ただの使い魔には興味ありません!【習作】   作:コタツムリ

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 第5話の続きです。

 キュルケとのパヤパヤ現場をルイズに目撃された才人君。
 果たして彼の未来はどうなるのか?



第5.5話 おしおきしちゃうもん!【R-17.5?】

 

 

 

 キュルケの部屋を出た才人は額に汗を浮かべながら廊下を歩く。

 向かいのルイズの部屋まで僅か三歩の距離である。

 だが、その三歩が長い。途方もなく長い。

 これから自分の身に降りかかるであろう災難と、それを逃れるための言い訳を幾通りもシュミレーションすることが、たった三歩の距離を万里の長城ばりに長く感じさせる一端を担いでいた。

 

 そうこうしている内にネグリジェ姿のルイズがドアノブに手をかけた。

 乱暴な動作で捻り、ドカドカと室内に入る。

 才人も続いて部屋に入る。どこか遠慮がちでそわそわしながら。

 

 才人が部屋に入り終えるや否や、ドアがバタン! と勢いよく閉められた。

 前方のルイズが背中を向けたまま杖を振っていた。

「サイト……。どういうことなの? 説明してくれるかしら」

 開口一番、ルイズは言った。いつになく低い声を、腹の底から響かせた。

「えっとだなー……」

 才人は正直に無罪を主張した。自分はサラマンダーに拉致されただけだと。

 廊下で幾通りもの未来をシュミレートしたが、そのどれもが無情にもバッドエンドへと続いていた。

 こういうときに限って未来視は働かない。何とも不条理である。

 仕方なしに才人は正直に答えたのだ。困った時は誠実に対応するに限る。

 しかしながらルイズは納得しなかった。機械的な動きで机の引き出しからムチを取り出すと、大きく振りかぶる。

「サイトのバカぁぁぁ! 犬ぅーー! バカ犬ぅーー!!」

「痛だいッ! ちょ、やめろって!」

 ピシッ! ピシッ! っと、乗馬用のムチが才人を襲う。

「信じらんない! よりにもよって、あのツェルプストーの女に尻尾を振るなんてぇーーッ! 犬ぅううううッ!」

 ルイズは唇をきゅっと噛み締めて、目尻に涙を蓄えながらムチを振るった。

 才人の動体視力と反射神経を持ってすれば、素人の振るうムチなど容易くかわせるのだが、今回は敢えて受けた。ルイズの目的がムチで叩くことではなく、高ぶった感情を発散させることにあると見た彼は、あえて打たれることでルイズの思いを受け止めようとしたのだ。

 一部の上級者にとってこの状況はヨダレをたらしながら喜ぶものだが、あいにくと才人にそのような趣味はない。

 ただいたずらに痛覚にご褒美をたまわるのは嫌なので、才人は必死に考えを巡らす。

 

 通常の説得ではこの状況を脱しない。

 そう考えた才人は発想の転換を計ることにした。

 誤解したルイズが自分を叩く構図。これ自体がそもそも間違いなのである。

 自分は悪くない。悪いのおっぱいなのだ。

 キュルケにあのような兵器を与えた天が悪いのである。

 キュルケと才人を出会わせたのは誰か? サラマンダーである。そのサラマンダーを使い魔になるように仕向けたのは、始祖ブリミルの残した魔法である。

 そう、全ての元凶はブリミルだったのだ。そしてブリミルが創ったのが世界だ。

 

 ――間違っているのは俺じゃない! 世界の方だ!

 

 ついに本質を見破った才人は、この間違った状況を脱するべく世界に対しての反逆を開始した。

 

 何度か鞭で打たれた後、才人はカッっと目を見開きルイズの懐に潜り込む。

 そして力強く、ルイズを抱きしめて動きを封じた。

「ちょっと、離れなさい!」

「ルイズ! 誤解なんだ!」

 もがき続けるルイズ。だがしばらくそうしていると唐突におとなしくなった。そしてしかるのちに、自分が男に抱きしめられていることを自覚したのか、凄まじい勢いで顔が紅潮した。

 ここまでくればもう後は簡単である。

「聞いてくれ、ルイズ」

「にゃ、にゃによ」

 とろけるような、うっとりとした顔でルイズは答えた。

「俺が今までルイズを裏切ったことがあるかい?」

「そ、それは……にゃいけど」

 乙女モードに入ったルイズは才人の言葉を素直に受け入れる。これなら大抵のことは盲目的に信じてしまうだろう。それでも色恋沙汰だけは、すんなりとはいかない。

「でもやっぱり信じられない。私、知ってるもん。サイト、今朝あの女の胸を見てたでしょ!」

「ギクッ……!」

 ルイズの意外な斬り返しに才人は一瞬言葉をつまらせる。

 予想していなかった反撃に虚を突かれた。

「やっぱり、私よりあの女の方がいいんだわ! 男なんて皆おっきいお胸が好きなのよ!」

「そ、そんなことないさ! 俺はどちらかと言うと小さい方が好きなんだ!」

 若干テンパった才人は勢いだけで言った。自分でも何を言っているのか、いまいち分かっていない。

「嘘よ! 信じられないもん。やっぱりオシオキしちゃうんだもん!」

 ルイズは再びムチに力を入れて才人を打とうとする。

「待った! ルイズのオシオキならむしろご褒美として喜んで受けるが、それはルイズにとってよろしくないことだと思うぞ!」

 才人はもうこうなったら勢いだと、考えるより先に口が開いた。後になって今言ったことを思い出したら、軽く自殺したくなるような気がしないでもないが、もう後には引けない。

 とにかく一気にまくし立てる。

「考えてもみてくれ! もし俺が明日傷だらけの状態でみんなの前に出たら、どう思われる?」

「え?」

「きっとみんなはこう思うだろう。ルイズは男をムチで叩いて悦に浸る異常な性癖を持っていて、使い魔に夜な夜なイケナイことをしていると」

「な、ぬぁんですって!?」

 半分以上口からでまかせだったのだが、今回は運よくヒットした。

 ペースを乱されたルイズにサイトはここぞとばかりに攻めのカードをきる。

「そんなことになれば、ルイズが、ひいてはヴァリエール家が不名誉なそしりを受けることになりかねない!」

 ヴァリエール家の名誉。ルイズに対して、切り札の一枚だ。

 貴族は名誉に弱い。加えてルイズのような責任感の強い人間には尚更効果を発揮する。

「……う、うん。わかったわ。オシオキは勘弁してあげる」

 どうやら危機は去ったようである。

 しかし才人の攻めはまだ終わっていなかった。

「わかってくれて嬉しいよ、ルイズ。それじゃ、今度はルイズがオシオキを受けよっか」

「うん。――って、はい?」

 才人は素早くルイズを後ろ手に縛って拘束した。

 反逆の序章の始まりだ。

「ちょ、ちょっと! 何してるのよ! 何で私がオシオキされなくちゃならないのよ!」

 

「ご主人様が誤った行動を取らないように導くのも、使い魔の仕事にございます」

 

 突然フォーマルな口調に戻った才人はニタッっと笑うと、さも当然の事のように言った。

「い、意味わかんないわ! 放しなさい! バカ使い魔ッ!」

「ご主人様が同じ過ちを繰り返さないように、わたくしが心を鬼にして罰を与えて差し上げましょう」

「きゃぁん! ちょっと、嘘でしょ? やめ、にゃぁぁん!」

 才人は縛られて抵抗できないルイズをベッドに押し倒すと、先程までルイズが握っていたムチでペチペチと優しく叩く。

 最初は足首から。徐々に上へと上り、ネグリジェの裾に引っかかっても構わず直進。白いレースをあらわにしながら、胸部の上へと登ってゆく。

「ひゃん! ちょ、止めなさ――」

 こういうのは最初が肝心だと才人はよく理解していた。

 何かトラブルが起きたときは自分が主導権を握る。そうすることで被害を最小限に食い止めることができるのだ。

 もとは才人の浮気疑惑(?)から始まった問題は、ルイズの不適切な行動の問題にすり替えられてしまった。

 ――論点のすり替え。

 やっていることが某『薔薇好き金髪少年』と大差ないように見えるが、それは気のせいに違いないのである。錯覚。蜃気楼に他ならないはずなのである。

 なにはともあれ、才人は勢いで押し切った。

「だめ、サイト! そんなところ、ひゃん!」

 ルイズのネグリジェの隙間に才人のムチが差し込まれる。肩口から入ったムチが胸元をグリグリと擦る。

「そういえばルイズは俺が巨乳好きだと言ったね? まぁ、確かに大きい胸は魅力的だ。しかし、小さい胸も好きだということを、今から証明してあげよう」

「ちょ、ダメッ! そんな、いきなり――、らめらってばぁ! しゃいとのバカぁ、バカ犬ぅぅぅ! にゃぁぁぁんんん!」

 

 双月が妖しく照らす夜。

 バカ犬とご主人様の長い夜が始まった。

 

 

 

 





 一応タイトルに警告出しときましたが、このくらいは別に18禁じゃないよね?
 17.5どころか、15禁でも大丈夫な気がするのですが。

 マズイと思われる方がおられましたらご意見ください。速やかに対処します。

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