Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜(番外編)   作:黒曜【蒼煌華】

37 / 37
来週もしっかり、本編も番外編も更新出来る様に(*´꒳`*)


happy Valentine's day No.4

「大祐くんっ、きさらちゃんの髪の毛…」

「っ!そうでしたね…あづみさん、有難う御座います」

「私も手伝おうかしら?」

「抑、貴女がしてあげるべきでは…」

「じゃあ、最初から私に連絡すれば良かった、という話にはーー」

「なりませんよ。連絡出来る状況じゃ有りませんでしたからね。あづみさんが来て下さって、本当に助かりましたよ…」

「えへへ…」

 

ㅤそう言った会話を繰り広げながら、きさらちゃんの髪の毛を洗って行く。

ㅤ横隣であづみさんが、きさらちゃんの巻いているタオルを手で抑えてくれていて。

ㅤヴェスパローゼさんは変わらず…。

ㅤと、思いきや。

 

「…ふふっ、流石にその体勢は辛いでしょう?やっぱり私も手伝うわ」

 

ㅤそう、此方に近付き。

ㅤ寝ているきさらちゃんの背中を、頭を支えてくれたではないか。

ㅤ正直な話、驚く以外に他は無い。

ㅤだが。

 

「…ですけど、ヴェスパローゼさん。それでは貴女が濡れてしまうのでは…?」

「それでも、貴方の目の前で裸体になる訳にはいかないでしょう?」

 

ㅤふふっ、と彼女は微笑み、優しい瞳をきさらちゃんへと向けている。

ㅤ本当に…我が娘に対する笑みの様だ。

ㅤ何とも、母性本能を感じさせられる。

ㅤだが、その言葉には何とも言えない…返せない。

 

ㅤとはいえ、ヴェスパローゼさんは今日もドレス姿だ。

ㅤ相も変わらず、そのドレス姿が似合っているのは…彼女自身が美しいからと偽り無く言えるだろう。

ㅤ派手ながらも黒という色で控えめに見せ、何方かと言えば、その綺麗な肌を露出している方という…。

 

ㅤ女王様其の物の、基本スタイルなのか。

ㅤ少しグッと来るものが有る。

 

「…あら」

「あら?」

「…?」

 

ㅤふと、ヴェスパローゼさんの一言に、俺とあづみさんが同じ反応を示した。

 

「もう…仲が良いアピールは、沢山見てきたわよ?」

「いやいやいやいや…、絶対違う話ですよね」

「ええ、勿論。…ふふっ、少し…羨ましいと思うのは、駄目かしら」

「…!」

 

…まさかの、だ。

ㅤヴェスパローゼさんのこう言った、急に方向転換して攻めてくるのは卑怯だ。

ㅤ思わずーー

 

「大祐、顔が赤いわよ?」

「っ、話を戻しましょう…」

「あら…残念ね」

「大祐くん、だ…大丈夫…?」

 

ㅤ俺が顔を赤くした事に対し、弄ぶ様な態度を示すヴェスパローゼさん。

ㅤ一方で、俺が直ぐに逆上せる事を知っているからこそ…心配してくれるあづみさん。

ㅤこう見ると…珍しい二人と一緒に共同作業だ。

ㅤあづみさん&リゲルさんorベガさんや、ヴェスパローゼさん&きさらちゃんorベガさんor和修吉さんは…当たり前の様に目にする光景だが。

ㅤあづみさんとヴェスパローゼさん…。

ㅤ二人は、どんな会話を繰り広げるのだろうか。

 

「………って、ヴェスパローゼさん」

「何かしら?」

「先程浮かべられた疑問、一体何に対してだったのです?」

「知りたいのかしら?」

「勿論…このままでは、気になったままです」

「ええ、別に構わないわ」

 

ㅤ先にも見せた『ふふっ』という優し気な笑みを、彼女は浮かべる。

ㅤ然し、その笑みに隠された邪の瞳を、俺は見逃さなかった。

 

…ふと、片腕を掴まれる感触が伝わって来る。

 

「………………」

 

ㅤ其方を見ると、あづみさんが訴え掛ける様な瞳で此方を見つめていた。

ㅤ『大丈夫か』と。

 

ㅤそんな彼女に対し、俺は『大丈夫』という微笑みを返し、『心配しないで?』という意味を込めてあづみさんの頭を撫でる。

ㅤすると、小動物の様に身を縮こませるあづみさん。

ㅤ頰を赤らめ、それでも、にこにこと笑っている。

ㅤ反則級の可愛さだ。

 

「…私の口を開かせないつもりかしら?」

「そういう訳では御座いませんよ…」

「ふふっ」

 

ㅤヴェスパローゼさんは相変わらずの調子で…だが、確かに。

ㅤ心配してくれるあづみさんへ、反応を返してあげるのも大切だが、会話を交えているヴェスパローゼさんへとしっかり返答するのも大事。

ㅤ其処等辺、器用にこなせなければ…。

ㅤ彼女達から好意を寄せて貰っている身として、情けない。

 

ㅤとは言え、人には限界が有るのも又事実。

ㅤだからこそ、自分に出来る最大限を、彼女達へ。

ㅤむぅ…難しい事に変わりは無いが。

 

「考え事かしら?」

「何故バレたのですかね…」

「貴方と居る時間は、きさらや其処の少女よりも確かに少ない。けれど…此れでもしっかり見ているのよ?」

「…ヴェスパローゼさんはーー」

「ふふっ…貴方を何時でも、私の物に出来る様に」

「俺は、物じゃ、御座いませんから!」

 

ㅤ全く…隙を見せたら直ぐにでも襲って来そうな勢いだ。

ㅤそれがヴェスパローゼさんらしい、とも言えるが…。

ㅤあづみさんの目の前でそう言った事を言うのは、狙ってなのか。

ㅤ何れにせよ、此れではあづみさんが…。

 

「…むぅ」

「あら、頰を膨らませて…どうしたのかしら」

「だ、大祐は…渡さない…もん」

「…ふふっ、良い表情ね。流石、一線を超えただけは有るわ?」

「はわっ…///」

 

ㅤヴェスパローゼさんのお言葉に、あづみさんが可愛らしい反応を見せる。

ㅤきさらちゃんは相変わらず、胸元で寝息を立てているし…。

ㅤ可愛い2人と美しい1人。

ㅤこうして考えると、何だか感慨深いものが有る。

ㅤ然し…悩み始めては又、ヴェスパローゼさんに察せられる。

ㅤ此処は取り敢えず、物事をしっかりと片付けてから、だな。

 

ーーー


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。