Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜(番外編)   作:黒曜【蒼煌華】

34 / 37
本編と同時に此方も更新致しました(*´꒳`*)
番外編『happy Valentine's day』、バレンタインのお話で御座います。
今回も長くなってしまいましたので、毎週水曜日、本編と一緒に更新致します。
今回も甘々な内容ですので、閲覧される方は十分にお気を付けを。
『各務原あづみ happy birthday!』の甘さは超えられないと思われますけど…一応ながら。
宜しければ、此方も是非、見て頂けると嬉しいです。


happy Valentine's day

ㅤ2月14日。

 

「くー………………すー……………」

 

ㅤ今年もこのイベントがやって来た。

 

「……うみゅ…」

 

ㅤ色々と大変な1日。

 

「……………ゅ…」

 

ㅤそう、バレンタインだ。

 

「………………………だい………しゅけ……」

 

ㅤ朝っぱらから、中々ハードな事態になり兼ねている。

ㅤ起きたら、自分の寝ているベッドに7歳の少女が…布団の中へと潜り込んでいた。

 

「………ぅゅ…?」

 

…きさらちゃんは、相変わらずの調子だ。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「だいすけ、おはよっ」

「おはよう、きさらちゃん」

 

ㅤ暫くして、きさらちゃんが俺のベッドから元気良く起きてきた。

ㅤ彼女が起床した時の為に、軽く口に出来る物を用意しておき。

ㅤするときさらちゃんは、俺の膝の上に座り、此方をじっと見つめて来る。

 

「…ぅゅ」

「食べる前に、歯磨きしに行こうか」

「うぃ」

 

ㅤ早く食べたい。

ㅤそんな心の声が、彼女の表情から察せた。

ㅤだが然し、寝起きは歯磨きをしてから物を口にしないと、色々と大変な事になる。

ㅤ詳しくは語りたく無い。

ㅤ強いて言うなら、寝て起きたばかりの口内には菌が沢山湧いているから。

ㅤとでも言えば説明つくか。

ㅤ兎に角それは置いて、だ。

 

ㅤ何故きさらちゃんが、俺のベッドに侵入していたのか。

ㅤ確かに何時もと変わりないが…部屋の鍵が最早意味を成していない。

ㅤまさかきさらちゃんが解錠出来る訳が無い。

ㅤという事は必然的に。

 

「ヴェスパローゼさんか…」

「…ろーぜ?」

 

ㅤ歯磨きを終わらせ、俺の膝の上に乗りながら菓子類を口にするきさらちゃん。

ㅤしっかりと主食を用意したつもりが、まさかデザートから食べ始めるとは。

ㅤ今度からは、きさらちゃんが主食を食べ終わってからデザートを出すか…。

 

「…ん、そう。ちょっとね。ヴェスパローゼさん…」

「ろーぜ…………、っ!だいすけ、こえ、みてっ」

「?」

 

ㅤヴェスパローゼさんの名前を口にすると、きさらちゃんは気にする素振りを見せたが…。

ㅤ逆にヴェスパローゼさんの名前を聞いて、思い出した事も有った様だ。

ㅤきさらちゃんは何かを両手に持ち抱える。

ㅤ俺は、彼女の持つそれが何なのか、パッと見て直ぐに思い付いた。

 

ㅤ帽子だ。

 

ㅤいや、帽子というよりかは…つばの長いハット、という方が正解か…?

ㅤ魔女達が被っていそうなハロウィンハットだ。

ㅤハロウィンとか何時の話だ。

ㅤ変な事に巻き込まれたく無いと、自室に立て籠もっていた思い出しか無いぞ。

ㅤ関係の無い話に逸らしてしまったが…。

ㅤ強制的に路線を戻すとしよう。

 

ㅤきさらちゃんが両手で持っているハット。

 

ㅤ然し、驚かされたのはその素材だ。

ㅤ少しばかり光沢が目立つなと気になったが、明らかに、材質が従来の帽子に使われる物では無い。

ㅤそして漂う若干な甘い香り。

 

ㅤこれは…。

 

「チョコレート…?」

「うぃ。ろーぜが、つくぅてくえた」

「絶妙な硬さを維持させて…良く作ったもんだなぁ。でも、何故に」

「だいすけ、こっち、くゆ」

「?」

 

ㅤあまり詳細を確認出来ていないのは怖いが、きさらちゃんは迷わずに俺を引っ張って連れて行く。

ㅤ何処に。

ㅤさぁ。

ㅤ俺には全く分からない。

ㅤヴェスパローゼさんの企み然り。

ㅤ流石に此ればかりは察せないからな。

 

…ふと、少し移動した所で、きさらちゃんが足を止めた。

ㅤその場所とは。

 

「………風呂場?」

「どあぃやー」

「ど、ドライヤー…?えっと………これで良いの、かな」

「あいがとっ」

 

ㅤ朝のシャワー。

ㅤそれが俺の日課だ。

ㅤ然し何故、俺が愛用しているこの風呂場に来たのか。

ㅤそして何故、服も着衣したままなのか。

 

…いや?衣服は着たままで無いと、色々と大変な事になる。

ㅤ幾ら何でも7歳の少女の裸体を見る訳無いだろう。

ㅤ間違い無く警察沙汰に繋がってしまう。

 

ㅤだが、それにしても謎だ。

ㅤどうしてきさらちゃんは、態々此処にーー

 

「だいすけ、あっち」

「…後ろを向いてれば良いのかな?」

「うぃっ。きぃがいいってゆぅまで、むいちゃだめ」

「…了解」

 

ㅤきさらちゃん、何をするつもりだ。

ㅤ抑、ドライヤーを扱えるのか。

ㅤ俺として火傷やら何やら、心配で心配でならないのだが。

ㅤ間違ってきさらちゃんの可愛らしい手に、あっつい熱風が…。

ㅤ駄目だ止めろ、それが現実になったら俺は死ぬ。

ㅤきさらちゃんを傷付けたという責任を負って。

 

ㅤ本当、彼女が何をするのか気になって仕方が無い。

ㅤあまり危険な事はしないで欲しいが…。

 

ㅤふと、ドライヤーのスイッチが入った音が耳に響く。

ㅤそれと同時に、少しばかり弱めの風音が頭にも響いた。

ㅤ弱め…という事は熱い筈だ。

ㅤ十分に気を付けてね…きさらちゃん。

ㅤ心でそう願うばかりだった。

 

ㅤというか何故ドライヤー。

 

「………………ん…だいすけ、いぃ」

「きさらちゃん…火傷とかーー」

「…はっぴぃ、ばえんたいんちぉこ」

 

ㅤ呼ばれたから振り返ったものの。

ㅤハッピーバレンタインチョコ。

ㅤ彼女は確かにそう言った。

ㅤてっきり、振り返ったらチョコを手渡されるという、夢の様な展開かと思ったが…。

ㅤきさらちゃんの行動は、俺の想像斜め上へと突き進んでいた。

 

ㅤ先程見せてくれた、チョコレートで出来た帽子…それをきさらちゃんが被り。

ㅤドライヤーで溶かす。

 

「…!?な、何してるのきさらちゃんっ…!!」

「ぅゅ…ばえんたいんちぉこ、きぃ…」

「………まさか、きさらちゃん自身がバレンタインチョコレートって…?」

「…うぃ。ろーぜが、こうすれば、だいすけ…たべてくぇるって…」

 

ㅤ待て。

ㅤ頼むから待ってくれ。

ㅤ突っ込みどころ満載過ぎて、何から手をつければ良いのか分からない。

ㅤというか、きさらちゃんって普通にドライヤー使えたのか…!?

ㅤ待て…その前に、えっと…ヴェスパローゼさんが、きさらちゃんに変な事を吹き込んでーー

 

「だいすけ…べたべた、すゆ…」

「っ…!仕方無い…きさらちゃん、この風呂場を使ってチョコを流そ。出来るだけ急がないとーー」

「きぃ…ひとり、おふよ…はぃれない…」

「あの方はこれを見越した上できさらちゃんにさせたのか…!!」

 

ㅤ本当に、ヴェスパローゼさんは…。

ㅤ良くも悪くも頭が働く事。

ㅤ『悪どさ』まで目立っている事、本人は気付いているのだろうか。

ㅤいや…承知の上で仕掛けて来たのだろう。

ㅤ兎に角、チョコレートまみれのきさらちゃんを浴槽に連れてかねば…。

 

「…だが、どうしたものか」

「だいすけ、いっしぉはいゆ」

「それは…………………………」

 

ㅤ思考の停止…なんて、している暇等無い。

 

「…取り敢えず、そのチョコレート…流そうか」

「うゆゆ〜♪」

 

ㅤ駄目だ…きさらちゃん、純粋過ぎていけない。

ㅤ本当、一切の曇りも無い純粋さ。

ㅤそんな幼い少女を穢す訳にはいかない。

ㅤ早いとこチョコレートを流してあげて、事を済ませよう。

 

ㅤ最悪リゲルさんやあづみさんにお願いする他、無いか…。

 

ーーー


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。