちと後悔ってところでしょうね。事情を知らなかったとはいえ、メガネ君に色々と文句を言ったみたいですし」

 

 

 先の黒江戦で修に全力で戦え、と口にしている。

 まさかサイドエフェクトの反動で動きが鈍くなっていた事など露知らずにだ。普通ならば反動が出た時点でやめればいいのだが、迅からオーダーが来ている事を理由に戦いを止めなかったなんて誰が想像出来ようか。

 自分の見当違いの考えに腹が立ち、穴があったら潜り込みたい心情であったが、この状況を招いた黒幕――迅が許せなかったのだろう。迅が個人ブースから出てきたと同時に韋駄天を起動して、器用にロープを使って迅を拘束する事に成功したのであった。

 その直後、疲労困憊の修がブースから現れた直後にぶっ倒れてしまったのだから、もう大慌てであった。

 

 

「そう。双葉の用事ってこの事だったのね」

 

 珍しく感情を露わにする自隊の仲間を見やり、加古は面白い玩具を見つけた子供の様に笑みを見せたのだった。

 

 

 

***

 

 

 

 大人組達の話しが纏まろうとしたのに対し、迅を初めとした者達の話しは未だに続く。

 

 

「ちょ、ちょっと黒江ちゃん。話し合おう。人類皆兄弟! さぁ。このロープを外して、まずは話し合おう。ちゃんと事情を説明するから」

 

「うるさいです。少し黙っていてください。そうじゃないともぎますよ」

 

「どこをもぐの!?」

 

 

 一瞬、自身のある部分がもがれる事を想像し、恐怖のあまり体が震えはじめる。そんな迅の事など知らず、更に追い打ちをかけるものがいた。

 

 

「迅さん酷いよ! なんで俺じゃなくて双葉なのさ!? 俺だって三雲先輩と再戦したかったのに」

 

「ごめんごめん。悪かったって駿」

 

 

 追求者は木虎とタッグを組んで修と戦った事がある緑川であった。彼は憧れている人から頼みごとをされなかった現状に大層ご不満であった。黒江にお願いしたのなら自然と自分の名前もあがると言うものだろう。それなのに、自分に声がかからなかったのはなぜだ、と詰問し続ける緑川であった。

 

 

「そうだそうだ、迅。お前、やっとランク戦に復帰したと思ったら、何で三雲となんだよ。最初に相手をするのは俺のはずだったのに」

 

「太刀川さんは空気を読んで! そして、俺を助けてよ」

 

「この後100戦してくれたら考えなくもない」

 

「オニー、アクマー、タチカワっ!」

 

「おい。太刀川を悪口みたいに言うなよ。普通に傷ついたぞ」

 

「こ、こうなったら……。た、頼む遊真。俺を助けてくれ。お願いプリー……。ゆ、遊真? 遊真、どこだ!?」

 

 

 唯一、この状況を打開してくれると思われる玉狛支部の後輩、空閑遊真に援軍を打診するのだが、肝心の友軍がどこにも見当たらない。

 

 

「空閑なら、三雲を見ているぜ」

 

 

 太刀川が言うには、修がベットで横になってから様子を見守っているらしい。何度も助けを求めるが来る様子は見受けられない。援軍要請は完全に拒否られたようだ。

 

 

「……さっきから、説明するすると言っておきながら、逃げる気満々ですね。よっぽど、この弧月のサビとなりたいんですね」

 

「わ、分かった分かった。する、します! させていただきます。だから、その弧月をどかして!!」

 

 

 未だに信じた様子はなかったが、眉間に突き出した弧月はどかす事にしたようだ。けど、一向に鞘へ入れる様子はない。無言の圧力で「下手な言い訳をしたら、刺しますので」と殺気を放ちながら、説明を要求するのであった。

 流石の迅も諦めたのだろう。今から言う内容でどれだけ未来が動くか分からないが、言わなければ言わなかったで自分の今後の未来に大きなダメージが残るだろう。それはそれで構わないのだが、今後の事を考えると正直に話す方が良いと結論付けたのだろう。

 大きく息を吸い、迅は簡潔に伝えるのであった。

 

 

「次に起こる大規模侵攻で人型近界民と独りで戦わないといけない事になる。今のままだとメガネ君は確実に死んでしまうんだ。雨取千佳ちゃんを守り通して、な」

 

 

 衝撃的な未来を聞いて、東を除いた全員が驚愕したのは言うまでもないだろう。

 




ここまで騒がせておきながら、大規模侵攻時の事を何も考えていないのはどうだろうか。

……まぁ、大方の話もその場その場で考えたものだし、大丈夫かな(ェ

プロット?
なにそれ、おいしいの。
全部インスピレーションに決まっているじゃないですか、いやだなぁ。

……すみません。プロットのない方が受けがよかったので(以下省略


さて、そろそろ射手編に移行しますかねェ。
って、まだ肝心の人がいるのを忘れていたよ。

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