Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜(番外編) 作:黒曜【蒼煌華】
活動報告に書いた通り、更新が金曜日になってしまいました…。
ですが、此れからも頑張って書かせて頂きますね!
(次から更新遅れそうになりそうな場合、活動報告に書かせて貰います)
今回は少しばかり展開を早めてしまいました…。
なので、ゆっくり見て下さると丁度良いと思われます。
後から修正致しますので…。
挿絵を描かせて頂きました。
前よりはマシなので、下手な絵でも見れるという方はどうぞ。
因みに横端に居るのは主人公です。
(髪の毛切ってる前提の主人公です。)
主人公は超絶雑なので悪しからず。
絵も小説も、腕としてはまだまだ未熟です故、ゆっくりとお付き合い頂ければ有難いです!
ㅤ一つ仕事を終えた九条大祐達は、木で作られた椅子とテーブルの上で屋台で買い上げた飲食物を口にしていた。
ㅤ天王寺飛鳥、そしてもう一人をメンバーに加えて。
「…へぇ、まだそんなZ/Xいたんだ」
「へっきーも気を付けなよ?エレシュキガルさんが奪われないようにさ」
「それ、そっくりそのまま返してやるよ」
ㅤ九条は親友の森山碧を揶揄った積りでそう言い放ったが、ブーメランで返されてしまった。
ㅤ更に追撃を喰らうかの如く、森山碧の後ろから現れたエレシュキガルに。
「私が碧を嫌う事は先ず無いわ。…貴方こそ、この程度で止まっている積りなら何時か後悔する」
「忠告どうも。そうならないように頑張るからさ」
「…話の分からない奴だ」
ㅤエレシュキガルからの言葉すらスルーする九条。
ㅤそんな彼を内心心配している森山碧。
ㅤ長年友達付き合いを続けている彼には察していた。
ㅤ九条が心の何処かで焦っているという事を。
ㅤそれを態度に表さない為、少々反抗的な意を示している事を。
ㅤこのままじゃ駄目だ。
ㅤ何かきっかけを作らないと、九条の心の中はそればかりだった。
ㅤ森山碧は考える。
ㅤどうすればこの臆病者を動かせるか。
ㅤ女性からのアピールが無い限り自ら動こうとしない此奴を、どうしてくれようかと。
…だが、女性からアピールが無い限り、というのは只の逃げだ。
ㅤ九条大祐という男は、好意を抱いている人に嫌われるのが怖くて逃げているだけだ。
ㅤそれに気付いた森山碧は、複数の作戦を閃く。
「リゲ…ル…」
「あづみ、まだ休んでて」
「うん…」
「…ところで、へっきーはあづみさんのこの症状とか分かる?」
「あ?あぁ」
ㅤ当たり前だろ風な発言をする森山碧に、九条大祐はがっついた。
「今直ぐ教えて頂戴」
「…ったく、こういう時は積極的なのに、もったいねー人間だよな」
「俺の話は良いから」
ㅤ各務原あづみは元々病弱な体。
ㅤそんな彼女の身に何かが起こると我先に解決しようとするのが九条だ。
ㅤ然しその積極性が恋愛に活かせないのが彼の残念な部分。
「まぁまぁそう急くなって。割りかしタイミングが重要なんだからよ」
「はぁ…?」
ㅤ半ギレと疑いが5割5割でどうすれば良いか分からなくなった九条は、教えてくれそうに無い森山碧から離れ、各務原あづみの傍らへ寄る。
ㅤだが、森山碧に腕を掴まれて引き戻されてしまった。
「…へっきー、良い加減何がしたい訳?」
「取り敢えずお前は此処に居ろ。少しの間で良い、あづみとやらに近付くな」
ㅤ九条は態と、森山碧の言葉を聞き逃そうとするが、もう何年も経つ親友関係の人間の言う事だけは素直に聞き入れた。
ㅤ苦しんでいる各務原あづみを、遠くからしか見れない。
ㅤその苛々は段々と彼の心に積もっていく。
(作戦通り、後はーー)
「天王寺氏、其処で横たわっている女の子を看病してやって」
「はぁ!?僕が!?」
「………」
ㅤ森山碧の提案に、九条は只管無言に各務原あづみを見つめていた。
ㅤ自分が近付く事すら許されないのなら、他の誰かに看病して欲しい。
ㅤ自分以外の誰かが彼女に触れるのなんて死にたくなる位に嫌だが、それで彼女が楽になれるのなら…。
ㅤというのが九条大祐、現状の心境だ。
ㅤ天王寺飛鳥はそんな九条に申し訳無さそうにして、各務原あづみへと手を差し伸ばす。
ㅤだが。
「…何?あづみに何の用?」
ㅤ丸で鬼の形相の様な表情を浮かべているリゲルが、天王寺飛鳥を更に睨み付ける。
「…やっぱり、大祐君じゃないと駄目らしいで。はよ此方にきいや」
ㅤこうなる事は最初から薄々気付いていた天王寺飛鳥は、若干呆れながらも九条へ声を掛けた。
ㅤそんな、優しさが滲み出している彼の言葉に九条は顔を下に向ける。
ㅤ応答も一切無し。
ㅤ只下を見ているだけ。
ㅤ自分への落胆を隠し切れていない。
「…ふぅ、着物ってこんなに暑かったかしら…?」
「だいすけ、おまいい、しにいく!」
「……きさらちゃん」
ㅤ俯いて動かない九条の目の前で、百目鬼きさらは両手を広げて自分をアピールする。
ㅤ流石の彼も、目と鼻の先でそんな事をされたら気付く。
ㅤニコニコと笑顔を見せる百目鬼きさら。
ㅤそこはかとなく心配の眼差しを含めたその瞳。
ㅤ九条は自分を元気付けてくれようとする百目鬼きさらをじっと見つめ。
ㅤ頭の上に手を置いて撫でてやる。
ㅤすると、彼女は至極嬉しそうに九条の膝下へ駆け寄る。
ㅤそして必死になりながら膝の上へよじ登る。
ㅤその光景を見兼ねた九条は、百目鬼きさらの両脇を抱えて自身の膝の上にちょこんと乗せた。
「あいがとっ」
ㅤ彼女はそう言って、足をばたつかせる。
ㅤ九条はこうして、何度も百目鬼きさらに癒されて来た。
ㅤ見ているだけで心が静まり、浄化されていくというのは正にこの事。
ㅤ然しそれは百目鬼きさらに限った話では無い。
ㅤ今更ながら彼は各務原あづみ、リゲルという存在其の物に癒されている事に気付かされた。
ㅤ本当に今更ながら…いや、忘れていたと言った方が正しいだろう。
ㅤずっと一緒に居て、もう二度と離れ離れになる事は無い、そんな過信が九条の心の何処かに芽生え。
ㅤ二人の存在、大切さを隅に追いやって。
ㅤ事を進めるのは何時でも遅くは無いと錯覚。
ㅤ結果、中途半端な愛情、熱意を注いでしまった。
ㅤ其処に気が付いた九条大祐は、ハッと我に返る。
(…案外、気付くの早かったな。きさらちゃんに感謝しろよ、大祐)
「…此方こそ有り難う、きさらちゃん」
「うゅ?」
ㅤ九条はそう言うと、百目鬼きさらの腹部の前に腕を置き、ぎゅっと抱き締める。
ㅤ出来るだけ苦しくさせないように、優しく。
ㅤ彼の卒然たる行為に一瞬たりともビクつかない百目鬼きさら。
ㅤ寧ろ、九条の腕を自身の腹部に押し付け「もっと強く」と言わんばかりにアピールする。
ㅤその要望を了承した九条は百目鬼きさらの体を、自分の体に密着させた。
「うゆゆ〜♪」
「ふふっ、そんなに嬉しいの?」
「うえしいっ!」
(先ずはきさらちゃんへの積極性を示したか。だが、問題は…)
ㅤ丸で兄妹の様に親しく、仲良く会話をしている二人を見て森山碧は安心と不安を感じていた。
ㅤ誰かを愛すると誰かが犠牲になる可能性も生まれる。
ㅤそれはその人自身が幾人もの人達に愛されているのならば、以ての外。
ㅤ独り孤独に生きている人種には分からない話だ。
ㅤ事実、九条大祐自身が百目鬼きさらを構ってあげる度に、彼を想う人達は少なからず傷が付く。
ㅤ現在進行形で、各務原あづみとリゲルの二人がその対象になっていた。
ㅤ彼女達は羨ましいという感情が込もった眼差しを九条へと向けている。
ㅤだが、各務原あづみは直ぐに視線を逸らし、座っているリゲルへ目を移す。
「…リゲ…ル…何だか…体が暑い…よぅ」
「あづみ!?顔が真っ赤!」
「後ね…大祐くんの…事…ずっと見てると…ね、胸が…」
「これって…まさか…!」
ㅤ味わった事の無い感覚に襲われ、自身の病状を必死にリゲルへ伝える彼女。
ㅤ然しリゲルには思い当たる節があった。
ㅤこの症状は、自分も患った事があると。
ㅤいや、大前提として病気では無いと。
ㅤ苦しそうに胸へ手を当てる彼女。
ㅤ流石に我慢の効かなくなった九条が、堪らず各務原あづみへ近付く。
ㅤ勿論、百目きさらには一度離れて貰って。
ㅤ一瞬止めに入ろうとする森山碧だったが、彼は寧ろその場から一歩二歩後ろへ下がる。
ㅤ状況を理解する為に頑張って頭を回転させている天王寺飛鳥を連れて。
ㅤ各務原あづみは、九条大祐が側に居る事に気が付くと、直ぐ様其方を向いて手を伸ばす。
ㅤ段々と差し伸べられる彼女の手を、九条はぎゅっと握る。
ㅤそして横になっている各務原あづみの体を、力強く抱き締めた。
「…!大祐…くん…?」
ㅤ毎度の事乍ら、行動が卒然過ぎる九条。
ㅤ然し彼女はそんな九条を全身で受け入れて…。
「…違うね…大祐くんが、私を受け入れてくれてるんだよね…」
「…何時も何時も、ごめん。俺がこんなんだから…変なプライドなんか持っているから…」
「大祐くん、急にどうしたの?」
ㅤ丸で互いを愛し合うかの様に抱き合う二人を見て、リゲルは何かを言い放とうとした。
ㅤ然し、口にする前にぐっと抑える。
ㅤそして二人に気付かれない様、静かにその場を立ち去ろうとした。
ㅤだが、九条が咄嗟にリゲルの手を掴む。
ㅤ彼の手の感触を直に感じたリゲルは、体をビクリとさせ、ゆっくりと後ろへ振り向いた。
「…私はこの場に不用でしょう?」
「いえ、リゲルさんにも話したい事が有ります。だから此処に居て下さい」
「…正直に言わせて貰うわ。見てる此方が辛いの」
「…」
ㅤ一行にリゲルの手を離そうとしない九条。
ㅤ何時もと様子が違う彼を疑問に思ったリゲルは、しょうがなくその場に残る事に。
ㅤ其処から10秒程。
ㅤ各務原あづみと九条はお互いに手を離した。
ㅤだが、未だにリゲルの手は離さない。
ㅤその間、リゲルはずっと外方を向いて九条と目を合わせない様にしていた。
「それで、話って?」
ㅤ若干呆れ口調で尋ねるリゲル。
ㅤすると九条、今度は彼女の体を抱き締める。
「だっ、大祐!?」
ㅤ一体全体、何がどうなったのか状況を把握仕切れないリゲル。
ㅤそんな彼女に対して九条は、自身の手を彼女の後頭部へ当て、自分の胸元へ押し付ける。
ㅤゼロ距離で伝わって来る彼の鼓動に、リゲルはどうして良いのか分からず仕舞い。
ㅤ只顔を真っ赤にさせて九条の好きな様にさせて。
ㅤリゲルのその反応に、九条は自分の腕を彼女の背中に回し。
ㅤ最早離す気等更々無いと言わんばかりに抱き締め続ける。
ㅤリゲル…彼女自身、ずっと望んでいた事を彼がしてくれたという満足感に浸っていた。
ㅤぽーっと気が抜けた風な表情を見せているリゲル。
ㅤ九条はそんな彼女から一度手を離し、彼女の顔と自身の顔を目と鼻の先で見合わせる。
ㅤそして彼は、頰を赤く染め何かを期待しているリゲルの額と、自分の額をぴったりとくっ付けた。
「…!」
ㅤ既に目と鼻の先の距離すらを通り越したゼロ距離。
ㅤ流石にリゲルも目が覚め、慌てて後ろへ下がろうとする。
ㅤ然し乍ら九条は、予め彼女の背中へ回していた腕を引き寄せてリゲルの体を離さない。
ㅤ
「ほ、ほんとにっ、どうしちゃったの、大祐///」
ㅤ彼女は至極恥ずかしそうにそう言いながらも、抵抗の意思は示さない。
ㅤ要するに、このままが良いという事だ。
ㅤそれを察した九条は、互いの額を一旦離す。
「…ずっと、こんな事したかったんですよ」
「えっ?」
「リゲルさん、もうちょっと此方に来れます?あづみさんを膝の上で休ませたいので」
「え…えぇ」
ㅤもうどうすれば良いのか分からなくなって来たリゲルは、素直に彼の指示に従う。
ㅤ九条は横になっている各務原あづみの近くまで寄り、彼女の頭を膝の上に乗せてやる。
ㅤすると各務原あづみは更に彼を求めるかの如く九条の太腿へ顔を擦り付けた。
ㅤそれを見ていたリゲルは九条の肩と自身の肩をピッタリと合わせ、頭を彼の肩へコテンと置く。
ㅤあのリゲルさんが珍しい…等と思いながらも、九条はリゲルの腰へ手を回す。
ㅤそして引き寄せる。
(ラブラブじゃん、後は彼奴次第だな…)
ㅤ三人以外誰も入れないであろう空間を見つめながら、森山碧は少しばかり笑みを零す。
(碧が笑ってる…写真に残したいなぁ)
ㅤエレシュキガルが、ある意味人間の作りし物に興味を示した瞬間だった。
ㅤ天王寺飛鳥、フィエリテの二人もそんな三人を見て微笑んでいる。
「いやー、やっぱりモテる男は違うなぁ」
「…飛鳥もその一人である事に、何時気付いてくれるのでしょう」
「フィエリテはん?何か言うた?」
「言ってません!」
ㅤ妙に機嫌の悪いフィエリテに困り果てる天王寺飛鳥。
ㅤ彼も、何時になったら自分がモテ男と気付けるのか。
ㅤそれには時間が掛かりそうだと呆れるフィエリテ。
ㅤはぁ〜…と大きく溜息を吐く彼女を気遣うべく、天王寺飛鳥は屋台へと誘い出した。
ㅤ賑わいを見せる屋台へ歩いて行く二人を見て、エレシュキガルは人差し指を自分の唇に当てて行きたいアピールを示す。
「ん?あぁ、良いよ。気を付けてな」
「ありがと、碧」
ㅤエレシュキガルは森山碧にお礼として抱き付く。
ㅤ只単にこうしたかった、というのは彼に内緒で。
ㅤ10秒程度すると手を離し、エレシュキガルは屋台の方へと歩いて行く。
ㅤ完全に彼女が視界から消えたその時、森山碧は胸を抑えて悶え始めた。
(くっそ…可愛過ぎだろ、ていうか後ろから大きな二つの物体を押し付けられたんじゃあ、危うく襲う所だったぞ…!)
ㅤ完全にエレシュキガルラブな森山碧だった。
「はっ…!大祐達は?」
ㅤ可愛さ、そして積極性。
ㅤ二つの魅力を持つエレシュキガルに苦しんでいると、森山碧は、はっと我に帰る。
ㅤまぁな、エレシュキガルは可愛い、よりも美しいだよな。
ㅤなんて未だに彼女の事を考えなから。
ㅤ森山碧は再度、九条大祐等に視線を向ける。
ㅤ三人は仲良くお喋りタイムの様だ。
ㅤ相も変わらず各務原あづみの頰は赤いが、ニコニコと笑いながら二人と話している。
ㅤリゲルは各務原あづみを見て微笑んで…。
ㅤ何にせよ、三人共距離感が凄い近い。
(このままキスまで持ってけよ〜…今誰も居ないんだから)
ㅤふと、ん?と頭にクエスチョンマークを浮かべる森山碧。
ㅤあ、俺が居るか、と一人でボケる。
ㅤ彼は一回咳込みをして三人の監視を続けた。
「あづみ、汗が凄いわね。本当に大丈夫なの?」
「う、うん。私にも何が起こっているのか分からないけど、多分大丈夫」
「とは言え心配だ。汗で風邪を引くやも知れないから、リゲルさん、これであづみさんの体を拭いて貰えますか?」
「勿論!任せて」
ㅤ何故だか機嫌の良い彼女。
ㅤ恐らく九条大祐と久しぶりの会話、各務原あづみとの幸せな時間を過ごせているからだろう。
ㅤ九条はデータボックス(ブラックボックス)から少し大きめのタオルを二枚取り出し、リゲルへ手渡す。
ㅤそれをしっかりと受け取り、上機嫌で各務原あづみへ近付く。
「あら、そう言えば着物だったわね。あづみ、ちょっと脱いでくれる?」
「えっえっと、大祐くんの目の前で…?」
「あぁ、俺は彼方向いてるんで安心して下さい」
ㅤそう言って九条は、先程まで向いていた逆方向へ体を向ける。
ㅤ本当は屋台の方へと足を運んでこの場から居なくなろうと考えた彼だが、先の事を踏まえて女性二人だけでは危ないと。
ㅤそう思って此処に残る事を決めた。
ㅤ然し、この判断が九条を苦しめる事となる。
ㅤ因みに森山碧は自重し、一旦その場から離れていた。
ㅤ周りに誰も居ない事を確認したリゲルは、徐々に徐々にと、着物の帯を解いていく。
ㅤその際に着物や帯同士が擦れる「シュルシュルッ」という音に、ピクッと反応する九条。
ㅤリゲルは着物の上部分だけを脱がし、各務原あづみの肩を露出させる。
ㅤだが、今の季節は冬。
ㅤそんな中での肩露出は寒くて凍えてしまうだろう。
ㅤその為のタオル二枚なのだ。
ㅤ先ずリゲルは、1枚目をタオルを手に取って各務原あづみの肩にふわっと乗せる。
ㅤそして2枚目を使って彼女の背中を拭いて行く。
「あづみ、寒いでしょう?」
「うーん…でも今ね、すっごく体が暖かいの。…ちょっと、触ってみて」
「あ、あづみの体に!?」
「そうすれば、何れだけ私の体が暖かいか分かるよ?」
「そ、それじゃあ、お言葉に甘えさせて貰うわね」
ㅤリゲルは恐る恐る、各務原あづみの背中へと手を伸ばす。
ㅤ何方かと言えば冷たい彼女の手が、ヒタァっと触れた時。
「んっ…」
ㅤ一瞬体をビクッとさせ、甘い声を出す各務原あづみ。
ㅤそんな彼女にリゲル、後ろを向いている九条は爆発してしまいそうな精神を必死に持ち堪えていた。
「ほ、ほんとだ、あっつい…」
「えへへ…でも、大丈夫だよ。偶に大祐くんとリゲルを…凄く求めたくなるけど」
「…!」
ㅤ笑顔で衝撃の一言を言い放つ。
ㅤ直ぐ後ろでは一人の男が悶えに悶え苦しんでいた。
ㅤ一方でリゲルは、咄嗟に各務原あづみを抱き締める。
「り、リゲル…?」
「…私は、何時もあづみが恋しい」
ㅤ衝撃発言に衝撃を重ねて行くリゲル。
ㅤ背後で美人美少女という、自身の恋人二人が抱き合っていると想像するだけで脳内制御が効かなくなる九条。
ㅤ同時に、彼女達が愛し合っていた事は承知済みだったからか、嬉しいという感情も湧き上がる。
ㅤ二人が仲良しの領域を超えて、付き合い始めたりしたら…等と彼は考えてしまう。
ㅤ百合の類には一切の興味を持ち得ない九条だが、二人のそれには興味無いと言えない。
ㅤ自分が居なければ、間違い無く百合ルートで完結したであろう。
ㅤそれはそれで良かったんじゃないかと思い浮かべてしまう。
ㅤ九条は笑みを浮かべ、ゆっくりと後ろを振り向く。
ㅤ
「…ちょっくら買い出しに行ってきますんで、二人の時間をーー」
ㅤ引っ込み思案な九条はやはり遠慮してしまう。
ㅤ各務原あづみとリゲル、二人が楽しんでいる時間を邪魔したくないから屋台へ赴こうと思った彼は、それを伝えようとした。
ㅤだが、二人の方を振り向いた瞬間、気付かされる。
ㅤ各務原あづみの体を拭き終わる前だった為、彼女は未だに肩付近にタオルを掛けている。
…筈だった。
ㅤ彼女はタオル其の物を取り、肩を露出していた。
ㅤ此方を向いて、恥ずかしそうに頰を赤く染め、けれど目は何かを求める様な瞳をしていた。
ㅤそれは各務原あづみの隣にいるリゲルも同じで、彼女も又、帯は緩めて無いものの態と着物をはだけさせていた。
「…え、っと?二人共どうし…ました?」
ㅤ彼女達に何が起きたのか察せない九条。
ㅤ只只管に動揺するしか無く。
ㅤそんな九条の、各務原あづみが右手を、リゲルが左手を握る。
「あ、あの、あづみさん?リゲルさん?」
ㅤ何も喋らない二人。
ㅤこうなる確固たる思い当たりが無い九条は、不意に彼女達の手を握り返す。
「…大祐くん、お願いだよ…」
「お願い…?」
「何時もそうやって、私達の為に何処か行こうとしないで…」
「あづみ…さん…?」
ㅤ彼女は半泣きになりながらも、自分の想いをきっちりと伝える。
ㅤ丸で先とは逆の立場になりつつある。
ㅤ各務原あづみの卒然な言葉に、どうすれば良いかと戸惑う九条。
「お、俺は何処にもーー」
「いえ、大祐。貴方は何かあると直ぐに何処かへ行こうとするわ。私達を引き止めたり、無理矢理でも輪に入ろうともしないで」
「だって…!」
「もし、…有り得ないけど、私達が他の男共に目移りしたら、大祐はどうするの?」
「…どうするも何も」
ㅤ九条は悔し気に顔を下げる。
「貴方は恐らく、私達を手放すでしょ?引き止めたりなんかしない」
「…!!!」
「大祐くん…大祐くんは、私達をどう思ってくれてるの?」
ㅤリゲル、各務原あづみの言葉に返答出来ない九条。
ㅤそれは自分にはどうする事も出来ないと認めているからだ。
「……人とは、独占欲の強い生き物です」
「…?」
「若し二人と恋人関係を築いたのが俺じゃなかったら、意地でも二人を離そうとしないでしょう。例え二人が離れたいと言っても」
「…私達には分からないわ。けれど、それが普通の考えなのね?」
「無論、美人美少女である二人を手放す等、一般的には有り得ないでしょう。それは俺も同じです」
ㅤすると九条は、二人の手を強く握り締める。
ㅤそして顔を上げ、二人の瞳をしっかり見つめながら話を続ける。
「けど、俺は違います」
「…どうして?」
「二人を手放したくない=自分の独占欲という下らない理由で二人を縛るのと同じです。そんな自分勝手な…」
「私とリゲルは…大祐くんになら、縛られてもーー」
「俺に二人を縛る権利なんて無いよ。況してやそれは以前の青の世界だ。解放した鳥を又捕まえて、鳥籠の中で飼う。何て外道なのかってね」
ㅤ段々と自分を取り戻して来た九条は、冷静に、坦々と話し続ける。
…そう、これが九条大祐の思考だ。
ㅤだからこそ、各務原あづみやリゲルに対して容易に手を出そうとしなかった。
「それに、若し二人が俺から離れたいと思った時。次、好きになったその人にこそ二人を絶対に幸せにして貰いたくて。あづみさん、リゲルさんが純潔なままで送り出してあげたくて…。俺は所詮こんなんで、それでも其々色んな魅力を持った女性から好意を抱いて貰って…好き、なんて言われたら断れなくて。側から見れば女誑しとかハーレムだと思われるよね。…でも俺はそんな考えを持った事は無いよ。好意を寄せてくれたならその想いに答えてあげなきゃ、なんて使命感が働いてね。例え相手のその女性が、大人の恋愛をする為の道でも構わない。好きと言ってくれたからには、その間だけでも幸せな時間を過ごして欲しくて。…何時か絶対に、二人からは見限られるなんて心の隅で思っていた。そしたら俺は一人に…なんて、見えない恐怖に怯えて。それなら逸そ…二人に俺という存在を嫌でも覚えさせようとも考えたけど、やっぱり俺にはそんな事する度胸も無くて。じゃあ、二人が俺から離れて行く時位は笑顔で見送ってあげたいと思って、極度な触れ合いは出来るだけ避けていたんだ」
「「……………」」
(大祐…その気持ちは流石に察せなかった)
ㅤ草陰に隠れながら聞き入ってしまっている森山碧。
ㅤ親友の彼でさえ、九条大祐という男の本心を察する事は出来なかった。
(だが、それは大祐の見当違いだな)
「…それで、大祐くんは幸せなの?」
「えぇ!二人が幸せなら…俺は…それで、満足です…」
「大祐…じゃあどうして目を逸らすの…?」
ㅤ九条大祐はその言葉を聞いて、二人から手を離そうとする。
ㅤだが然し、二人は彼の手を離すまいと、ぎゅっと握る。
「…使命感で好きになられても、全然嬉しく無いよ…」
「………」
「私やあづみ…いえ、大祐を好きだと想っている人達は、貴方から離れる気なんて更々無いのよ。寧ろ一つになりたいと望んでいる。それを大祐は、使命感で好きになっていたて言うの!?」
「…違う…」
ㅤリゲルは感情がそのまま口に出てしまい、声を荒げる。
ㅤ各務原あづみはリゲルの隣で、九条大祐の瞳を見つめる。
ㅤ九条大祐は否定と肯定が混ざり合い、どう答えれば葛藤していた。
「「大祐(くん)は私達を使命感なんかでーー」」
「違う!!!」
ㅤ先程のリゲルの声よりも大きく、響く声で、九条大祐は怒鳴る。
「俺は本心から二人を愛しているんだ!…二人だけじゃない、こんな俺に好意を寄せてくれている女性全員を…使命感なんかじゃない、本心から、本当に愛しているんだ」
「…大祐、貴方のその言葉が聞きたかったの。貴方がそう想い続ける限り、私達が離れて行く事は無いわ」
「私やリゲルも、大祐くんを…その…愛、してるよ。だからね、大祐くんと同じ。貴方の幸せが私達の幸せ」
「あづみさん…リゲルさん…」
ㅤ貴方が愛してくれている、私達も貴方を愛している。
ㅤ二人の口からそんな事を言われた九条は、体から力が抜けて行く感覚に襲われた。
ㅤ
「まぁ…何て言うのかしら、大祐が離れても、私達は追い続けるわ」
「うんっ!大切な大祐くんを、簡単には渡さないからね…!」
「…二人がそう言ってくれるなら、俺は何処にも行かないよ。二人の事が好きなこの気持ちに嘘は無いから。逆にガンガン攻めて行くかも知れないな」
「か、覚悟の上よっ」
「えへへ…わ、私は何時でも良い…よ?」
ㅤ物凄く恥ずかしそうに、頰を紅潮させ、もじもじと体を動かす各務原あづみ。
ㅤそんな彼女を見て、九条大祐とリゲルは又もや爆発しそうになる精神を保つ。
ㅤ然しながら今回は我慢仕切れ無くなった九条。
ㅤ未だに露出している各務原あづみの肩に、直に触れる。
ㅤリゲルは既に露出していた肩を隠していた。
「…もー我慢ならないよ。そうやって誘って、あづみさんったらーーって、ごめん!あづみさんの肌に軽々しく触ってしまった…」
「もうっ、大祐くん、何時迄も気にしてちゃ駄目だよ」
「そうね、ならお姫様抱っこは如何なのって話」
「それはぁ〜まぁ…ね」
ㅤふっと目を逸らす九条大祐。
ㅤそんな彼を見て各務原あづみ、リゲルは笑顔を見せる。
ㅤ二人の笑顔を見て、九条大祐も笑い始めた。
ㅤ最早連鎖的になっている。
「そう言えば、如何して二人共肩なんか出して誘惑して来たんですか?」
「え、えぇと…何でか分からないけど、大祐を振り向かせる為にはああしないとっていうか…」
「随分と珍しかったですね」
「えーとね、大祐くんを見てたら、急に胸が苦しくなって、体があっつくなってね、大祐くんの事しか考えられなくなって…」
「それって…媚やーー」
ㅤ九条大祐がとある性欲活性化薬の名前を口にしようとした瞬間、彼は膝の皿部分に違和感を感じた。
ㅤ小さい手らしき何かを当てられている様な、そんな違和感。
ㅤ彼はテーブルの下に隠れている自分の足元を覗くと。
「き、きさらちゃん!?」
「きぃも、だいすけとおしゃえりすゆ!」
「きさらちゃんも大祐くんの事、好きだもんね〜」
「うぃ!あづも、しぃき!」
「あら、あづみの事は私と大祐が一番好きだと自負してるわ」
ㅤ手を額に当て、今までの空気は何処に行ったのだろうと疑問に感じる九条大祐。
ㅤそれは遠くから見ていた森山碧も一緒だった。
ㅤ何時になったらキスという目標を達成出来るのか。
ㅤ自分が気になっても仕方がない事なのは分かっているが、どうしても手助けをしたくなる森山碧。
ㅤはぁ〜…と、小さな溜息を吐きながら九条大祐の元へ近付こうとしたその時。
「碧」
ㅤ何時の間にか後ろに居たエレシュキガルに呼ばれて、ビクリと驚く。
「ほぁっ!?…エレシュキガル…頼むから、前か横に出て来て…心臓に悪い…」
「屋台のクオリティが低かったから、前に碧が言ってた「こんびに」に行って来た」
「スルー…ていうか…こ、コンビニに負ける屋台のクオリティって…、で、何買って来たの?」
「えーとね…飲み物、主食になる食べ物、後は菓子…これ、ポッキーっていうのかしら?」
ㅤ森山碧はその場で無言の勝利を確信、片腕を天を貫くかの如く思いっきり上げた。
ㅤ彼の唐突な行動にびっくりしながらも、エレシュキガルは考える。
ㅤ何故ガッツポーズなんかしているのか。
ㅤそんなに嬉しくなる出来事でもあったのか。
ㅤ彼女は頭に?を浮かべながら森山碧を見つめる。
「エレシュキガル、そのポッキー1、2本貰って良い!?」
「う、うん。良いけど…」
ㅤ彼女の許可を得た森山碧はポッキーの箱を持って、勢い良く九条大祐等の元へ走って行った。
ㅤエレシュキガルは走り出した森山碧の後ろを、焦りながらもついて行く。
「大祐!ゲームしようぜ!」
「うわぁ、びっくりした…。ていうか何時から其処に居たの…」
「ずっと」
「はぁ!?ずっと!?恥っず!」
ㅤ九条大祐は草陰から出て来た森山碧に驚き、彼の返答に対して、両手で自分の顔を隠す。
ㅤ余程恥ずかしかったのか、森山碧と顔を合わせようとしない。
ㅤだが、各務原あづみ、リゲル、百目鬼きさらは彼の登場に至極微妙な表情を見せていた。
ㅤその表情に地味な傷を心に負った森山碧だった。
「…まぁ、俺の事は良いんだ」
「誰もへっきーの話はしてないよ」
「うぅ…悲しいーーって、ほっとけ。大祐、お前は何時キスする迄に至るんだよ!見てる此方が焦らされている気分だわ!」
「関係無いでしょ。ていうか知らんわ、此方には此方のタイミングがあるの」
ㅤ急かす森山、反論する九条。
ㅤ二人の言い争いを何気無く聞く女性陣。
ㅤ唯一人、各務原あづみという少女を抜いて。
ㅤ彼女は薬の効果が切れたにも関わらず頰を紅潮させている。
ㅤ「キ、キス…大祐くんと…///」と繰り返し口にしながら。
「…でだ、お前が其処までに発展しないからさ、これを使ってゲームしようと思ってな」
「…ポッーーそれな、ゲームって言わないからな!?」
「?ポッキーを使って、どんなゲームするの?」
ㅤ各務原あづみの無知能力が発動、九条は思わず襲い掛かりそうになる。
「名前はまんま、ポッキーゲーム!勿論、参加するのはあづみ様と九条様だよ〜!」
「はぁ!?」
「大祐くんと…ポッキーゲーム?」
ㅤルールを知らない、というかルール其の物が存在しないポッキーゲームに動揺するしか無い各務原あづみ。
ㅤリゲルも何が何だか分からずにいた。
ㅤデータベース→ゲーム関連→で開いても出てこないポッキーゲーム。
「まぁ、あづみと大祐のペアなら安心ね。やってみれば良いじゃ無い!」
ㅤ軽々と了承してしまうリゲル。
ㅤ彼女の中で九条大祐という存在は、最早既に各務原あづみの安定剤になっていた。
「まぁ、リゲル殿も含めて、だけどな」
「私も!?」
「きさらちゃんは俺と仲良く遊んでーー」
「いあっ!」
ㅤ百目鬼きさらは咄嗟に九条大祐のコートをぎゅっと握る。
ㅤ森山碧は悔しくて後ろを振り向くと、エレシュキガルに抱き締められた。
ㅤ丸で子供をあやすかの様な手付きで頭を撫でてやり、胸元に森山碧の顔面を押し付ける。
ㅤ孤独から解放された嬉しさ、締め付けられる苦しさ。
ㅤ両方相まってどの選択肢を取れば良いのか分からなくなる森山碧だった。
「…大祐って、ああいうのどう思う?」
「どうもこうも…まぁ、少し羨ましいなぁ的な?」
ㅤエレシュキガルの行っている行為について、リゲルが九条大祐に意見を求める。
ㅤ彼からすれば、一応興味はあるらしい。
ㅤ今迄女性をお姫様抱っこし、女性に甘えた事の無い九条にとってあれがどういう感覚なのか掴めずにいた。
ㅤルクスリアから頻繁に抱き付かれるのに慣れた御蔭なのか、ルクスリア以外の女性にやられた事が無いからなのか。
ㅤ何方にせよルクスリアという女性が絡んでいる事に変わりはない。
ㅤという事は必然的に慣れた、という事になってしまいそうな気がしそうだ。
ㅤ九条があの行為に羨ましいと感情を持つ事が分かったリゲルは、何か決めたのか、意を決した風の表情で彼を見つめる。
ㅤ一方で九条はポッキーゲームをどうしようか、とばかり考えていた。
「と、取り敢えずこのポッキーをあづみ嬢とリゲル嬢で口に咥えて」
「は、はいっ」
「貴様の指示に従うのはあまり気に乗らないけど…」
ㅤ各務原あづみは恐る恐る、リゲルは嫌々、渡されたポッキーを口に咥える。
「…で、どうすれば良いのかしら」
「大祐が、反対側からポッキーを食べる。食べ切れば成功!」
ㅤそんな森山碧のルール説明に、リゲルは一瞬吹き掛ける。
ㅤ未だに状況を理解しついない各務原あづみは、ゆっくりと九条大祐へ近付いて行き。
ㅤ彼の目の前で一言。
「…大祐くん、ぽっきーげーむ、しよ?」
ㅤ九条大祐は急に肺呼吸が出来なくなる感覚に陥った。
ㅤ各務原あづみの可愛さ、そして態となのか短いポッキー。
ㅤそんな彼女のあざとさに屈した九条は、段々と口を近付けて行く。
ㅤそしていざ、各務原あづみの咥えているポッキーを、九条が咥えようとした時。
「あー!いたー!」
ㅤ少し遠い場所から少女らしき声が周囲に響き渡る。
「な、ナナヤ…」
「良いところで邪魔しやがって…本当、大祐も大変だな」
「もう、ずっと探してたんだからねっ。大祐くんが何処にも居ないから…でも、見付けた!今からでも私と遊びにーー」
「待って、頼むから待って!」
ㅤ空気を読まずに九条を後ろから羽交い締めにするナナヤ。
「きぃとあそぶのっ」
ㅤ負けじと足元にくっ付く百目鬼きさら。
「そんな簡単に大祐くんは」
「渡さないわ!」
ㅤそう言いながら九条大祐の両腕をがっしり掴む各務原あづみ、リゲル。
「んじゃ、俺はエレシュキガルと屋台回って来ようかな〜…」
「屋台、全部回ったけど…」
「うそん!?」
ㅤ地味に空回っている森山碧、エレシュキガル。
ㅤ今は何処で何をしているのであろう天王寺飛鳥。
「ちょっと、順番、お願い!頼むから!」
ㅤやはり側から見ればハーレム男な九条大祐。
ㅤ既に正月等関係無くなっている彼等の日常は、常に幸せな日々に包まれていた。
ーーー
「さぁ、屋台を制覇するのじゃ!」
「何であんさん此処におるんや!」
「卑弥呼さん…太っちゃうよ?」
「食べれば何時かは…ソリトゥス、お主みたいな胸にーー」
「こら飛鳥!お金の使い過ぎですよ!」
「何でこないなってしもうたんやあああぁぁぁ!」
ーーー
「ふむ…最後は展開を早めてしまったかな?だが、これが彼等の日常だ。未来の姿だ」
「パパ〜、お茶が入ったデース!」
「有難う、七尾。…まさかあのナナヤくんが九条君に付くとは、予想外だったが」
ㅤ男は手に持っている手帳を机の上に置く。
「ふぅ…良い物が書けたな…ん?」
「ふふ…残念、私だよ」
ーーー
カール・ワイバーンの手記
ーーー
はい、という訳で今投稿していた番外編はカール・ワイバーンさんの手記だったという事で。
一応未来の主人公達を描いた話という…。
そして、次回投稿出来るのは2月14日になるかもしれません。
次も番外編ですが、何か特別な日が無い限りは本編を再開しようと思っております。
…というか早く本編を進めたい。
2月14日までに、出来るだけ一話は更新したい!
(カール・ワイバーンであってるよね…?)