や、反省はしてるんです。ですが、夏休みの宿題に受験生に何もかもが重なって書こうにも書けないんです(他にもゲームとかゲームとか…)
ゴホン。
今回は、少し本文が長めです。何せ、もうそろそろ終盤に突入しようと思っていますので(ここまで分割する意味はあったのだろうか)。
‐side 士道
人間は、予想外の展開に出くわした時、脳の思考がフリーズし、現状を理解しようと、スーパーコンピュータを凌ぐ脳の回転速度を回復させていく。
時間にして僅か一秒にも満たないその時間だが、本人にとっては永遠に感じ、その思考停止の時間を朧ながら覚えているそうだ。
俺はそれを現在進行形で体感している。
目の前に広がるは、裏路地に似つかわしくない赤レンガの外壁に囲まれたお城のような建造物。風情ある汚れと言おうか、そのようなものがうっすら感じられる空間。だが、入口の隣に置かれた看板がその豪邸のような、風情ある洋風の城の全てをぶち壊していた。
一時間 三千円。
道具一覧 一千円。
SMセット 五千円。
「うん…うん…」
ようやっと脳の回転速度が正常に戻った時、全てを一瞬で理解して、そして、複数の感情が入り混じった表情を隠すように手で覆い隠す。
「あの、これって」
困惑と、恥ずかしさからか頬を少し赤らめた高身長の少女、雫がこちらに目を向けてくる。
『ラブホですね』
「言うなよ!」
わざと説明しまいと背けていた単語を告げたのは、彼女のバッグに入っているひし形のクリスタルだ。彼女の天使〈機界城〉の殆どを任されている自立思考プログラムだ。
『まぁ、いいんじゃないですか? 色々な愛が…』
「すぐに戻ろう! 今すぐ!」
自立思考プログラムの言葉を遮って、雫の手を握って商店街の方へ向かう。
ここまでエスコートした琴里にどうなっているんだ、と叫び、問い質したくなったが、しかし、そんな時間さえも惜しく、すぐさまここから逃げることに徹した。
「ゼェ…ゼェ…」
体感で約三分。雫を引っ張って商店街の入り口まで来た俺は、運動のせいで大きく跳ねあがる心臓を抑えようと大きく深呼吸をする。
『やー、面白い人ですねー』
「ビックリした」
ただ淡々と告げる感想に、それは良かった、と少し息切れしながら答える。いや、何も良いことは無いのだが。
「ここ…お店、いっぱい」
三百六十度見渡して、感嘆に声を吐く。
ここら辺の店は、大半が二階建てで、一階が店で、二階が自宅というのが多い。販売物が重なることは滅多になく、あっても、別の部分で売りに出していることが多い。
言ってみたいところあるか、と口を開いた直後、彼女に要望を言う力がないことを思い出す。
『士道様。雫様はアクセサリが好きですよ』
ひそひそ話をするような声量でアドバイスをくれる。雫に聞かれなかったかとそちらに目を向けたが、雫は初めて見る景色を前に、こちらの声が聞こえなくなっているようだ。
「確か少し先にアクセサリ屋が…。なぁ、雫」
今にもどこかふらっと言ってしまいそうな雫を呼ぶと、ビクッと反応して、素早く振り返る。そわそわとしていて、目は行き交う人々、その人々が出入りする店を横目に見ては、気づいて俺の方を向く。
「アクセサリ買おうぜ」
言って、雫の腕を掴んで、応え聞く間もなく連れていく。一瞬だけ見えた彼女の嬉しそうな表情を信じて。
その店は、本物の宝石があしらわれたアクセサリから、千円ちょっとの、言っては何だが安物も売っている。
女性店員の優し九大きな声に出迎えられ、雫は少し肩を上下させる。
「いっぱい…」
言葉さえも失う程に雫は目の前の光景に唖然としていた。
キラキラとした美しいネックレスや、アームリング。指輪が綺麗な箱に入れられた姿は、さながら女王と、女王が座る玉座にも等しく見えるだろう。
どうやら結婚指輪を選びに来た様子のサラリーマン風の男性や、金を乱雑に扱うマダム。店員よりも客の方が少なく見えるが、この店は奥に広い。見えない客もいるだろう。
「ん? 雫、どうした?」
一通り回って、一番奥にたどり着くと、ぴたりと雫の足が止まった。握っていた俺の左手をギュっと握っている。
少々見開いた目線の先を見ると、恐らく士道と同い年だろう高校生のカップルが、腕に何かを握って、楽しく微笑んでいた。
「あれ、琴里の指図か?」
『ん? 知らないわよ? …あぁ! そういうことね』
インカム越しに聞こえる笑い声が耳をくすぐる。
高校生カップルがその場を退いたのを確認して、雫を連れていく。
「ロケット、作り?」
そこにある看板に、士道は小首を傾げる。
プリクラのような、カーテンで仕切られた撮影機と、様々なペンダントが並べられている。
一つ千円。二人なら千五百円、とデデンと大きく書いてあるのを見て、雫は些細ながら目を輝かせる。
「ロケット、作られますか?」
後方にいつの間にかいた女性に優しい声をかけられる。
振り返ると、優しい顔つきの若い女性店員が笑みをこちらに向けていた。
雫がロケット? と尋ねると、女性店員は聞くだけで心が安らぐような声で説明していく。
「いかがでしょう?」
そう聞く女性店員の問いに、士道が口を開いた時。
『士道、ここは雫に任せてみましょ。他よりも食いつきが違うし』
耳から聞こえた琴里の声に、口を紡ぐ。
隣で雫が頭を巡らせているのがわかる。こちらを見ては、ロケットの看板を見てを繰り返して少し後。
「し、どう。その、作、ろ?」
震える声で、目には涙さえも浮かばせて、しかしそれは恐怖からではないと朱色に染まった頬が伝えてくれる。 少しだけある恐怖からか少し丸くなっているので、少し上目づかいに。
まるで全て計算されつくしたかのような、古今東西の老若男女、七十億人を超す人間の全てに通用するような、愛おしい姿。思わず胸打たれて、求婚してしまいそうになる、美しい容姿は、絵画にされてもおかしくないほどであるが、しかし、どんな画家だろうとこの彼女の愛らしさと美しさは描けないと脳が判断する。
嗚呼、神様。このときだけは感謝いたします。この世に、こんな愛らしい子供を作っていただきありがとうございます。
「おう!」
店内に響き渡るような大声で返事をする。しかし、それを注意する店員はおらず、周囲にいる店員は全て彼女の美しさに目と自我を奪われている。
いきなりなんですが、ホント、ふと表現方法が思い浮かぶ人って凄いですよね。
忠実にその場を説明してくれながらも、どこか幻想的で、しかし、それでも現実的な、不思議な感覚。パッと表現が思い浮かぶ人の脳の構造を知って私に埋め込んでもらいたいもんです。
雫の可愛さが伝わったら最高です。
いつもはあまりお願いしない女子からのお願いって、どんな無理難題でも受け入れますよね!? そして体を壊そうとも実現させますよね!? それと一緒です!
さらにそれがモナリザやクレオパトラさえも足元に及ばない絶世の美女と考えたらもうたまりませんよ。
次回はなるべく早く投稿します。