遅れてしまい申し訳ございませんでしたぁ!
ゴールデンウィークに二話は投稿したいと思います。
ではでは、ご閲覧くださいませ~。
‐side 士道
至るところに宝石がちりばめられ、敷かれているレッドカーペットにはシミや埃の一つもない。天井にはシャンデリアがあるが、電気は付けられていないようだ。大きな窓からは綺麗な晴天が広がっており、時折レーザーが窓の端から端へと一瞬にして通り過ぎていく。
今までの扉と比べると小さく見える高級な扉を開けると、そこには少女がちょこんと愛らしく座っていた。白と黒で彩られた貴族のドレスを纏った少女の髪は鉄紺に染まっており、黒い目は虚ろ。喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも、恐怖も何もない瞳で俺達を一瞥する。
「・・・えっと、どうも、初めまして」
そう言って立ち上がると、その身長は士道と同じくらいのようだ。だというのに、声は何処か無邪気さが垣間見える。落ちついた風に装っているのに、子供らしさとでも言おうか、そのようなものが時折顔を出しているようだ。
「雫、です。その、お疲れさまでした」
台本を読んでいる感が否めないが、そこをつっつくのは男としていかがなものだろうか。顔は困惑に染まっている。目を泳がせ、時折セリフを忘れたのか、悩む素振りを見せる。
「なぁ、雫。脱落した皆はどこに行ったんだ?」
「覚えてなくて・・・すいません」
『それは私からお伝えします』
そう言って雫の後方にあの菱形の物体が現れた。皆が警戒するのをよそに、その菱形の物体は淡々と説明を続けていく。
『〈
「よかった・・・」
「そ、そうか・・・」
俺と四糸乃が同時に息を吐いた。それに気付いて二人同時に苦笑してしまう。
ちょっとちょっと、と菱形の物体が俺を誘導すると、機械の触手で壁を作り、小さな声で伝えた。
『ああ見えても、雫様は五河士道様が来るのを楽しみにしていたのですよ? 一年ぶりに髪も梳きましたし・・・』
そう言うと、フフフ、と楽しそうに笑った。この物体はプログラムだと思っていて、雫が操っているのかと思っていたが、AIで独自に動いているようだ。言っちゃなんだが、このプログラムの方が雫よりも感情豊かなような・・・
「へぇ・・・?」
『雫様は自分から要求するのがとても苦手なんです。私は雫様に作られた人工知能で、その時は雫様は理由に蓋をしてしまっているので、私にも分からないんですが・・・』
「そうなのか・・・」
予想外の発言に、俺は少し頭を悩ませた。今までは、少なからず精霊たちの要求があったからデートプランを練ったり、彼女達の好感度を上げたり出来るが、雫は自分から要求しない。つまり、完全にこっちの予測でデートプランを考えないといけない。もしかしたら彼女は十香程やんちゃなのかもしれない。少しでも予想が外れたら最悪である。
菱形の物体は機械の触手を壁の中にしまうと、雫に声をかける。
『あ、そうだそうだ。雫様』
「なに?」
美九にちやほやされて嫌そうな顔をしている雫が蜘蛛の糸が垂らされたかのように嬉しそうな顔でこちらに振り返る。
『読みかけの本があったじゃないですか。五河士道様に読んでもらいましょう』
「え!? あ、え・・・その」
一瞬目を見開いた後、目を泳がせながら手をもじもじとさせる。
『可愛いでしょう?』
皆に聞こえるように言うと、先程まで赤かった雫の顔が耳まで真っ赤になると同時、俺含め皆が同時に深く、強く頷いた。
「うぅ~~~・・・」
恥ずかしさのあまりか、雫がその場にへたりこんでしまった。
「わ、悪かったって。その、本読んでやるから」
「・・・・・・うん」
雫は、今にでも消えそうな声で頷いた。
俺は雫の後ろに座ると、異様に軽い雫を抱きかかえて胡坐をかいた足の上に乗せる。それを見て、一度フフと笑った菱形の物体が機械の触手で一つの絵本を取り出して、俺の手にのせた。
『星空に浮かぶ夢』そんな題名の絵本だった。表紙には丘の上から満天の星空を眺める男女が座っていた。
見覚えがあるその背景。まぁ、とりあえず今は後回しだ。
雫可愛いよ雫。
大きいのに恥ずかしがり屋な子って・・・いいよね。母性くすぐる(男だけど)。私に姉がいないっていうのもあるかと思いますが。
では、今度はゴールデンウィークの何処かで。