Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜(番外編)   作:黒曜【蒼煌華】

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本編でもここまで上手く行けばなぁ…
というか空白で見辛かったですね、申し訳御座いませんでした!


番外編:クリスマスイブ(後編)

「…あの子達、可哀想ね」

 

ㅤ九条大祐に連れられ移動中のヴェスパローゼは、静かなる呟きを漏らす。

 

「まぁー…あのフィーユって子が一番災難な目に遭うんじゃないですかね」

 

ㅤそれに対して九条は飽くまでながら、自分の予想でありながらも的確に答える。

ㅤ丸で最初から分かっていたかの様な口調だ。

ㅤ彼が此処まで言い切れるのには訳があるのだが、一言で片付けるのであれば【身内】。

 

ㅤ九条が感じた嫌な予感の正体だ。

 

「ですが、あの場から早々に撤退して正解だったんじゃないですか?」

「それもそうね。でないと『冥滅』と呼ばれる彼女と鉢合わせしてしまうもの」

「『冥滅』…エレシュキガルの事かしら?」

 

ㅤ百目鬼きさらをお姫様抱っこしたままの九条、その彼と意気投合しているヴェスパローゼ。

ㅤ二人が先程の事を話題に話を進めていると、ふと目の前に金髪ポニーテールの女性が姿を現す。

ㅤそれに一瞬虚取った九条。

 

「何故イシュタルさんが此処に?」

 

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 

ㅤ突如として現れたイシュタルさん。

ㅤ一応程度の説明として、彼女は自らを『神』と呼ぶ。

ㅤ願い事という願望を持ち得る人々やZ/Xの目の前にこうやって出現し、如何なる願いも難無く叶えてみせる。

ㅤ代わりに叶えさせて貰った側と契約し、自らを信奉させ、今度は自身の野望を満たす為の手や足として使う。

ㅤ神ーーいや、神と偽った悪魔だ。

ㅤ物で相手を釣り、欲しければそれに値する重い代償を払えと。

ㅤ甘い言葉で誘惑という、もしかしなくとも悪魔より太刀が悪いかも知れない。

 

ㅤだが、『神』と呼ばれる者達はイシュタルさんのみならず、他にも多数存在する。

ㅤ更にそれと重ね掛けに神様等は互いに啀み合っているようだ。

ㅤ要は神に願いを叶えさせて貰った者達は、その意味不明な神同士の戦争に巻き込まれる。

ㅤ何の苦労もせずそんな馬鹿みたいな癒しを求めるから、当たり前の結果だ。

ㅤ当然の…報いだ。

「だいすけ?」

「貴方…私が来たからって泣く事無いじゃない」

「あぁ……申し訳ない、ちょいと嫌な記憶を思い出してしまってね」

「嫌な?…まぁ、確かに。貴方にとって神とは害悪でしかないものねぇ…」

 

…いや、あれは既に過ぎた事だ、忘れろ。

ㅤ最終的にあづみさんもリゲルさんも助けが間に合ったから良いものの。

ㅤあの時1分でも…1秒でも手遅れだったら。

ㅤ二人はお互いに殺し合ってーー

ㅤ想像したくも無い。

 

ㅤ相思相愛、丸でそんな言葉が当て嵌まるあづみさんとリゲルさんが一瞬でも敵対したなんて。

ㅤあの時は夢でも見ているのかと自分の目を疑った。

ㅤ現実逃避も視野に入れたな。

ㅤまぁ、迷わず二人の間に突っ込んで正解だったという訳だ。

ㅤ結果良ければ全て良し。

ㅤ勝てば官軍負ければ賊軍だ。

 

…さて、何だかしんみりとした雰囲気になってしまったな。

ㅤその中で俺にお姫様抱っこされながら小首を傾げるきさらちゃん。

ㅤ可愛い、非常にもふもふしたい。

ㅤ恐らくこの発言をした瞬間、大抵の人はこう思うだろう。

 

『おう、このロリコン野郎』

 

ㅤ違う、この言い方は何処ぞの森山☆碧だ。

ㅤ言ってる意味は合っているが。

ㅤうん、話が大分逸れたな。

ㅤ全力で戻さねば。

 

「えっ、で…イシュタルさんは何しに来たんですか?」

「きさらちゃんと貴方が隣…じゃないわね。お姫様抱っこしてされているから、丁度挨拶がてら警告をね」

「警告?」

 

ㅤ今から地球に隕石降ってくるから素手で受け止めなさいってか?

ㅤ無理無理、んな事出来ないから。

ㅤなら神様が何とかしてくれるでしょう。

ㅤそれを端から見てるからさ。

ㅤえ?俺?

ㅤ俺なんかがやったら「バトルドレスの力は…!」とかなんとか言って、押し切るもその場で食い止めるもくそもなくボムって終了だろう?

ㅤ嫌だよそんなの。

ㅤ葬式に骨一本すら無いって…。

 

ㅤいやそういう問題じゃないって。

ㅤ然もこれじゃ、警告よりもイシュタルさんからの頼み事だって。

ㅤってって五月蝿いな。

 

「で、警告って何の?」

「ナナヤが貴方を探していたわよ」

「…はぁん?」

 

ㅤイシュタルさんが口にしたこの「ナナヤ」という人物。

ㅤん?人物じゃないな。

ㅤそのナナヤという、見た目は少女らしさ全開の神。

ㅤ人ではなく、神様。

ㅤが、どうやら俺を探しているらしい。

ㅤ何か全うな理由が無い限りは構う必要が無さげ。

 

ㅤというか俺は忙しんだ。

ㅤあづみさんとリゲルさんにあげるプレゼント選びに手も足も出ないでいるんだよ。

ㅤの前に、ルクスリアさんに「女性は何を貰えば嬉しいのか」って相談出来なかったし。

ㅤもういっそのこと、ヴェスパローゼさんにもプレゼント渡すから代わりに選んでくれないかなぁ。

ㅤきさらちゃん?

ㅤああ、きさらちゃんはあげる前提でいたから気にしてなかった。

ㅤ兎に角それは置いといて。

 

「何故ナナヤ嬢が俺を?」

「さあねえ…、あの子はまだ幼い所があるから…もしかしたら遊んで欲しいんじゃ無いのかしら?」

「憶測ですら聞きたくない言葉を飛ばして来ましたね」

「だって貴方、ナナヤのお気に入りじゃない」

 

ㅤおいおい、随分と嬉しく無い事を言ってくれるじゃないか。

ㅤあの子(ナナヤ)に構うのは結構体力使うんだぞ。

ㅤ軽く口にしないで貰いたい。

 

「じゃあ、きぃとあそんでくれる…?」

「あ、きさらちゃんは大歓迎。何時でも良いよ」

「うゆゆ〜♪」

 

ㅤ全くもって、きさらちゃんは可愛気が満載だな。

ㅤお姫様抱っこしている今だからこそなのかもしれないが、態々顔を近付けて頬擦りしてくれるなんて。

ㅤ思わず口元が緩んでしまう。

ㅤずっとこうしていたい。

 

…すりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりーー

 

…はっ!

ㅤ意識が何処か遠くへ飛んでいた。

ㅤ危ない危ない…きさらちゃんの癒しパワーに負けるところだった。

ㅤ既に敗北済みだが。

 

「もう、きさらはずっと大祐の側に居れば良いのに」

「ろーぜもいっしょ」

「じゃあ大祐は居なくてもーー」

「やっ!だいすけ、ずっといっしょにいる!」

 

ㅤおおう、きさらちゃん、幾らそれが嫌だからって急に抱き締められるのは流石にビビる。

ㅤまぁ…幼い少女の抱き着きなんて可愛い物だよ。

ㅤ油断してるとあの色欲の魔人とかいう女の人の胸に埋められてしまうからな。

ㅤ例えば今みたいな、きさらちゃんに癒されて隙だらけな状態の時とかにーー

 

「こんな感じでね♪」

「るくすりあ!」

 

ㅤほらな、言っただろう。

ㅤだから正直諦めはついてたさ。

ㅤ今更その事実に気付いても遅いって。

ㅤだが、ルクスリアさんは何故俺達が此処に居る事を分かっていたんだ?

ㅤ確かにあの店から出てからそこまで時間は経っていないが…

 

「やぁ、俺だ」

「ああ、君か」

「そうさ…変態という名の紳士、所謂オ・レー参上!」

 

ㅤうん、此方もある程度予測していたさ。

ㅤこういう謎事態には必ずと言って良い程に、この森山碧さんが関わっているんだよなぁ。

ㅤ森山クオリティ、やるわ。

 

ㅤさてさて…その最も避けたい人と合流してしまったが。

ㅤへっきーがいるという事は近くにエレシュキガルさんもいるという事だ。

ㅤ今は姿が見当たらないが何処に居るのやら。

ㅤまぁ。

ㅤどうせ。

ㅤへっきーの背後に。

ㅤ居ると予想して回り込んでみるぅ!

 

「あれま!大祐さんではないですか!」

「うわぁ!?」

 

ㅤ何だと!?

ㅤへっきーの背後にいたのはエレシュキガルさんではなくて…骨…骸骨…が黒いスーツを着てーースケルタルセールスやん。

ㅤまさかの出来事に驚かされた。

ㅤ親友の恋人を一目見ようと回り込んだら骨て。

ㅤいや、エレシュキガルさんがいられても困りものだが。

 

…でー、ですね。

ㅤどうして此処にスケルタルセールスが?

ㅤへっきーとこの骸骨さんが一緒に行動してるのは其処まで珍しい光景ではないのだが…やはり商売の手伝いか。

ㅤそれともスケルタルセールス商品に対するクレームの後始末か。

ㅤ何方もあり得るのが嫌だな。

 

「大祐、こんな場所で何してんの?」

「きさらちゃんと仲良く話してた」

「うぃ!」

「良いなー良いなー、俺にもお姫様抱っこさせーー」

「やぁっ!」

 

ㅤ何だ今のきさらちゃんの拒絶っぷり。

ㅤ身を縮こませながら震えてんぞ。

ㅤへっきーが何をしたのか分からんが、この二人はあまり近付けない方が吉か。

ㅤきさらちゃんがここまで拒絶する理由が知りたくもあるが。

 

ㅤって、へっきーが頭を抱えて項垂れてる。

ㅤ相当ショックだったんだろうな、こんな美少女に拒否されて。

ㅤ彼方ではルクスリアさんとスケルタルセールスで何か企んでるし。

ㅤヴェスパローゼさんはイシュタルさんと、きさらちゃんの可愛さを語り合ってるし。

ㅤああやって見ると、ヴェスパローゼさんがきさらちゃんの本当の母親に見えるのが不思議だ。

ㅤ最初の頃は「道具」やら何やらとしか考えてなかったらしい。

ㅤそれが今は………Z/Xも神様も変わるって事だな。

 

「んで、へっきーは何してたの」

「スケルタルセールスの商品を繁盛させて、フィーユをもふもふする為に追い掛けて、スケルタルセールスのクレームから逃げてきた」

「繁盛させて直ぐにクレーム来たんかい。……成る程な、あの時嫌な予感がしたのはフィーユの件か。通りで二人が焦ってた訳だ」

「クレーム大歓迎☆馬鹿か」

 

ㅤ何やらへっきーが一人でボケ始めた。

ㅤまぁとはいえ、この場でスケルタルセールスやルクスリアさん、へっきーに会えたのは幸運か?

ㅤあづみさんとリゲルさんのプレゼントは何が最適か、多数の意見を述べて貰えるし。

ㅤ万が一はスケルタルセールスにオススメを聞いてーー

 

「あ、大祐さん?今私の商品に目を付けて頂きましたよね?いや〜お目が高い!私個人の意見ですと、女性の方へのプレゼントはこの「アイアンメイデン」なんかがオススメですよ!」

「何故処刑道具を勧められたし、てか何故悟られた」

「前回のアイアンメイデンとは違いますよ!この商品は大の大人が二人は入れるスペースが御座います。アイアンメイデンの中で二人、しっぽり朝まで誰にも邪魔されずに楽しめます!」

 

ㅤ最早聞いとらん。

ㅤまぁ、後半の説明には魅力を感じるし聞こえは良いが、残念ながら二人じゃ足りないぞ。

ㅤ第一、あづみさんはまだ14歳だ。

ㅤ言うて俺も15歳。

ㅤちょっとそういうのは早くないですかね…期待してる自分が憎いわ。

ㅤ然もメイデンプレイとか斬新過ぎる。

ㅤ誰がやるんだ、それ。

 

「更に、今なら何と!横向きも用意させて頂いております!どうです?この扉を閉じるとーー」

「よし」

「お、まだまだ説明途中ですよ〜?それでもお買い上げを決定なされましたか?」

「聞くより試せだ」

「じゃあじゃあ、私と大祐君が一緒に入って朝まで…きゃっきゃうふふって♪」

「きぃがだいすけと…はいるっ!」

「いや、スケルタルセールス、お前が入れ」

「はい!?」

 

ㅤ横で何やら妄想を膨らませている魔人を無視し、抱っこ中のきさらちゃんを一旦降ろして、スケルタルセールスの両肩を掴み。

 

「おっ?おっとこれは?」

 

ㅤやっぱり、骨だからそこそこ軽いな。

ㅤなんて思いながら例のアイアンメイデンとやらに打ち込む。

 

ぶんっ

 

ㅤ自分の両腕を大きく動かすと固形物を思いっきり振り回した時の様な音が耳に伝わる。

ㅤそれと同時にスケルタルセールスの体(骨)がアイアンメイデンの鉄部分に当たり、ガツンと良い音が響きわたった。

ㅤするとあら不思議。

ㅤアイアンメイデンが物体を感知したと共に、分厚い鉄の扉を閉じていくではないか。

ㅤ処刑道具だけあってびっしりと針?棘?が張り詰めているのには目を向けないでおこう。

 

「ちょっと!?ここから出して下さいよ!早くしてくれないと私の体がーー痛いっ、痛いですって!こいつぅ♪」

「…あの骨さ、自分の商品に対して愛着沸かせ過ぎじゃないか?」

 

ㅤ何故だろう、何処からかミシミシと擬音が鳴り響いているな。

 

「止めて!それ以上スケルタルセールスを虐めないで!」

 

ㅤへっきーがなんか言ってるが無視。

ㅤ暫くこの映像を眺めるとしよう。

ㅤちょっとへっきー止めなさいよ、肩を揺らさないで。

ㅤルクスリアさんは一度俺から離れて。

ㅤきさらちゃんは…何時から俺の足にくっ付いてたんだ?

ㅤしょうがない、お姫様抱っこ再開だな。

 

「うゆ?だっこ♪」

 

ㅤぐふぅ可愛い。

ㅤもうこの場で癒しを求めるのであれば、きさらちゃんを抱く位しか無いな。

ㅤ後はきさらちゃんと遊んであげるとか…というか此処に癒しを求めてはいけないような気が、しなくもない。

ㅤ取り敢えずスケルタルセールスの処理は終えたから皆さんにプレゼントの件をーー

 

「なぁなぁ」

 

ㅤなんだへっきー、きさらちゃんは渡さんぞ。

 

「いやそうじゃなくてだな」

「ああ違うの」

 

ㅤなんだ、なら良い。

ㅤ軽く心中を見切られたのは気にしないでおこう。

 

「お前さ、ニーソ穿いてる女性が好みなんだよな?詳しい部分は除いて」

「まぁ…強ち間違っちゃいない」

「きさらちゃんニーソ穿いてないけど」

「にーそ?」

 

ㅤ如何にも平仮名で表記されそうな言い方でニーソと口にするきさらちゃん。

ㅤそしてじっと此方から視線を外さない。

ㅤどうして獲物を捕らえる様な目をしているのかは分からない。

ㅤそれすら可愛いと思えるのもまた不思議だ。

 

「えーとねぇ…きさらちゃんは論外。ニーソじゃなくても関係無し」

「あ…さいですか。逆にきさらちゃんの男性に対する理想像は?」

「りそうぞう?」

「例えば、こんな男性が好き〜とかーー」

「だいすけっ!」

「畜生めぇ!」

「ふっ」

「笑ごっちゃねぇぞ、大祐!」

 

ㅤなんかもうコントみたいになってきてるな。

ㅤ正直察していたが、へっきーは漫才の道を進む事をお勧めするよ。

ㅤツッコミ役として誰かに付き合って貰ってさ。

 

…あ、待てよ。

ㅤ確かトーチャーズにいたよな「バシバシするジャネット」とかいうのが。

ㅤへっきーとその相方虐待娘を組ませればもう完璧な布陣じゃね?

ㅤ漫才で二人の右に立つ者は居ないみたいなね。

ㅤうん、例の相方虐待娘の隣に立っていた森山碧が何時の間にかいなくなってそうな予感。

 

ㅤ悲しきかな悲しきかな。

ㅤ後程ルクスリアさんに頼んでみようかな、ジャネットと漫才の事は。

ㅤ尚、へっきーに拒否権は無し。

 

「はあ全く、これだからハーレム野郎は………あ」

「ハーレム言うな。てかどうした?」

「私もそのハーレムの一人にーー」

「ルクスリアさんは相馬氏がいるでしょう!」

「あの人構ってくれなーい」

 

ㅤいや知らんがな、構ってくれる人なら誰でも良いんでしょ、ルクスリアさん。

ㅤ誰か、この人の旦那さんになってくれる方募集しまっせ。

ㅤ四六時中ルクスリアさんと遊んであげれるって人は最適。

ㅤ更には体目的じゃなければもっと最適。

ㅤこの方、口では好き勝手言ってるけど変態は好きそうにないんで。

ㅤ寧ろそれに関する事に無関心な人を揶揄うのが好きらしいですよ。

ㅤSだな、この人!

 

ㅤさて、ルクスリアさん旦那募集のチラシは後で貼っておくとして。

ㅤルクスリアさんの所為で話の内容に齟齬をきたしてしまったではないか。

 

ㅤだが、彼女は色欲の七大罪でありながらも行き過ぎた行為はそりゃ、自分の一番大切で好意を抱いている人物以外とはしないだろうし。

ㅤ間違っても彼女をビッチなどという流言に惑わされてはいけない。

ㅤ実際に現場を見た訳でも無い奴等に、そんな事を言う権利は無い。

ㅤルクスリアさん本人が断言するなら肯定する他、選択肢がないけど。

 

「話、戻して良いか?」

 

…へっきーも、もうちょっと押し通す力を付けて欲しいものだ。

ㅤそんなんじゃルクスリアタイプの人物に歯が立たないぞ。

 

ㅤん?あ、俺がこんな言い方するから、彼女が勘違いされるのか。

ㅤ残念ながらこれは実体験だ。

 

「あのよ、大祐よ」

「その喋り方をなんとかしなさい」

「いや、早く家に帰ってやれって話。もうそろそろ17時過ぎんぞ」

「それが?」

「まぁまぁとやかく言わずに、しっかりプレゼントも買って帰るんだぞ」

 

ㅤ?

ㅤ森山碧君が急に態度を変えたな。

ㅤ然も、何やら含みのある言い方で帰れって…

ㅤんな事を唐突に言われたってどうすれば良いのやら。

 

「明日お前ん家でパーティーやるんだろ?忙しくなるのは目に見えてんだから、今日位は彼女達と楽しく過ごせって」

 

………成る程な。

ㅤへっきーは気を使ってくれていたのか。

ㅤそれならお言葉に甘えさせて貰おう。

 

「…だな。んじゃ、もう帰るわ」

 

ㅤ俺はお姫様抱っこしているきさらちゃんをゆっくり下ろす。

ㅤどうやらヴェスパローゼさんは分かってくれている様子で、此方に笑みを浮かべていた。

ㅤイシュタルさんは…既に何処かへ消えている。

ㅤ本当にきさらちゃんを見に、俺に警告を言いに来ただけだったな。

ㅤ神様とは気紛れだ。

ㅤスケルタルセールスは変わらずアイアンにメイデンされている。

 

ㅤルクスリアさんはーー

 

「ほら、早く行ってあげなさい?」

 

ㅤと、背後から両肩に抱き着かれた。

ㅤ相変わらず、根は優しくて芯の強い、可愛らしい人なんだなと思わせられる。

ㅤ割と本気で良い人を見つけて欲しい。

ㅤてな訳で、ルクスリアさんの旦那さん募集中!

 

「だいすけ…もうかえっちゃうの?」

 

ㅤいざ帰ろうとすると、きさらちゃんが寂し気な表情でコートの端を掴んでいた。

ㅤこうされると弱いのが俺なのだ。

ㅤが、今日だけは理性を振り絞って。

 

「今から家で遊ぶ?」

「うぃ!」

「帰れぇ!」

「…という訳なんだ。ごめんね、きさらちゃん。良かったら明日はヴェスパローゼさんと一緒に家においでよ。歓迎するからね」

「うゆ……うぃ」

 

ㅤあぁ、そんな悲しまなくても。

ㅤ顔を下に向けて、大きな黒い帽子だけが俺の視界に映る。

ㅤ何だろう、頗るいたたまれない。

ㅤ明日は存分に遊んであげよう。

ㅤ仕方が無いがルクスリアさんも。

 

「じゃあね」

「あした、いっぱいあそぶっ!」

「うん。きさらちゃんが満足するまで付き合うよ」

「ろーぜ!かえってねよっ!」

「きさらったら…気が早いわね」

 

ㅤやれやれといった表情を見せるヴェスパローゼさんだが、丸で母親の様な優しさが伝わってきた。

ㅤあの人がきさらちゃんの実親でも可笑しくないよな。

ㅤ外見に難があるが。

 

ㅤして、その面子とは其処で別れた。

ㅤ一応ながらクリスマスパーティーの詳細時刻等を教え、来場人数は不特定という注意事項も付けて。

ㅤするとルクスリアさんは、絶対に、何があっても行くからと言い残して去っていった。

ㅤきさらちゃんは夜眠れるのか不安になる程にるんるんと、テンポ良く歩きながらヴェスパローゼさんと帰って。

ㅤへっきーは穴だらけのスケルタルセールスを担いで新しい商品を売り込みをしに、目の前から消え。

 

ㅤ俺は一人、帰り道と重なる店で二人へのプレゼントを買い。

ㅤ二人以外に渡すプレゼントも買って帰路へついた。

ㅤ自宅は既に目と鼻の先だった。

 

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 

ㅤ青の世界で一番の大きな家ーー何方かと言えば要塞と例えた方が正しい程に城らしい自宅を持つ九条大祐。

ㅤ先ず手始めに指紋認識での解読を行い、檻と間違える位に頑丈で縦に長い黒い門を開く。

ㅤ次にガラス張りにされた扉…結界に見えなくもない扉を、虹彩認識で抜け。

ㅤ最後にカードをスキャンして終了。

ㅤ此処までは全て一本道。

ㅤこれでやっと九条家の敷地内に入る事が出来る。

ㅤ視界一杯に広がる庭を抜けて後は自宅の扉へ歩みを進めるだけ。

 

「ただいま」

 

ㅤ九条は家の鍵を外し、帰って来た事を知らせる為に一言口にする。

ㅤ次は直ぐ側に設置してある殺菌作用の高い消毒液を手に付け、その隣にある洗面台で手を洗い流す。

ㅤそれが終わると、広々とした玄関をスルーしてリビングへと向かう。

ㅤ因みにリビングは二つ。

ㅤ一階に一つ、最上階に一つ。

ㅤ玄関の横隣にエレベーターが設置されており、それで最上階へ移動出来る。

ㅤいや、エレベーターと偽ったワープが正解。

 

ㅤ彼は迷わずそのワープゾーンに足を踏み入れた。

ㅤすると一瞬にして最上階、リビング手前に到着。

ㅤ其処で漸く靴を脱ぎ、リビングへと続く扉を引いて入室。

 

ㅤ先ず目に映るのは配列が綺麗に整われた椅子&ソファー。

ㅤその二つの間に挟まれるかの様に置かれている横長のテーブル。

ㅤ更にその後ろは全面ガラス張りの周囲一帯が見渡せる窓。

ㅤ此処から見る夜景は素晴らしい位に綺麗だとか何だとか。

 

ㅤ九条は取り敢えず、疲れた足を休めるべくソファーに歩いていく。

ㅤ流石に数時間歩きっぱなしは辛かったのか動きがグダグダだ。

ㅤ丸でゲームに出てくるゾンビの様に背中を丸くして移動していると。

 

「あっ、大祐くんっ」

 

ㅤ少し離れた右手から、可愛らしい、幼い少女の声が九条の意識を鷲掴みにする。

ㅤ直ぐに姿勢を正し、即座に声のした方に顔を向ける九条。

ㅤ其処には水色よりも薄い青色の、ウェーブがかかった長い髪の毛。

ㅤ思わず吸い込まれそうになってしまう大きくて紅い瞳。

ㅤふわふわとした印象を受ける衣服を身につけている少女が、何かを持って立っていた。

 

「あづみさん…ただいま」

「えへへ、おかえりなさい、大祐くん」

 

ㅤそう、彼女は九条大祐と愛を築いた一人の女性『各務原あづみ』。

ㅤ未だ14歳ながらも辛い運命を辿り、九条と共に乗り越え、最終的に互いが繋がるまでに成就した。

ㅤ兎に角彼女を愛して止まない九条は直ぐ様各務原あづみの元へ足を動かす。

ㅤ既に彼は疲労という概念を忘れていた。

 

「だ、大祐くん、ちょっと待ってて!」

「り、了解」

 

ㅤそう言うと彼女は曲がり角の奥へと走っていった。

ㅤ各務原あづみの唐突なるストップタイム発言に一瞬体を揺らした九条大祐。

ㅤ更には戦闘中に多用する言葉「了解」を使って受け答えをする。

ㅤ年齢的には彼が1歳年上なのだが、九条からすれば各務原あづみという存在は高嶺の華なのだろう。

ㅤ以前までは敬語を使用して会話していたらしい。

ㅤだが、華と例えるのを九条は嫌う。

 

ㅤ一見綺麗で可憐な印象の「華」という言葉。

ㅤ自分の手では届かない存在を高嶺の華と言うのだが、それ程に地位が高い、可愛い等と色々な意味で見受けられる。

ㅤ相手方からすれば褒め言葉として受け取れるが、九条は逆だ。

ㅤ何故なら「華」というのはこういう風にも使えるからだ。

 

ㅤ華の命は短くて

 

ㅤ好きな人程ずっと一緒に居たいと思える。

ㅤだが、華という言葉を使用した文章、言葉は先程の意味としても受けられる。

ㅤだからこそ彼は華といった言葉をあまり使用しない。

ㅤ名前や技名に入れると中二感が増す為に使う時はあるらしいが。

 

(…ていうか、彼処ってキッチンがあったような。)

 

ㅤ話を戻すが、彼女は何かを手に持っていた。

ㅤ然もエプロン姿。

ㅤ九条大祐は察しつつも本人の前では知らない振りを貫こうと心の中で決める。

 

(帰って来たらあんな美少女がエプロン姿でニコニコしながら「おかえりなさい」って……ヤバイ、何か唆られる)

 

ㅤ九条大祐は理性を抑えるのに必死になっていた。

 

ㅤ各務原あづみから待機指令を出されてから1分。

ㅤいや、1分も経っていないだろう。

ㅤ彼女は焦りながら九条大祐の目の前まで走ってきた。

 

ㅤ少しの息切れを見せながらも彼に笑顔を向ける各務原あづみ。

ㅤ何をそんなに急いでいたのか気に掛かった九条だが、取り敢えず彼女の背中を摩って落ち着かせる。

 

「一体どうしたんだい?こんなに息切らして」

「う、ううん。何でもないよ。大祐くんのお出迎えにあの格好は恥ずかしくて…」

「じゃあ、この頬に付いてるクリームは?」

「えっ!?…ほんと、に?」

 

ㅤ各務原あづみは自身の手で頬を触り始める。

ㅤだが、惜しい所で一歩届かずに苦戦していた。

ㅤそんな光景を見ている九条大祐。

ㅤ彼はゆっくりと手を伸ばし、各務原あづみの頬に付いているクリームを取って見せる。

 

「ほら、取れた」

「うぅ〜…リゲル、教えてくれれば良いのに…」

「まあまあ、クリーム付けた可愛いあづみさんが見れて俺は満足だよ。後はこれを頂くだけだから」

「私は恥ずかしーーえっ?」

 

ㅤすると九条大祐は、各務原あづみの頬から取ったクリームを趣に口に入れた。

ㅤ自分の指は入れずに。

 

「うん、おいしい」

「えと…大祐くん、汚いから駄目だよぅ」

「あづみさんの頬に付いたクリームは俺だけの物だ。無論、あづみさんもね」

「あ、ありがと…えへへ///」

 

ㅤ顔を真っ赤にさせる各務原あづみを、九条は和かな表情で見つめていた。

ㅤその視線に気付いた彼女も恥ずかしがりながら笑顔で返す。

ㅤだが、各務原あづみは違う所へ目が向いた。

 

ㅤそれは、九条大祐の傍らに置いてある何個か束ねた袋。

ㅤ然も袋自体はかなりの量がある。

ㅤ一括りにして持ち帰って来た九条大祐の手には、持ち手の跡がくっきりと残っていた。

 

「大祐くん、その袋ーー」

「あづみー、どうかしたの?」

 

ㅤ各務原あづみが彼の持ち帰って来た袋の事を聞こうとした時、キッチンの方から女性の声が響き渡る。

 

「あっそうだ。二人共まだ、大祐くんが帰って来た事知らないんだった」

「俺もキッチン行って良いですか?」

「うん!二人を驚かしてあげてよっ」

 

ㅤ瞳をキラキラとさせる各務原あづみ。

ㅤ九条大祐はそんな彼女の思いに応えるべく、買った物をソファーの上に置いてキッチンへと足を運ぶ。

ㅤその後ろをドキドキしながら付いて行く各務原あづみ。

ㅤ目的地のキッチンに近付く毎に二人の女性が話し合っている声が九条の耳に入ってくる。

ㅤどうやら、何かを言い争っている風な口調だ。

 

ㅤキッチンに誰が居るかなんて既に分かっている九条大祐だが、分かっているからこそ少し緊張してしまうのが今の彼だ。

ㅤ恐る恐る近付き、遂にキッチンは横を曲がった所に。

ㅤいざ踏み出すといったその時。

 

「あづみー、何かあったのー?」

「い、今行くー!」

 

ㅤ一瞬の気の緩みが九条大祐の体を凍り付かせた。

ㅤだが、 何時までも固まっている時間は無い。

ㅤ彼は各務原あづみのフォローを無駄にはさせまいと一気に二人の居るキッチンへと体を進ませた。

 

「…これはここに乗せるべきだと思うわ」

「いえ、此方の方が大祐は喜ぶと考えます」

「でもそこじゃあ目立たないわよ?」

「無駄に派手で無いのも彼は好むと言ってました。リゲルはあの人とずっと一緒に居て、好みの一つも聞いてないのですか?」

「し、知ってるわよ!…でも、ここは敢えてあづみに任せましょう」

「リゲル、呼んだ?」

「その意見には賛成です。あづみ、貴女は何方が良いと思いーー」

「勿論私の方に賛同よーー」

 

ㅤ言い争いをする二人の女性。

ㅤ目の前に立つのは一人の少女と。

 

「「だ、大祐!?」」

「何してんですか…リゲルさんにベガさん」

 

ㅤ九条大祐に見られたくも無い状況を見られてしまった二人の女性。

ㅤ右で目をぐるぐると回す金髪ロングヘアーの『リゲル』に。

ㅤ左でそっぽを向きながらも頬を赤く染めている水色髪ポニーテールの『ベガ』。

ㅤ前者は各務原あづみのパートナーZ/X&九条大祐と昵懇な間柄を築き上げ。

ㅤ後者は各務原あづみの実の母親でありながら、九条大祐に少しの気を持っている。

ㅤ尚、その事実は本人とリゲル、各務原あづみの中でしか知られていない。

 

「ていうか何で二人共クリームまみれなんですか!?」

「こ、これには深い事情があって…」

「リゲルの料理スキルは見直しが必要です。誰か料理の上手い方がいらっしゃれば…」

「じゃあ何でベガさんまでクリーム沢山なんですか」

「これには深い事情があるのです。出来れば貴方には知られたくないのですが…」

 

ㅤ互いに同じ言い訳をする二人。

ㅤこれはどうにかしないと、と思う九条だが、それよりもある所に意識を持っていかれていた。

ㅤ誰を横に並べようと変わらぬ美しさを持つ美人女性二人の体の彼方此方に、真っ白いクリームが。

ㅤ年齢的にも身体的にも健全な男の子をしている九条大祐にとって、その光景は目に毒其の物だった。

 

ㅤ彼はその場で、バトルドレスを持ち得る者のみが扱えるデータボックスを展開。

ㅤメニューから持ち物と表示されているアイコンをタッチし、その中から仕舞っておいた厚く大きなタオルを二枚と、そこそこ大きな桶を取り出す。

ㅤして、次はキッチンに設備されている蛇口を捻って温水を流し始めた。

ㅤ先程取り出した桶を幅の広いシンクに設置しそれに温水を流し込み、中にタオルを一枚ずつ着水させていく。

 

ㅤある程度の温水が溜まったのを確認すると、蛇口を逆に捻って閉める。

ㅤ先ずは先に入れた一枚のタオルを持って強く絞る。

ㅤ極力温水を残さないように、且つクリームの汚れを取る為に少しの水は残しておいて。

ㅤそんな絶妙な力加減で絞ったタオルを、横で興味津々気味に見ていたリゲルに渡す。

 

ㅤ先と同じ要領で絞ったタオルを今度はベガへと渡し、事無きを得る努力を尽くした九条大祐。

ㅤ最早タオルどうこうの問題よりも精神的に疲労した彼であった。

 

「…で、何故ケーキ作りに俺を呼んでくれなかったんですか?」

「えーと…サプライズ!みたいな…?」

「リゲルさん、その無理は通せませんよ」

「道理は?」

「引っ込みません」

 

ㅤ笑顔で何とか誤魔化そうするリゲル。

ㅤ九条大祐は彼女の目の前まで近付き、顔に触れ始める。

ㅤ彼の唐突なる行動にピクッと体を揺らしたリゲルだが、そのままじっと、九条を見て動きを止めた。

ㅤそんなリゲルのありと凡ゆる所に目を配り、手を離す。

 

ㅤすると今度はベガの頬に手を当てる九条。

ㅤ男性に触れられる事があまり無かったベガは、行成自身の顔を触られて身を小さくする。

ㅤ両手を重ね合わせて落ち着き無くもじもじとするベガ。

ㅤ九条は、一切視線を合わせてくれない彼女の顎を人差し指で上に上げる。

ㅤ俗に言う「顎クイ」だ。

ㅤだが、こうして強制的に目と目を合わせる理由が九条にはしっかりとあった。

 

「…二人共、怪我は無いようですね。なら良かった」

「もしかして…心配してくれたのですか?」

「当たり前じゃないですか。これから何を作るのかは分からないですが、俺も手伝いますよ」

「んじゃ俺もー!」

 

ㅤと、リビングの方から聞き慣れた感じの男性の声が周囲に響き渡る。

ㅤ九条が其方の方へ様子を見に行くと、人の家にも関わらず誰かが勝手にソファーに座っていた。

ㅤ普通ならここでバトルドレスを装着→不法侵入者を即刻排除するところなのだが。

 

「…へっきー、頼むから一言掛けてくれ」

「はは、すまんな。お前と美女二人、美少女一人のラブラブシーンを見せられたんじゃ声をかけ辛くてな」

「後でセキュリティ強化しとかないと何時か親友にやられるわ」

「…ねぇ、まさか碧の方が強いの?」

 

ㅤ九条と森山碧が何時もの調子で話していると、彼の背後から銀髪ロングヘアーの美人女性が姿を現した。

ㅤ彼女の背中には小さな黒い翼が生えており、頭からは角らしき何かも生えている。

ㅤ露出度は異常に低く服全体が黒で統一されている。

 

「…え、エレシュキガルさんもお手伝いに?」

「勘違いしないで。貴方の手伝いなんかじゃなく、私は碧の手伝いをしに来ただけだから」

「勘違いなんてしませんよ。まあでも、有難うとは言っておきます」

「好きにすれば?貴方には関係の無い話だから」

 

ㅤ誰もが分かっていた事だ。

ㅤ前々から説明はしていたが、森山碧を好む人物は九条大祐を滅法嫌う。

ㅤそして逆もまた然り。

ㅤ例としてあげるならば、百目鬼きさらなんかがそれに該当する人物だ。

ㅤ九条大祐には甘えて。

ㅤ森山碧は拒絶。

ㅤ彼女以外にもベガやリゲルといった女性等は大概がそんな感じだ。

ㅤ各務原あづみは遠慮して言わないのが目に見えている。

 

「大祐くん、お客様ーー」

 

ㅤ事実、森山碧を視界に入れた瞬間に九条大祐の後ろへ隠れた。

ㅤ最早お客様どうこう等関係なくなっている。

ㅤだが、それ程までに二人を好む女性は対照的だというのが見受けられる。

 

「取り敢えずへっきーが来たなら手早く終わるだろう」

「…大祐、本当にこれに手伝って貰うの?」

「これ言うなや」

「碧の悪口は私が許さない」

「…一向に話が進まんな。じゃあ、最初の内は俺とあづみさんとリゲルさんにベガさんでやるから、其方は好きな様にやって頂戴な」

「おう、任せとけ。料理に関しては長けてるからな!自負するぜ」

「あぁ、料理に関してはな。それ以外は…」

「うるせぇ!」

 

ㅤそんな会話で笑い合う二人。

ㅤ九条大祐と森山碧、彼等の仲は非常に良好なのに対して、女性同士は何故こんなにも険悪なのか。

ㅤこれは既に諦めるしかないのかもしれない。

 

…その日は6人で夜中近くまで料理を作り続けた。

ㅤどうせだから泊まっていけと九条大祐の配慮に甘え、森山碧とエレシュキガルは九条家に一泊する事に。

ㅤ値段の高いホテルの様に部屋数が凄まじい九条家にとって、二人が泊まる事など人数的に気にする程度ですらない。

ㅤ更に二人は一緒の部屋が良いとの事で部屋自体は一室しか埋まっていない。

 

ㅤそんなこんなでクリスマスイブは終わりを告げた。

ㅤだが、明日はクリスマス当日。

ㅤまだまだ疲れている暇の無い九条だった。

 

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