三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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息抜きで書いていた奴のほうが進むとか、何でもそうなのかな?
てか、この修くんやばいな。誰だよ、こんな魔改造した奴は!!


SE修【天眼】VS緑川&木虎③

 二戦が終わり、現在の戦績は1敗1分けと負け越している。

 もっとも自分一人に対し、相手はタッグを組んで戦いに挑んでいる。それに加えて修よりも各上であるA級隊員が相手である。今の自分はよくやっていると思う。

 

 

「……出来過ぎと言ってもいいよな」

 

 

 緊急脱出用のベッドに移動させられた修は己の戦いを思い出して苦笑を浮かべる。

 そもそも、どうしてこんな事になってしまった。A級隊員とランク戦をするだけでもおかしな状況と言えるのに、それが二人同時と来たものだ。B級の自分が相手をするには荷が重すぎる。

 

 

『……理解出来ないな。迅が黒トリガーを手放すほどの事なのか』

 

 

 不意に風間の言葉を思い出す。

 

 

「そうだったな。迅さんが僕達の為に黒トリガーを手放してくれたんだ。あの人に報いる為にもこんな所でへこたれる訳にはいかないよな」

 

 

 師の形見を手放してまで空閑を防衛隊員に入れてくれた迅の思いに報いる為にも、修はこれぐらいの試練でギブアップする訳にはいかない。あの時、風間から迅の話を聞いた時に決意したのだ。

 

 

 

 ――あの人を失望させるわけにはいかない。

 

 

 

 ならば、これ以上愚痴を零すのはなしである。今は目の前の強敵、緑川と木虎を倒す手段を考えるべきだ。

 

 

「……まだ、練習段階だけど使うか」

 

 

 修のトリガーは風間戦の後に支部の全員で会議を開き、新たに構成し直した。

 レイガストとアステロイド、スラスター及びシールドはそのままにして、新たに二つのトリガーを装備させたのだった。

 けれど、そのトリガーはまだ練習中のもの。ようやく手に馴染む様になってきたが、ランク戦で――しかもA級隊員に通用するかどうか分からない。

 

 

『三雲先輩。次、早くやりましょうよ! 今度はそう簡単にやられないよ』

 

『遅いわよ、三雲くん。私達は既に準備万端よ』

 

 

 通信機越しから二人の催促の声が飛ぶ。

 

 

「分かった。直ぐに行くよ」

 

 

 第三戦の作戦を考えつつ、修は戦いの舞台に飛び込む。

 

 

 

***

 

 

 

「なんだよ、あれ。おい、白チビ。メガネボーイ、意外とやるじゃないか」

 

「当然ですな。何せ、俺達の隊長になる男だぞ」

 

 

 第二戦を観戦していた米屋が興奮した口調で修を褒めはじめる。自身の隊長になる相棒を褒められて悪い気がしなかった空閑はドヤ顔で応える。

 

 

「今回もメガネを外していたな。あのメガネに何か仕掛けがあるのか?」

 

「流石カザマ先輩、するどいですな。何でもオサムはメガネを外す事でサイドエフェクトを使えるらしいよ」

 

「ほぉ。……なるほど。察するに強化視覚のサイドエフェクトと言った所か」

 

「チッチッチ。ただの強化視覚じゃありませんぞ。修はトリオンの流れすら読み取る事が可能なので。だから、カザマ先輩のカメレオンもばっちり見れちゃったわけ」

 

「それでか。そんな能力を持っているならば、前の戦いの動きも合点がいった。だが、なぜアレを最初から使わなかった?」

 

「あれを使い続けると吐き気と頭痛が襲ってくるんだって。しおりちゃんが言うには強化された視力で見続けると“酔ってしまう”んじゃないかって言ってたな。難しい話で理解出来なかったけど、三半規管が耐え切れないとかどうとか……」

 

 

 隣で聞いていた米屋は頭上に疑問符を乱舞させながら首を傾げていたが、風間は空閑の稚拙な説明で大方想像がついたのだろう。なるほどな、と納得の声を上げて三度対立する修たちへ視線を向ける。

 

 

「しっかし。あのままじゃメガネボーイはつらいな。幾らその強化視覚があるとはいえ、数的不利には違いない。弾バカみたいに色々と弾丸を扱えれば別なんだが」

 

「おっ。ヨネヤ先輩。どうやら修も本気でやるみたいだぞ」

 

「……へ?」

 

 

 修に新たな動きが見られた。これまでならばレイガストを生み出して、相手の状況に応じる為に構えるのだが、両手に生み出したそれはレイガストでなくトリオンキューブ。

 これが意味することはたった一つ。修は攻撃に転じる為にシューター用トリガーを起動させたのであった。

 

 

 

***

 

 

 

「へぇ。まだ、そんな隠し玉があったなんて……。三雲先輩も人が悪いな」

 

 

 両手にトリオンキューブを生成して攻撃の態勢を作る修を警戒しつつ、緑川は話しかける。

 

 

「まだ、練習段階なんだ。がっかりしないでくれよ」

 

 

 苦笑する修の言葉を真に受ける事は出来なかった。一見、昼行灯だと思っていた修は実は想像以上に厄介な曲者であった。そんな曲者の言葉を鵜呑みにするのは危険だと緑川と木虎は判断する。

 二人は小さく頷き合って、攻撃のタイミングを計る。修が何かをする前に一気に詰め寄って勝負を決めようとしたのだ。

 けど、それよりも早く修が攻撃に転じる。

 

 

 

 ――メテオラ

 

 

 

 地面に叩きつけたトリオンキューブの正体は炸裂弾。爆撃により修がいた場所は黒煙で姿を覆い隠されてしまい、二人は修の行方を見失う事になる。

 

 

「しまった、目晦まし! 緑川くん!! 一旦合流を――」

 

 

 爆風によって瞼を庇った木虎の視界に映るのは、トリオンキューブを突き出す修の姿であった。

 

 

 

 ――アステロイド

 

 

 

 大玉の通常弾がゼロ距離で射出される。

 当然、木虎はそれを回避する事など不可能。フルガードで対処するも僅かに間に合わず、一瞬にして木虎のトリオン体は閃光となって退場して行った。

 

 

「木虎ちゃん! こ、の!!」

 

 

 まさか炸裂弾で視界を眩ませ、一気に勝負を付けにくるなんて予想外であった。

 距離を開けては危険と判断した緑川はグラスホッパーを起動させ、一気に高機動戦に挑みかかろうと跳びあがる――が、上空から降下してきたトリオンキューブの束が緑川の心臓部を食い破って行ったのだった。

 

 

「いつ、こんなの!」

 

 

 と、言った直後に思い当たる。修はメテオラで視界を眩ませたと同時に別のトリガーで上空に向けて放ったのだろう。

 

 

「(同時にこんな仕掛けもしたのかよ!?)」

 

 

 一旦上空に向けて相手を狙う御業はアステロイドでは不可能だ。こんな芸当が出来るトリガーは変化弾と追尾弾のみ。

 

 

「……これで一勝かな?」

 

 

 初見殺しの電撃戦。見事に上手く当てる事が出来た修は「ほっ」と安堵の溜息を零した。

 三戦目は修の勝利に終わる。これで1勝1敗1分け。予想外の展開に気がつけばランクブースはお祭り騒ぎとなっていた。

 

 

 

***

 

 

 

「こ、これはなんと言う展開だ! B級成り立てのルーキー。玉狛支部所属の三雲隊員がA級隊員二名を瞬殺したぞ。こんな展開、誰が想像した! 解説の風間さん。これは一体……」

 

「数的不利を嫌い、まずどちらか一人を早々に打倒そうと考えたんだろ。その為のメテオラの目晦まし。通常弾を使って木虎隊員を倒したのはレイガストでは目立つと判断した為のチョイスだろう」

 

「な、なるほど。対する緑川隊員は三雲隊員の奇策を嫌ってお得意の戦法に入ろうとしましたが……」

 

「それも簡単だ。メテオラを使った直後に追尾弾か変化弾を上空に放ち、不意打ちを狙ったのだ。シューターが奇襲を使うのによくやる手だな。奇襲された時は周囲を警戒する必要があるのだが、緑川は焦って状況確認を怠った。その結果があれだ」

 

「空閑隊員の情報によりますと、三雲隊員はこれまでアステロイド以外のシューター用トリガーは装備していないとの情報でしたが」

 

「今回がお披露目だったんだろう。A級二人に対し、出し惜しみは出来ないと判断したのだろうな。悪くない判断だ」

 

 

 いつの間にか実況まで始まっている状況に米屋は笑わずにいられなかった。三戦目が始まる直前、海老名隊のオペレーターである武富桜子が噂を聞きつけて風間の横を陣取ったと思うと、Myマイクを使って実況を始め出したのである。

 隣に座っている風間も止めればいいのに、話しを振られた途端に解説を始める始末。

 もはやこの状況を誰も止める事が出来ない。噂が噂を呼び、暇を持て余していたB級A級隊員が集まり出して来たのであった。

 

 

「おいおい槍バカ。このお祭り騒ぎは一体なんなんだ?」

 

 

 防衛任務から戻ってきた出水公平も噂を聞きつけて駆けつけた一人であった。詳しい内容まで知らなかったので、先に観戦していた槍バカこと米屋に事情を聴きだす。

 

 

「あ? 見ていなかったの、弾バカ。玉狛のメガネボーイが緑川と木虎相手に一勝もぎ取ったんだよ」

 

「は? 緑川と木虎にか? ……って、俺の眼がおかしいのか? なんか、メガネくんはメガネつけていないし、緑川と木虎がタッグを組んでメガネ君に挑みかかっているように見えるんだが」

 

 

 四戦目を映し出しているスクリーンを見やり、信じられないと言いたげに指差す。

 

 

「見たとおりだ。メガネボーイ、隠していた爪を現したみたいだ。風間さんを倒したのも嘘じゃないようだぞ」

 

「マジか。あのメガネくんが……。おっ! メガネくんが使っているあれってバイパーだよな? なに? メガネくんって那須みたいな戦い方も可能なのかよ!」

 

 

 出水の言うとおり、修の周囲を飛び回るトリオンキューブはバイパーによって生み出された現象である。

 

 

「オサムは新しくメテオラとバイパーを入れたんだよ。今のオサムなら、あの二つを入れる事で戦いに幅が出来ると助言されたんだ」

 

「その助言をした奴は分かっているな! えっと……空閑だっけ? メガネくんのあの姿はなんか理由があるの?」

 

「オサムはあの状態になるとサイドエフェクトを使う事が出来るのです」

 

「サイドエフェクト!? うおっ!! 死角に回り込んだ緑川をバイパーで牽制したぞ。あいつ、後ろに目でも付いているのかよ!!」

 

 

 もはや修の独壇場であった。トリオンキューブを操って緑川の動きを封じ、接近戦を挑む木虎に対してアステロイドで攻撃の意図を与えない様に立ち回っている。

 

 

「なにあれ? なにあれ!? いいな、いいな! 俺もまざりてぇ」

 

 

 子供が玩具を見つけたみたいに目をキラキラと輝かせて悔いる様に第四戦目を見やる出水の言葉に「だろう」と米屋と空閑が頷く。

 知らぬ内に厄介事が増えている事に修が知ればなんて言うだろうか。きっと、冷や汗を流しながら「勘弁してください」と言うだろう。

 

 

 

***

 

 

 

「すげぇ、すげぇ! 三雲先輩マジすげぇよ」

 

「はしゃがないの、緑川くん。少しでも隙を見せたら三雲くんのバイパーが飛んで来るわよ!」

 

 

 嬉しさのあまり警戒を解いてしまった緑川に向かった変化弾を叩き落した木虎が緑川の頭を軽くはたく。フォローされたにも関わらず、興奮冷めやらない緑川は「だって」と話を切り出して告げる。

 

 

「だって見たでしょ! まるで全方位に目があるみたいに変化自在に弾丸を飛ばすんだよ。面白すぎでしょ、三雲先輩」

 

「だから何よ! このままだと私達は三雲君に負け越す事になるのよ。そんなのA級として許されないわ」

 

「大丈夫! 俺に考えがあるから」

 

「考え? なによ、それ」

 

「まぁ、見ていてよ。木虎ちゃん」

 

 

 そう言うと、緑川は一人で修へ向けて歩み出す。彼の考えが何か分からないが、いつでもフォローできるようにハンドガンを生み出して準備を整えるのであった。

 

 

「凄いよ、三雲先輩。俺、正直言って三雲先輩がここまで出来る人だと思ってもみなかったよ」

 

「ありがとう、緑川。お世辞でも嬉しいよ」

 

「お世辞じゃないよ。……俺、本当は三雲先輩の人気を落とす為に最初は勝負を挑んだんだ。貶めようと考えてすみませんでした!」

 

「いいよ、そんなこと。噂が先走って困っていたのは僕の方なんだから。事実、僕は弱いからね」

 

「とんでもない! 今の三雲先輩を弱いと言うやつがいたら、俺が叩きのめしますから」

 

「……ありがとう、緑川。そう言ってくれると、練習中のこれらを使った甲斐があるよ」

 

「縦横無尽に走る変化弾。姿を隠すためのメテオラ。そして、敵を撃つ為のアステロイド。厄介極りないけど……。今から三雲先輩を攻略します」

 

「分かった。全力で相手になるよ。……こい、緑川!」

 

「行きます!!」

 

 

 

 ――グラスホッパー

 

 

 

 自分の足場にグラスホッパーを生み出し、真直ぐ修へ駆け出す。高機動によるピンボールだと修が足場を撃抜いて防がれてしまうので、単独で発動したようだ。

 一直線に駆け上がる緑川に向け、周囲に浮かぶ変化弾が緑川に襲い掛かる。それに対し、緑川は新たにグラスホッパーを使って強制的に進行方向を変える。

 無情に通過していく変化弾。それを見やり、緑川がしたい事を修はともかく木虎も気付いたのであった。

 

 

「(着弾するギリギリのタイミングでグラスホッパーを使って避けるつもり!?)」

 

 

 木虎の予想は当たりであった。左方に避けた緑川に向けて修はアステロイドで追撃を図るのだが、更にグラスホッパーを使って右方へ強制的に進行方向を変えたのである。

 

 

「名付けてライトニング走法! 当てられるものなら当ててみろ!!」

 

 

 無茶苦茶にもほどがあった。けど、緑川の強硬手段は確実に修との距離を詰めていく。

 このままだと距離を詰められて葬られる。危険を察知した修はアステロイドとバイパーを同時に射出し、緑川が移動しそうな場所全域に放出したのだった。

 

 

「甘いよ、三雲先輩」

 

 

 

 ――シールド

 

 

 

 避けられないと判断するとシールドを突出し、強行突破を図る。数多の弾丸を受けたシールドは確実に削り取られるが、トリオン体を傷付けるまでにはいかなかった。広く薄く攻撃したのが仇となったのである。

 

 

 

 ――スコーピオン×2

 

 

 

 限界まで削られたシールドを消し去り、残りの弾丸はスコーピオンで切り落としていく。

 もはや、修と衝突するのは時間の問題。弾丸では止められないと判断した修はレイガストを生み出し、緑川の襲撃に備える。

 

 

「木虎ちゃん! スパイダー!!」

 

 

 後方で待機している木虎に命じる。スパイダーだけで何を意味するか判断出来なかったが、命じられた木虎は彼の意図を理解したのだろう。

 スパイダーを修に向けてぶっ放す。木虎が放った弾丸はレイガストに着弾。

 

 

「なっ!?」

 

 

 迫り来る緑川に向けてレイガストを振り上げようとして、スパイダーを通じて引っ張り上げる木虎によって一瞬だけど身動きを妨げられてしまった。

 そのごく僅かな隙があれば緑川には充分であった。

 

 

「三度目の正直! その首、もらったよ!!」

 

 

 二閃。緑川のスコーピオンは修の首を確実に捉え、一瞬にして光の帯となって上空へ消えて行った。

 四戦目は緑川の機転によりA級チームの勝利で終わる。


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