リリカルライダー——悪とされた者の物語 作:エイワス
毎回転生してすぐに見た事のあるソファの上。そこに幽雅は仰向けで寝ていた。
幽雅は目を覚ますとすぐに鏡が何処にあるかが分かっているような足取りで鏡のある部屋まで向かった。
「今回は6歳ってところか。微妙な所だな」
鏡に映った自分の姿を見てまあまあの評価を下す。
「今回は人間として生まれたようだな」
自分の体に力を込めてみるが体に変化はなく、人の形を保っている。幽雅は一回目と二回目に、人間ではなくロイミュードとオルフェノクとして転生したので、それ以降は転生してすぐに鏡を見るようにしている。
幽雅の容姿がロイミュードプロト・ゼロのチェイスに似ているのは、最初に転生したときプロト・ゼロとして転生したからだ。
それ以降変える必要も無いので、容姿は全てチェイスで通している。
次に幽雅は階段の下にある物置の扉を開く。そこにはとても広い、訓練所のような部屋があった。
部屋の中央に迷わず向かう。
中央には複数のアタッシュケースが置いてあり、柄はそれぞれ違う。
幽雅はその中の、流星のようなマークが刻まれたアタッシュケースを開いて中にあるものを取り出す。
「注文通りに出来てるな。それにコイツもある」
アタッシュケースからベルトのようなものを取り出して腰に巻く。同封されていた青いスイッチ《メテオスイッチ》を取り出し、ベルト——メテオドライバーの左側にある穴に差し込む。
「性能実験だ」
《Meteor ready?》
メテオドライバーの上についてあるレバーを押すと気楽そうか機会音声が流れる。
「変身」
呟きとともにドライバーの右側についているレバーを叩く。上から青いレーザーのような光が青い球体を成して幽雅を包み込む。球体が弾け飛んで出てきたのは一人の仮面の戦士。
流星を模した青い顔に赤い複眼。黒のライダースーツに銀河のように線と星を繋いでいるボディ。そして右手首についている籠手のようなアイテム、メテオギャラクシー。
流星の戦士、仮面ライダーメテオ。
「ハッ!オラッ!フッ!」
メテオは暫くスーツに慣れるために仮想敵を用意して練習を行う。メテオの動きにはキレがあり、武術の達人でも舌を巻くほどの腕がある。
「コイツもやらせてもらうぞ」
天井からコンクリートの壁が降りてくる。メテオはコンクリートの動きを確認して、メテオギャラクシーの三個ある内の一つのレバーを押す。そしてコンソールに人差し指を置く。
《MARS ready?》《OK MARS!》
メテオの手に火星をもした球体が現れる。メテオはその球体をコンクリートに叩き込み一撃で崩す。
「成程、文句ない性能だ。これなら俺が手を加えなくても大丈夫だろうな」
レバーを二回押して変身を解除する。幽雅はかなり動いたのに汗一つかいていな涼しい顔でメテオドライバーをアタッシュケースにしまい、五回目記念で受け取ったアタッシュケースを開いた。
ケースにはベルトと携帯と剣が入っており、見る人知る人によってはとても恐ろしい代物だった。
「コイツは切り札だ。今はまだ大人しくしていてもらうぞ」
使う日が来ないことを祈らんとばかりに、幽雅はアタッシュケースを閉めた。
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私立聖祥大学付属小学校。
幽雅は今日からここに入学することになった。
幽雅は『リリカルなのは』の原作を知らない、もしくは忘れているため、これからどうなるかが分からない。ただ転生させられた以上、関わらなくてはいけなくなってくる。
面倒事に積極的に関わりたくない、が振りかぶる火の粉は払う位は別にいい、と思っている。
入学式が終わり、指定の教室に向かう。窓側の一番後ろの席に座り、前のめりに寝る。
担任の教師が来たので起き上がり、周りを少し見渡してみる。カラフルだ。単純にそう思えてくる。茶髪に金髪に紫髪に赤髪とまるで虹のようだと思い、担任の方を見る。
ふと小さい気配を感じて下を見てみると、そこには黒いスポーツカーのミニカーがあった。
幽雅はミニカーを拾い上げ、誰にも見られないように声をかける。
「何をしている?」
「いやぁ、少し君に伝え忘れたことがあってね。それを伝えるために少し借りさせてもらったんだ」
「借りるのは別に構わないが、今度からはメテオスイッチからにしてくれ。シフトカーを使うのは非常時だけでいい」
「了解。それじゃ手短に伝えようか。その世界では皆普通に空を飛んで戦闘しているんだよね。だから君の作ったベルトやガンナーにも空を飛べる機能を付けたから。外見に変わりはないよ。それに君にリンカーコアという物を付けた。魔力を発するらしいよそれ。君の魔力値はSS。他の転生者と同じだよ」
「了解。覚えた」
「うん。じゃあね」
声の主・・・神はそれ以降声を発さず、黒いシフトカーも帰っていった。
丁度よく自己紹介の番が来たので席を立つ。幽雅は他人の視線の的になるのが嫌なので早めに終わらせることにした。
「黒崎幽雅です。よろしくお願いします」
短く、簡潔に。誰にも目立たない程度の軽い自己紹介に反応した人物達がいた。赤髪と茶髪の男女。
幽雅はこの2人が転生者だと悟り、すぐに席に座る。
それから40分後、小学校生活一日目は終了した。
筈だったのだが・・・
「ちょっといいかな?少し話があるんだけど?」
赤髪と茶髪が帰る前に話しかけてきた。赤髪の後ろにはツインテールの茶髪がいる。
「何?俺は早く帰りたいんだが」
「すぐに終わるから早く来て」
茶髪——夢原美結が腕を引っ張り無理矢理幽雅を無人の教室へと連れて行く。
「久しぶりだね。僕達と同じ転生者君。改めて、衛宮当麻だ」
「どうでもいい話はやめろ。それで、用件はなんだ?」
「僕達と共に戦ってくれ」
真面目な、真摯な目で訴えかけてくる。後ろにいる夢原までもがそのような目で幽雅を見つめる。幽雅はこの二人の目が綺麗に見えた。だからこそ、関わりたくないと『改めて』認識した。
「断る。前にも言ったが、俺は他人がどうなろうが知ったことではない。厄介事に自分から首を突っ込んで、無駄をするのだけはゴメンだ」
「君は誰かを救いたいとは思わないのか!?」
当麻が幽雅の肩を掴んでくる。その手には精一杯の力が込められており、幽雅を逃がす気はなかった。
「いい加減にしろよ。みんなが皆、お前らと同じ思想を持っている訳では無い。それに、お前が助ける奴らからは助けを請われたのか?運命を変えてくれとお願いしたか?懇願したか?してないだろ。俺達が関わらなくても勝手に『ハッピーエンド』になるだろ?俺達が関わったせいで『バッドエンド』になるかもしれないだろ?つまりはそういうことだよ・・・・・・」
幽雅は当麻の腕を振り払い、ドアを乱暴に開けて教室から出ていく。
当麻はそんな幽雅を見て唇を噛み締めていた。