リリカルライダー——悪とされた者の物語   作:エイワス

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本当に勝ちたいのなら——全てを捨てろ。


VSヴォルケンリッター(一人抜き)

幽雅が現在使っている隠れ家、という程でもない海鳴市にある高級マンションの最上階。幽雅はチェイスの姿ではなく、仮面ライダーゾルダ、北岡秀一の姿と名で借りていた。

 

部屋の中はバイク等のパーツが少し散乱しているだけで基本的には片付いていた。

 

その部屋の一壁、巨大なホワイトボードと地図を前に幽雅が立っていた。

先程ヘルヘイムの森を伝い、帰宅した幽雅はドーパントが出た場所、種類等を正確にホワイトボードと地図に書き込んでいた。

 

幽雅は行方を眩ませてから半年、全ての怪人事件を解決してきた。最初はこの世界にライダーがもしかしたらいるかも、と考えしばらく暴れさせていたが、一向に来る気配がなかったため、自分でやり始めた。

 

「一ヶ月に5、6回・・・。種類は雑魚、雑魚、本命の怪人って感じか」

 

一ヶ月に6回。俺普通のライダーよりも重労働なのでは?と本気で考え始めるが、すぐに頭から追い出す。

 

「マスカレイドドーパント、屑ヤミー、グール、インベス、ミラーモンスター、最悪な時はワーム。ハッ、平成ライダー雑魚怪人の集まりだな」

 

地図に点を書き込む。幽雅が今まで地図に書き込んできた点は約35個。

 

「海鳴市に出たのは2回だけ・・・。それからはかなり遠い場所から少しづつ海鳴市を中心に近づいている。このペースだと、もう少しで海鳴市が主な戦闘区域か・・・。まるで誘い込まれてるみたいだ」

 

仮面ライダーWが風都で、仮面ライダーフォーゼが学園で、仮面ライダー鎧武が沢芽市でしか戦わなかったかのように、幽雅を海鳴市に近づけている。

 

気が滅入る、そんなことをボヤきながらパソコンを起動させ、カンドロイドを新たに飛ばす。

幽雅は転生させた神に頼み込み、監視用のカンドロイドを大量に送らせた。

ちなみに転生させた神は怪人が現れたことを認識していなかった。

 

「こっちの問題もあるのになぁ・・・」

 

幽雅がパソコンの画面に映した一つのウインドウ。

画面の中に映されているのは数日前、時空管理局での話し合いを纏めた内容。

幽雅にとっての『面倒事』。

 

『第97管理外世界に現れたロストロギア、またその製造者の捕獲について。

 

P.T.事件の際に確認された、仮面の魔導師。正式名称は仮面ライダー。仮面の魔道士はその圧倒的な戦闘力で、Sランク魔導師である、プレシア・テスタロッサの自動人形を単独で破壊。

仮面の魔導師は我々の知らぬ、未知の魔法や技術を持っている模様。魔導師は年端もいかぬ子供だったため、未知の魔法や技術によって自動人形を破壊した模様。よってこの技術をロストロギアと認定。

それらは法の番人であり、秩序の使者である我々が持つべきものである。

よって一週間後、第97管理外世界に魔導師の小隊を送り込み、ロストロギアを扱う仮面の魔導師『黒崎 幽雅』を捕獲することを決定。』

 

管理局による『残業宣言』。決め手になったのは恐らくワイズマン。

 

「面倒だが、怪人よりはマシだな」

 

画面を閉じ、壁に飾られている笛のような武器『ハーメルケイン』を手に持つ。

 

「魔導師共に教えてやるよ。誰を・・・どんな化け物を相手にしているのかを・・・」

 

送られてくる管理局の小隊に、絶望が確定した。

 

——————————————————————————

 

12月1日。幽雅はいつもの様に溢れ出る怪人の相手をしていた。

今回の相手は軍鶏ヤミー。多彩な格闘技ではじめは幽雅を追い詰めていたが、幽雅はドライブで苦もなく倒した。

 

そして何かと縁がある公園まで行き変身を解く。幽雅はベンチに座り誰もいない虚空へと話しかける。

 

「最近、物騒になったってのは本当みたいだな。なぁ?

 

 

ヴィータ」

 

「気付いてたのか・・・」

 

近くの茂みからヴィータが出てくる。その姿はバリアジャケットで、その手にはグラーフアイゼンが握られている。

 

「半年ぶりだな。今はだいぶこすいことやってるみたいだが、そこら辺はどうなのよ?」

 

「・・・ッ」

 

知られている。ヴィータ達がやっていることを。闇の書の侵攻が早まり、はやての命のためにリンカーコアを蒐集していることを。

それが、はやてに禁止されていることでも。

 

「はやてに禁止されていてもやる・・・大方、はやてはもう長くないみたいだな。あの時の乾と同じか・・・。

まぁ、それよりもやるんだろ?シグナムとシャマルが居て、餌である俺がいる。

 

やるしかねぇよな?」

 

「分かってんならさっさと蒐集されやがれ!!」

 

「ちっ!ロリガキが!」

 

《DRIVE type NEXT》

 

ヴィータの突撃を幽雅はドライブに変身した時の余波で弾く。だが横からはシグナムが迫る。

 

「ハッ!」

 

「そんなに奇襲が嫌いか?横からなんて優しいな!!」

 

シグナムの剣をブレイドガンナーで受け止め、腹を蹴る。シグナムは予想以上の痛みに顔を歪めるが、ドライブは容赦なく2激目の蹴りを入れる。

 

「オラァっ!」

 

見ていられなくなったのか、ヴィータがさらに突撃。ドライブはブレイドガンナーで、グラーフの柄を撃つ。

 

「余所見をするな!」

 

「あめぇよ」

 

立ち直ったシグナムがレヴァンティンでドライブを斬ろうとするが、ドライブは体を急回転してブレイドガンナーを打ち付ける。

 

「どうした?お前らはこの程度か?それなら、ベルカの騎士というのは、どれだけ弱い集まりなんだ?」

 

ドライブの言葉にシグナムがさらに剣を押す。これは挑発だと分かっているのに、シグナムは止まることが出来なかった。

ドライブはシグナムの行動を逆手に取りブレイドガンナーを引いて、シグナムに足をかける。シグナムとて歴戦の騎士だが、今の彼女に小手先の技は通じやすい。

足をかけられてバランスを崩したシグナムの横からヴィータが来るが、ドライブはグラーフを体を逸らすだけで避け続ける。

 

「いい加減・・・当たれやぁ!」

 

ヴィータの大振りな一撃。ドライブは体を前に送りグラーフの内側へと入り込む。

そしてヴィータの腹部にブレイドガンナーの銃口を押し付け、

 

ドンドンドンドンドンドンドン。

 

容赦なく連射する。ドライブが非殺傷設定を使っていたから死んではいないし傷もないが、痛覚を刺激する弾丸は止まることを知らない。

 

気絶したヴィータをシャマルがいるであろう方向に投げ捨て、剣を構えるシグナムを正面に、シフトカーを手に取る。

 

《タイヤコウカーン!》

 

《MAX FLARE》

 

炎を象ったタイヤがドライブの胸にかかる。それと同時にドライブの手足から炎のようなものが発せられる。

 

「ハァァァァァ!」

 

シグナムはレヴァンティンを蛇腹剣にしてドライブへと向かう。対するドライブはファイティングポーズとなり、カウンターを狙う。

遠くから放たれた剣先をドライブは手で掴み引き寄せるように後ろへと引っ張る。逆にドライブ自身は少しづつ前へと踏みでる。

 

シグナムは掴まれたレヴァンティンを必死に動かすが、ドライブの筋力には適わず、至近距離までの接近を許してしまう。

 

しかしその時、シャマルの魔法、時の旅路がドライブの足を止めた。ドライブとヴォルケンリッターでは勝利条件が違い、ヴォルケンリッターはリンカーコアを入手できればいいだけ。

 

ドライブはレヴァンティンを掴んでいる手を離し、炎の拳でシャマルの腕を弾く。

その隙に自由となったシグナムがレヴァンティンを長剣に戻し、接近する。

シグナムの長剣をドライブは炎の拳でいなす。何度も何度も、同じように左右に流す。

ドライブが右腕を左腕に添える仕草をする。シグナムはそれを隙とみなし、己が技を放つ。

 

「紫電————一閃!!」

 

《explosion》

 

ベルカ式デバイスのカートリッジシステム。強力な一撃と化したレヴァンティンはドライブへと襲い掛かる。

 

《FLA FLA FLARE》

 

ブレスのレバーを三回倒し体の炎を増加する。ドライブは炎を全て右拳へと溜め、紫電一閃と相対する。

 

「ハァァァァァ!!」

 

「オラァっ!」

 

炎を纏った二人の一撃がぶつかり合い、光を発する。熱は地面を焼き、光は全員の視界を奪う。

 

光が消え、シグナムとドライブの姿が明確に映る。

ドライブの右拳はシグナムの腹部に入っており、シグナムのレヴァンティンはドライブの肩を浅く切り裂いている。

ドライブの肩を切り裂く代わりに、ドライブは左腕でレヴァンティンを抑えている。

 

シグナムの腹部から腕を離し、そのまま体をずらす。

支えを失ったシグナムは地面へと倒れ伏す。

 

「お前では、俺には勝てない」

 

気絶しているシグナムにドライブが言い聞かせる。

 

「俺はお前と違って、守りたいものなどがないからな」

 

ドライブの近くにネクストライドロンが止まる。ドライブは変身を解いてネクストライドロンに乗り込み、その場をあとにした。


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