文化祭準備は疲れるわ、本番は疲労困憊でぼー、としてました。カフェがあったので、帰れといわれるまでぼーっとしてました。
さてはて、今回は急展開。お暇でしたら、読んでいただければ幸いです。
-side 士道
『士道!士道!』
水族館を出て、ぶらりぶらりと買い物をしていると、耳につけたインカムと繋がっている〈フラクシナス〉の司令官、琴里が切羽詰まった声を出した。
「なんだ?」
雫に断りを入れてから少し通りを抜けて、インカムに手を添える。本来起こらない異常事態なんだろうということはすぐに分かった。
『ASTが動き出したわ! 恐らくだけれど、雫を標的にね』
「なっ…!?」
琴里の言葉に俺は言葉を失った。
ASTが動き出すときは、市民に危険が迫った時だ。しかし、今現在空間震の余波は観測されていないし、雫は静粛現象でこっちに来た。
市民に危険は全く来ておらず、ASTが動く必要は無いはずだ。
俺が理解した瞬間を見計らったかのように、空間震の余波を観測した時に鳴るサイレンが街中に、さらにインカムから鳴り響いた。
裏路地から見えていた大通りにいた市民が少しの間硬直し、それから地下シェルターに避難していった。それを見ておろおろとしていた雫が、俺の姿を見つけてこちらにとてとてとやって来た。
「あ、あの、士道」
「落ち着いてくれ。正直、俺もよく分かっていない」
ここで俺が冷静を欠くと最悪の結果になりかねない。ASTが来ているらしいから、雫と一緒に逃げるのが最善だろう。
『ほうほう。私の本体〈
間の抜ける声でそれを告げる。っていうか、それ、分身体か、分離してるのか?
「ど、どうしよう」
「まずは逃げよう。さすがにここだと袋小路に…」
俺が言い終えるよりも早く、前方にASTの一人が降りてくる。左右、さらには後ろからもジェットの噴射音が聞こえたので、上空から降りてきたのだろう。
「最悪」
『いやいやー、最悪と言えるのであれば、それは最悪ではないのですよ』
俺がぼそっと呟いた声に反抗するようにプログラムが言ってくる。
『雫様ー』
「ん」
こく、と雫が頷く。その表情は、まるで人形だった。先ほどまで見せていた困惑、不安、恐怖といった表情がすっと影を潜め、眼からは光が消え、口は最小限の動きになった。
「全員、気をつけて!」
ASTの隊長だろう女性が声を上げると、皆が光の剣を取り出して、こちらに向けてくる。ここまで来て、俺はようやっと理解が出来た。
俺が市民として、雫の前に立って盾となることは出来ないだろう、と。俺さえも、足蹴にして、この雫を始末しにかかるだろう、と。
『士道様。私はプログラムです。そして、雫もまた、貴方に従います。さて、どうしましょう?』
悪戯な声を出して、プログラムが尋ねてくる。興奮を隠し切れないような声音に、そして、無表情に頷く雫に恐怖を覚えながら、未だ健在する冷静さをフルに使って、現状打破の一手を考えていた。
目の前で隊長が何か手で指示を送っているが、関係ない。
「よし、雫! 逃げるぞ!」
「分かった」
ポンといってから、俺の前に立つ。これが、逃げる?
前方に突き出す。さらに彼女のハンドバッグから重力を無視した、菱形のクリスタル、自立プログラムが俺の後方に立つ。
『フラッシュ、ご注意ください』
「士道。ごめんなさい〈
大地変動、更に言うなれば、天変地異か。
裏路地を形成するビルの四つが何かに空間ごと蝕まれ、バランスを崩し崩壊する。
土煙が巻き起こったが、それは一瞬で眩い光に負け、消えた。ビルの破片は一切残っておらず、そこにビルがあった、なぞ誰も信じてはくれないだろう。
その代わりに絡繰人形が自動小銃を構えている。さらにその中心部には大砲を構える絡繰人形が、無機質にたっている。
『私たちにとって、逃げるというのは、こういった方法しか知らないのです』
悲しげなプログラムの声を聞いて、雫は少しだけ俯いた。
失敗した。そう思うには遅すぎたが、しかし、思わずにはいられなかった。逃げる、というのは、確かに一般的な感性を持っているのであれば、走る、だったり、まぁ、精霊だったならば、飛んで逃げたりするんだろう。それこそ、転移だってありえる。が、しかし、雫は逃げることが出来ない王女様だ。
逃げるには、戦争を起こさねばならない。
「全員、構え!」
敵対するように、ASTの隊長が告げ、皆が剣をしまい、自動小銃を取り出す。
「…本当に、ごめんなさい」
こちらを振り返ることなく、彼女は告げた。悲しげに、嗚咽さえも聞こえるほど。あぁ、最悪である。
確かに、言葉に出せる間ならば、最悪ではないみたいだ。
あの状態だったなら、何だって出来た。それこそ〈フラクシナス〉に拾ってもらうことも。
『【
プログラムが言うと、二人は魔法のように、パッと消えた。何かに吸い込まれるでもなく、何処かへ飛んでいくでもなく、まるで元からその場にいなかったかのように。
主観で語る系小説をあまり読んでいないので、読んでいる小説とのギャップを感じざるをえない。
さてはて、あまり語ることもないので、端的に。
この『デート・ア・ライブ 雫キャッスル』ですが、そろそろ終わりに差し掛かります。もしかしたら、次回が最終話になるかもしれません。
それだけです。ではっ!