スイマセン。ぎりぎりでしたね。
というのも、全県模試の勉強だったり、本番だったり、部活だったりと、何せ学校が忙しいものでね。 あぁ、これは私事でしたねぇ。
ではでは、見ていただければ幸いです~
-side AST
「なぜですっ!?」
AST、天宮市駐屯地の、会議室。召集された隊員達に、上層部が告げた言葉は一言。
「なぜ精霊を目の前にして『待機』なのですかっ!?」
少々小太りの上層部の男に対して、天宮市駐屯地の隊長 日下部 燎子は、怒気を孕んだ大声を響かせた。
バンッ!と強く叩いた机がビリリと震え、返って来た反動で肘に痺れを感じたが、そんなことどうだっていい。
「さ、さっきも言った通りだ。精霊としての確証が持てない」
「何が!? 天使〈
そこまで続けて、あぁ、ムダだなと理解する。
「我々は精霊の殲滅であって、『精霊のような生物』を攻撃することではない」
小太りの男はこちらに背を向けて、無機質に告げる。
確かにそうだ。精霊は人間の天敵であり、人類最大の強敵でもある。ただし、『精霊のような生物』という不確定要素しかない生物は、天敵でもなければ、強敵でもない。
「更に言わせてもらうなら、私たちの行動理念は『天宮市の住民を守ること』だ。私は君にいつ、戦闘狂になれと言った?」
わざと鼻につくような喋り方を続ける男に、燎子は眉根を更に寄せる。
彼が、これをさらにバカにするように、挑発するように言ってくれたなら、こちらも逆上して、怒ることだってできる。しかし、冷静に告げられるとこちらも怒りづらい。
中途半端に残った理性が燎子を席へ座らせる。
「しかし、精霊と断定できたときにすぐさま行動できるように準備は整えておいてくれたまえ」
男はそれだけ言うと、のしりと起き上がり、秘書を左後ろに控えさせて会議室を出る。
「…行きましょう」
少々の沈黙の後、燎子の口から無意識に漏れた言葉でみなが会議室を出て、重たい空気を背負ったまま、準備へと向かった。
-side 士道
雫は水族館に来たことがなかったそうだ。 そもそも、生きた魚を見たことがない。 海水魚はもちろん、淡水魚もだそうだ。
「そういえば、城の中で食事はどうしてたんだ?」
手摺から身を乗り出して、巨大水槽を食い入るように見ている雫に尋ねる。その瞳には、水槽の水が映り、輝いていた。
『あぁ、それは、私が作ってました』
こちらの声が全く聞こえていない雫の代わりに答えたのは、自立防衛プログラムだった。
『とは言っても、大体はレトルトだったりカップ麺ですがね。時折知り合いが食材をもってきてくれるんで、その人も入れて豪華に食事を作っていますよ。食卓もありますし』
その言葉を聞いて、俺は豪華な城の中でカップ麺をすすっている雫の姿を想像して、プッと噴き出してしまった。
「?」
会話の声が聞こえたのか、首をかしげた雫がこちらを見ていた。
「いや、なんでもない。ここで写真、撮ってみるか?」
感激のあまりか、言葉を失って、強く頷いて返した雫がまた可愛く見える。
近くに立っていた男性の従業員に声をかけ、写真を撮ってもらうようお願いする。こういったことも仕事の内に入っているのか、爽やかな笑顔を見せて、男性の従業員は慣れた様子で立ち居地を調整する。
「緊張、する」
「大丈夫だって」
肩を強張らせている雫の背中をポンと叩いてやる。それでも少しは安心してくれたようで、強張っていた肩が多少和らぐ。笑顔はなかったが、まぁ、それでも及第点だろう。
「じゃぁ、撮りますよー。はい、チーズ」
一通り位置が決まったようで、カメラマンさんがカメラを構え、定番のセリフを言う。
俺と雫は片手ずつ指をピースにして、少し近づいた。
フラッシュは水族館なので焚かなかったが、この従業員さんのおかげか、それとも、このカメラのギミックか、綺麗に撮れていた。
二人のバックには、魚たちが優雅に舞うように泳いでいる。その前に立つ俺たち二人は、しっかりと笑顔だった。楽しげな雰囲気があった。
「ありがとうございます」
「いえいえ。楽しんでくださいね~」
綺麗に整えられた笑顔は、さすがと言える。
「じゃぁ、言われたことだし、楽しむか」
俺は心底楽しそうに言った。無論、心の底から楽しんでいるから、楽しそうに、ではなく、楽しいのだが。
感激のあまりか、雫は声を出さずに、力強く頷いた。そして、
「どこ、いきましょう?」
本人でさえも無意識だろう喜色の表情を浮かべて、マップを見ていた。
キラキラと輝く瞳に、今にでも何処かへ行ってしまいそうに、浮き足だっている。それを見て、俺も嬉しくなった。
雫ちゃんキャラ崩壊。
スイマセン。楽しそうな雰囲気を作るには、こうするしかなかったんです。
文化祭で執事のコスプレをするようになったんだけど、片眼鏡(多分伝わる)と白髪と白髭の執事長的なイメージしかないです。
次回は、早ければ今月中、遅ければ来月の上旬までには。