リリカルライダー——悪とされた者の物語 作:エイワス
傀儡兵と共に現れた2体の異形。
何故それが現れたのかは神にしかわからない。
だがある程度は予想がつくだろう。
たとえ彼らに意思がなくとも、本能的にこう言うだろう。
————そこにライダーがいるから、と。
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アースラ内のフェイトが眠っている病室。
この場には先程までアルフがいたが、彼女は時の庭園攻略の為に出撃していった。
故に病室にいるのはフェイトのみ。
フェイトが首を動かして表示されているモニターを見る。
モニターにはなのはとアルフが表示されている。
また、別のモニターには傀儡兵を破壊していく斬月・真の姿が。
「母さんは、最後まで私に微笑んでくれなかった。私が生きていたいと思ったのは、母さんに認めて欲しかったからだ。どんなに足りないと言われても、どんなに酷いことをされても。だけど、笑って欲しかった。あんなにはっきり捨てられた今でも、私まだ母さんにすがりついてる」
画面を見ているフェイトの口から漏らされた言葉。プレシアに破壊されたが、核が無事だったバルディッシュは黙って聞いている。
「生きていたいと思ったのは、母さんに認めてもらいたいからだった。それ以外に、生きる意味なんてないと思っていた。それができなきゃ、生きていけないんだと思っていた。捨てればいいってわけじゃない。逃げればいいってわけじゃ・・・・・・もっとない」
フェイトは罅が入っているバルディッシュを手に取る。バルディッシュはボロボロで、いつ崩れてもおかしくはない状態だった。フェイトはそんな相棒を見つめて決意する。
フェイトはバルディッシュに魔力を流すと、バルディッシュの傷が消えていき、完全な状態へと戻る。
「幽雅も戦っている。何の関係もない、私の為に。私はまたそれに頼ろうとして、勝手に全てを終わらせようとしている」
画面の向こうにいる鎧武者に目を向ける。鎧武者は怒涛の勢いで戦って、何故かなのは達の方を目指している。
「私たちのすべては、まだ始まってもいない。だから、本当の自分を始める為に」
フェイトはバルディッシュを構え、バリアジャケットを装備する。フェイトの顔は憑き物が落ちたような顔をしており、戦いに行く戦乙女のように見える。
「今までの自分を、終わらせよう」
金色は出撃する。
始まりを得るために。
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斬月は焦っていた。先程までの戦いっぷりは影を潜め、今は最低限の敵だけを倒している。
だがその敵も残り僅か。
斬月は数分前に傀儡兵の残数が減っていることに気付いた。それと同時になのは達が向かった動力炉の方からとてつもない程の不安感が襲っていた。
斬月はこれを予想外の事態が必ず起こると確信し、上に登るのを邪魔する傀儡兵だけを倒していった。
下からは残っている傀儡兵が上に飛ぶ斬月を追いかける。
「クソッ!邪魔だ!」
《LOCK ON》
《メロンエナジー》
斬月は何度目か分からないソニックボレーを放つ。先頭にいた傀儡兵に矢が刺さり、周りを巻き込んで爆発していく。
「アレは、フェイトか——!」
上ではフェイトが傀儡兵にサンダーレイジを撃ってなのはの援護をしていた。
どこから湧いてきたんだよ!と悪態をつきながら下から援護する。
上に向けてソニックアローの弓を引き絞りエネルギーを貯める。メロンの形のエネルギー矢を放ち、限界点まで到達すると、メロンが割れて数多のエネルギー矢が降り注ぎ、傀儡兵を破壊していく。
「幽雅!」
「何している。さっさと自分たちのやるべき事をやれ!」
幽雅の叱責でなのは達は動力炉を再度目指そうとするが、唐突にそれ等は現れた。
「キャァっ!」
「フェイトちゃん!ッ!」
高速で移動しフェイトのことを斬月のいる所まで蹴り飛ばす。なのははフェイトに駆け寄ろうとするも、接近してきたそれがなのはに剣を振りかざし、なのはは本能的にレイジングハートで抑える。
「よっと、何している」
「幽雅、あれ」
フェイトが指さした方にはなのはと鍔迫り合いをしている体が水色の人型の異形と、その後に控えいる茶色い体毛が生えた猫のような異形。
幽雅はそれを見て呆然とする。何故ならそれは本来存在することのないものなのだから。
「フェイト、俺が隙を作るからその間にお前らは行け。いいな」
「幽雅は!?」
斬月は幽雅の問いに答えず、異形に向けて斬りかかる。水色の異形はなのはを弾き飛ばし、剣でソニックアローを抑える。
「黒崎君!?」
「なのは!幽雅が抑えているうちに早く!」
なのははフェイトに手を引っ張られ動力炉へと向かっていく。ユーノとアルフもそれに続く。
斬月は誰もいなくなってやりやすくなった所で、水色の異形、ナスカドーパントに話しかける。
「何故お前らがここにいる?どうやって現れた」
「・・・・・・シッ!」
「チッ!クソッタレが・・・!ッ!」
何も答えないナスカは更に力を込めて斬月を押す。斬月は迎え撃つように同じく力を込めるが、斬月はここでミスを犯す。
鍔ぜりあっていた斬月の背中を控えていたもう一体の異形、スミロドンドーパントが爪で斬り掛かる。斬月は体を横に倒すことで回避するが、ナスカが体勢を崩した斬月に一太刀入れる。
「クソが。高速移動が2体か。メロンじゃ相性が悪すぎる」
(あの2体の特徴は高速移動。それに加えてスミロドンは野生の勘。更には2体ともバリバリ空飛んでる。やはり使うか?だが完成したとはいえ微調整が必要なゲネシスドライバーで、どこまで耐えられるか)
幽雅が考えている間にもナスカとスミロドンはお互いの得物で斬月に襲いかかる。高速移動で攻めてくる2体をこれまでの経験だけで躱せるはずもなく、斬月の体に着々とダメージが溜まっていく。
(やるしかない!!)
斬月はナスカに狙いを定めソニックアローを振り回し斬撃を与える。ナスカが引いた瞬間、斬月は後方へと飛び下がり、赤いロックシードを取り出す。
《ドラゴンフルーツエナジー》
《LOCK ON ソーダ》
《ドラゴンエナジーアームズ》
纏っていた鎧が弾け飛び、弾け飛んだ鎧がスミロドンに当たり、スミロドンは吹き飛ばされる。斬月のスーツが変わり、白かったボディが青く染まっていく。
上にクラックが開き、そこから赤い果実が出て幽雅に被さる。
その手に持つアームズウエポンはエナジー系ロックシード共通のソニックアロー。鎧は赤く、斬月・真とは違い西洋風の鎧で身を包んでいる。
————機械生命体の力で蘇った伯爵、仮面ライダーデューク ドラゴンエナジーアームズ。
「さて・・・・・・いくぞ!」
デュークの姿が消える。いや、本来なら赤い軌道を残しながらの高速移動だが、幽雅の製作したゲネシスドライバーはデュークの場合のみ、光学迷彩が起動することな出来る。
「ッ!」
「フシャァッ!」
デュークはナスカの背後に回り込み斬撃。そしてスミロドンの背中にエネルギー矢を当てる。
立ち直った2体は共に高速移動で駆け回る。青い軌道と茶色い軌道、そして本来なら見える赤い軌道が縦横無尽に駆け回る。
デュークの高速移動はナスカとスミロドンにも劣らない。この中で唯一遠距離装備を持っているデュークは一定のタイミングで各々にエネルギー矢を放つ。
ナスカとスミロドンは自らの得物で迎え撃つが、今回は違った。
デュークのエネルギー矢の攻撃がナスカにしか来ていない。スミロドンはこれを怪訝に思うも、矢が放たれる場所まで高速移動し、その爪をたてようとする。
スミロドンが爪を振りかぶると、
ザシュ。
「フシャァァァァァァッ!」
《LOCK ON》
《ドラゴンフルーツエナジー》
スミロドンは空いた胴体をアークリムで斬りつけられ後ろに仰け反る。デュークはすぐにロックシードをソニックアローに嵌める。
デュークは高速移動でスミロドンの腹にソニックアローを押し付ける。スミロドンはデュークを爪で叩いて引き剥がそうとするも、デュークは引かない。
「喰らえ」
ソニックアローから赤いドラゴンの形をしたエネルギーが放たれる。放たれたエネルギー《ソニックボレー》はスミロドンの腹部にあるガイアドライバーに当たり、スミロドンは壁に叩きつけられ、爆散する。
デュークはすぐ後ろに迫っていたナスカの剣をアークリムで防ぎ、腹を蹴って弾く。デュークはソニックアローで矢を撃ちながら追撃するも、ナスカは高速移動で駆け回り、デュークの背後をとる。
背後を取られたデュークは高速移動で避けようとするが、ナスカの剣がデュークの背中を切り裂き、火花を散らす。
デュークは前へ転がり、振り返るも既にナスカの背中はなく、ナスカは高速移動でデュークの背後を斬りつけた。デュークは必死に避けようとするが、ナスカの高速移動をひきいた戦闘に翻弄され続ける。
ナスカがトドメを刺そうと正面に高速移動をしてデュークを斬ろうとする。それに対してデュークは避けづにナスカの腰へ抱きつく。デュークはナスカの肩を掴んで無理矢理後ろへと引き剥がす。ナスカは引き剥がすと同時に攻撃を仕掛けようとする。
だがそれが勝敗を分けた。
後方へと背中向きに飛ばされたデュークは既に攻撃へと映っていた。
《LOCK ON》
デュークのゲネシスドライバーには確かにドラゴンフルーツエナジーロックシードが嵌っている。ナスカは怪訝に思うが、既に仕掛けた攻撃は止められない。
《メロンエナジー》
「終わりだ」
デュークがソニックアローに嵌めたのはメロンエナジーロックシード。幽雅の作ったソニックアローは変身しているロックシードを使って必殺技を放った方が威力は高い。逆に必殺技を使う時に別のロックシードを使うと威力は低い。
だが近距離ならば、問題は無い。
ナスカは既に剣を振りかぶっており、攻撃は止められない。デュークの持つソニックアローから《ソニックボレー》が放たれる。《ソニックボレー》はナスカのガイアドライバーに直撃し、ナスカは内側から爆散する。
ナスカの爆発で吹き飛ばされるデューク。壁に叩きつけられ漸く止まることのできたデュークは変身を解除する。
幽雅の体には所々傷があり、背中は血が滲んでいた。
幽雅は疲れた足取りでナスカの爆散した所へと歩く。そして爆発の中心点に落ちていたものを拾い上げる。
「ガイアメモリ・・・・によく似た模造品か」
幽雅はNと刻まれたメモリを懐に入れ、スミロドンが爆発した所まで行き、そこにもあったSと刻まれたメモリを懐に入れる。
「下か」
《ZONE》
幽雅は下からの音を聞いて、ゾーンメモリを使い下に移動した。