リリカルライダー——悪とされた者の物語   作:エイワス

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うん、戦闘描写は難しいね。


腕直し

学校の宿題やトレーニングをいつも通りにこなしていると、この日はいつも以上に不快な魔力を感じた。

幽雅はそろそろ実戦の雰囲気を取り戻したいので、戦闘に介入することにした。

 

「おーやってるやってる」

 

ビルとビルを跳び越え、轟音が鳴っている原因を見る。

そこには狼とフェレット、そしてフェイトに高町なのは、美結と当麻もいた。

 

「さて、こっちもやりますか」

 

地下から持ってきたアタッシュケースの中身の内の一つ、黒い小刀の付いた真ん中に窪みのあるバックル、《戦極ドライバー》を腰に付ける。ポケットから赤色の果実の付いた錠前をとり、錠前を開く。

 

《ブラッドオレンジ》

 

「変身」

 

《LOCK ON》

 

錠前——ブラッドオレンジロックシードを窪みに嵌め込み、錠前を閉じる。するとベルトからギター音が鳴る。

黄色い小刀を下げる。

 

《ソイヤッ!》

 

《ブラッドオレンジアームズ 邪の道・オン・ステージ》

 

幽雅の体を青いライダースーツが多い、身長が伸びる。上にクラックが出現し、中からブラッドオレンジが出てくる。幽雅にブラッドオレンジが被さり、ブラッドオレンジが展開される。

 

現れたのはかつて天下を取ろうとした武神ライダーの一人。

 

 

————アーマードライダー武神鎧武。

 

 

「さて、行くか」

 

アームズウエポンの大橙丸を右手に持って、戦闘の中心へと飛翔していく。

 

——————————————————————————

 

ビルに囲まれた市街地。そこでは四人の男女と、二匹の獣がいた。

 

彼等は一匹の獣と少女、一匹の獣と三人の男女で敵対している。だが今戦っているのは二人のみ。

 

フェイト・テスタロッサと高町なのはだけが戦っている。

 

「凄いわね、なのは。もうあんなに強くなってる」

 

男女のうちの一人、美結が独り言のように言葉を零す。美結は転生特典によって魔導師として強くなったが、なのはは違う。元からあった才能だけで強くなったのだから。

 

「そうだな。本当にすごいよ。おっと、僕達は僕達のやるべき事をやらないとね」

 

「そうよね」

 

当麻と美結は各々の武器やデバイスの準備をする。これから二人がするのは、撤退するフェイトとアルフを捕まえて、黒幕のプレシア・テスタロッサの所まで連れて行かせること。

 

二人が話している間にも、戦闘は終わりへと近づいていく。フェイトのバルディッシュとなのはのレイジングハートがジュエルシードを挟む。突如、ジュエルシードから閃光が迸り、両者のデバイスを破損させる。

 

ジュエルシードは健在。

 

フェイトは諦めずに素手で封印しようと、ジュエルシードを触ろうとする。だがその前に『何か』が高速で移動してジュエルシードを持ち去った。

 

「誰だ!」

 

「敵!?」

 

当麻と美結は備えていた武器を『何か』へと向ける。

その何かの後ろ姿は鎧武者だった。

 

「まさかあれは!?」

 

「知っているの?衛宮君」

 

当麻が驚いたような声を上げる。

 

「あれは・・・仮面ライダー武神鎧武!」

 

「仮面ライダーってあの子供向けの?」

 

「ああ。間違いない。あのフルーツの鎧武者は間違いなく仮面ライダー鎧武だ」

 

ゴクリ、と息を呑む当麻。仮面ライダーが飛行する時は何かのアイテム等が必要なライダーが多い。だがあの仮面ライダーは何もなく、高速で飛行していた。

 

『っ!』

 

鎧武が振り向く。全員警戒態勢に入る。

 

「これが・・・ジュエルシードか」

 

鎧武が突如声を発する。その手には先程まで空中にあったはずの、ジュエルシードが握られていた。

 

「こんなくだらない石ころの為に、俺の領域を荒らすか」

 

「それを・・・渡してください・・・!」

 

フェイトがたどたどしい足取りで鎧武へと近づく。鎧武はそんなフェイトを無機質な複眼で見つめる。

 

「フェイト・・・アルフと共にこれを持っていけ」

 

どうして名前を、と驚くがそれを言っている余裕はないので、飛び出してきたアルフと共に、鎧武からジュエルシードと、紫色のミニカーの様なものを受け取る。

 

「ありがとう・・・ございます」

 

「礼はいい。さっさと行け」

 

鎧武は当麻達の方を向く。その存在感は伊達ではなく、今にも平伏してしまいそうなほど強烈だった。

 

「さて、誰が俺の相手になる?」

 

手に持った大橙丸を肩に担ぎながら少しづつ歩み寄っていく。なのはとフェレット、美結は少しづつ下がろうとするが、足がうまく動かない。

 

「くっ!分かった、僕が相手だ!」

 

当麻が両手に白黒の双剣を構えて前に出る。

 

「いいぜ。来いよ」

 

「ハアアアアアアアァァァァ!!」

 

一気に駆け出す当麻。鎧武は余裕そうに歩いている。

 

「ハッ!タァッ!」

 

「ほう、なかなか」

 

当麻の双剣を大橙丸でいとも容易く弾いていく。当麻の全力の剣技が鎧武には通用していない。

 

「チィっ!」

 

「あめぇよ」

 

当麻の右からの突きを蹴りでいなし、左からの斬撃を腰につけた無双セイバーをとり、剣を砕く。大橙丸を首目掛けて振るう。それを当麻は上半身をそらして回避する。無双セイバーによる更なる攻撃を右手に持った剣で受け止めるが勢いを殺せずに折られる。

 

「ふん!」

 

「グアッ!」

 

武器を失った当麻の顔に回し蹴りを叩き込む。蹴りは当麻の側頭部に直撃して当麻を地面に叩きつける。

 

「ぐぅっ、まだ・・・やれるぞ!」

 

「へぇ。なら今度はこれだ」

 

《パイン》

 

鎧武は新たなロックシードを取り出して解錠する。そして戦極ドライバーに取り付ける。

 

《LOCK ON》

 

《ソイヤッ! パインアームズ》

 

《粉砕・デストロイ》

 

「姿が変わった!?」

 

鎧武がパインアームズへと変わったことに美結が声を上げる。鎧武はその声を無視してアームズウエポンの《パインアイアン》を当麻へと投げ付ける。

 

当麻は身をよじってパインアイアンを回避して両手に先程破壊されたのと同じ双剣を作り出す。

 

「喰らえ!」

 

脚力を強化してジグザグに移動し、鎧武の懐に入り込む。当麻は渾身の力を込めて右手に持った剣で鎧武を切り裂く。

 

 

 

——ギン。

 

 

あっけない音と共に、当麻の剣が弾かれる。

当麻が呆然としていると、鎧武はパインアイアンを当麻の腹部へと叩きつける。

 

 

ドガン!

 

 

当麻の腹部に激痛が走ると、当麻は吹き飛ばされる。先ほどの蹴りよりも遥かに強力な攻撃。

 

「当麻!」

 

「当麻君!」

 

美結となのはが吹き飛ばされた当麻に駆け寄る。鎧武は非殺傷設定にしていたので、当麻本人に目立った外傷は見られない。

 

「ふん。所詮はこの程度だ。成長すれば少しは期待していいだろうな」

 

鎧武はパインアイアンをしまい、パインアームズからブラッドオレンジアームズへと姿を変える。

 

「またな。運命に抗う愚か者」

 

鎧武はそれだけ言うとすぐに飛んで帰った。

薄まっていく意識の中で鎧武の声を聞いた当麻は悔しそうに唇を噛み締めた。


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