リリカルライダー——悪とされた者の物語 作:エイワス
この作品はクリぼっちしてる作者が暇すぎて死にそうだったので書いたものです。
どうか末永く宜しくお願いします。
幾多もある世界の内の一つ。
その世界には数多の仮面の戦士達が一人の仮面の戦士と敵対していた。
何十もいる戦士達とたった一人の戦士。戦況は確実に一人の方が不利となっている。
戦士達は自分達の始まりの戦士と破壊者と呼ばれし戦士を前に並び立つ。
「貴様の悪事もここで終わりだ!」
始まりの戦士が一人に言う。一人の戦士は何も答えずに歩み出す。歩みは段々と早くなり、始まりの戦士へと一直線に走り出す。
始まりの戦士だけが一人の戦士に向けて走り出す。
二人は15m程の距離で一斉に跳び上がる。
始まりの戦士は空中で一回転し、必殺のキックを。
一人の戦士は足からエネルギーを放出しながら右足でキックを。
「ライダァ・・・・・・キィィック!」
「ハアアアアアアアアアアア!!」
戦士のキックがぶつかり合う。
強大なエネルギー同士がぶつかり合い、中心で爆発を起こす。
その爆発は後ろで控えていた戦士達の所までも衝撃波が行き届き、急激に消えていく。
爆心地にいたのは始まりの戦士。
この瞬間、仮面の戦士達に悪と呼ばれた戦士が倒されたという事が分かった。
また一人の戦士は、数多の世界から消失した。
まるで最初からいなかったかのように、欠片も残さず。
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「ハァまたこうなっちまったのか・・・」
何も無い黒い空間。まるで最初からいたかのようにその青年はいた。青年には白いスポットライトがかかっている。
そして青年がこの場所に来るのは既に五回目となっていた。
「いるんだろ。さっさと来いよ」
青年が何もない所に声をかける。
「姿を現したいのは僕もなんだけどね、今回はいつもとは違うんだよね。君には最初に説明したよね?」
「ああ。『アレ』か。まさか本当に俺がやるとはな。確か、三人だったか?」
「うん。君はいつも単体だったからね。まぁ、君は特殊だったから複数には参加したくないって言ってたけど、五回目ともなると流石にね?」
「分かった。それで、今回も選んでいいんだよな?」
「うん。でも君は与えたとしても使うかどうか分からないけどね。僕が与えた物から派生させていたから」
「それでも極僅かな数だがな。俺が作れたのは3個だけだ」
「まぁそろそろ始まるから早く選びなよ。今回は五回目記念で二つ付けてあげるから」
「それはありがたいな。なら今回は————と————で頼む」
「分かったよ。なら早く行きたまえ。君以外の二人は既に座っているよ」
「ああ」
青年は上から降ってきた泥にその身を溶かされながら消えた。
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シャングリラを中心に3個の椅子がある。
椅子にはそれぞれモザイクの掛かった人と思わしきものが座っている。
『ようやく三人揃ったね。さて、改めて今回の事を説明しよう。君たち三人は若くして不幸な死に方をしてしまった人達だ。君達の心はとても優しい。そんな君達を殺しておくのは勿体ないと思った。そこで我々神はそういった君達を転生させることに決めた。君達には一つずつ特典を与えて、『魔法少女リリカルなのは』の世界に転生させる。君たちがそこでどう生きるかは自由だ。
さて、大体はおさらいできたね。今度は話し合いだ。転生者同士でこれからのことでも話し合いたまえ』
神はそれから声が聞こえなくなった。
「まずは自己紹介からしよう。僕の名前は衛宮当麻だ。貰った特典はfateの『無限の剣製』だ。よろしく頼む」
最初に切り出したのはモザイクに赤が混じった少年の声だった。モザイクに紫が混じった先程の青年は、『アホか』と思っている。幾ら心の優しいと言われた者達が集められたからと言って、自分の能力や本名を曝け出すのはどうかと思うが。
「見たこともない初対面の相手にすぐに特典と名前を晒すのはどうかと思うのだけど?」
モザイクに水色が混じった少女と思われる凛とした声が響く。
「僕は君たちの事を信用しているから言ったんだよ。だから君たち2人も僕のことを信用してほしい」
「まぁいいわ。私の名前は夢原美結よ。受け取った特典は『魔法の才能』よ。よろしくね」
「よろしく夢原さん。それで、最後の君は?」
衛宮当麻は青年の方に話をふる。青年は面倒そうに溜息を吐いて大人しく喋る。
「黒崎幽雅。特典は『戦闘技術』」
青年——幽雅は怠そうな雰囲気を出しながら言う。何度も転生させられた幽雅の特典は一つではない。だが幽雅が今までに受け取った『特典』の中に『戦闘技術』はない。
「よろしく幽雅。なら今後の目標を決めよう。僕は不幸な運命の人達を救いたい。だから僕は力を求めた」
突然どうでもいい話を話されて幽雅は、すぐにこの場を離れたかった。別に衛宮当麻の目標を馬鹿にする訳では無い。ただ既に決められた運命を変えるのは並大抵の努力では不可能だ。幽雅はそれを理解しているからこそ、衛宮当麻の目標を否定するのだ。
「いい目標ね。私も賛成するわ」
「ありがとう夢原さん。幽雅はどうだい?」
当麻は幽雅に話をふる。本当に迷惑だ、と思いながらも幽雅はしっかりと答える。
「目標などどうでもいい。他人がどうなろうが、知ったことではないからな」
現実を知っているからこそ突き放す。信じられるのは自分のみ。下手な希望は持たない。それが、それこそが幽雅だった。
「そんなことを言っちゃダメだ!救えるのなら救わないと!」
「そうよ。空気を悪くするのはどうかと思うのだけれど?」
「知ったことか。俺は仲良しこよしはするつもりは無い。一足先に行かせてもらうぞ」
幽雅は意識を手放して転生の準備を始めた。幽雅の姿を覆っていたモザイクがしたから溶けるように消えていく。
そしてモザイクが消えると同時に幽雅の姿も消えていく。
後に残ったのは今後のことを話し合う二人だけだった。