リリカルライダー——悪とされた者の物語   作:エイワス

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一つ飛ばして投稿してました。

結果、これでストックが全部消えました=投稿スピードの低下。




魔導師へ恐怖を

12月12日。

この日、原作通りならフェイトが蒐集される日。確かにフェイトはヴォルケンリッターと戦っている。だがそれは管理外世界での事。アースラクルーもフェイトの戦いを見ている。

 

故に気付かない。地球で管理局の精鋭と、たった一人の人間が戦うことを。

 

果たして誰が、彼らに気付くのだろうか。

 

——————————————————————————

 

白黒の色が抜け落ち、現実から隔離された世界。幽雅は一人、道路に立つ。車は通らず、人気もない。

周りを気にせず全力で戦える。

 

「黒崎 幽雅。ロストロギア製造の疑いで逮捕する。大人しくしてもらおうか」

 

ビルやビルの合間から出てきたのはバリアジャケットを纏った数十人の魔導師。彼等の中にBランクはごく一部で、殆どがAランクからSランクで構成されている。

 

「やはり管理局はバカだな。魔法があるからって自分が全て正しいと思ってる。正直、イライラするよ。————変身」

 

《チェンジ ナーウ》

 

幽雅の体を魔法陣が通る。現れたのは白いローブの仮面ライダー、ワイズマン。ワイズマンは両手を広げ、魔導師達を挑発する。

 

「貴様・・・・・全体、一斉射撃!!管理局に逆らったアイツを捕獲しろぉ!」

 

隊長だと思われる人物の声とともに放たれる色とりどりの魔法。砲撃魔法、バインド、ありとあらゆる魔法がワイズマンを襲う。ワイズマンは両胸の脇にある指輪を一つ取り、ドライバーに翳す。

 

《テレポート ナーウ》

 

ワイズマンの足元に魔法陣が形成され、ワイズマンは魔法陣に沈むように消える。直後、ワイズマンが居た場所を魔法が襲いかかった。

魔力がぶつかり合い、相互干渉を起こし起爆する。爆発は広がり続け、魔導師達を飲み込む一歩手前まで広がる。

 

これが、これこそが管理局の力。

 

魔導師達は自分達の力に酔いしれる。魔法こそが至高なのだと。敵うものはなにもないと。

 

その考えが、彼等に絶望をもたらした。

 

「ガアアアアアアアaaaaaaaaaaaaa!!!!!」

 

突如、鳴り響く一人の悲鳴。彼らは咄嗟に悲鳴の方向を向く。そこには、倒したと思っていたワイズマンと、何かに貫かれている自分達と同じ魔導師がいた。

 

「安心しろ。死んではいない。だが・・・・・お前達にとっての誇りは死んだがな」

 

ワイズマンが貫かれている魔導師を地面に振り落とす。振り落とされた魔導師は地面に大きな音を立てて落下し、生命の活動を止める。

 

「今ならまだ助かると思うが?」

 

「貴様・・・今・・・何をした・・・?」

 

震える声で絞り出す隊長。貫かれた隊員はバリアジャケットを纏っていた。にもかかわらず眼の前の敵は、一刺しで倒して見せた。

 

「分からないか?なら、今度こそわかってくれよ」

 

ワイズマンが圧倒的な速度で駆け出す。魔導師は散開しようとするが、一人の女性隊員が足を掴まれ、逃げ場を失う。

 

「いや、助けて・・・!」

 

「頑張って生きろよ」

 

ワイズマンは専用武器——ハーメルケインで胸を一刺し。バリアジャケットがあるにもかかわらず、まるでハサミが紙を切り裂くような感覚で貫かれる。それと同時に何かが壊れて音が聞こえる。

女性隊員は目を限界まで見開き、痙攣し、涙や鼻水で顔をグチャグチャにしながら、意識を失う。

 

「まさか・・・貴様・・・」

 

一連の行動を見て、隊長が全てに気づく。それと同時に嫌な汗がブワッと体から流れ出る。

 

「リンカーコアを・・・・直接砕いたのか?」

 

「正解だ。まぁ、正確には魔力防御等、魔力が使用されたもの全てを切り裂く、だがな」

 

その言葉を聞いて、彼らは一斉にこの場から逃げたくなる衝動に駆られる。防御をバリアジャケットに頼りきっている彼らとワイズマンの相性はとてつもなく悪い。

 

ワイズマンの持つハーメルケイン、これは本来、賢者の石と呼ばれた特殊な石を人体から取り除くために作られたものだが、幽雅はこれを改良し、新たに機能を加え、魔導師相手に破格の強さを与えた。魔導師の使うバリアジャケットの存在を否定するような機能、魔導師の力の源であるリンカーコアを直接砕ける。

 

それだけならまだいい。遠距離魔法で近づかせなければいいだけの話だ。だがワイズマンは二人目の時に、その圧倒的なスピードを見せつけた。

 

手足が震え、唇が乾燥し、唾が出なくなる。恐ろしい。なぜ自分達はこんなのを相手にしなければならない。そう思って仕方が無い。

 

管理局でエリート街道を歩んでた彼等に送られてきた一つの任務。ただの子供一人捕らえる簡単な仕事だと思って受けた自分を殴ってやりたい。

 

《エクスプロージョン ナーウ》

 

新たに魔法陣が描かれる。今度は彼らを囲むように、空中に特大の魔法陣が。

 

「「プ、プロテクション!」」

 

全員が防御魔法を張る。なぜ逃げなかったのか、それは魔法陣を見れば明確にわかる。魔法陣の大きさは、直径20mほど。その巨大な魔法陣が軽く数えて50。

 

魔法陣が爆発する。爆音、爆熱、爆風。ありとあらゆる可能性が魔導師を襲う。爆発は中心にいる魔導師を満遍なく飲み込み、彼らの命を奪っていく。

 

彼らは認識を間違えた。相手は確かに一国の軍隊よりも強い。巨大で複数の爆発する魔法陣。圧倒的な速度。

 

次元震を起こさないロストロギア?そんな軽く見ていいものじゃない。管理局の魔導師をひねり潰し、その管理局が手も足も出ない怪物を容易く消す。

 

爆発からは何人か生き残ったが、彼らは最早抵抗する気力も残されていない。当然だろう。

自分達が最強だと考えていた途端に、全滅寸前まで追い込まれる。

 

「こ・・・こんなもの・・・認めてなるものか・・・!」

 

「憤りを感じても、結果というものは変わらん。シッ!」

 

「ガギャアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

また一人、ハーメルケインの犠牲となる。ワイズマンの白いローブは血に濡れ、その仮面の輝きはオレンジから血色へと変わっていく。

 

「管理局に・・・応援を頼んだ・・・!貴様はもう逃げられない!」

 

「そうか。どうでもいいから諸共に死ね」

 

《イエス!キックストライク!アンダァスタァンド?》

 

ワイズマンはキックストライクリングをベルトに翳し、右足に魔力を溜める。それを直感的に危険だと判断した魔導師達は逃げようとするが、ワイズマンはそれを許すほど甘くはない。

 

《チェイン ナーウ》

 

空中に魔法陣が現れ、鎖が飛び出し彼らを縛る。逃げようにも解けず、相当な魔力が込められていることが伺える。

 

「終わりだ」

 

ワイズマンは飛び上がり、必殺のストライクエンドを放つ。超速で加速したワイズマンは魔導師達にすぐに到達し、その右足で彼らの命を破壊する。

 

「絶望がお前達のゴールだ」

 

結界が解けそうだったので、ワイズマンが支配権を乗っ取り、内部を修復する。辺りには魔導師達の死体が残されており、殆どが無様に倒れている。

 

「ハーメルケインだけじゃなくて、『銃剣』の実験もしておけば良かった。失敗したな」

 

ワイズマンは思い出したように呑気なことを呟き、死体をどう片付けるか思考する。

 

「まぁ、これしかないか」パチッ

 

指を弾き、灰色のオーロラを出現させ、死体を飲み込ませる。オーロラが消えると死体も消え、綺麗さっぱり片付いていた。

 

ワイズマンは変身を解き、空————アースラがいるであろう方向に顔を向け、宣戦布告する。

 

「これが俺のやり方だ、正義の味方達。俺は敵に手加減はしない。人質を取るとか考えても無駄だ。今の俺に友や親しい者などいない」

 

時空管理局。確かに面倒な組織だが、所詮幽雅にとっては面倒止まり。真に幽雅に————ライダーにとっての敵というのは、怪人、もしくはライダーにしかなれない。

 

「俺を捕まえたいなら、もっと本気でかかってこい。それこそ、世界の命運を背負って、少しでも足を踏み外したら、自分含めて世界ごとゲームオーバーって位にはな」

 

「甘い考えで戦うな。止めたいのなら殺すしかない。平和的解決を求めるな。力があるなら力で解決しろ」

 

殺すことが出来ない敵に向かって、優しく話す。何があっても自分の敵となり、自分の前に塞がる敵へ。

 

仮面ライダーは人々の、自由の味方だが、幽雅は違う。間違いなくそう言える。問われた瞬間に頷ける。

自分は悪だと、正義ではないと心に思い、願っているからこそ、幽雅はダークライダーとして生き続ける。

 

幽雅が最初に憧れたのは魔進チェイサーであって、ドライブでも、仮面ライダーチェイサーでもない。

 

正義を鼻で笑い、当然のように誰かを傷付ける、革新的な悪に憧れたのだから。

 

《テレポート ナーウ》

 

結界を解くと同時に、テレポートする。幽雅は消え、そこには新たに人が通り始める。

 

この日、管理局はアースラに、アースラ所属の魔導師達に黒崎 幽雅への接触禁止令を出した。


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