リリカルライダー——悪とされた者の物語   作:エイワス

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二戦目

ブレイクガンナーからエネルギー弾が発射される。

美結と当麻は咄嗟に左右に転がり、どうにか回避する。

 

「クソ!やるしかないのかよ!!」

 

当麻は両手に愛用の双剣を投影する。美結もデバイスをソードモードに切り替える。

 

「ハァ!」

 

「ッ!?」

 

当麻の強化の魔術による脚力は、チェイサーが前に戦闘した時よりも強化されている。市街地での戦闘の後、自分の魔術の強化、解析、投影を一から見直して、全ての技術の練度をあげることに専念した。

剣、槍、弓の基本骨子から見直し、解析し、複製することだけをしてきた。その結果、当麻の魔術は前回の戦闘よりも全体的に性能が上がっていた。

 

当麻の黒い剣をブレイクガンナーで受け止める。

黒い剣————莫耶を反対側から迫ってきた干将に流すようにぶつけさせる。

ブレイクガンナーから黒い剣が離れたので、エネルギー弾を連射する。

 

当麻は後ろに飛ぶことでこれを回避。飛んだと同時に干将・莫耶を回転させるように投げる。

チェイサーは瞬時にエネルギー弾で双剣を破壊、当麻のことを追おうとするが、隙を伺っていた美結に気付き、バイラルコアを呼ぶ。

 

《Tune chaser spider》

 

バイラルコアをブレイクガンナーにセットする。ブレイクガンナーを中心にチェイサーの右腕に爪の様な武器、ファングスパイディーが装備される。

 

「まずはお前からだ」

 

迫ってきた美結に向けてチェイサーが飛び出す。美結のサファイアとファングスパイディーがぶつかり合う。火花を散らしてチェイサーが押していく。美結は堪えようとするが、ライダスーツのお陰で強化されたチェイサーに敵わずに、後ろに押し出される。

 

「まだよ!サファイア!」

 

《BIND mode》

 

サファイアの魔力刃の部分が鎖へと変わり、チェイサーの右脚に絡みつく。チェイサーはファングスパイディーで破壊しようとするが、美結は大量の魔力を流し込んでいるため、なかなか壊れない。

 

「当麻!今よ!」

 

「投影、開始」

 

「チィっ!」

 

美結が叫んだ方には当麻が弓を構えている。その弓に引かれている矢は捻れた剣。

チェイサーは鎖が壊れないのに苛立ち、マズルを押す。

 

《execution full Break spider》

 

「・・・偽・螺旋剣Ⅱ!」

 

少し為を入れて当麻の弓から衝撃波を飛ばしながら剣が放たれる。だがチェイサーもそれで終わるほど甘くはない。

 

「オラァッ!」

 

チェイサーは右腕にエネルギーを貯めた一撃、エグゼキューションスパイダーを放つ。偽・螺旋剣Ⅱとエネルギーなお互いぶつかり合い、拮抗していく。本来なら最大限まで改造され尽くしたブレイクガンナーの出力が勝るだろう。だが人が作り出した咄嗟の調整が効かない科学と、威力、射程、範囲に至るまで咄嗟に調整できる魔術。

当麻はこの一撃に、自分の魔力を殆ど費やした。その証拠に、投影していた弓は消え、飛行することすら困難なレベルに達している。

 

科学の一撃と、魔術の神秘による一撃。

その二つは周りに衝撃波を撒き散らしながら、お互いがその威力に耐えきれずに爆散した。爆風は戦っていたフェイトとなのはまで届き、魔進チェイサーとなっている幽雅も本気で踏ん張って飛ばされないように堪えていた。

 

爆風が止み、二つの力がぶつかった場所には、地面が抉れ、クレーターが作られていた。

 

「ガッ!ゴバァッ!」

 

「当麻!」

 

魔力を使い切り、身を守ることも出来なくなり、地面に叩きつけられ血反吐を吐く当麻に美結が駆け寄る。当麻の状態は最悪の一言で、右腕がおかしな方向に曲がり、魔力の大量消費による体力の低下、投影した偽・螺旋剣Ⅱに限界量の魔力を流し込んだ反動で意識がとびかけていた。

 

反対の魔進チェイサーもかなり危険な域に達していた。装甲は傷が入り、いつ崩壊してもおかしくはない。中身の幽雅も少し意識がとびかけていた。

チェイサーのエグゼキューションスパイダーは遠距離と言えるほど、射程は長くはない。だから爆風を中距離ほどの位置で受けたので、いつ変身が解除されてもおかしくはなかった。だがチェイサーは当麻に向かって足を引きずりながらも歩いていった。

 

「ハァ、ハァ・・・」

 

少し動く度にチェイサーの装甲が剥がれ落ちていく。その光景はまるでゾンビのようだった。

遠くで見ているフェイトとなのはは絶句している。

 

そしてついに当麻の少し前まで辿り着く。チェイサーの前には立ち塞がるようにサファイアを構えた美結が立っている。

 

ふと、チェイサーはなのはとフェイトの方に目を向けると、呆然としていたなのはにフェイトが襲いかかっている光景が目に付いた。

 

「これ以上当麻に何かするつもりなら、私はあなたを絶対に倒す・・・!」

 

「・・・・・・」

 

何も言わないチェイサー。チェイサーは手に持ったシフトカーをブレイクガンナーにセットする。

 

《Tune MAD Doctor》

 

美結を押しのけてチェイサーは当麻の患部にブレイクガンナーのマズルを押し付ける。

美結は、何を・・・!と言ってチェイサーをどかそうとするがブレイクガンナーから流れ出るエネルギーが当麻の折れた右腕を治療していく光景を見て動きが止まる。

 

「まさか・・・あなた治療を・・・!」

 

当麻はビクン!と大きく痙攣するが、少し経つと右腕の怪我が治っていった。美結はその光景に目を見開いている。目の前の、敵であった人物がわざわざ怪我を直したのだから。

 

チェイサーは治療が終わると、力を出し尽くしたかのように地面に片膝をつけた。チェイサーの手からブレイクガンナーがこぼれ落ちる。体からスパークが走り、触れようとした美結の手を焦がそうとする。

 

チェイサーはどうにかしてブレイクガンナーを掴み、立ち上がってフェイトとなのはの方を見上げる。今行われようとしている一騎打ち。チェイサーはこの結末を見届けようとしていた。

 

フェイトとなのは、二人がデバイスを構えて突撃していく。美結は目を見開き、少しづつだが意識を取り戻してきた当麻は、未だに痺れる足を無理矢理使役して立ち上がろうとする。

 

そして二人のデバイスがぶつかり合うその時、

 

 

 

 

 

「ストップだ!」

 

 

 

どこからか一人の童顔の黒衣の少年が現れなのはとフェイトのデバイスを掴み止めた。

 

「ここでの戦闘は危険すぎる」

 

現れた少年は周りを見渡す。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」

 

「時空・・・管理局・・・何だ・・・それは?」

 

「知らないの!?」

 

チェイサーの呟きに驚いた様に美結が叫ぶ。だが美結の声は上にいる三人には聞こえていなかった。

 

「デバイスを解除して投降するんだ!」

 

「くっ・・・!」

 

フェイトはクロノの警告を無視してジュエルシードへと駆けていく。だがフェイトの行動は先を読んでいたクロノの魔法により妨害される。

 

「投降しろと言ったはず・・・・・・ッ!?」

 

クロノが更に投降を呼びかけると、下からエネルギー弾が飛んできたので右に避ける。

エネルギー弾を撃った本人————チェイサーは体からスパークを発しながら無理矢理立っていた。

 

「逃げろ!フェイト!」

 

叫びながらブレイクガンナーでエネルギー弾をクロノに撃つ。だがその精度は何時もの何倍も悪く、クロノに掠りさえしなかった。

 

「やめなさい!シュート!」

 

突然クロノを攻撃し始めたチェイサーに向けて美結が魔力弾を放つ。放たれた魔力弾はチェイサーにモロにあたり、チェイサーを後方へと吹き飛ばす。

 

「ガァッ・・・ッ!?」

 

「え?」

 

ダメージ量が限界を超えたのか、光を放ちながらチェイサーの姿から幽雅の姿へと戻る。幽雅は地面を転がってようやく動きを止める。

 

「やっぱりあなただったのね。黒崎君」

 

美結が見透かしたようなことを言う。だがそのようなことは今の幽雅には関係なかった。

 

「行け・・・早・・・く・・・ッ!」

 

《Tune Justice hunter》

 

ボロボロの体でブレイクガンナーにシフトカーをセットする。そしてブレイクガンナーをクロノに向けて撃つ。

放たれたエネルギー弾は分裂して鉄格子となり、クロノを捉えた。

 

「くっ!何をする!?」

 

「クソッ!ブレイクガンナーも限界か・・・!」

 

幽雅はブレイクガンナーの出力が低下してきていることに気付いて、すぐにクラックを開き、転がり込む。

クラックが閉じる時にフェイトとアルフが撤退していく姿が見えたので、幽雅はそのまま家のある位置まで戻り、傷付いた体を無理矢理の治療で治して、眠りについた。


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