Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜(番外編)   作:黒曜【蒼煌華】

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明けましておめでとう御座います(*´꒳`*)
年末に投稿する予定が、色々と年末は重なってしまうもので…申し訳御座いませんでした。
そして今回の内容、少しばかり甘々を過ぎてしまいました。
一応ながら、閲覧される際にはご注意を。
其処まで過激な事は執筆してませんけど…R18にならないよう…(笑)
後は…長いです。
3話位に切って投稿も考えたのですが…また時間が掛かってしまうと思い、一気にこのまま。
大体16000字以上です。
今回が《各務原あづみ happybirthday!》の最終話ですので…。
加えて『、』や『…』が多いので、ゆっくり見て頂ければ幸いです。

今週の投稿はこれにて、となりますが、来週からは書き溜めていた本編をやっと再更新致します。
今年はハイスピードで投稿出来たらな…というのは置いて(苦笑)

今年も【Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜】を、何卒…宜しくお願い致します。
書き忘れてましたが、今回の話、挿絵も有りますので…宜しければ見て頂けると嬉しいです。
因みに髪の毛の色、態とかなり深い色を選ばせて頂きました。
長文失礼致しました〜。


各務原あづみ happybirthday!No.20

《九条大祐》「………………ん、ん〜…!うぁ〜…………」

 

《あづみ》「……ふぁ…ん〜………」

 

《九条大祐》「………あー…精神的にぐったりだな、こりゃ……ははっ……あづみさんの可愛さにやられた」

 

《あづみ》「えへへ…大祐くんからのプレゼント、大事にしなきゃ。………………ふぅ、ちょっとだけ、落ち着こ……………………まだ、ドキドキしてるよぅ…」

 

《九条大祐》「………ん?」

 

《あづみ》「ふぇ…?」

 

《九条大祐》《あづみ》「……………………………………………………………………………………」

 

《九条大祐》「…っ!?あづみ、さん…!?」

 

《あづみ》「だ、大祐くん…!?」

 

【後退りした各務原あづみの片手が空に着き、ベッドの上から落ちそうになる】

 

《あづみ》「きゃっ…!」

 

《九条大祐》「っ、危ない…!」

 

【九条大祐は咄嗟の判断で各務原あづみの腕を引き、背中に手を回し、彼女が落ちないよう支える】

 

《あづみ》「………?」

 

《九条大祐》「…何とか、間に合った」

 

《あづみ》「あっ…大祐くん…ご、ごめんなさい…!」

 

《九条大祐》「あづみさんが大丈夫なら、それで良いのです。…さ、取り敢えず此方に」

 

《あづみ》「う、うんっ」

 

【2人でベッドの上に座り、改めて話を始める】

 

《九条大祐》「………しっかし、びっくりしましたよ…。あのままあづみさんが落っこちてたら…なんて、考えたくも無い」

 

《あづみ》「大祐くん…あ、ありがと。私もちょっと…びっくりしちゃって…」

 

《九条大祐》「俺もです…………まさか、起きたらあづみさんが隣で寝ていたんですもの」

 

《あづみ》「ここ…大祐くんのお部屋、だよね…?」

 

《九条大祐》「えぇ、ですけど…俺がナナヤに頼んで寝始めた時は…この場にあづみさんは居なかった筈…」

 

《あづみ》「わ、私も…どうしてここに居るのか、分からなくて…」

 

《九条大祐》「謎が一つ、誰がこんな事ーーん…?置き手紙、か…?」

 

《あづみ》「大祐くん、それ…なに…?」

 

《九条大祐》「紫色の封筒に、ハート形のシール………………………まさか、な。どうやら、誰かからの置き手紙のようです」

 

《あづみ》「誰かからの…………リゲル、は…私と大祐くんがソリトゥスさんのお部屋から退出した時は…居たもんね」

 

《九条大祐》「まぁ、何と無く察しました」

 

《あづみ》「…?」

 

《九条大祐》「………………………ふんふん………ははん…?はぁ………はいはい」

 

《あづみ》「だ、誰か…分かった…?」

 

《九条大祐》「………………………………………………!!…………全く…相変わらず的を得た事を言ってくれますね…」

 

《あづみ》「まとをえた……」

 

《九条大祐》「えぇ…ルクスリアさんの事です。この置き手紙…そして、あづみさんを此処に寝かせたのは、彼女の仕業です」

 

《あづみ》「で、でもっ…どうして…」

 

《九条大祐》「…端的に言えば、彼女なりの背中の後押し、です」

 

《あづみ》「(何て、書いてあったんだろう…?)」

 

《九条大祐》「………何だか、気にしてる表情を浮かべてるね」

 

《あづみ》「ふぇっ…!か、顔に出てた…?」

 

《九条大祐》「ん〜…、パッと見?」

 

《あづみ》「…その、私が大祐くんと同じベッドの上に寝かせられてた事が、やっぱり…気になって…」

 

《九条大祐》「半分正論、半分彼女の下心。そんな感じの内容でしたね」

 

《あづみ》「あ、あはは…」

 

《九条大祐》「あづみさんの苦笑いも、新鮮なことで」

 

《あづみ》「………そう言えば、大祐くんからの手紙…」

 

《九条大祐》「態々ポケットに取っておいたのですか…!?」

 

《あづみ》「だ、駄目…だったかな…?」

 

《九条大祐》「ああいえ……嬉しい、けど恥ずかしいな、と…。要ります?それ…」

 

《あづみ》「えへへ…大祐くんからのお手紙、大事にとっておきたくて…///」

 

《九条大祐》「………あー、もう…可愛過ぎますって…あづみさんは」

 

《あづみ》「大祐くんだって、か…かっこいい、よ…?」

 

《九条大祐》「…ありがと、お世辞でも嬉しいよ」

 

《あづみ》「お世辞じゃないもんっ。…ほんとの事だから」

 

《九条大祐》「相変わらず、さらっと言われる一言に悶えそうです…。あづみさんの放つ言葉は驚異的ですね」

 

《あづみ》「大祐くんも、私の事言えないよ…?」

 

《九条大祐》「そうですかねぇ…」

 

《あづみ》「然りげ無く、大胆な事を言うって…ソリトゥスさんも言ってた」

 

《九条大祐》「…ほう?」

 

《あづみ》「自覚…」

 

《九条大祐》「無い…ですね。平常運転ですので」

 

《あづみ》「…むぅ〜…」

 

《九条大祐》「…っ!頰を膨らませたあづみさん、やばいですって…!」

 

《あづみ》「…?え、えっと…?」

 

《九条大祐》「可愛い」

 

《あづみ》「うぅ〜…///」

 

《九条大祐》「…ふふっ、ほんと…何度言っても足りない位だ」

 

《あづみ》「………私だって、何回言っても足りないもん」

 

《九条大祐》「?」

 

《あづみ》「う、ううん…何でも、ないよ…?」

 

《九条大祐》「あづみさんの小さな呟きを聞き逃すの、好い加減どうにかしなきゃな…」

 

《あづみ》「だ、大祐くんが気にする事…無いよ…?……私も、ふと口に出しちゃうから…」

 

《九条大祐》「それが又可愛さの一つ」

 

《あづみ》「あ、ありがと…?」

 

《九条大祐》「………………………………………………」

 

《あづみ》「…大祐くん…ど、どうしたの…?」

 

《九条大祐》「………………………………………あ、いえ…」

 

《あづみ》「?私の顔に、何か付いてる…?」

 

《九条大祐》「…ご安心を、何も付いていませんよ。ただ単純に……一生、こうしてあづみさんと過ごせたらなって…」

 

《あづみ》「………私も、そう思ってる。リゲルとお母さん、そして…大祐くんとずっと一緒に。えへへっ…楽しく過ごすの」

 

《九条大祐》「えぇ…ずっと、一緒です。あづみさんさえ良ければ、ですけど…」

 

《あづみ》「…誰に何て言われても、私は絶対…大祐くんの側から離れないよ…?」

 

《九条大祐》「ふふっ…なら俺も、絶対にあづみさんの側から離れない。…ストーカーみたいだけど」

 

《あづみ》「そんな事無いよっ」

 

《九条大祐》「………ありがとう、あづみ」

 

《あづみ》「…っ、大祐くんの…偶に、そう呼んでくれるの………ずるい…///」

 

《九条大祐》「あづみが嫌なら…やめますけど?」

 

《あづみ》「あうぅ……い、いやなんかじゃ…ない」

 

《九条大祐》「それなら良いんだけど………」

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………【安定の沈黙】

 

《九条大祐》「………………………………………………」

 

《あづみ》「………………………………………………だ、大祐くんーー」

 

《九条大祐》「…あづみ」

 

《あづみ》「は、はいっ…!」

 

《九条大祐》「…?ふふっ、そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ?何も食べる訳じゃ無いから」

 

《あづみ》「……………………う、うん…」

 

《九条大祐》「性的な意味は除いて、ね」

 

《あづみ》「ふぇっ…」

 

【九条大祐が、各務原あづみをベッドに優しく押し倒す】

 

《あづみ》「あっ……だ、大祐くん…?」

 

《九条大祐》「ん?」

 

《あづみ》「えっと、あの…ね、わ、私……」

 

《九条大祐》「…うん」

 

《あづみ》「…まだ…心の準備、出来てなくて……」

 

《九条大祐》「……………じゃあ、あづみはどうしたい?」

 

《あづみ》「えっ…?」

 

《九条大祐》「このまま先へ進むか、一度ストップして、あづみの心の準備が出来るまで待つか」

 

《あづみ》「……………………………」

 

《九条大祐》「…なんて、ね」

 

《あづみ》「…?大祐く…っ…………んっ…」

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

…この時、恥じらいなんて有ったのだろうか。

ㅤ頰を真っ赤に染め、内股をもじもじと擦り合わせ。

ㅤ少しばかり荒い吐息を吐きながら、何かを欲求する様な彼女の瞳。

ㅤ自分の瞳に映るそんなあづみが、どうしようも無く愛おしくて。

ㅤ俺は何の躊躇いも無く、自分の唇を、あづみの唇へと重ね合わせた。

 

「ん…んんっ………っ」

 

ㅤあづみにあまり無理はさせられない。

ㅤ勝手にそう思った俺は、少し、ほんの少しだけ、あづみの口の中へと舌を這わせる。

ㅤすると彼女は甘い声を上げ、それでも俺を受け入れようと…俺の手をぎゅっと握ってきた。

 

「…んっ……ぷぁっ、あっ……ん………」

 

ㅤそんな彼女の右手を、俺は優しく握り返す。

 

…細くて綺麗なあづみの指。

ㅤそして俺の指。

ㅤ丸で絡み合わせる様に、俺とあづみは互いの手を握り合う。

 

「………っ、あづみ…大丈夫かい…?」

 

ㅤふと、彼女の心臓が過剰に鼓動している事に気が付く。

ㅤこれは…一度落ち着く為の時間が必要だ。

ㅤそう思った俺は、ゆっくりと、彼女の唇から自分のを離す。

 

ㅤ自分で言うのも癪に触るが…どうしても駄目だ。

ㅤ少しでもあづみに何か有ると、心配で不安になってしまう。

 

ㅤ愛して止まない彼女が苦しむ姿は、二度と見たく無いから。

 

「ふぁ…はぁっ…はぁっ……」

「あづみ、やっぱり…体の事が最優先………」

「いや…だ。大祐、くん…」

 

…あづみのトロンとした目が、物欲しさを語っている。

ㅤ表情も何だか、ほわっとした雰囲気で……そんな瞳で見つめられたら、我慢も何も出来なくなってしまうだろ。

 

ㅤ俺だって、男だ。

ㅤ好きな女の子が目の前で、自分を欲している姿を見て…理性を保つ事なんて到底出来やしない。

ㅤ言うなれば、今直ぐにでも襲いたい位だ。

ㅤけど…、ここは抑えろ。

 

ㅤ流れは自分で掴め。

ㅤ勢いに身を任せて、あづみを傷付ける様な真似だけは絶対に許されない。

ㅤ何より、俺が俺を許さない。

 

「……あづみ、一旦ストップ。ちょっと落ち着かないと、あづみの体がーー」

「〜〜〜っ」

「…ごめんね。でも…あづみの体を優先したいんだ」

 

ㅤ俺がストップをかけると、あづみは、我慢していた自分の想いに耐えられなくなったのか。

ㅤ胸元に、ぎゅ〜っと抱き着いてくる。

ㅤこれは…俺が支えてあげないとな。

 

ㅤ自分の右腕を彼女の背中に回し、右手の平で後頭部に触れる。

ㅤかなりきつい体勢では有るが…あづみの為だ。

ㅤ俺はそのまま、ゆっくりと彼女の体を、ベッドの上へと寝かせる。

 

…彼女も自分の気持ちを抑えるのに、必死なのだろう。

 

「大祐くんっ…」

 

ㅤ俺の名前を呼びながら、細んだ瞳で此方を見つめている。

ㅤそんな彼女をじっと見つめ返すと、右手の握る力を強くしつつも、ほにゃっとした笑顔を見せてくれた。

ㅤうっとり…といった表情、何とも可愛らしい。

 

「あづみ……、唐突に悪いけど…少し質問して良いかな」

「…?」

「一度落ち着く為に…少しだけ」

「…ん」

「夢とか…将来的に何がしたいとか、あづみは何か有る…?」

「………夢……うん、沢山ある…」

「あづみが良ければ、聞かせて貰えるかな…」

 

ㅤ先程までの言動からはかけ離れてしまったが…俺がこれを訊ねるのには、ちゃんとした理由が有る。

ㅤ単純な考え…では有るが、俺にとっては大事な物。

ㅤ此れからのあづみの事。

ㅤ今此処で、しっかりと聞いておきたい。

 

「………あ、あのね……私、学校に行きたい…な」

「学校、ですか?」

「うんっ!……小さい頃から、体が弱くて…あまり通えなかったから」

「あづみさん…」

 

ㅤ気落ち…とは違う。

ㅤ彼女は明らかに、落ち込んでいた。

ㅤ瞳に、少しばかりの滴を溜めながら。

 

ㅤ学園生活…辛かった事の方が多かっただろうに。

ㅤ俺だって、楽しくは無かった。

ㅤ無理をしてでも周りに合わせて…一体何が楽しい。

ㅤそれでも俺は…確かに、しょうが無く周りと合わせた。

ㅤ遅れを取るまいと勉強して、他愛も無い話に相槌をうって、頼まれた事をこなして。

 

ㅤ結果、ただただ自分が疲れてしまった。

 

ㅤ周囲に溶け込めない、周りと違った事をする。

ㅤその軽度がどうであれ、痛い視線は飛んで来るものだ。

 

ㅤ周りの目線を気にして生きていく程、不自由で辛い物は無い。

 

「……私が…小学生だった頃」

「確か……保健室への出入りが多かったとか…?以前あづみさんが、そう言ってました…よね」

「うん。…だからね、周りの子から、色々言われてたの」

「…………はぁ、相変わらず、苛々する話に変わりはないな」

「あっ…ご、ごめんなさい…」

「違う。あづみの事をとやかく言っていた、その周りの奴等に対してだ」

 

ㅤ俺も…あづみの気持ちは嫌という程、理解している。

ㅤいや、あづみの気持ちを理解出来たという時点で、嫌なんかでは無い……嬉しかった。

 

ㅤ俺の小学生時代、あづみと境遇が似ていたからだ。

ㅤ体が弱く、大体二時限目から昼前近くに登校、それでも保健室には出入りし。

ㅤ周りからの視線は、丸で針を刺された様な鋭い痛みを伴った。

ㅤ心身両方に。

 

「……だからね…?私は、周り子と違うんだって……」

「悪い意味で捉えてしまった…と」

「………それでも、学校には通いたかった。お母さんも、お父さんも…優しくて…」

「ですけど、それは子供の義務では無い。優しくしてくれていた母親、父親に対しての恩返し…とでも?」

「うん……………だけど、それだけじゃないの」

「?」

「私…学校、好きだったから、かな…」

 

ㅤ彼女は涙目で、それでも笑顔を浮かべて…。

ㅤ俺の左手を、ぎゅっと握って離さなくて。

 

ㅤあづみは…昔から相当苦しんでいた、それは少し前までずっと…続いていた。

ㅤだけれど…。

 

「…外の世界は、如何でした…?好き、ですか?」

「えへへっ…私は、大好き。学校…自由には出来ないけど、同じクラスメイトの人と喋って…遊んで。そんな学校生活を…夢、見ててっ…………私の夢、叶わなくて……」

 

ㅤあづみ…泣かないでくれ。

ㅤあづみが悲しんでいる姿を見ると、心の奥底が握り潰される感覚に襲われる。

ㅤ彼女の事が、大好きだから。

ㅤもう嫌なんだ、あづみが苦しみ悲しむ姿を、この目で見るのは。

ㅤそんな、目に見えない物からも…彼女を守ると誓ったから。

 

ㅤそしてあづみの願いは、全て叶えさせると決めたから。

 

「………ねぇ、あづみ。じゃあ…その夢、俺が実現させても良いかな」

「…っ、ど、どう…やって…?」

「至って単純。学校を設立させて、学園を築き上げる。其処があづみの…通う学校」

「で、でも…」

「大丈夫、心配ご無用さね。クラスメイトは沢山居ますし…多世界からも連れて来ます。Z/Xと人間…そんな蟠りや隔たりの無い、学校。……出来れば女の子だけのクラスに、あづみさんを入れさせてあげたいなぁ」

「…大祐くん…」

「ん?」

 

ㅤあづみの夢は、俺の夢でも有る。

ㅤ夢は、一度見れば風船の様に膨らんでいくもの。

ㅤその膨らんだ風船を、そのまま空高く飛ばすか、諦めて割るか。

ㅤ自分自身に委ねられた判断。

ㅤ夢を叶えるのも諦めるのも、自分で選ぶ事。

 

ㅤ俺は…あづみの夢や願い、望みを全てを実現させたい。

ㅤ責任は全て俺が持つ。

ㅤだから、あづみには自由になって欲しい…。

ㅤ今迄苦しんで来た事全てを、忘れ去るかの様な幸せな時間。

ㅤ彼女には…そんなひと時を過ごして欲しいんだ。

 

「…大祐くんって、やっぱり…優しい、よね」

「今のままじゃ、所詮建前を飾っているに過ぎないさ。あづみの学園生活…全力で実現させる。可愛い『俺のあづみ』の為だから、何だってこなして見せるさね」

「あぅ…うぅ…///」

 

ㅤかなり大胆な発言を口にしてしまったが…あづみは頰を赤らめ、目をぎゅっと瞑っていた。

ㅤ何時もなら両手で顔を隠しているのだが、今回はその手が塞がっている。

ㅤだから目を瞑ったのだろう。

 

「あづみは相変わらず、可愛いこと……まぁ、学園の案件は全て任せて。ベガさんやヴェスパローゼさんにも手を借りますから、安心でしょうし。多世界にもZ/X使いがいるやもしれない。俺はその子達を優先して、探しに出る旅にでも出ますかね」

「大祐くん…何処か、行っちゃうの…?」

「ん…、あづみと似た境遇の子が居れば放っては置けないし………Z/X使いってだけで、かなり苦労してるだろうから」

「離れるの……やだよぅ…」

「大丈夫、ずっと居なくなる訳では無いよ。必ず帰ってくるから…ね?」

「ん〜…!」

「おっと……」

 

ㅤ俺がこの家から当分離れる。

ㅤそう聞いたあづみは、赤らめていた頰を膨らませ、俺の体を自分に寄せようとしていた。

ㅤが…。

 

ㅤ何とも可愛らしい力で。

 

ㅤ此方が少し力を入れるだけで、あづみに寄せられるこの体は微動だにしない。

ㅤその位、彼女の力が『可愛い』という。

ㅤ可愛い…可愛いんだ。

ㅤあづみの華奢な腕からすれば、納得させられる位の。

ㅤそんな必死なあづみが、可愛くて愛おしい。

 

「…ずっと、一緒って決めたんだもん…」

「…そうだな。じゃあ、1日2日だけ、出掛けるってのは?」

「う、うんっ…」

「不安かな…?」

「ちょっと、だけ…」

「…大丈夫、リゲルさんにベガさん、皆さん此処に居ます。もし…俺の事なら、御心配無く。直ぐに帰って来ますから」

 

ㅤ此方をじっと、不安そうに見つめるあづみ。

ㅤ何度も『大丈夫』『心配しないで?』『直ぐ戻る』という言葉を、彼女が安心するまで言ってあげたいと。

ㅤ逆に俺の方が心配でならなくなりそうだ。

 

…事実、本当に持ち場を離れて良いのか、なんてのはずっと思っている。

ㅤその間にあづみが、リゲルさんが、彼女達が何かに襲われたら。

ㅤそんな不安が頭をよぎって仕方が無い。

ㅤ絶対に守ると決めたんだ。

ㅤ彼女達は誰にも奪わせない…失って堪るものか。

ㅤだからこそ、俺が何からでも守るんだ。

 

ㅤこれは…あぁ、俺の方が心配性じゃないか。

ㅤだが、何としても守りたい大切な人、物が出来れば…必然的に心配性となってしまうものだろう。

ㅤ失う事が怖いから。

ㅤ自分の全てと言っても、過言では無いから。

 

「俺だって…不安で不安で、怖くて仕方が無い。だけど、ずっとそれを言っていたらあづみの夢を叶えさせてあげられない。それに俺は、貴女達を信じてますから」

「…!」

「だからあづみも、俺を信じてくれるかな。絶対に…帰ってくるって」

「…うんっ」

「ふふっ…有難う。何も死地に向かう訳じゃないから、そんな大袈裟に考え無くても良いのは知ってるけど…」

「だ、大祐くんっ」

「ん」

「あのね…何か、私にも出来る事、無いかな…?大祐くんが私の夢を叶える為に頑張ってくれてるのに…私だけ見てるのは、いやだ…。私は大祐くんの望みを、叶えたい…から」

 

ㅤ相変わらずというか何というか。

ㅤされたら返すという、献身的な部分はあづみらしさの一つだな。

ㅤそれが彼女自身の負担になったり、疲れに繋がらなければ良いのだけれど…。

 

ㅤ人からの好意は素直に受け取れ。

 

ㅤ俺が良く言われる言葉の一つ。

ㅤ折角、あづみが、恥ずかしがりながらも言ってくれたんだ。

ㅤ此処は甘えてみるのも、良いかもしれない…か。

 

「う〜ん…とは言われたものの」

「な、何でも良いのっ…」

「何でも?」

「うんっ」

「…じゃあ、少し早いけど…あづみの学生服姿が見たい、な」

「わ、私の…学生服姿…?」

「ああ。…これから設立を始める学園の制服は、色々と決めてからになるからまだまだ先って事で…無いけど」

「…!確か、リゲルが用意しててくれた筈…」

「凄まじいな、リゲルさん…」

「えっと…小学生の頃をイメージして、リゲルが着せてくれたの。『せめて形だけでも』って」

 

ㅤ優しいし行動力は流石としか言いようが無いしで、俺がリゲルさんを尊敬してしまうのは当たり前の事だろう。

ㅤあづみへの愛は、リゲルさんが一番深い事は知っている。

ㅤだが…俺も負けてはいないと自負、したい。

ㅤそれはリゲルさんに対しても、だ。

 

ㅤ彼女達への愛は誰にも負けない、負けたく無い。

ㅤそういった意思を強く持っているからこそ、彼女達を失いたくないという想いも強くなってしまうのだろう。

ㅤこの言葉、建前だけでは終わらせない。

 

「えっと…じゃあ、あづみの制服姿…見てみたいな。あづみさえ良ければ…」

「は、はいっ…!ちょっと…恥ずかしい、けど…」

「恥じらうあづみも可愛いこと」

「う、うぅ…///」

「…………………って、あれ…そう言えば衣服は何処に…?」

「あ、えっと…多分…私の部屋に有ると思う…。だから、大祐くんの事…待たせちゃうよ…?」

「大好きなあづみの制服姿が見れるなら、何時までも待つさ。…後は…お互いに落ち着く時間には丁度良いだろう」

「…じゃあ…少し、着替えてくるね…」

「焦らないで…ね?」

 

ㅤそう言って俺は彼女の頭を撫で、覆い被さる様な形からあづみを解放し、そのままベッドの上へと胡座で座る。

 

「えへへ…また、お邪魔します」

「何時でもおいで」

 

ㅤ可愛らしい笑顔を見せる彼女に、俺も笑顔で、返答を返す。

ㅤそしてあづみは部屋の扉を開け、一度退出。

ㅤ1人の、少し寂しいが落ち着く為の時間が訪れた。

 

ㅤこうして1人になってみると、ふとした事であづみさんを思い浮かべてしまう。

 

ㅤこのベッド…さっきまで、あづみさんが仰向けで寝転んでいたんだよな、とか…。

ㅤあづみさんと俺は、本当に釣り合っているのか…やら。

ㅤ今更そんな事を気にしたって仕方が無いのは分かっている。

ㅤだがやはり…頭の隅で考えてしまうのは変わらず、か。

ㅤ完全に自分だけの、と認識が持てれば気にならなくなる…と信じたい。

 

ㅤそれも…今日で決まる。

ㅤ彼女の実の母親であるベガさんからも許可は下りた。

ㅤあづみさえ良しとするならば、未成年だろうが何だろうが、その一線を越えてでも。

ㅤ彼女と一つになりたい。

ㅤあづみと…繋がりたい。

 

ㅤもう、うだうだとこの関係で止まるのは嫌なんだ。

ㅤ周りからも認められて。

ㅤいや、例え認められなくても…あづみがその壁を越えたいと言うのなら。

ㅤ俺は彼女と一緒に進むだけだ。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「お、お邪魔…します…」

「…えっと、あづみ、さん」

「あ、あまり見ないで…!恥ずかしいよぅ…///」

 

ㅤ少しして、彼女は戻って来た。

ㅤ戻って…来たのだが。

 

「俺…あづみさんに手を出して、犯罪者と間違われる気が…」

 

ㅤあづみさんの制服姿。

ㅤまあ…可愛いのは当たり前だ。

ㅤだが…何故ランドセルまで一緒に付いてきた。

 

「だ、大祐くんっ…少し、私の部屋に来て貰える、かな…?」

「…っ、は、はい…?」

 

ㅤ何事だ…。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「…これは?」

「え、えと…」

「その様子ですと、あづみさんにも分からない状況…?」

「うん…そう、なの…」

 

ㅤあづみの部屋。

ㅤに、お邪魔した訳だが。

ㅤ何故こうなった。

 

「…部屋、間違えてません?」

「あ、あってるもん」

「ですよね…」

 

ㅤ本当に見間違いと思ってしまう位だ。

 

ㅤ本来のあづみさんの部屋は、リゲルさんと2人で過ごす為に作られた物だ。

ㅤ俺の部屋と同じく、寝室は別。

ㅤその寝室に問題が有った。

 

「…リゲルさんは?」

「まだ、帰って来てないみたい…」

「此処で寝た、という訳ではないのですね」

「うん…」

 

ㅤまあ…リゲルさんが居れば、即座に元の部屋へと戻すだろう。

ㅤ壁紙まで変えられちゃってまぁ…。

ㅤベッドは何時ものダブルベッド…に、枕はご丁寧に青と桜色の2つが並べられて。

ㅤ掛け布団まで少しお洒落な模様に…ハート型の抱き枕(?)みたいなのが1つ。

ㅤベッドの横には、先程あづみさんが背負っていたランドセルが。

ㅤ壁紙はピンクのラインが入った…何これ…。

 

「徐なピンクで染まってる…」

「ね、ねぇ…どうしよう。リゲルに怒られちゃうよぅ…」

「いや、それはないでしょうけど…」

 

ㅤあづみさんがあたふたしてる。

ㅤ右往左往しながら、何処から片付けようか…何から手を付けようか。

ㅤ大丈夫なのか、これ…。

 

「取り敢えず、あづみさんはベッドの上にでも座ってて下さいませ。俺が何とかしてーー」

「むぅ…だめ。大祐くんも…一緒に座るの」

「あはは…了解、です」

「け、敬語もだめっ」

「駄目です?」

「だ、だめ…」

 

ㅤ強気で攻められると弱いらしく。

ㅤ一瞬にして日和りを見せた。

 

ㅤけれど…今日はあづみの誕生日だ。

ㅤ素直に彼女の言う事を聞き入れよう。

 

「…分かった。それじゃあ、お言葉に甘えようかな」

「っ!うんっ」

 

ㅤ元気良く返事を返してくれること。

ㅤふと…ベッドの上に設置されている物置台に、気になる物体が2つ。

 

「あづみ、これ…」

「大祐くーーわ〜っ!?」

 

ㅤ俺がその物体に話を持って行こうとした瞬間、あづみは慌てて『それ』を隠そうと抱きしめる。

 

「…………リゲルさんの、小さなぬいぐるみ…?」

「…っ!さ、流石大祐くん…!これ、リゲルが作ってくれたの」

「リゲルさん自身が?」

「えっと…私が、作って欲しいって…お願いして…」

「成る程」

「えへへ…」

「もう片方は?」

「………………………な、内緒」

 

ㅤリゲルさんの小さなぬいぐるみ。

ㅤ彼女はそのぬいぐるみを手に乗せて、嬉しそうに此方へと差し出してくれる。

ㅤ可愛い。

ㅤだが。

 

「………………っ!」

「はひゃあっ…!?」

 

ㅤ俺は見逃さなかった。

ㅤあづみがもう一つ、片手に『誰かの』小さなぬいぐるみを握って…それを自分の胸元に抱きしめていた事を。

ㅤどうやら、彼女なりに隠している様子だ。

 

ㅤ然しあづみが隙を見せた瞬間、俺は彼女の肩に片手を回し、首元を擽る様にもう片方の手を動かす。

ㅤ間違えてあづみが倒れたりでもしたら、危ないからな。

ㅤなら擽るなという話だが。

 

「んー…!!」

「…随分と頑なですね」

 

ㅤだが、彼女は『それ』を断固として見せたく無いのか、遂には自身の服の中へと、ぬいぐるみを隠してしまった。

ㅤ凄まじい早業…丸で刹那の如く。

 

「……や〜…!」

「あづみがこんなに幼げな態度を取るというのも…珍しいな。ごめん、悪かった…」

「あっ…だ、大祐くんの所為じゃなくてっ…!」

 

ㅤあまりしつこ過ぎるのは宜しく無い。

ㅤ少しやり過ぎたと、自分で反省した上で彼女に謝罪する。

ㅤすると、あづみは焦って否定を始めた。

ㅤそんな否定する必要は無いのだが…。

 

ㅤそう思った矢先。

 

「………………………あづみ、さん…?」

「…?」

「あの…落ちてます、よ?」

「………っ、きゃあ…!?」

 

ㅤ焦って否定をした瞬間、彼女は両手を自分の膝上に置き、胸元に隠していたぬいぐるみが落ちてしまった。

ㅤその際…誰を催して作られたのか、一発で分かった。

 

「あづみ…えっと…」

「〜!///」

「あづみさんストップ!其処に隠しちゃ駄目ですって!?」

 

ㅤ彼女は一拍置いて顔を真っ赤にし、ぬいぐるみをスカートの中へと隠そうと試みていた。

ㅤだが…流石にそれを許す訳にはいかない。

ㅤ俺は咄嗟に彼女の手を掴み、少しキュッと握りしめる。

 

「…………一旦、落ち着こう」

 

ㅤ落ち着く、という言葉を今日だけで何回言った事やら。

ㅤ取り敢えず俺は、掴んでいたあづみの手を離す。

 

ㅤそして至って冷静にそう言うと、彼女は恥ずかしがりながら、そのぬいぐるみを又胸元に抱きしめて…。

ㅤ兎に角…収まってくれた様子だ。

ㅤ今なら話を進めても問題無いだろう。

 

「…あづみ、そのぬいぐるみ…見間違いじゃなければ、『俺』を催して作られたのか…?」

「………(こくん)」

「そう、か…」

「ごめんなさい…!いや…だったよね」

「大丈夫、全然嫌なんかじゃないさ。寧ろ嬉しい位だから…けど、問題は……」

 

ㅤ俺を催して作られたぬいぐるみが、あづみの胸元に当てられていたり…服の中に入れられたり、終いにはスカートの中へと入れられるところだった。

ㅤ自分自身の見た目に似せて作られた小物が、好きな女の子のあんなところに…という気まずさ、それに。

ㅤこう、なんと言うか…あれだ、そう…あれ。

 

ㅤ恥ずかしくて言葉も浮かんで来ないって…!!

 

「と、兎に角…一体何の為に俺のぬいぐるみを…?」

「………………」

「…言いたくない、かな」

「………御守り」

「御守り?」

「うん……リゲルと、大祐くんの。この2つを側に置いておくだけで…何時でも、何処でも三人一緒って…」

「…成る程」

「後は、リゲルと一緒に眠る前……大祐くんのぬいぐるみを、私とリゲルの間に置いて…二人でーー」

「あづみさん…ストップ、それ以上は俺の精神が持たなくなります、から…」

 

ㅤこれは、完全に俺の責任だ。

ㅤ何時も何時も、就寝する時は1人だけで眠りに就いていた。

ㅤこんなにも魅力的な女性達と一緒に夜を過ごす等、俺が襲ってしまう可能性が有るが故に、到底無理な話で。

ㅤだが…あづみさんは。

 

「…えっとね…私、寂しかったんだ…。だから、リゲルに2人のを作って貰って…」

「眠る時は…」

「ううん、違うの…」

「?」

「…眠る時だけじゃなくて、何時も。私が寂しくなった時に、大祐くんのぬいぐるみをぎゅってすると…何だか安心して…」

「あづみ…さん」

 

ㅤそう言う、彼女の表情は微笑んでいた。

ㅤどうやら本当の事…なのか。

 

ㅤあづみさんの事もリゲルさんの事も襲って堪るかという、俺の勝手な思いは、逆に彼女達を寂しくさせてしまっていたのか。

ㅤ何時だって、そうだ。

ㅤ自分の思い込みが楔となって、彼女達を縛り付けていた。

ㅤ俺は自身の抑制を図ってやっていた事だが…それが仇となってしまうとは。

 

…ならば、その償いを含めて。

 

「あづみさん、今日は貴女の誕生日です。何か…他に欲しい物は有りませんか…?」

「…?私の欲しい…物」

「えぇ、何でも構いません。俺が全て用意しますから」

「ほ、ほんと…?」

「はい、勿論ですよ」

「…あの、えっと…じゃあ、私が一番欲しい物を言う…だから、大祐くんの欲しい物も教えて欲しい、なぁ…」

「あづみさんの誕生日ですのに…ですけど、今日は貴女の言う事を一番にさせて頂きます。例えイエスマンになろうとも」

「じ、じゃあ…私が一番欲しいの、言うね…?」

 

ㅤ彼女は何故、返してくれようとするのか。

ㅤ今日はあづみさんの誕生日なんですよ、返す必要は…と、以前なら言っていただろう。

ㅤだが、逆に考えろ。

ㅤ今日が誕生日の人、その人の願いを優先すべきでは無いのか。

 

ㅤならば、あづみさんの願いを最優先にするべきだ。

ㅤああ、今に始まった事では無いという突っ込みは受け付けない。

ㅤ話がずれそうなので強引に撤去するが。

 

ㅤ果たして彼女は、一体何を欲しがるのか。

ㅤ今の俺はイエスマンだ、何を言われてもイエスと答えるだけーー

 

「えと、その……」

「イエス」

「…?い、いえす…?」

 

ㅤ間違えた。

 

「…申し訳御座いません、続けて頂けると」

「う、うん…。あのね…」

「………………………」

「私、大祐くんがずっと一緒に…側に居てくれるっていう、幸せが欲しい…な」

「………………………………ふふっ、あづみさんってば………」

「だ、だめ…?」

「…いや、違います……あづみさんの願い、直ぐに叶えられる事で良かったって」

 

ㅤあづみさんの一言。

ㅤその一言で、又もや『あの』雰囲気が訪れる。

 

ㅤ俺は、あづみさんの体を、ゆっくりとベッドの上へ倒していく。

ㅤ彼女の肩に回していた手…腕を、自分の体を前へ倒すのと同じペースで。

ㅤあづみさんの体を支えながら。

ㅤ先程と同じ様な、瓜二つの状況へと変貌させた。

 

「…他に、欲しい物は…?」

「…………さっきの、続き………」

「して欲しい事、になってしまいますね?」

「欲しいの…は…、大祐くんの………………こ、こ…っ!」

「こ…?」

「こっ…こど、も…///」

「…あづみさん、大胆なこと」

「だ、だって…!大祐くんは、何が欲しいの…?」

「ん?あづみさん、ですかね」

「はうっ…!うぅ〜…」

「…本当、ですよ」

「大祐…くん………………んっ」

 

ㅤ以前にも違う誰かさんから言われた気がするが…その時は真っ向から否定した覚えが有る。

ㅤだが然し、今回そう言って来たのは紛れも無い、あづみさんだ。

ㅤ大好きで大切で大事な彼女からそう言われてしまうと、気が狂いそうで仕方が無い。

ㅤ幾ら抑制しようと、我慢しようと思うも、体は言う事を聞いてはくれやしない。

 

ㅤ俺は思わず、あづみの唇に口付けを交わした。

 

「んっ…んん………ぷぁ…あっ…」

 

ㅤ彼女の甘い声、そして交わるキスの音。

ㅤ俺の脳、精神は、其れ等の音に溶かされていく。

ㅤこの流れ…もう離しはしない。

ㅤ先程は自ら手放してしまった様なものだが、あづみさんの体の為。

ㅤ致し方無かった。

ㅤだが今回こそは、必ず一歩を踏み出してみせる。

 

ㅤあづみさんの願い、欲する物を聞かせて貰ったのだから。

ㅤ俺がそれを、プレゼントしてあげねば。

 

「…………………はぁっ………ん、くっ…」

「……………………っ、はぁっ…」

「………………………………………………………」

「………あづみさん…」

 

ㅤお互い息切れを起こし、一度、重ねていた『それ』を離す。

ㅤどうやっても彼女の体が心配なのは、最早どうしようも無い。

ㅤやはり気になってしまうものだ。

 

「………大祐、くん……」

「…?」

「あの、ね…大祐くんが、プレゼントしてくれた…あの『指輪』……はめて、みる…?」

「………いえ、まだ。あの指輪は、その時が訪れたら。…それ以前に、いけない事をしようとしているのですが…」

「えへへ…分かった。じゃあ、大祐くん…」

「はい…?」

 

ㅤあづみさんへの誕生日プレゼント。

ㅤそう…あの場で彼女にプレゼントした物は、『指輪』。

ㅤあづみさんとの関係を進める為には、これしかない、と。

ㅤ自分の考えをぶつけている様で…彼女が喜んでくれるか、ずっと不安だった。

ㅤだが、その不安は要らない、不要物と化していた。

 

ㅤ泣きながら…喜んでくれたのだから。

 

ㅤ俺まで嬉しくなった、のは当たり前の話で。

ㅤまだ早い…お互いの年齢を考えると、先走り過ぎたかも分からない。

ㅤそれでも、俺はプレゼントしたかった。

ㅤ年齢なんてどうだって良い。

ㅤあづみさんの事が大好きだから…年齢なんて壁に、阻まれて止まる様な物では無い。

ㅤ一方的な愛だとしたら、止まっていたかもしれないが…。

 

ㅤその、あづみさんにプレゼントした指輪。

ㅤ彼女は大層喜んでくれたのか、今からする事に重ね、指輪をはめようか悩んでいた様子だ。

ㅤ然し…其処はちゃんとした場所で、初めて彼女の指にはめてあげたい。

ㅤ順序が逆だと、ベガさんからお叱りを受けてしまいそうだ。

ㅤだがそれも又、一興。

 

ㅤ今はその時では無い、そうあづみさんに伝えると…彼女は体を起こし始めた。

ㅤ押し倒され、一方的に攻められるのは苦手だったのか…?

ㅤまさかな。

ㅤそんな考えが脳裏を掠める。

 

…が、彼女は予想外の行動に出た。

ㅤ一般的に言われる『女の子座り』をし、上に着ている自身の服を口に咥えて。

ㅤ魅惑の腹部を見せながら、たくし上げ。

ㅤそして一言。

 

「…大祐くん…続き、しよ…?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「〜っ!!」

「えへへ…」

「あづみさんっ…!!」

「んっ…♡」

 

ㅤまさか、あづみさんがこんな事をしてくるだなんて。

ㅤもう…我慢ならない。

ㅤ其処からは、2人だけの、きゃっきゃうふふな展開を繰り広げる夜の始まりだった…。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

…朝。

ㅤ何時もとは違う、彼女が隣で寝ている朝。

ㅤ「くー…すー…」と寝息を立てるあづみさんの頭を、思わず撫でたくなってしまう。

 

…………………いや、既に手は動いていた。

 

ㅤ此れだけは何時も通りと言えるだろう。

ㅤそれはさておき。

 

ㅤ昨夜は中々、説明し難い夜だった。

ㅤあづみさんのあづみさんがあづみさんにあづみさんを…みたいな。

ㅤ最早狂気である。

ㅤただ一つ言える事は…あづみさんが可愛過ぎて死ぬ寸前だった。

ㅤ後は…避妊って何ぞ?みたいな展開になってしまったのが、一番気まずかったというか…。

ㅤこれ、話して大丈夫な内容か…?

 

ㅤ駄目だろ駄目…駄目だ。

ㅤ思い返すと、今隣で寝ているあづみさんを襲ってしまう。

ㅤ落ち着け…先ずは、彼女が起きた時の為に何かしら用意しておくのが、出来る旦那の一つだろう?

ㅤ取り敢えず、あづみさんが寝ている間に作れそうな物…とか、飲み物…。

 

ㅤ此処、俺の部屋じゃなかった…!!

 

「う、あぁぁ……」

 

ㅤ変な声を出してしまった。

ㅤ実は昨夜、全く眠れなかったのだ。

ㅤ誰かさんが用意してくれた青い枕の所為でな!

 

ㅤとか、単純にあづみさんの隣だったから…か。

ㅤ記念日位だからな…一緒に寝るというのは。

ㅤ後は旅の途中、野宿する時とか…。

 

ㅤ懐かしいな…あづみさんと出会って間も無い時の事、色々な事を思い出してしまうな。

ㅤあの頃から、もうこんなに経ったのか…。

 

「思い出に浸るのは悪く無いけれど、私の事も頭に入れてて欲しいわね…?」

「…っ!リゲルさん…お早う御座います」

「えぇ、お早う…大祐」

「昨日は…眠れました?何処にも居なかったので…」

「………///」

 

ㅤふと、何時の間にか背後に居たリゲルさん。

ㅤ質問の答えが頰を赤らめて目を逸らすって…一体どうしたのだろうか。

 

「リゲルさーー」

「………ベッドの『ギシギシ』と軋む音に、私の聞いた事が無いあづみの声。それに加えて大祐の…えぇ。眠れると、思うのかしら…!?///」

「この部屋に居たのですか…!?というか俺の…えぇ、って何です!?」

「私とあづみの部屋だもの…居て、当然よ…」

「…まさか、全部聴いてました…?」

「………………///(こくん)」

「あー…もう、リゲルさんってば!」

「な、何よ…!私は何も悪くないーー」

「何故あづみさんと言い、貴女まで…そんなに可愛いのですか!!」

「か、かわっ…!?私に聞かれても、困る…わ」

「リゲルさん」

「な、何かしら…?」

「…俺とあづみさんの声を聞きながら、何をしていたんです?」

「………………………………………………何も、してないわ…?」

「ほんとに?」

「し、してないわよっ…」

「…………………」

「………してない……から…///」

「…目、泳いでますよ」

「…っ!」

「………………………」

「べ、別に…あづみと大祐の関係が羨ましい訳じゃ…無いんだから…!」

「………そう、ですか…まぁ、俺も深い詮索は止めですかね」

「………………えっ…あっ……」

「申し訳御座いませんでした…プライバシーに土足で踏み込む辺り、何も考えてない事がバレバレですね」

「大祐……ね、ねぇ…」

「…さて、あづみさんが起きた時の為に、何かしら用意してーー」

「〜〜〜!!」

「っと…!?り、リゲルさん…?急に抱き着かれると……」

「…わ、私だって…寂しかったんだから…!」

「……………………」

「ずっと、大祐とあづみだけ…関係が進んで行って、私だけ取り残されてく感じがして…。遂には、あづみと…し、したんでしょう…?私だって…大祐とあづみの事、大好きなんだからっ…!」

「………………………ふふっ…その本音が聞けて、良かった」

「えっ…?」

 

ㅤリゲルさんは…可愛くて、美しい。

ㅤ素直じゃない所も可愛いし、怒っている時の表情、必死な時の表情も大好きだ。

ㅤ無論、そんな彼女が照れている姿なんて、精神が耐えられない位に可愛らしい。

 

ㅤ他の人には素っ気無い態度を取りながらも、俺にはこうして自分を出して話してくれる。

ㅤリゲルさんは…本当に。

 

「…食べてしまいたいな」

「…っ!?た、食べるって…えっと…」

「あづみさんとした事を、リゲルさんともしたいって事です。えぇ、クズ発言ですけどね」

「………だ、大祐が…」

「はい?」

「…大祐がしたいって言うなら、してあげても…良いわよ…?」

 

ㅤ全く…。

 

「リゲルさんは卑怯ですーーっと…!?」

「きゃっ…!」

 

ㅤと、リゲルさんは何かに躓いてしまったのか…此方に勢い良く倒れて来た。

ㅤそんな彼女を受け止めようとしたものの。

ㅤ俺まで一緒に倒れてどうするんだ。

 

「…ってて…大丈夫ですか、リゲルさーー」

「えぇ…私は平気ーー」

「……………………………」

「……………………………」

 

…何と無く、察してはいた。

ㅤ俺は…アニメや漫画で、女の子が此方に倒れてきて、気付けば男性に跨っていたというシチュエーションを何度も見た事が有る。

ㅤ良く見るのは、男性の胸元や腹部、或いは○○。

ㅤだが、何時も思っていた。

ㅤ物理的に、法則的に、それは有り得ないんじゃないかと。

 

ㅤそれは何故か?

ㅤ大体は女性より男性の方が身長が高いだろ?

ㅤ女性が男性側に倒れて来て、男性も一緒に倒れる。

ㅤ身長を考えると、女性は精々、男性の足元近くに跨ってしまう筈だ。

ㅤそれが…今この状況、せめてそうなって欲しかったと言える。

 

「…リゲルさん」

「え、えぇ…分かってる、わ…」

 

ㅤ男性は反動で少し後ろに倒れる。

ㅤ女性は男性にぶつかる為、余程加速がついてない限り、あまり前には倒れない。

ㅤそれが相まってしまうとどうなるのか。

 

ㅤ結論。

ㅤリゲルさんの豊満なとある物が、俺の何かに乗っている。

ㅤ何か、とは言わない、言いたくない。

ㅤ下ネタは大嫌いだから。

 

「………………」

「………………」

 

ㅤ取り敢えずこの状況から脱出しよう。

ㅤそう思った矢先。

ㅤタイミングとは、何時も悪く。

ㅤ2人の部屋の扉が、思い切り勢い良く開いた。

 

「大祐く〜ん!あづみんとの一夜は、どうだった?今度は私と一緒に………………」

「む〜…あづみちゃんに先を越されちゃったけど、次は私だからねっ。大祐くん、神様と人間の………………」

 

ㅤ誤解だ。

 

「誤解」

「えぇ…誤解よ」

「…誤解には、見えないわ?」

「こうなったら…私も混ざっちゃうからね!」

「待て、ナナヤ!ストップ!騒ぐとあづみさんが起きちゃうから…って、聞いてないだろ…!?ルクスリアさんもどさくさに紛れて、ああもう!!」

 

ㅤあづみさんの誕生日の朝は…波乱の幕開けとなってしまった。

 

「一度落ち着いてくれ…!!」

「んー…いや、かなっ♪」

「私もいやだからねっ」

「ちょ、ちょっと…大祐が…」

「次はリゲルさんって決まってますから…!」

「えぇっ…!?///」

 

ㅤ次は、というか…本来であるならば2人共…いや、何でもない。

ㅤそれはそれで、色々と問題有りな気がするから。

 

ㅤ兎にも角にも…あづみさん、誕生日おめでとう。

ㅤhappy birthday。

 

 

ーーー

 

 

『……ん…………大祐くん………………大………好き………』

 

 

ーーー




《リゲル》「メリークリスマス、良いお年を、何時の間にか過ぎてしまったわね………」

《九条大祐》「確か…メリークリスマスは、リゲルさんとの聖夜を過ごしましたね」

《リゲル》「き、禁句っ…恥ずかしいわ…///」

《九条大祐》「あはは…聖(性)夜違いですからね…」

《リゲル》「…………………今度は」

《九条大祐》「…今度は、あづみさんとリゲルさん。2人を同時に………………」

《リゲル》「(同じ事を考えてる…!)」

《あづみ》「あっ、リゲル!大祐くんっ」

《九条大祐》「ん…あづみさん。しっかりと眠れました?」

《あづみ》「うんっ」

《リゲル》「……あづみ」

《あづみ》「なに?リゲル…」

《リゲル》「…えっと…その、大好き…よ」

《あづみ》「…えへへっ、私も、リゲルの事大好きだもんっ」

《リゲル》「…!本当、反則級の可愛さね…」

《九条大祐》(こうなった経緯を知りたいが…まぁ、2人だからな。あづみさんとリゲルさん…本当にお似合いだこと)

《あづみ》《リゲル》「…?」

《九条大祐》「ああいえ、お気になさらず。微笑ましいな、って思ってただけですので」

《あづみ》「だ、大祐くんも一緒だからねっ」

《リゲル》「ふふっ…あづみの言う通り、ね」

《九条大祐》「有難う御座います………っと、…兎にも角にも、2人共」

《リゲル》「何かしら?」

《あづみ》「は、はいっ」

《九条大祐》「………明けまして、おめでとう御座います。今年も宜しくお願い致しますね」

《リゲル》「…っ!此方こそ、宜しくお願いするわ」

《あづみ》「えへへ…あけまして、おめでとう御座います。今年も、宜しくお願いします」

《九条大祐》「………………さて、挨拶もしましたし、初詣にでも行きますか?」

《あづみ》「うん、行きたいっ」

《リゲル》「去年も言った記憶が有るけれど…えぇ、賛成よ」

《九条大祐》「んじゃ、行きますか」

《リゲル》「行きましょう、3人で」

《あづみ》「お〜♪」

ーーー

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