リリカルライダー——悪とされた者の物語   作:エイワス

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今回は流石に無理があったかな?




なのはとフェイトの決闘はなのはの勝利で終わった。

現在二人には幽雅、当麻、美結、ユーノ、アルフ。そしてアースラからの視線が向いている。

 

前の三人以外からは暖かい視線が。幽雅と当麻、美結は戦う時の目をしている。

 

天気が曇り、雷雲に覆われていく。その突然の変化の中、動けたのは三人だけ。

 

「来たか!」

 

「行くわよ!」

 

当麻はいつもと違い、武器を持たずになのは達のところへと駆け出す。美結は魔力を放出して限界まで疾走する。

雷雲は渦を巻き、雷を放出する。

放出された先にいるのは————フェイト。

 

《Meteor ready?》

 

「変身」

 

幽雅はあらかじめ用意していたドライバーでメテオとなり、変身した直後限定で現れるメテオを覆うコズミックエナジーの球体で当麻達より早く移動し、雷を防ぐ為に盾となる。

だが時間が経てばコズミックエナジーの球体も消え、メテオもフェイトもなのはも無防備になる。加えてメテオが球体を維持できる時間はかなり短い。

対してあちらは魔力がある限り続けられる雷。

 

球体は時間と共に消え、雷はフェイトをに襲いかかり、バルディッシュを砕き更なる雷を放ちながらフェイトの所有するジュエルシードを回収してしまった。

 

「『熾天覆う七つの円環』!」

 

メテオに先を越された当麻が追撃してくる電撃を、投影した七枚の花弁で受け止める。だが即席で作り出した花弁は強度が足りずにすぐに砕けてしまう。

 

花弁が砕けたら、雷の追撃はなくなった。フェイトはなのはの腕の中で気絶している。

当麻達にアースラに来てくれと言われたが、後で合流すると伝え、幽雅は目的のために動き出した。

 

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時の庭園

 

プレシア・テスタロッサは焦っていた。自分と娘に残された時間は少ない。そしてフェイトを襲った時の魔法で自分の居場所は管理局に特定された。

 

既にプレシアの体は病でボロボロ。床にはプレシアが吐血した血液が散乱している。

 

プレシアはテーブルに置かれたガイアメモリを手に取る。ダークドライブと名乗るものから渡された、自分に力を与えてくれる物。

使い方が分からず、どうすればいいのかとずっと悩んでいた。

 

「無様な姿だな」

 

ホールに響いた聞き覚えのある声。プレシアは音源へ顔を向けると、そこにはガイアメモリを渡してくれたダークドライブがいた。

 

「何の用かしら?」

 

「いや、ソイツの使い方を教えていなくてね」

 

《SP SP SPEED!》

 

「なっ!?」

 

ダークドライブはレバーを三回倒し、目にも留まらぬ速さでプレシアへと近づき、腕を掴む。

 

「こうだ」

 

ドライブはどこから取り出したのか、不可思議な機械をプレシアの腕へと押し付け、引き金を引く。

チリっとした痛みがプレシアの脳を巡り、ドライブが機械を押し付けた部位を見ると、奇妙なあざが出来ていた。

 

「これを、こうする」

 

《TRIGGER》

 

ドライブはガイアウィスパーを鳴らし、プレシアの腕に押し付ける直前でやめる。

 

「簡単な手順だろ?チッ、もう来るのか。俺はここで失礼させてもらうよ」

 

《ZONE》

 

「待ちなさい!」

 

プレシアの静止の声を聞かずに、ダークドライブはまたもゾーンメモリで何処かへと溶けるように消えていった。

 

決戦はまだ始まったばかり。

 

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「来たぞ」

 

幽雅は一度ゾーンメモリで家に帰って、家主のはやてに遅くなると伝えてからゲネシスドライバーに持ち替えてアースラの中に転移してきた。

 

「手伝ってくれるのか?」

 

「別にお前の為でじゃない。自分の中にある違和感を払拭するために来たんだ」

 

幽雅の中にある違和感。白い服を着て両手を手錠で抑えられているフェイトの方へと目を向ける。

 

「フェイトがか?」

 

当麻が疑念の声を上げる。

 

「これ以上は話すつもりは無い。ここから先は俺の過去に関わるのでな」

 

幽雅はそれだけ言うと、正面にいるリンディに目を向ける。

 

(前も思ったけど、なんて鋭い視線なの。子供が出せるものではないわ)

 

「画面に集中しなくていいのか?」

 

幽雅にそう言われて全員モニターの方を見る。モニターには武装局員の一人からの映像が流されていた。

局員達は扉を通り、ある通路に出る。

その通路は植物に所々が侵食され、暗い不気味な雰囲気を出していた。

 

通路の先にある唯一の淡い光源。

局員達がそこに近づいていくにつれ、そこにあるものが鮮明に見えてきた。

 

「え?」

 

フェイトの声か、なのはの声か。誰の声かはわからない。だがそこにあったものは、今アースラにいる者達を驚かせるほどの代物。

 

透明なカプセルの中で、液体と共に浮き続ける金髪の少女。

 

 

 

 

 

 

————フェイトによく似た少女だった。

 

「・・・やはりか」

 

「黒崎君?」

 

「いや、なんでもない」

 

幽雅の誰にも聞こえない位の声をなのはは聞いて、幽雅に目を向けるが、幽雅は何もなかったかのように否定した。

 

(いま、やっぱりって・・・・・・黒崎君は何か知っているの?)

 

(やはりフェイトはプレシアの本来の娘ではない。前にあった時、奴は娘の蘇生が目的と言った。だがプレシアにはフェイトという娘がいる。しかしフェイトの体にあった傷はプレシアからつけられたもの。娘の蘇生≠フェイトなら、フェイトは何処からか拾ってきたもの、もしくはクローンだが・・・前者はありえない。わざわざ蘇生させることが出来るなら拾う必要性はない。それにフェイトが本来の娘だとしたら、なぜ虐待する必要性がある?片方の娘を蘇生させたいほどに愛しているのなら、もう片方も同様のはずだ。となると、やはりクローン・・・大方、フェイトで満足しようとしたが、似ていないところでもあったのだろう。それが理由で娘の蘇生という方法に至った・・・)

 

幽雅の考えは全てではないがほとんど的を射ていた。だから幽雅が最初にプレシアの『悪』を否定した。

幽雅は今までの転生で様々な他人の『悪』や、それを実行する理由を聞いてきた。

 

ハートロイミュードなら108しかいない友達と共に新たな生命体になるため。

ホースオルフェノク、————木場勇治なら、人間に絶望し、オルフェノクで世界を統一するため。

 

他にも沢山あった。仲間を集める過程で聞いてきた過去。自分が知らないところで起きていた悲劇を。

 

だからこそ幽雅はプレシアを否定する。亡くしたものを、永久に帰らないと知っているものを否定しようとするプレシア・テスタロッサを、幽雅は否定し続ける。

 

幽雅はいつの間にか右手に握っていた一枚のカードを見つめた。まるで、自分がなくしたものがそこにあるかのように。

 

——————————————————————————

 

『もうダメ、時間がないわ。たった9個のロストロギアではアルハザードにたどり着けるかわからない』

 

プレシアは容器に入った自分の娘、〝アリシア・テスタロッサ〟にすがりついていた。

プレシアの背後にはアースラの武装局員達が倒れている。

 

『でも、もういいわ。終わりにするの』

 

プレシアは首だけを振り向かせて、アースラの映像に介入する。

 

『フェイト、やっぱり貴方はアリシアの偽物よ』

 

プレシアがフェイトへ向けて言った言葉は、フェイトの心を抉った。

 

『アリシアを蘇らせる間に、私の慰みに使うだけのお人形。どこへなりと消えなさい!』

 

「お願い!もうやめて!」

 

なのはがモニターに向かって叫ぶ。だがプレシアは愉快そうに笑い始める。当麻は拳が震えており、美結も抗議の目を向けている。

唯一、幽雅だけが興味のなさそうな目でプレシアを見ている。

 

『いいことを教えてあげるわフェイト。私は初めてあなたと会った時から、あなたのことが・・・・・・大嫌いだったの』

 

フェイトは崩れ落ちる。静まった管制室でフェイトの両腕に付けられている鎖が音を出す。

音がしてすぐに、オペレーターのエイミィが声を上げる。

 

「時の庭園内に、魔力反応多数!」

 

「始まったか・・・!」

 

エイミィの報告に、当麻が顔を顰める。報告される魔力反応はまだ増えていく。

 

『誰にも邪魔させない。私達の旅を。その為ならバケモノにでもなってやるわ』

 

《TRIGGER》

 

プレシアが青いガイアメモリ——トリガーメモリを取り出し、ガイアウィスパーを鳴らす。

 

「あれは、ガイアメモリだと!?」

 

当麻が持つものを見て叫ぶ。この場にいる殆どがあのメモリの様なもののことを知っている当麻に怪訝な顔をした。

 

『ふん!』

 

プレシアはトリガーメモリの端子の先を自分の腕——ドライブに生態コネクタを取り付けられた腕に刺した。

変化は劇的だった。

 

プレシアの体は人間のものから異形のそれに変化した。

青い体に右腕には管理局では質量兵器と言われ、地球ではライフルと呼ばれる銃が生えていた。

 

プレシアには既にプレシアとしての面影はなく、ガイアメモリから生まれる怪人、トリガードーパントだけが残った。

 

残った左手の甲に、フェイトのバルディッシュの待機携帯に似たものが付着している。

 

プレシアが何かしたのか、アリシアの入っている容器が浮かび上がり、プレシアのの背後に浮遊し始める。

 

「タイムリミットまで、あと60分・・・・・・」

 

今度こそ幽雅の声は誰にも聞かれなかった。


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